著者
西本 豊弘 藤尾 慎一郎 永嶋 正春 坂本 稔 広瀬 和雄 春成 秀樹 今村 峯雄 櫻井 敬久 宮本 一夫 中村 俊夫 松崎 浩之 小林 謙一 櫻井 敬久 光谷 拓実 設楽 博巳 小林 青樹 近藤 恵 三上 喜孝
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2004

弥生時代の開始が紀元前10世紀末であることが明らかとなった。その後、日本列島各地へは約500年かかってゆっくりと拡散していった。さらに青銅器・鉄器の渡来が弥生前期末以降であり、弥生文化の当初は石器のみの新石器文化であることが確実となった。
著者
中村 淳路 横山 祐典 関根 康人 後藤 和久 小松 吾郎 P. Senthil Kumar 松崎 浩之 松井 孝典
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2013年度日本地球化学会第60回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.174, 2013 (Released:2013-08-31)

地球上に存在するクレーターの形成年代や侵食過程について検討することは, 他の惑星表面のクレーターの形成過程を検討する上で重要である. 本研究は, インド・デカン高原上に位置する直径1.88kmの衝突クレーターであるロナクレーターについて, 宇宙線照射生成核種(10Be, 26Al)を用いた年代測定を行うことで, 形成年代と侵食過程の検討を行った. ロナクレーターは玄武岩上に形成され現在までよく保存されているクレーターとしては地球で唯一のクレーターであることから, 火星上のクレーターの比較対象として注目されている. しかし先行研究によるロナクレーターの年代推定は, 測定手法によって1.79 ka から570 kaまでと大きく異なっている. 本研究では10Be, 26Alを用いて新たにロナクレーターの表面照射年代を決定し, さらにイジェクタの露頭の14C年代測定を行うことで, 形成年代値の再検討を行なった.
著者
村松 康行 松崎 浩之 大野 剛 遠山 知亜紀
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2013年度日本地球化学会第60回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.189, 2013 (Released:2013-08-31)

福島原発事故においても大量のI-131が放出されたが、もしも、初期被ばくが大きい場合は後になって甲状腺への影響が出る可能性がある。しかし、半減期が8日と短いため、事故当初の放射性ヨウ素の広がりや住民が受けた被ばく線量に関するデータは十分でない。そこで、I-131と同時に放出されたと考えられる長半減期の同位体であるI-129(半減期1,570万年)が指標になる。文科省が集めた土壌試料や我々が独自に集めた試料を用い、I-129の分析を試みた。AMSを用いたI-129の分析結果から約400箇所のI-131沈着量を推定した。今まで殆どデータがなかった福島原発から20 km圏内や南西側の地域を中心に、I-131の沈着量のマップを作成した。今回、値が加わったことで、I-131の沈着量の地域分布の特徴がより鮮明になってきた。
著者
松崎 浩之 村松 康行
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会 年会・大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

原子力発電所事故当時、住民に深刻な被ばくを引き起こす可能性の高い大量のヨウ素131(半減期8.02日)が放出されたが、半減期が短いため空間分布に関するデータが不足している。そこで本研究では、同時に放出されたヨウ素129(半減期1570万年)を測定することによってヨウ素131の沈着量を再構築することを目的とし、以下の三つの課題に取り組んだ:1)第1次調査で平成23年6月に採取された土壌試料のうちヨウ素131が測定されているものについてヨウ素129を測定し同位体比を求めること。2)第1次調査で採取された土壌のうち30km以内と線量が高い地域の試料を選び、ヨウ素129を分析し、ヨウ素131マップの精緻化を図ること。3)ヨウ素129の土壌中での深度分布や時間変化などを評価し、事故時ヨウ素131濃度マップの精度を上げると共に、ヨウ素129の環境中での長期的移行挙動に対する知見を得ること。
著者
遠部 慎 宮田 佳樹 小林 謙一 松崎 浩之 田嶋 正憲
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.137, pp.339-364, 2007-03-30

