著者
永見 悠加里 藤﨑 万裕 野口 麻衣子 山本 則子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.122-131, 2021 (Released:2021-08-12)
参考文献数
38

目的:移動に対する負担感および管理者のサポートと訪問看護師の就業継続意向の関連を明らかにする.方法:訪問看護管理者と訪問看護師に対し自記式質問紙調査を行い,就業継続意向を従属変数とするマルチレベル二項ロジスティック回帰分析を行った.結果:管理者38名,看護師221名から有効回答を得た.就業継続意向がある者は151名(68.3%)であった.負担感は,非効率な訪問スケジュール(OR = 0.41, 95%CI: 0.22~0.78),管理者のサポートは,移動しやすい道のりの共有(OR = 2.49, 95%CI: 1.20~5.17),訪問間隔の確保(OR = 2.72, 95%CI: 1.19~6.21),移動時間の目安の提示(OR = 0.43, 95%CI: 0.21~0.92)が就業継続意向と関連した.結論:移動に関する直接的な支援が就業継続支援に有用であることが示唆された.
著者
犬塚 裕樹 藤丸 清佳
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.567-572, 2021 (Released:2022-01-18)
参考文献数
11

目的:看護提供方式としてのパートナーシップ・ナーシング・システム(PNS)の看護特性を数理モデルによって定量的に評価した.方法:確率過程の数理モデルを使い,看護提供の受付け口数の違いが患者の看護待ち行列数に及ぼす効果を調べた.さらにベテランナースと新人ナースがペアを組み看護ケアを分担する場合の看護ケア効率を調べた.結果:看護待ち行列の平均人数は,看護提供の受付け口数が2から1に半減すると,トラフィック密度に依存し,およそ10倍に増え,患者に厳しい負担を与えることになった.さらに,ベテランナースと新人ナースが看護ケアを分担すると,単独で行う場合に比べ,看護ケア効率が落ちた.結論:PNSの2つの構造的特性は,ナースが単独での看護提供に比較して不利な結果となった.PNSが患者に,より安全で質の高い看護サービスを効率よく提供するためには,ナース間で高度なコミュニケーションを図り,互いを補完し協働することが必要である可能性が残された.
著者
川島 徹治 川上 明希 蘆田 薫 田中 真琴
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.763-771, 2021 (Released:2022-03-02)
参考文献数
30

目的:集中治療領域での終末期患者とその家族に対するインフォームドコンセント(Informed Consent: IC)における看護実践の実施程度に関連する要因を明らかにすること.方法:集中治療領域で働く看護師(96病院955名)を対象に集中治療領域での終末期患者とその家族に対するICにおける看護実践尺度の得点に関連する要因を重回帰分析にて検討した.結果:尺度合計得点が高いことと有意な関連を示したのは,研修参加経験有(β = .098, p = .010),学生時の学習歴有(β = .103, p = .006),他者への相談頻度が高い(β = –.214~–.034, p < .001),最終学歴(β = .057~.063, p = .010),診療体制:セミクローズド(β = .093, p = .023),フリー看護師がいる頻度が高い(β = –.044~–.141, p = .021),看護提供方式:パートナーシップ(β = .095, p = .007)であった.結論:ICでの看護実践の充実には,問題対処への積極的な姿勢や学習経験,看護提供体制の重要性が示唆された.
著者
青木 裕見 木下 康仁 瀬戸屋 希 岩本 操 船越 明子 武用 百子 松枝 美智子 片岡 三佳 安保 寛明 萱間 真美
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.21-30, 2022 (Released:2022-06-22)
参考文献数
14

