著者
勝又 里織
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.37-45, 2018 (Released:2018-08-02)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

目的:本研究は,人工妊娠中絶の看護において共通する行動パターンやルールを記述することを目的とした.方法:エスノグラフィーを用いた.一産婦人科診療所での約1年間の参加観察によるフィールドノーツと,15名の看護師へのインタビューからデータを収集し,初期中絶時の看護に共通する行動パターンとルールを分析し,記述した.結果:〈女性自身の迷いを感じる〉,〈周囲からの圧力を疑う〉,〈女性の判断能力を危ぶむ〉場合は,【女性の意思決定を疑う】.そうでない限り,看護師は『関わらない看護』をする.『関わらない看護』は,【滞りなく進める】ことおよび【嫌な思いをさせない】ことが共通する行動パターンとなっていた.看護師は,〈予定通りに〉,〈事務的に進め〉,女性と〈距離をおく〉,〈責めない〉,〈傷つけない〉,〈立ち入らない〉,〈深入りしない〉,〈人目を避ける〉,〈身体の不快や苦痛を感じ取る〉といった看護を提供していた.
著者
須釜 淳子 石橋 みゆき 大田 えりか 鎌倉 やよい 才藤 栄一 真田 弘美 中山 健夫 野村 岳志 山田 雅子 仲上 豪二朗 佐藤 直子 柴田 斉子 長谷 剛志 深田 順子 三鬼 達人 有田 弥棋子 浦井 珠恵 大川 洋平 北村 言 臺 美佐子 高橋 聡明 玉井 奈緒 飛田 伊都子 野口 博史 松本 勝 三浦 由佳 向井 加奈恵 麦田 裕子 吉田 美香子 倉智 雅子 白坂 誉子 山根 由起子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.790-810, 2022 (Released:2023-03-10)
参考文献数
58

目的:本資料は,日本看護科学学会より公開した「看護ケアのための摂食嚥下時の誤嚥・咽頭残留アセスメントに関する診療ガイドライン」の要約版である.方法:本診療ガイドラインは,「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017」に従い,研究エビデンスと益と害のバランス,患者の価値観などに基づき作成された.結果:身体診査技術を用いた系統的アセスメント,反復唾液嚥下テスト,改訂水飲みテスト,フードテスト,頸部聴診法,超音波診断装置による嚥下観察,内視鏡による嚥下観察に関するクリニカルクエスチョンをもとに,10の推奨が作成された.8つの推奨はGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)2Cとして評価され,残りの2つはGRADEなしとして評価された.結論:看護ケアのためのアセスメントに焦点を当て,最新の知見を盛り込んだ信頼性の高い診療ガイドラインが作成された.本資料は要約版であり,臨床実践への活用が期待される.
著者
亀井 智子 山本 由子 梶井 文子 中山 優季 亀井 延明
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.2_24-2_33, 2011-06-20 (Released:2011-07-15)
参考文献数
28
被引用文献数
11 9

目的:COPD HOT実施者を対象として,在宅モニタリングに基づくテレナーシング(TN)を3ヵ月間提供し,急性増悪(primary outcome),および再入院(secondary outcome)をエンドポイントとして,ランダム化比較試験により効果を検討した.方法:対象は,COPD HOT実施者37名を介入群20名(平均年齢76.0歳),対照群17名(77.7歳)に無作為に割り付けた.方法は,介入群には毎日TNを提供し,対照群は従来の診療のみとした.結果:対象特性として,介入群の介入直前の在院日数は対照群よりも有意に長かった.介入群はTNにより急性増悪発症者が32.9%減少した.また,発症までの日数は有意に長く,介入前・中一人当たり急性増悪発症回数は介入群のみ有意に減少した.再入院割合は3.5%減少したが有意差はなく,介入前・中一人当たりの再入院回数は介入群のみ有意に減少した.生存分析(Kaplan–Meier法)では,急性増悪について両群間に有意差が認められた.結論:在宅モニタリングに基づくTNはCOPD HOT実施者の急性増悪発症予防,および発症回数を低下させる可能性があると示唆された.
著者
大山 裕美子 前田 留美 丸 光惠
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.38-42, 2015-04-03 (Released:2015-05-02)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

自己決定型学習とは,自らの学習ニード把握から適切な学習方法の実施・評価まで個人が学習のイニシアチブを取る一連のプロセスを指し,成人の学習や高等教育の場面で求められる学習姿勢である.自己決定型学習準備性とは,そのために求められる個人特性や態度等をその人がどれだけ持っているのかの程度である.看護学の成人学習者の自己決定型学習準備性の測定にはFisherらが開発したSelf-Directed Learning Readiness Scale for Nursing Education(SDLRSNE)を用いることができ,また様々な国・職種を対象に翻訳がされているため国際的な比較も可能である.本研究の目的は,本尺度を翻訳し日本語版SDLRSNEを開発することである.日本語版SDLRSNEの作成は開発者であるFisher氏の許可を得た上で,順翻訳,逆翻訳,ウェブ調査によるパイロットテストの順で実施した.その結果,表面妥当性のある日本語版SDLRSNEが完成した.本尺度は看護学の成人学習者を対象にした教育の方法の検討やその効果を測定する際に活用することができると考えられる.今後,信頼性・妥当性を検証し結果を報告していく予定である.
著者
水戸 優子 小山 眞理子 片平 伸子 山口 由子 川守田 千秋 植村 由美子 野崎 真奈美 鶴田 惠子 手島 恵
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.3_21-3_31, 2011-09-20 (Released:2011-10-25)
参考文献数
19
被引用文献数
3 1