岡山県岡山市(旧灘崎町)に所在する彦崎貝塚は,縄文時代早期から晩期まで各時期にわたる遺物が出土している。特に遺跡の西側に位置する9トレンチ,東側に位置する14トレンチは調査当初から重層的に遺物が出土し,重要な地点として注目を集めていた。彦崎貝塚では土器に付着した炭化物が極めて少ないが,多量の炭化材が発掘調査で回収されていた。そこで,炭化材を中心とする年代測定を実施し,炭化材と各層の遺物との対応関係を検討した。層の堆積過程については概ね整合的な結果を得たが,大きく年代値がはずれた試料が存在した。それらについての詳細な分析を行い,基礎情報の整理を行った。特に,異常値を示した試料については,再測定や樹種などの同定を行った。結果,異常値を示した試料の多くは,サンプリング時に問題がある場合が多いことが明らかになった。特に水洗サンプルに顕著で,混入の主な原因物質は現代のものと,上層の両者が考えられる。また,混入した微細なサンプルについても,樹種同定の結果,選別が可能と考えられた。これらの検討の結果,明らかな混入サンプルは,追試実験と,考古学的層位などから,除くことが出来た。また,9トレンチと14トレンチと2つのトレンチでは堆積速度に極端な差が存在するものの,相対的な層の推移は概ね彦崎Z1式層→彦崎Z2式層→中期層→彦崎K2式層→晩期ハイガイ層となることがわかった。今後,本遺跡でみられたコンタミネーションの出現率などに留意しつつ,年代測定試料を選別していく必要がある。そういった意味で本遺跡の事例は,サンプリングを考えるうえでの重要なモデルケースとなろう。
著者
太田 智子 松崎 浩之 児玉 浩子 寺田 宙 野村 恭子 太田 裕二 王 暁水 飯田 素代 日比野 有希
出版者
公益財団法人日本分析センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

東京電力福島第一原子力発電所事故後、国民の間に放射性物質への不安が広がった。中でも放射性ヨウ素については甲状腺がんとの因果関係が心配され、特に感受性の高い乳児についての影響が懸念されている。本研究では乳児の主たる栄養源の母乳を対象に、数種類存在する放射性ヨウ素のうち半減期が最も長いヨウ素129(1570万年)の分析を実施した。母乳は脂肪分が多いため分析することが難しく、母乳中のヨウ素129を分析した例はない。今回、母乳中のヨウ素を分析する手法を確立し、健康な母親から採取した母乳中のヨウ素129を分析しバックグラウンドを把握すると共に、データを基に乳児の母乳摂取による内部被ばく線量評価を試みた。
著者
松崎 浩之 村松 康行
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会 年会・大会予稿集 2013年春の年会
巻号頁・発行日
pp.653, 2013 (Released:2013-07-31)

原子力発電所事故当時、住民に深刻な被ばくを引き起こす可能性の高い大量のヨウ素131(半減期8.02日)が放出されたが、半減期が短いため空間分布に関するデータが不足している。そこで本研究では、同時に放出されたヨウ素129(半減期1570万年)を測定することによってヨウ素131の沈着量を再構築することを目的とし、以下の三つの課題に取り組んだ:1)第1次調査で平成23年6月に採取された土壌試料のうちヨウ素131が測定されているものについてヨウ素129を測定し同位体比を求めること。2)第1次調査で採取された土壌のうち30km以内と線量が高い地域の試料を選び、ヨウ素129を分析し、ヨウ素131マップの精緻化を図ること。3)ヨウ素129の土壌中での深度分布や時間変化などを評価し、事故時ヨウ素131濃度マップの精度を上げると共に、ヨウ素129の環境中での長期的移行挙動に対する知見を得ること。
著者
苅谷 愛彦 原山 智 松四 雄騎 清水 勇介 松崎 浩之
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.131, no.4, pp.447-462, 2022-08-25 (Released:2022-09-08)
参考文献数
59
被引用文献数
1