目的:COVID-19パンデミックに対応した福祉施設管理者の体験を明らかにすることを目的とした.方法:7施設の福祉施設管理者8名を対象に半構造化面接を実施し,質的記述的分析を行った.結果:36のカテゴリと109のサブカテゴリが抽出された.研究参加者は,人的・物的な医療資源のない自施設で未曽有の感染症に果敢に対処していた.不安・緊張を抱える中,組織内のスタッフと情報共有を密にし,勤務体制の再編成を行い,支援の優先度を見極めつつ障害特性に応じた対応を工夫しながら,本人・家族への支援を続けていた.そこでは,従前からの組織内の関係性や対策,さらに一般社会との相互作用も影響しており,とくに地域の医療との協力は必須であった.結論:緊急時でも支援を継続させるためには,平時から組織内で情報共有を密にし,業務の優先順位を整理しておくことが重要であると示唆された.またパンデミックを乗り越えるには医療との協働は不可欠であり,看護支援のニーズが高いことが示唆された.
著者
渡邉 久美 國方 弘子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.263-271, 2014-12-01 (Released:2015-02-10)
参考文献数
17
被引用文献数
3

本研究は,自尊心回復グループ認知行動看護療法プログラムに参加した地域で生活する精神障害者の自己概念の変容過程を明らかにした.対象はプログラム参加者10名であり,半構造面接により過去,現在,未来の流れで自己概念を尋ね,逐語録をM-GTAにより質的帰納的に分析した.その結果,《自己の殻からの心の孵化》をコアカテゴリーとする8カテゴリーが抽出された.発症後に知覚されていた【渦の中での停まり】【価値のない自分】は,【理解者による緊張緩和】を経て,【生活習慣への自負】【人に煩わされない感覚】へと変化していた.そして【新生した自分】の実感が,現在の【充実した生の体感】を導き,未来の自己に向かい【理想像の描写】を見出していた.発症後の否定的な自己概念は,理解者との出会いを契機に肯定的に変容していたことから,同じ体験を有する当事者や疾患を解する人々による安心できる雰囲気のなかで,ありのままの自己を語り,受け入れられる場の必要性が示された.
著者
田中 浩二 長谷川 雅美
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.3_53-62, 2012-09-20 (Released:2012-10-16)
参考文献数
20

目的:うつ病高齢者の生活世界に根ざした体験を明らかにし,抑うつを緩和するための看護への示唆を得ることである.方法:うつ病と診断され精神科治療を受けている65歳以上の高齢者11名を対象に,非構成的面接を行い,Giorgiの科学的現象学的方法で分析した.結果:6つのテーマが導き出された.うつ病高齢者は,過去の【負の記憶の重み】を抱えながら現在を生きており,さらに【老いによる喪失の重み】【抑うつを伴う身体症状からの脅かし】【他者との相互作用から起こる自己の存在価値の低下と孤独】という老いを生きることに基づく苦しみを体験することで抑うつを深めていた.これらの体験は全て【死の強い意識化】につながっており,それによってさらに抑うつが増強するという悪循環が生じていた.一方では,他者や世界とのつながりが実感できることで【生きる力の再生】を体験し,抑うつを緩和することができていた.結論:うつ病高齢者の体験の基盤には,死にふれて生きることや人としての尊厳が脅かされやすいことへの苦悩があることが考えられた.看護師は,うつ病高齢者が抑うつを抱えながらも【生きる力を再生】できるように働きかけることが重要である.
著者
大友 光恵 麻原 きよみ
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.1_3-1_11, 2013-03-20 (Released:2013-04-09)
参考文献数
20
被引用文献数
1

本研究は,虐待予防のために母子の継続支援を行う助産師と保健師の連携システムの構造を記述することを目的とした質的記述的研究である.結果,連携の目的は,妊娠期から育児期を通して【母子へ継続した安心を提供する】ことであった.方法は,個別対応の【助産師と保健師の双方が母親と信頼関係をつくる】,組織内・外の【関係職種が支援の必要な母子を漏らさない網目をつくる】二重の支援であり,媒体となるのは【日常的な口頭のやりとりで情報を生かす】ことであった.連携の条件は,助産師と保健師が【虐待予防のために協力する意識を高める】,【互いを信じて支え合う】ことであった.虐待予防には,母親と専門職の関係を継続させることや文書だけではない情報の交換が重要であり,助産師と保健師の信頼関係があることで実践できていた.このことから虐待予防システムに関わる専門職の信頼関係を構築する必要性が示唆された.
著者
成田 太一 小林 恵子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.205-213, 2020 (Released:2020-11-06)
参考文献数
24
被引用文献数
2

