著者
岩本 洋子
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2014年度日本地球化学会第61回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.276, 2014 (Released:2014-09-12)

冬の日本海特有の現象である「波の花」に着目し、その化学成分を調べることで海洋から大気へ輸送される有機物の特徴の解明に取り組んだ。化学分析の結果、「波の花」はバルクの海水と比べ少なくとも100倍から300倍の濃度の有機炭素を含み、それらは脂質や糖類によって構成されることがわかった。
著者
山中 潤一 丸茂 克美 廣上 清一 土屋 秀二 高瀬 尚人 山田 優子
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2014年度日本地球化学会第61回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.330, 2014 (Released:2014-09-12)

富山市の土壌中には大気圏内核実験由来のセシウム137のみが含まれ、深度25cmの深さまで移行している。セシウム137は有機体炭素とともに地下に移行している可能性がある。カドミウム土壌汚染対策でカドミウムとともに地下に埋設されたセシウム137は現在も地下に残留しており、客土工法が放射性セシウム汚染土壌処理に有効であることが明らかにされた。
著者
堀 まゆみ 小豆川 勝見 松尾 基之
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2014年度日本地球化学会第61回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.30, 2014 (Released:2014-09-12)

都立大島小松川公園の地中には、還元処理が施されたクロム鉱滓が埋められている。しかし、還元処理を施したにもかかわらず、現在もCr(VI)を含んだ環境水が公園周辺で検出されている。大島小松川公園周辺で環境調査を行い、高レベルCr(VI)汚染を発見し、その流出原因について考察したので報告する。大雪が降った2013年1月、高濃度のCr(VI)が歩道上の滲出水から検出され、その濃度は最大で37.0 mg/Lであった。晴天が続いた日に採取した試料からはCr(VI)は検出されず、雪の日には検出されたことから、この地点では、大雨や雪が降ると鉱滓中のCr(VI)が溶出し、地表面でCr(VI)が検出されると考えられる。また、公園周辺の別地点の集水桝中の水からは、Cr(VI)が133 mg/Lと高濃度で検出された。集水桝では、歩道に滲出した水とは異なり、常に高濃度のCr(VI)が流入していることが示唆される。今なおCr(VI)が基準値を超過して検出されることから、埋立て当時の還元処理の不十分さが指摘できる。
著者
中村 俊夫 緒方 良至 箕輪 はるか 佐藤 志彦 渡邊 隆広
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2014年度日本地球化学会第61回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.218, 2014 (Released:2014-09-12)

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う東京電力福島第一原発事故により大量の放射性物質が環境中に放出された.大気粉塵,土壌,植物などの放射能分析から大気中に放出された核種とおおよその量が見積もられている.一方,地質学・考古学試料について約5万年までの高精度年代測定に利用されている放射性炭素(14C;半減期:5730年)の放出に関しては,その放出の形態や数量はきちんと確認されてはいない. 事故のあった福島第一原発付近への立入は制限されており,採取できる試料には限りがあるが,2012年に,福島第一原発から南に20~30km離れた広野町の海岸付近で海産物などを採取した.また,2011年秋には,福島第一原発から北西に約60km離れた福島大学金谷川キャンパスにおいて植物を採取し,それらの14C濃度を測定した.測定結果からは福島第一原発事故の影響は検出されなかった.
著者
奥村 雅彦 中村 博樹 町田 昌彦
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2014年度日本地球化学会第61回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.266, 2014 (Released:2014-09-12)

福島第一原発事故によって環境中に放出された放射性セシウムは、土壌に強く吸着され、住民避難の主な原因となってる。現在大規模な除染が行われているが、除染後の廃棄土壌の減容化手法開発や貯蔵の安定性評価のためにはさらなる科学的知見が必要とされている。このような事情を鑑み、我々は放射性セシウムを選択的かつ不可逆的に吸着することが知られている風化した雲母類粘土鉱物のセシウム吸着海底に付いて密度汎関数法を用いて解析を行った。その結果、風化が進んだ場合にセシウムを吸着する事がわかった。また、雲母類粘土鉱物とセシウムの間に共有結合成分を発見した。講演では、これらの結果を踏まえた減容化手法開発の可能性や貯蔵における安定性等の議論も行う予定である。
著者
三宅 泰斗 松崎 浩之
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2014年度日本地球化学会第61回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.334, 2014 (Released:2014-09-12)