The geomorphological and geological characteristics, distributions, and ages of block slopes that developed at two alluvial cones (Bentenzawa valley and Okumatazirodani valley) along the Azusa River in the Kamikochi area, northern Japanese Alps, are clarified. These block slopes were believed to be of Pleistocene glacial origin in previous studies. A field survey was conducted, applying microtremor array observations to estimate subsurface geology, and in situ terrestrial cosmogenic nuclide (TCN) dating to estimate age of occurrence. At the Bentenzawa alluvial cone, the block slope is composed of large blocks and lithic fragments originating from heterogeneous igneous rocks, mainly of welded tuff and granophyre, that do not exist in the Bentenzawa valley watershed. Large blocks and lithic fragments of the block slope show clast-supported facies accompanied by jigsaw-crack fracture structures without a fine matrix. A mass of rock blocks fell from a steep wall of igneous rocks around the head of the Okumatajirodani valley, at approximately 2280 to 3090 m a.s.l., on the opposite side of the Bentenzawa valley. Rock slope failure and runout debris flow of blocks are thought to be the principal motions behind the mass movement from the rockwall. Block behavior comprised 3 km horizontal and 1.5 km vertical movements. Blocks were finally transported to the alluvial cone of the Bentenzawa valley to form an opposing impact slope. The results of microtremor array observations suggest that materials of rock blocks about 20 m thick spread and were buried beneath the present riverbed of the Azusa River. The estimated volume of landslide materials is more than 1.1 × 107 m3; age is estimated to be 6900 ± 1000 yrs BP. The Bentennzawa block slope is not of glacial origin. The block slope at the Okumatajirodani alluvial cone consists of large lithic fragments of igneous rocks distributed in this watershed. A mass of rock blocks was supplied by slope failure or debris flow in the Okumatajirodani valley, and was transported and emplaced on the alluvial cone. The volume of the failure is estimated to exceed 2.9 × 105 m3 and its age is estimated to be 900 ± 100 yrs BP.
著者
関 有沙 横山 祐典 鈴木 淳 川久保 友太 菅 浩伸 宮入 陽介 岡井 貴司 松崎 浩之 浪崎 直子
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, 2012

完新世の短期的な気候変動のメカニズムを明らかにする上で、古気候復元データの不足は深刻な問題である。本研究では、完新世の寒冷化イベントの古気候データが不足している東シナ海に位置する沖縄県久米島の化石サンゴ骨格のSr/Ca比と放射性炭素年代の分析を行い、完新世中期の表層海水温の復元を行った。その結果、PME(Pulleniatina Minimum Event)と呼ばれる寒冷化イベントにおいて、夏と冬の水温低下幅が異なることが明らかになった。今後、本手法でPMEの際の表層海水温復元をより多くの年代で行うことによりPMEの古水温変動を時系列で復元し、寒冷化メカニズムの解明に寄与することが期待される。発表では、新たに採取した化石サンゴの放射性炭素年代測定の結果を示し、その年代分布から、今後の研究の展望についても紹介する。
著者
松崎 浩之
出版者
一般社団法人 日本真空学会
雑誌
真空 (ISSN:05598516)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.467-474, 2007 (Released:2008-01-01)
参考文献数
15
被引用文献数
3 4
著者
堀内 一穂 柴田 康行 米田 穣 大山 幹成 松崎 浩之 箕浦 幸治
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

年縞堆積物中のベリリウム10を分析し, 同一の堆積物から得られた既存の炭素14記録や, 本研究にて新たに分析されたアイスコアのベリリウム10記録と比較することで, 最終退氷期の太陽活動変動曲線を抽出することに成功した.その結果, 太陽活動は退氷期の古気候変動を支配するものではないが, 気候変動イベントのトリガーには成り得ることが分かった.また, 古木から単年分解能で効率的に炭素14 を分析する手法や, 年縞堆積物から単年分解能でベリリウム10を分析する手法が確立された
著者
三宅 泰斗 松崎 浩之
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2014年度日本地球化学会第61回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.334, 2014 (Released:2014-09-12)

2011年3月に生じた福島第一原子力発電所事故により、多量の放射性核種が環境中に放出された。ヨウ素131や放射性セシウム等の比較的短半減期の核種は被ばくの主な要因として注目され、事故後多くの研究者により測定され多数の報告があった。一方でヨウ素129や塩素36などの長半減期核種は、検出の難しさからこれまでほとんど報告されていない。これらの核種はウラン235の核分裂や中性子捕獲反応で生成したと考えられるため、事故前から炉内に存在し、今回の事故で環境中へ漏洩した可能性がある。また、これらの核種は半減期が長いために、核種の環境中での動態を調べるトレーサーとしても有用であり、継続的な調査が求められる。本研究ではこれまで、事故後に福島第一原子力発電所周囲から採取された表層土壌中のヨウ素129を加速器質量分析により測定し、ヨウ素129とヨウ素131の事故当初の同位体比の推定を行ってきた。この度、ヨウ素129を測定済みの土壌について、新たに塩素36の測定を試みたので、その結果を報告する。
著者
横山 祐典 阿瀬 貴博 村澤 晃 松崎 浩之
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.111, no.11, pp.693-700, 2005 (Released:2006-03-01)
参考文献数
53
被引用文献数
5 6

