著者
北岡(東口) 和代
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.31-40, 2005-09-15 (Released:2012-10-29)
参考文献数
26
被引用文献数
3 4

本研究は, 精神科勤務の看護者のバーンアウトと医療事故との因果関係を検討したものである. 精神科を主とする16病院に勤務する全看護者1,684名を対象に自己記入式質問紙調査を行い, 1,295名の有効データを得た. データ収集は研究用日本版Maslach Burnout Inventory-General Survey, 臨床看護職者の仕事ストレッサー測定尺度, General Coping Questionnaire特性版, 医療事故に関する質問紙を用いて行った. 最終的に仕事ストレッサー, コーピングスタイル, バーンアウトと医療事故との関係を示した因果関係モデルが構築され, 次のことが示唆された. 仕事量の多さや患者との関係に由来する負担感や葛藤が続くと, バーンアウトの最初の現象である疲弊感が生じる. この疲弊感は, シニシズム的態度というバーンアウトの次の現象を生む. 患者に対する冷淡で無関心な態度は患者関係にうまく対応できない看護者で特にみられるが, 職場の上司や同僚関係に悩んでいる看護者もそのような態度に陥りやすくなると考えられた. 看護者のこのようなバーンアウト状態が医療事故発生を導く. 特に感情表出型のコーピングスタイルをとる看護者はバーンアウトに陥りやすく, 医療事故発生に繋がりやすい集団と考えられた.
著者
上田 貴子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.272-279, 2014-11-01 (Released:2014-11-28)
参考文献数
49

目的:本研究は看護職者の役割移行に関する文献を探究し,役割移行という概念の特徴を識別し定義することを目的とする.方法:研究方法にはRodgersの概念分析アプローチ法を用いた.データ収集にはCINAHL Plus with Full Text,MEDLINE,医中誌Webなど9つのデータベースを使用し,検索用語は「role transition」「nurse」「役割移行」とした.最終的に適切と判断された40文献を対象に分析を行った.結果:属性として7カテゴリ;【新たな領域で活動することへの意味づけ】【新たな行動様式を獲得するための取り組み】【新たな活動への期待と成功の希求】【職業的アイデンティティの模索】【情緒的反応】【困難との直面】【時間の枠組み】,先行要件として7カテゴリ,帰結として4カテゴリが抽出された.結論:看護職者の役割移行とは,看護専門職としての発達を志向する看護職者が,新たな領域での活動に意味を見出し,一定期間の活動継続を経て新たな行動様式を獲得していく過程であると定義された.
著者
高見沢 恵美子 佐藤 禮子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.41-48, 1995
被引用文献数
1

人工肛門造設患者の主観的評価に基づいたQualityof Life (QOL) を適切に測定するために, 人工肛門造設患者の日常生活行動, 人工肛門造設術の手術観, および積極的生活姿勢の尺度を開発した。<BR>第1次研究として, 人工肛門造設患者の主観を反映した尺度を作成するため, QOLに関する質問紙の内容を把握する質的研究を行い, 第2次研究として, QOLに関する質問紙の信頼性と構成概念妥当性を検討する量的研究を行った。第1次研究の結果から, 米国で開発されたQuality of Life Indexでは測定できないと考えられた2項目を加えて作成した人工肛門造設患者の日常生活行動は, 米国の報告とは因子構造が異なっていた。日本人の生活観を基盤にした研究が必要であることが示唆された。因子分析によって項目を精選した人工肛門造設患者の日常生活行動, 人工肛門造設術の手術観, および積極的生活姿勢は, 日本人患者に適用できる測定用具であると考えられた。
著者
山本 美智代
出版者
日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.37-46, 2005-06-20
被引用文献数
4

身体・知的障害のある同胞をもち,成人に達した29名のきょうだいに聞き取りを行い,きょうだいが同胞の障害をどうやって知り,どのように意味づけ,それに応じてどのように対応して成長してきたのかについてgrounded theory approachを使って分析した.その結果,きょうだいは両親のしつけの内容と,他の子どもの状況とが異なることにより,自分が障害者のきょうだいであるという認識をもち始める.また,社会の偏見を向けられた時から,同胞の障害を恥ずかしいと認識するようになり,高校生頃より同胞の障害について納得のいく意味を探し始める.そして,20歳前後で障害の意味づけや,その意味づけにより自分がとる行動「自分のシナリオ」を作成し,同胞への介護を行い,同胞とよい関係を築くようになる.しかし,中には同胞の障害を恥ずかしいと認識しなかったきょうだいや,納得のいく意味を探さなかったきょうだいもいた.Interviews were conducted with 29 adult siblings of the handicapped and the mentally retarded. They were analyzed using a grounded theory approach to investigate how these siblings learn about, assign meaning to, and cope with their brothers' or sisters' disability and how the situation affected their own personal development. The results suggest that the siblings first realized there brothers or sisters were disabled when they perceived the distinction between how their parents treated them and what the situation was like for other children. When faced with social prejudices, they became embarrassed and more aware of their brother or sister's disability, and from about high school they began to truly understand what it meant. As a result, at around the age of twenty they could understand the disability better and adopted appropriate behavior based on their own situation ; a situation in which they provided care and built strong relationships with their siblings. However, there were some did not think of their disabled siblings as shameful or did not try to better understand the situation.
著者
伊藤 祐紀子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.3_50-3_60, 2011-09-20 (Released:2011-10-25)
参考文献数
15