目的:長期入院を経験し精神科デイケアを利用する男性統合失調症者が,地域においてどのように生活を再構築しているのか,当事者の視点からその特徴を明らかにし支援への示唆を得る.方法:男性統合失調症者9人を対象とし,参加観察やインタビューから得られたデータから退院後の生活の再構築についての語りを抽出し,分析した.結果:対象者は,【長期入院によるつながりの喪失】を経験し,退院後は馴染みのない【新たなコミュニティのメンバーシップを得ることの難しさ】から寂しさを感じていた.そのようななか,専門職や親族などからの【サポートの活用による病状や生活の維持】を図りながら,【地域におけるデイケアメンバーとのつながりと役割の獲得】により,生活を再構築していた.結論:長期入院を経験した男性統合失調症者が地域の中で孤立せず社会参加できるよう,当事者コミュニティと地域コミュニティとの関係づくりを強化することや,入院早期からの就労支援と地域における活動の機会の必要性が示唆された.
著者
今野 浩之 大森 純子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.772-779, 2021 (Released:2022-03-02)
参考文献数
35

本研究は,地域で生活を継続する統合失調症を持つ者の回復とはどのような経験であるかを明らかにすることを目的とした.Giorgiが提唱する現象学的アプローチを参考に,統合失調症を持つ者5名を対象に分析した.結果,統合失調症を持つ者の回復の経験とは『他者の理解の中だけにある未知の自分の存在を認知する』であり,未知の自分に対し,過去から現在までの連続の中で自分が認識できている既知の自分を見定めながら『未知の自分と既知の自分を共存させる』ことであった.未知の自分と既知の自分を共存させ続けるためには『既知の自分を維持・強化し続ける』ことが必要であった.統合失調症を持つ者の回復の経験は,未知の自分とそれに対応する既知の自分との因縁の不可分な関係によって生じ続け,今も持続的に経験されていた.既知の自分を蓄積することは,自己同一性の再構築であると考えられ,今も継続しているものであると推察された.
著者
亀井 智子 西川 浩昭 柳井 晴夫
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.2_3-2_11, 2013-06-20 (Released:2013-07-04)
参考文献数
18

【目的】看護系大学共用試験(CBT)用に作成した老年看護学の出題90項目を古典的テスト理論(CTT),および項目反応理論(IRT)を用い正答率,および項目識別度,項目困難度などの特性によりメタ評価した.【対象と方法】便宜的標本抽出により国公私立看護系23大学の臨地実習前の3年次生730名を対象として,紙筆試験を実施した.分析は正答率,IT双列相関,項目困難度(2PL model),項目識別度,因子負荷量を求め,項目特性曲線等を描いてすべての項目特性を評価した.【結果】老年看護学の平均正答率は65.8~69.3%で,他科目との相関は薬理学r=0.30~0.41, 解剖学・病理学r=0.28~0.38であった(p<0.01).項目困難度(-5.851~4.068),および項目識別度(0.292~2.218)とも幅が広かった.情報量曲線により各項目の特性が示された.90項目中3 項目の項目識別度が低かった.【結論】90項目の問題中87項目はCBTでの利用が可能と考えられた.しかし,このうち71.1%は項目困難度が負の易しい問題であったため,能力水準の高いレベルの受検者の識別に課題が残った.
著者
香川 里美 名越 民江 粟納 由記子 松岡 美奈子 南 妙子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.1_61-1_70, 2013-03-20 (Released:2013-04-09)
参考文献数
20