宇宙線との相互作用によって地球表層で岩石中に生成される核種(TCN)は, 加速器質量分析計(AMS)の発達によって, 地球表層プロセスの研究に急速に広く用いられるようになってきた. TCN研究では半減期の違う複数の核種を組み合わせることによって, 侵食速度, 埋没履歴などを求めることが可能である. 現在はTCNのうち, 10Beや26Alの測定がAMSにより活発に行われてきている. 現在のところTCNの絶対量の誤差は約10%と大きいが, それでもこれらの測定結果を使って, テクトニクスや気候変動についての新しい知見が得られるようになった. チベットにおいての研究例も増え始めており, 今後サンプリング地点を増やし測定を活発に行うことによって, インドのユーラシア衝突によって引き起こされているチベット地域のテクトニクスの詳細や気候変動を細かく明らかにすることができる.
著者
山根 雅子 横山 祐典 三浦 英樹 前杢 英明 岩崎 正吾 松崎 浩之
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.329, 2008

近年開発された表面照射年代測定法は、二次宇宙線の作用により岩石の石英中に生成される宇宙線照射生成核種 (TCN) の濃度から、地表面が宇宙線に被爆した期間を直接求める手法である。この手法によって、これまで不確定性が高かった、南極氷床の最終退氷の時期が明らかになりつつある。発表者の研究グループは、東南極リュツォ・ホルム湾の露岩域から採取された岩石試料の石英に含まれる<SUP>10</SUP>Beと<SUP>26</SUP>Alの定量を行ない、この地域における氷床変動の研究を進めている。東南極のマック・ロバートソンランド、西南極のマリー・バードランド、南極半島においても、この手法を用いた最終退氷の時期に関する研究が行われている。TCNを用いたこれらの研究結果から、(1) 南極のどの地域も最終退氷の時期は完新世であること、(2) 東南極氷床は西南極氷床や南極半島氷床より気温の変化など、氷期の終焉によりもたらされた環境変化に対して、相対的に安定していたことが示唆された。
著者
井上 章 村松 康行 松崎 浩之 吉田 聡
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2011年度日本地球化学会第58回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.136, 2011 (Released:2011-09-01)

C-14は銀河宇宙線と窒素の(n,p)反応によって大気上層で生成し、光合成によって植物中に取り込まれる。C-14生成量は銀河宇宙線の地球への入射量と相関を持ち、太陽活動の変動と関係する。よって古木などの植物試料中C-14同位体比を測定することで過去の太陽活動の変動を推定できる。一方近年は核実験や原子力発電所の事故等人為的に放出されたC-14の寄与が大きい。したがって近年の植物試料中C-14同位体比を測定することで人為的放出による大気中C-14濃度変動への影響を調べることができる。本研究ではAMS(加速器質量分析計)を用いて樹齢1139年の屋久杉年輪中C-14同位体比を測定し、オールト極小期(AD1000~1100)における太陽活動の変動を調べた。また近年に採取された日本の穀類や、原子力施設周辺で採取された植物試料中C-14同位体比を測定し、人為的に放出されたC-14の影響を調べた。
著者
桜庭 真依子 角野 浩史 松崎 浩之 楠野 葉瑠香 川本 万里奈 徳山 裕憲 小豆川 勝見 堀 まゆみ 丸岡 照幸 藪崎 志穂
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2017年度日本地球化学会第64回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.63, 2017 (Released:2017-11-09)