患者への気がかりをもとに看護していくプロセスを看護師の身体のあり様に着目して探究することを研究目的とした.修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチにより,看護師32名の半構成的面接データを分析した.結果として,36概念,8サブカテゴリー,5カテゴリーが生成された.看護師は,患者に抱いた気がかりをもとに【身体感覚からの察知】に【持ち前の判断と手立ての駆使】によって,患者に生じている変化を看護師の【内に取り込んでわかる】ようになる.ここから,2つのプロセスが生じていた.わかることで患者に馴染むことで【押し出される行為】に至るプロセスと,わかることから新たなわからなさが明らかになり,それを探索し続けるプロセスである.これらは同時に進行し,【関わりから得た手ごたえと方向性のリレー】によって帰結していた.この帰結は,次に関わる患者との相互作用の基軸になっていた.
著者
上野 栄一
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.47-55, 2005-06-20 (Released:2012-10-29)
参考文献数
26
被引用文献数
4 7

本研究では, 看護師における患者とのコミュニケーションスキルを測定するための尺度を開発することを目的とした. 54の質問項目を作成後, 看護職 368 名を対象に調査を行い, 有効回答の得られた 355 名に対して分析を実施し, 質問紙の信頼性, 妥当性を検証した. その結果, 最初の質問項目数は 54 項目であったが, 内容妥当性, 相関係数, 共通性の値の検討により精選された質問紙原案 19 項目について因子分析を行った. その結果, 第1因子「情報収集」, 第2因子「話のスムーズさ」, 第3因子「積極的傾聴」, 第4因子「パーソナルスペース・視線交差」, 第5因子「アサーション」の5つの因子が抽出された. 信頼性の検討では, 全体での Cronbach のα係数は0.874と内的整合性の高い値を示し, 本尺度が信頼性の高いものであることが検証された. また, 併存妥当性の検討では, 本尺度と KiSS-18 との間には, 高い有意な相関を示し, 妥当性の高い尺度であることが証明された.以上の結果から, 本尺度は高い信頼性と妥当性のあることが示された.
著者
杉本 知子 亀井 智子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.4_14-23, 2011-12-20 (Released:2012-01-21)
参考文献数
17
被引用文献数
1 4

目的:介護保険施設に勤務する医療・福祉職のチームアプローチ実践の自己評価を行うITA評価尺度を開発し,信頼性と妥当性を検討する.方法:Interdisciplinary teamの概念分析の結果と医療・福祉職から収集した意見を基に尺度原案(40項目)を作成し,24ヵ所の介護老人保健施設のスタッフ904名を対象に自記式質問紙調査を行った.信頼性,妥当性の検討はCronbach α,再テスト法,因子分析等により行った.結果:401票が回収され(有効回答率44.4%),因子分析から本尺度は〈組織構造の柔軟さ〉〈ケアのプロセスと実践度〉〈メンバーの凝集性と能力〉の3因子構造(全32項目),モデルの適合度はGFI等が0.9以上を示した.尺度全体のCronbach αは0.9以上,再テスト法による信頼性係数は全項目で0.4以上であった.結論:ITA評価尺度は,介護保険施設スタッフのチームアプローチ実践を把握可能な信頼性と妥当性のある尺度であると示唆された.
著者
前田 惠利 中本 幸子 池田 匡 西村 直子 芦立 典子 平松 喜美子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.2_34-2_41, 2011-06-20 (Released:2011-07-15)
参考文献数
32

目的:高齢の在宅療養者を対象に,経口摂取群者と非経口摂取群者の口腔内衛生状態について検討した.方法:在宅療養中の65歳以上の高齢者56名を対象として,滅菌綿棒による口腔内擦掻により口腔内微生物を採取し,Staphylococcus aureus,Pseudomonas aeruginosaおよびCandida albicansを定量的に測定した.結果:P. aeruginosaは経口摂取者からは全く検出されなかったが,非経口摂取者において検出率(64.7%),総菌数(中央値2.0×10 CFUs/ml,範囲0~1.5×104 CFUs/ml)ともに有意に多かった(p<.001).S. aureus,C. albicansは検出率,総菌数ともにいずれも有意差はみられなかった.結論:高齢の在宅療養者においては,経口摂取者に比較して非経口摂取者の口腔内の衛生状態はより不良で,肺炎のハイリスク群であることが示唆された.
著者
半田 美織 日下 和代 叶谷 由佳 佐藤 千史
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.20-30, 2004-01-13
被引用文献数
5 1

本研究はデイケアに通所中の精神障害者59名を対象とし, アンケートと面接調査, 参与観察により主観的QOLや影響要因を分析することによって, 障害者の抱える問題を明確化し, デイケアにおける援助について検討することを目的とした.<BR>その結果, 以下のことが明らかになった. (1) 入院経験のある人はない人に比べて生活満足度が低かった. (2) 疾患によって心理的機能の満足度が異なる. (3) 同居者や相談相手がいる人, 相談相手に家族やクリニック以外の友人が含まれている人の生活満足度が高かった. (4) 食事を週1回以上は自分で作る人は心理的機能領域で, 家族が食事を作ってくれる人は身体的機能領域で満足度が高かった. (5) 障害受容の満足度は全体的に低く, その満足度が高い人は生活満足度が高かった. これらから, 対人関係や自尊心, 自己認知概念などの要因は生活満足度への影響が大きく, これらの要素に対する援助の重要性が示唆された.