2011年3月に生じた福島第一原子力発電所事故により、多量の放射性核種が環境中に放出された。ヨウ素131や放射性セシウム等の比較的短半減期の核種は被ばくの主な要因として注目され、事故後多くの研究者により測定され多数の報告があった。一方でヨウ素129や塩素36などの長半減期核種は、検出の難しさからこれまでほとんど報告されていない。これらの核種はウラン235の核分裂や中性子捕獲反応で生成したと考えられるため、事故前から炉内に存在し、今回の事故で環境中へ漏洩した可能性がある。また、これらの核種は半減期が長いために、核種の環境中での動態を調べるトレーサーとしても有用であり、継続的な調査が求められる。本研究ではこれまで、事故後に福島第一原子力発電所周囲から採取された表層土壌中のヨウ素129を加速器質量分析により測定し、ヨウ素129とヨウ素131の事故当初の同位体比の推定を行ってきた。この度、ヨウ素129を測定済みの土壌について、新たに塩素36の測定を試みたので、その結果を報告する。
著者
中村 仁美 岩森 光 千葉 紀奈 中井 俊一 木村 純一 常 青 風早 康平
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2014年度日本地球化学会第61回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.238, 2014 (Released:2014-09-12)

近年,我々は,初めて有馬温泉水中の希土類元素(REEs)の定量とともに,Sr-Nd-Pb同位体比組成を得ることに成功した(Nakamura et al., accepted).これは,低温(~500度)で脱水したスラブ起源流体の組成と河川水の混合で説明することができ,スラブ起源流体は非火山域であっても,構造線などの大断層沿いに上昇している可能性があることを示唆する.本研究では,溶存イオン種と濃度,軽元素同位体情報を基に,中央構造線沿いの有馬型温泉水を調査・採水し,標準添加法によりREEs組成を定量分析する.これらの結果に基づき,スラブ起源流体を含む有馬型温泉水の特徴が,非火山域である西南日本から,火山域も含む中部日本にかけて,どのように変化するかについて制約を与える.
著者
塔ノ上 亮太 桂 誠 中嶋 悟 中西 一晃 矢澤 明子
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2014年度日本地球化学会第61回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.97, 2014 (Released:2014-09-12)

石炭はマセラルと呼ばれる顕微鏡で区別できる要素と鉱物で構成される.各マセラルはそれぞれが植物の異なる成分に由来し,また堆積後も異なる反応を受けているため,その化学的性質は石炭の成因やその反応特性に対し重要な知見を与える.そこで本研究では,減衰全反射顕微赤外分光(μATR-IR)法によって,石炭マセラル組織の赤外イメージング測定を試みた.その結果,従来の正反射顕微赤外分光法よりも高空間分解能(<10µm)のイメージを得ることに成功した.
著者
原 修一 角皆 潤 小松 大祐 中川 書子 芦 寿一郎 中村 光一 砂村 倫成 土岐 知弘
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2014年度日本地球化学会第61回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.44, 2014 (Released:2014-09-12)

高知県沖の足摺海丘(山頂水深543m)直上の海水中ではメタンの高濃度異常が観測されており、この海丘から海水中にメタンが放出されているものと考えられている。本研究では、この足摺海丘のメタン湧出フラックスや、大気へのメタン漏出の可能性の有無を検討することを目的として、2013年9月に足摺海丘およびその周辺において海水試料を採取し、海丘直上及び周辺海水中のメタン濃度分布を定量化した。更にメタンの炭素・水素安定同位体比も同時に分析し、その成因が微生物起源か、それとも熱分解起源であるのか、また海水中における微生物酸化分解の有無に関する考察を行った。分析の結果、足摺海丘直上の試料から高濃度のメタンが検出された(最高145 nmol/L)。また海水中のメタン濃度分布から、海丘から見て北東方向の水深450 m~660 mの範囲に、メタンプルームが広がっていることが明らかになった。
著者
渡邊 利奈 小豆川 勝見 松尾 基之
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2014年度日本地球化学会第61回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.331, 2014 (Released:2014-09-12)

本研究では2011年3月の東日本大震災に伴って起きた福島第一原子力発電所の事故により大量に放出された放射性物質の環境中での動態をガンマ線測定により研究している。環境中で放射性物質がまったく移動しないとするならば、同年3月中に都内に降下した放射性セシウムの沈着量は半減期に沿って減衰するはずだが、実測値は予想値よりも明らかに低かった。移動した放射性セシウムを評価する手法として、位置情報に空間線量率を組み合わせた三次元データを地図上に表示させる、マッピングを採用した。これまでに都内の小学校や茨城県守谷市などで測定を行ってきた。高感度の測定器を用いて地上5 ㎝高でガンマ線を測定することで、広範囲を効率よく測定し放射線線量率をマッピングすることができた。更にガンマ線スペクトルを取ることで、周辺よりも高線量になる場所が、放射性セシウムか天然核種なのか判定することが可能となった。