地下水資源の開発や利用にはその流動過程を把握するため、涵養地や滞留年代を知ることが重要である。福島県においては、福島第一原発の事故によって放出された放射性物質の環境中の挙動が調べられてきたが、地下水については報告例が少なく、地下水資源利用に際してその安全性を評価する必要がある。そこで本研究では、ヨウ素129及びトリチウム-ヘリウム年代測定法を用い、福島県の地下水の原発事故による汚染状況を明らかにすること、及び長期的な地下水資源の安全性を評価することを目的とした。地下水中のヨウ素129と安定同位体であるヨウ素127の比、及び希ガスMSで定量を行った3Heより求めた3H濃度からは現時点での汚染は確認できなかった。一方トリチウム-ヘリウム年代測定法より求めた滞留年代の最小値は14年となり、今後汚染された水が出る可能性は否定できないと考えられる。
著者
坂本 稔 今村 峯雄 一色 史彦 若狭 幸 松崎 浩之
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.176, pp.129-140, 2012-12

茨城県牛久市に所在する観音寺(茨城県牛久市久野町2976)は,嘉禄2年(1226),十一面観音を祀る堂として建立されたと寺伝にあり,その後大永5年(1525)に再興され,現在の本堂は宝永4年(1707)の再建によるものと考えられている。本研究では,観音寺本堂および仁王門の保存修復工事等に伴う旧部材等の保管資料の炭素14年代測定を行った結果について,棟札などの文字資料から推察されてきた建立あるいは修復時期などとの関連を比較検討した。仁王門の保存修復工事で得られた本堂側廻りの旧柱材(ケヤキ)2本の最外層の年代は炭素14-ウィグルマッチ法(¹⁴C-wiggle-matching)によりいずれも13世紀後半か,14世紀初頭に伐採された材と見られた。建立期の嘉禄2年(1226)より新しいが,再興されたとする大永5年(1525)よりはかなり古い年代となっており,「宋風彫刻」とされる十一面観音の鎌倉後期~室町期の年代と整合している。観音寺本堂の細部様式による建築時期の年代認識(鎌倉期)とも矛盾しない。また十一面観音の寄木構造の固定保持のため用いられていた竹釘(昭和の本堂保存修復時に得られ保管),同じく観音像の着衣部分の塗装面の布(麻)の年代は,寛永7年(1630)の十一面観音修理の時期に符合する結果となった。The Kannon-ji temple in Ushiku, Ibaraki Prefecture (2976 Kuno-cho, Ushiku City, Ibaraki Prefecture) was founded, according to temple legend, in 1226 as a hall to house an Eleven-Faced Kannon statue. It was rebuilt in 1525, and the present main hall is believed to date from a 1707 reconstruction. In this research, radiocarbon dating of the preserved materials such as old lumber was done in conjunction with the restoration work on the temple's main hall and the Nio Gate, and the results were compared in terms of their relationships with the construction and repair periods assumed from written records such as on the ridgepole signs.The age of the outermost layer of the two old pillars (made from Keyaki [Zelkova serrata]) from around the main hall obtained during restoration work on the Nio Gate was seen using 14C-wigglematching to both be from trees harvested around the latter half of the 13th century or the start of the 14th. They are newer than the 1226 founding of the temple, but also considerably older than the 1525 reconstruction, and instead match the late Kamakura or Muromachi date of the Eleven-Faced Kannon, which is considered to be in the Song dynasty style. The era suggests by the style of the details of the temple's main hall (Kamakura) does not contradict this either. In addition, the bamboo nails used to fix the different wooden parts of the Eleven-Faced Kannnon statue together (which were stored separately after the Showa-period restoration of the main hall) and the age of the cloth (hemp) covering the clothing parts of the Kannon statue both point to the 1630 restoration of the statue.
著者
遠部 慎 宮田 佳樹 小林 謙一 松崎 浩之 田嶋 正憲
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.137, pp.339-364, 2007-03

