著者
埴淵 知哉 川口 慎介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.137-155, 2020 (Released:2020-04-04)
参考文献数
14
被引用文献数
5 3

近年,学術研究団体(学会)における会員数の減少が懸念されている.本稿では,日本学術会議が指定する協力学術研究団体を対象として,日本の学会組織の現状および変化を定量的に俯瞰することを試みた.集計の結果,学会のおよそ3分の2は会員数1,000人未満であり,人文社会系を中心に小規模な学会が多数を占める現状が示された.過去10年余りの間に個人会員数が減少した学会は3分の2にのぼるものの,それは理工系,中小規模,歴史の長い学会で顕著であり,医学系や大規模学会ではむしろ会員数を増加させていた.また,学会の新設に対して,解散は少数にとどまっていた.結果として,既存学会の維持および会員数の選択的な増減,そして新設学会の増加が交錯している状況が示された.そして,地理学関連学会は学術界全体の平均以上に会員減少が進んでおり,連合体や地方学会を含めてそのあり方を検討する必要性が指摘された.
著者
川口 慎介 井尻 暁 上野 雄一郎
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

『干し草の山から針を探す』という西洋の慣用句がある。困難な事業の例えだ。とはいえ、干し草に火を放てば針だけが残るだろうし、強力な磁石を用意すれば針だけを吸い付けられるだろう。つまり、干し草と針それぞれの性質を十分に把握すれば、針を発見するという目的は困難なく達成できるのだ。地殻内環境の炭化水素研究にあてはめると『干し草(熱分解起源)から針(有機合成反応起源)を探しだすためには両者の性質(同位体システマチクス)を十分に把握するのが有効だ』ということになる。本研究では干し草の性質を解明する。
著者
川口 慎介
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.79-97, 2015-06-25 (Released:2015-06-25)
参考文献数
175
被引用文献数
1

I am very honored to receive Young Scientist Award 2012 from Geochemical Society of Japan. This article overviews advance of continuous flow-isotope ratio mass spectrometry and novel isotopic tracers and then shows achievement and perspective of geochemical studies for deep-sea hydrothermal system. I regard molecular hydrogen and methane as key molecules to discuss limit of biosphere on the Earth and habitability of other planets and moons. This article propounds possibilities of geo-engineering activities and geochemical cell biology.
著者
松元 美里 野牧 秀隆 川口 慎介 古賀 夕貴 樋口 汰樹 松本 英顕 西牟田 昂 龍田 典子 上野 大介
出版者
一般社団法人 日本環境化学会
雑誌
環境化学 (ISSN:09172408)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.94-99, 2020 (Released:2020-05-26)
参考文献数
15
被引用文献数
2 5

The usage of synthetic fragrances which contained in pharmaceuticals and personal care products (PPCPs) have been increasing in Japan, and environmental discharge of those chemicals have also been increasing. This study tried to detect odor compounds in sediment core samples collected from 1,400 and 9,200 m water depths, in Sagami Bay and Izu-Bonin Trench, Japan. Odor activities in sediment core samples were detected by Gas Chromatography-Olfactometry (GC-O) which detects odor chemicals using human olfaction. It is the first report which analyzed the odor activities in deep-sea sediments. By comparing odor activities found in deeper and surface core samples, six odor compounds were tentatively defined as anthropogenic source. It is required to conduct the novel research topic of "environmental risk assessment for odor compounds". The GC-O could be useful technique to find the emerging chemicals on the research fields of environmental chemistry.
著者
矢萩 拓也 Chen Chong 川口 慎介
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4-5-6, pp.97-125, 2019-12-25 (Released:2020-01-13)
参考文献数
194
被引用文献数
1 4

深海熱水噴出域を代表とする海底下流体湧出場には,深海底環境では「ありえない」規模の高密度で生息する動物群集がある。化学合成微生物を一次生産者とするこの動物群集が「深海底に飛び石状に分布する生息域間をどのように移動しているのか」という問いは,その発見以来40年にわたって研究者を魅了し続けてきた。最も一般的な学説は,底生動物が初期発生段階(卵・幼生期)に浮遊して移動する「幼生分散説」である。本説は,ある底生個体群から海洋環境へと移出した幼生が,ときに100 km以上におよぶ長距離を移動し,他の流体湧出場に移入するという分散過程を仮定している。しかし,幼生分散過程が包含する諸要因を定量的に評価した上で,同過程の成否を検証した例はない。そこで本稿では,熱水域固有動物の幼生分散過程を「移出」「移動」「移入」の各段階に分解し,幼生分散に関連する諸要因について生物学および海水動態の観点からレビューする。また,定量的な観測やシミュレーションモデルに基づく指標数値を用いて,沖縄海域における幼生分散過程の成否を試算した例を紹介する。まとめに,幼生分散研究における難点や調査・技術的制約を挙げ,現状を打破する実験手法や発展の見込み,海洋観測を基盤とする10年規模の将来展望を示す。
著者
埴淵 知哉 川口 慎介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.137-155, 2020
被引用文献数
3

<p>近年,学術研究団体(学会)における会員数の減少が懸念されている.本稿では,日本学術会議が指定する協力学術研究団体を対象として,日本の学会組織の現状および変化を定量的に俯瞰することを試みた.集計の結果,学会のおよそ3分の2は会員数1,000人未満であり,人文社会系を中心に小規模な学会が多数を占める現状が示された.過去10年余りの間に個人会員数が減少した学会は3分の2にのぼるものの,それは理工系,中小規模,歴史の長い学会で顕著であり,医学系や大規模学会ではむしろ会員数を増加させていた.また,学会の新設に対して,解散は少数にとどまっていた.結果として,既存学会の維持および会員数の選択的な増減,そして新設学会の増加が交錯している状況が示された.そして,地理学関連学会は学術界全体の平均以上に会員減少が進んでおり,連合体や地方学会を含めてそのあり方を検討する必要性が指摘された.</p>
著者
沖野 郷子 町田 嗣樹 川口 慎介
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