目的:本研究では,熟練看護師が長期入院統合失調症患者に対し,退院を意識して患者に関わり始めた時期から退院支援が終了するまでの,看護実践のプロセスを明らかにすることを目的とした.方法:研究協力者13名を対象に半構成的面接を行い,質的帰納的分析を行った.結果:本研究で見出されたカテゴリーは,《患者を捉え直すことで見えてきた退院可能性》【心の奥底にある退院への希望を引き出す】【退院支援に消極的な主治医との意思統一】【退院に賛同できない家族の心情と背景を理解する】【プライマリーナースが主体となるネットワークの構築】【安心を提供するプライマリーナースの役割遂行】【1対1の関わりから自信を持たせる】の7カテゴリーであった.《患者を捉え直すことで見えてきた退院可能性》は他のすべてのカテゴリーに影響を与える中心的現象と考えられ,本研究のコアカテゴリーに位置づけられた.結論:長期入院統合失調症患者の退院支援に関する看護実践のプロセスには,継続的に患者を捉え直しながら可能性を広げる柔軟な臨床判断と,失いつつある希望を引き出し,わずかな変化にも即応できる看護介入が必要である.
著者
大森 圭美 森 千鶴
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.3_25-34, 2012-09-20 (Released:2012-10-16)
参考文献数
29

目的:統合失調症者の病気の認識に影響する要因間の関連を明らかにすることを目的とした.方法:入院中の統合失調症者に対面形式での質問紙調査を行った.各要因の関連はスピアマンの相関係数を用い,「自己の疾病についての意識」を従属変数として重回帰分析(変数減少法)を行った.結果:対象者104名のうち63名から有効回答を得た.病気の自覚尺度と「自己の疾病についての意識」において「自己内省性」と関連が認められた.また,精神疾患の自覚の程度により病気の認識,自尊感情,精神障害者観の関連が異なることが認められた.「自己の疾病についての意識」を従属変数とした重回帰分析では「陰性尺度」「自己内省性因子」「自己確信性因子」「自尊感情尺度」,精神障害者観因子「能力」で構成されるモデルを得た.結論:統合失調症者の病識の認識向上の支援には現実的認知の促進,精神障害者観と自己価値の改善の必要性が示唆された.
著者
上星 浩子 岡 美智代 高橋 さつき 恩幣 宏美 原 元子 村瀬 智恵美 茶円 美保 宮下 美子 柿本 なおみ
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1_21-29, 2012-03-20 (Released:2012-03-30)
参考文献数
25
被引用文献数
3 3

目的:慢性腎臓病(CKD)対象者に非盲検ランダム化比較試験におけるEASEプログラムを実施し,血圧,血圧測定実施率およびセルフマネジメント行動や自己効力感が向上するかどうかを検証した.方法:介入群(n=19)はEASEプログラムを12週間実施し,対照群(n=12)は従来の教育を実施した.介入の効果指標は,4週ごとの平均血圧値および血圧測定実施率,セルフマネジメント行動,自己効力感である.結果:2群間における効果指標に有意差は認められなかったが,介入群のセルフマネジメント行動は介入前後で有意に向上した.自己効力感の中央値は介入群で上昇し,対照群は低下した.血圧測定実施率は両群とも1~4週に比べ,9~12週が有意に低下した.とくに対照群における測定実施率の低下は大きかった.結論:ランダム化比較試験の結果,効果指標に有意差は認められなかった.しかし介入群のセルフマネジメント行動は向上した.よってEASEプログラムはセルフマネジメント行動に効果があることが示された.
著者
郡 ハルミ
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.520-526, 2021 (Released:2021-12-24)
参考文献数
17