岡山県岡山市(旧灘崎町)に所在する彦崎貝塚は,縄文時代早期から晩期まで各時期にわたる遺物が出土している。特に遺跡の西側に位置する9トレンチ,東側に位置する14トレンチは調査当初から重層的に遺物が出土し,重要な地点として注目を集めていた。彦崎貝塚では土器に付着した炭化物が極めて少ないが,多量の炭化材が発掘調査で回収されていた。そこで,炭化材を中心とする年代測定を実施し,炭化材と各層の遺物との対応関係を検討した。層の堆積過程については概ね整合的な結果を得たが,大きく年代値がはずれた試料が存在した。それらについての詳細な分析を行い,基礎情報の整理を行った。特に,異常値を示した試料については,再測定や樹種などの同定を行った。結果,異常値を示した試料の多くは,サンプリング時に問題がある場合が多いことが明らかになった。特に水洗サンプルに顕著で,混入の主な原因物質は現代のものと,上層の両者が考えられる。また,混入した微細なサンプルについても,樹種同定の結果,選別が可能と考えられた。これらの検討の結果,明らかな混入サンプルは,追試実験と,考古学的層位などから,除くことが出来た。また,9トレンチと14トレンチと2つのトレンチでは堆積速度に極端な差が存在するものの,相対的な層の推移は概ね彦崎Z1式層→彦崎Z2式層→中期層→彦崎K2式層→晩期ハイガイ層となることがわかった。今後,本遺跡でみられたコンタミネーションの出現率などに留意しつつ,年代測定試料を選別していく必要がある。そういった意味で本遺跡の事例は,サンプリングを考えるうえでの重要なモデルケースとなろう。Relics from all of the periods from Earliest Jomon through to Latest Jomon have been excavated from the Hikosaki shell midden situated in Okayama City (formerly Nadasaki-cho) in Okayama Prefecture. Multiple layers of relics were excavated at the start of the survey from trench 9 located on the western side of the site and trench 14 on the eastern side of the site, which drew attention to these locations as important spots. Although extremely few pieces of carbonized material adhering to pottery were found in the Hikosaki shell midden, large quantities of carbonized wood were recovered from excavation. We undertook dating mainly of the carbonized wood and investigated the corresponding relationships between the pieces of carbonized wood and relics from each of the layers. Although the results were largely consistent in terms of the sedimentation process of the layers, there were some samples whose dates deviated considerably. We made a detailed study of these samples and sorted basic information. We repeated measurements and identified the tree types of those samples that gave abnormal readings.The results revealed that for many of the samples that yielded abnormal values there were problems at the time of sampling. This was particularly pronounced for samples that were washed in water. It is conceivable that the substances that caused this contamination were both present-day substances and the top layer. Identification of the types of wood of very small contaminated samples also showed that screening is a possible cause of this contamination. As a result of such investigations, we were able to eliminate samples that were clearly contaminated from additional testing and the archaeological succession of strata. Although there was an extreme difference in the sedimentation rates for trench 9 and trench 14, we found that the pattern of relative layer development was mainly : Hikosaki Z 1-type layer -> Hikosaki Z 2-type layer -> Middle Jomon layer -> Hikosaki K 2-type layer -> Latest Jomon Haigai layer.In the future, it will be necessary to screen samples for dating while keeping in mind the contamination rates seen at this site. In this sense, the case of the Hikosaki site will become an important model with respect to sampling.
著者
小林 謙一 坂本 稔 松崎 浩之 宮田 佳樹 坂本 稔 松崎 浩之 宮田 佳樹 遠部 慎
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

縄紋時代の居住期間、特に竪穴住居の構築・使用・廃絶の時間経過を研究する目的で福島県井出上ノ原遺跡、神奈川県相模原市大日野原遺跡の縄文時代中期集落発掘調査を行い、データをとりながら年代測定用炭化種実・炭化材・土器付着物を採取し、年代測定を両遺跡あわせて約60測定行った。他に、日本先史時代の火災住居、重複住居や盛土遺構などの年代を測定し、縄紋集落の形成期間や形成過程を明らかにした。
著者
松崎 浩之 笹 公和 堀内 一穂 横山 祐典 柴田 康行 村松 康行 本山 秀明 川村 堅二 瀬川 高弘 宮原 ひろ子 戸崎 裕貴
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

南極ドームふじアイスコア中の過去72万年にわたる宇宙線生成核種記録を加速器質量分析で分析した。特徴的な宇宙線イベント(ラシャンプ、ブレーク、アイスランドベイズン)を詳細に解析したところ、宇宙線生成核種(特にベリリウム10)の記録が、グn一バルなイベントの記録となっていることが証明された。これにより、古環境研究における、より信頼性の高い年代指標を確立する道が拓けた。