地球内部の水の分布状況と循環についての理解を深めることをめざし、水の入り口として重要な海洋トランスフォーム断層(OTF)及び断裂帯において、学術研究船「白鳳丸」を用いて中央インド洋のマリーセレストOTFとアルゴOTF及び周辺海域(13°-18°S)の地球物理・化学観測を実施した.観測結果の解析により,1)OTF内の断層分布とテクトニックな発達史、2)蛇紋岩体分布可能性の有無,3)周辺も含めた海洋地殻の組成と変質過程を明らかにし,4)蛇紋岩化に伴う流体湧出を検証するためのメタンの分析が進行中である.
著者
川口 慎介
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

沿岸域の海洋表層における窒素循環を明らかにすることを目的として、5月中旬と10月中旬の二回、岩手県上閉伊郡大槌町にある東京大学海洋研究所国際沿岸海洋研究センターにおいて、大槌湾内の表層水採水および数点での鉛直採水を実施した。表層水の採取には注意深く洗浄したポリバケツを使用し、鉛直採水には1MのHClで洗浄したX型にスキン採水器を用いた。採取した試料のうち硝酸の酸素同位体分析用試料は塩化第二水銀で滅菌した上でバイアル瓶に入れて東京都中野区にある東京大学海洋研究所へ持ち帰った。同時に、硝酸の酸素同位体と同様に海洋表層の窒素循環の新たな指標として期待されている溶存還元性気体成分(水素・一酸化炭素・メタン)を分析するための試料も採取し、これらについては国際沿岸海洋研究センターに設置した自作のガスクロマトグラフを接続した還元性気体検出器で分析を行った。国際沿岸海洋研究センター前の防波堤から採取した表層海水の還元性気体成分について24時間変動を調べたところ、潮位と明確な相関を持つ変動をすることが明らかとなった。この傾向からは、湾内の海洋底が巻き上がることで生じた高濃度還元性気体成分を示す水塊の混合比が表層水の還元性気体成分濃度を支配している、と考えられた。一方で、水素濃度の上昇が窒素固定量と比例するという議論もあり、今後の詳細な解析により、還元性気体濃度と窒素循環との直接的な関係を明らかにすることを試みる必要があるだろう。
著者
渋谷 岳造 上野 雄一郎 小宮 剛 西澤 学 北島 宏輝 山本 伸次 齋藤 拓也 松井 洋平 川口 慎介 高井 研 吉田 尚弘 丸山 茂徳 ラッセル マイケル
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2015年度日本地球化学会第62回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.49, 2015 (Released:2015-09-03)

原生代前期には赤道域まで海洋が凍結したという全球凍結イベントがあったとされている。全球凍結の原因については、様々な仮説が提唱されているが、地質記録に基づく大気CO2分圧の推定からはCO2がそれ自体で地球を温暖に保つために不十分だったのかどうかが明らかになっていない。そこで、本研究では南アフリカ、トランスバール超層群のオンゲレック累層 (全球凍結時に海水中に噴出した玄武岩質安山岩) の地質調査・試料採取を行い、海洋底玄武岩の空隙を埋める熱水性石英に含まれている流体包有物の分析を行った。その結果、初生的流体包有物のCO2濃度は5.5 mmol/kg以下であることが明らかになった。また、計算の結果、大気CO2分圧は現在の約21倍以下であり、海水温を氷点温度以上に維持するのに必要なCO2分圧よりも低いと推定された。したがって、原生代前期全球凍結時の大気CO2分圧はCO2の温室効果だけで地球を温暖に保つには不十分であったことが地質記録から初めて明らかになった。
著者
土岐 知弘 大竹 翼 石橋 純一郎 松井 洋平 川口 慎介 加藤 大和 淵田 茂司 宮原 玲奈 堤 映日 中村 峻介 川喜田 竜平 宇座 大貴 上原 力 新城 竜一 野崎 達生 熊谷 英憲 前田 玲奈
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2017

<p>2016年11月16日~12月15日にかけて、SIP「海のジパング計画」の一環として沖縄トラフの伊是名海穴HAKUREIサイトにおいて、地球深部探査船「ちきゅう」を用いて海底熱水域を掘削した。掘削は、HAKUREIサイトの北部マウンドの頂上から、東側に約500 mの測線上において5本、またリファレンスサイトとしてマウンドから北西500 mほど離れた地点において1本を掘削した。採取したコアから、船上でヘッドスペースガス測定用および間隙水抽出用の試料を採取した。試料から抽出した間隙水について、船上でpH、アルカリ度、栄養塩および硫化水素濃度を、陸上で主成分および微量元素濃度、並びにホウ素同位体比を測定した。また、ガス測定用の試料については、船上で炭化水素および水素濃度を、陸上においてメタンの炭素同位体比を測定した。</p>
著者
田角 栄二 井町 寛之 高井 研 川口 慎介
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

南海トラフの深海底表層堆積物を植種源とするバッチ集積培養から分離したMethanosarcina sp. NT-MS1株を圧力培養した。増殖は15 MPaで最も良好であり、分離源と同じ圧力(25 MPa)下でも、高い増殖能を有していることが確認された。生成されたメタンは、炭素同位体比(Δ^<13>C-CH_4)が-81~-63‰の「同位体的に軽い」メタンであり、NT-MS1株は高井らにより報告されたMethanopyrus kandleri 116株のように「同位体的に重い」メタンを生成しなかった。