目的:立位バランスに必要な足底部の皮膚感覚と足趾力を高めるためのフットマッサージを介護予防の必要な在宅高齢者に行い,効果について検討した.方法:デイサービスを利用する在宅高齢者11名に,フットマッサージを週2回,2ヵ月間行った.皮膚感覚はモノフィラメント,足趾力は足趾力測定器を用い,立位バランスは開眼片足立ち時間を測定し,前後比較分析を行った.結果:2か月間で皮膚感覚は91%以上の閾値が低下し(p < 0.05),足趾力は全員が向上した(p < 0.05).開眼片足立ち時間も82%が延長した(p < 0.05).フットマッサージの揉みほぐしで感覚受容器の情報入力が改善し,足趾運動で足趾筋力が強化したことや,開眼片足立ち時間の延長によって立位バランスの改善が示唆された.結論:介護予防の必要な在宅高齢者の転倒予防支援として,フットマッサージは有効となる可能性がある.
著者
矢野 真理 小林 裕美
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.431-440, 2021 (Released:2021-11-20)
参考文献数
22

目的:本研究は,エンド・オブ・ライフケアにおける超高齢者の療養場所選択に対する意思決定支援を行うために,急性期病院の熟練看護師が超高齢者と家族の意思をどのようにくみ取り,意思決定支援を実践しているかについての構造を明らかにする.方法:研究参加者10名に半構造化面接を行い質的統合法(KJ法)にて分析した.結果:熟練看護師は,【超高齢者への理解の追求】と【家族への理解の追求】の両面から【療養場所決定の中にある本人の尊厳】を尊重していた.さらに,【超高齢者側から見た最適医療】のために超高齢者の価値観や体験の理解をし,【医療者側から見た最適医療】を見定める調整をして【病院医療依存の中にある本人の尊厳】を守り【希望療養場所の実現可能性支援】を行っている構造が明らかとなった.結論:熟練看護師は,超高齢者の尊厳の追求を中心に据え,超高齢者医療のあり方への挑戦を実践していることが示唆された.
著者
柿沼 直美 飯田 苗恵 大澤 真奈美 原 美弥子 齋藤 基
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.1-9, 2015-04-27 (Released:2015-06-02)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

目的:訪問看護ステーションにおける安定的な経営管理のために,管理者が活用可能な自己評価尺度を開発する.方法:尺度の開発は,①概念枠組みの明確化,②尺度の原案は先行研究および研究者の経験に基づき作成,③専門家会議およびパイロットスタディによる内容的妥当性の検討,④全国の管理者を対象とした本調査の実施およびデータの項目分析,尺度の信頼性・妥当性の検討とした.結果:検討の結果,7下位尺度25項目からなる尺度が完成した.尺度のクロンバックα係数は,0.897であり,内的整合性を確保していた.因子分析により抽出された7因子は,【第1因子:意思疎通がよく,働きやすい職場環境の形成】【第2因子:資金の管理】【第3因子:サービスの拡充】【第4因子:収支のモニタリング】【第5因子:生産性の向上】【第6因子:看護の質保証】【第7因子:市場調査】であった.結論:本尺度は,管理者の経営管理に対する自己評価を促し,安定的な経営管理のために活用可能である.
著者
福山 智子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.161-169, 2017 (Released:2017-11-14)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

目的:Oremのセルフケア理論を基盤として,若年女性が痛みの程度と緩和の必要性に応じて,意図的に有効な対処法を実施することで,月経痛のコントロールを目指した教育プログラムを開発し評価することである.方法:8大学を教育プログラムを実施する介入群としない対照群に非ランダムに割り付け,アウトカムについて教育プログラム前後で量的に測定した.アウトカムは月経痛の対応についての考え方,月経痛の知識,月経痛レベル,月経随伴症状,日常生活行動の支障,社会生活への影響,月経痛コントロールの7項目である.結果:介入群はセッションに参加し全質問紙に回答した49名(45.4%)を,対照群は全質問紙に回答した58名(57.4%)を分析した.介入群は対照群と比較して,有意に月経痛に対処しようという考え方に変化し,月経痛の正しい知識が増え,月経痛レベルと月経随伴症状が軽減し,月経痛コントロールができた.結論:本プログラムは,若年女性が意図的に月経痛をコントロールするために効果的である可能性が示唆された.