目的:教育と臨床の専門家が合意する看護基礎教育卒業時の看護技術の到達目標と到達度を明らかにする.方法:デルファイ法により,看護の教育者91名および看護実践者98名の専門家の協力を得て158項目の看護技術の到達目標に関する質問紙調査を3回実施した.結果:到達目標は143項目に絞られ,うち138項目は教育者・看護実践者合わせて80%以上の同意率,残り5項目も74~79%であり,ほぼ合意が得られた.それらは,到達度Ⅰ(ひとりで実施できる)が33項目,到達度Ⅱ(指導のもとで実施できる)が53項目であり,日常生活行動援助の看護技術が多く含まれた.また到達度Ⅲ(学内演習で実施できる)が20項目,到達度Ⅳ(知識としてわかる)が37項目であり診療に伴う看護技術が多く含まれた.結論:明らかになった到達目標と到達度は,看護基礎教育と継続教育のギャップを埋め,看護技術教育の充実をはかる上で有用な基礎資料になると考える.
著者
竹下 悠子 山川 みやえ 内海 桃絵
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.234-240, 2021 (Released:2021-10-06)
参考文献数
17
被引用文献数
1

目的:手指衛生教育用にバーチャルリアリティ(VR)を開発し,教育への使用可能性について2次元映像と比較した.方法:看護師を対象に非無作為化比較試験を行った.VR群と2次元映像群に分け映像視聴と講義を行った.映像の評価は視聴直後に,手指衛生のタイミングは視聴前後,1か月後に調査した.結果:VR群と2次元映像群の比較では,映像の5件法の評価(中央値)は手指衛生の重要性が理解できた(5.0, 4.0 p = .024),実践を想起した(5.0, 4.0 p = .008),学習方法は効果的だった(5.0, 4.0 p = .046)であった.タイミングの「患者周囲の環境に触れた後」と記述できた割合はVR群で視聴前30%に比べ視聴後90%(p = .040),1か月後60%(p = .233)であった.2次元映像群では視聴前20%に比べ視聴後80%(p = .040),1か月後80%(p = .004)であった.結論:VR群では重要性の理解,実践の想起,学習の効果の評価が高かった.VRは手指衛生教育に使用可能と考える.
著者
江口 実希 國方 弘子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.160-165, 2021 (Released:2021-09-10)
参考文献数
39

目的:反すうの概念を分析し,その構造を明らかにすることにより看護実践における有用性を検討することである.方法:91文献を対象として,Rodgersの概念分析アプローチを用いて分析した.結果:属性には1カテゴリー【思考の制御困難】が得られた.先行要件には5カテゴリー,帰結には3カテゴリーが得られた.結論:反すうは,【精神的苦痛】や【ストレス負荷】,【客観視の不足】,【注意の調節困難】,【生物学的特徴】によってもたらされる【思考の制御困難】であり,その結果【精神的健康の悪化】,【身体的健康の悪化】,【ストレスの増悪または立ち直り】が生じる.反すうの概念を看護実践に用いることは,既存の看護実践に新しい視点をもたらすことに貢献する.
著者
及川 江利奈 栗林 一人 栗原 淳子 高野 歩
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.811-818, 2022 (Released:2023-03-10)
参考文献数
24

目的:精神科における看護師から患者への暴力と虐待に関する文献を包括的にレビューし,その特徴と要因を明らかにする.方法:PRISMA-ScRに基づき,スコーピングレビューを実施した.文献検索には,PubMed,CINAHL,医学中央雑誌を用いた.文献選定の包含基準は,(1)精神科病棟や外来における看護師から患者への暴力,虐待行為に関する論文,(2)英語または日本語で書かれた論文とした.結果:最終的に,12件の文献がレビュー対象となった.暴力や虐待の内容は,暴行,暴言,無視,身体拘束に関する内容であった.暴力や虐待の要因に関する内容は,自分の行為は,ケアであって暴力ではないという思い込み,精神科における閉鎖的な治療環境に関する内容であった.結論:本研究結果から,精神科における看護師から患者への暴力,虐待の特徴や要因には,閉鎖性,密室性,強制性という精神科医療における構造的問題があることが示唆された.
著者
澤田 いずみ 道信 良子 石川 幸代 小川 賢一 原田 瞳
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.652-660, 2022 (Released:2023-02-16)
参考文献数
42

目的:日本の医療分野で健康問題を抱える人へ実践されている応援の概念分析を行い,定義を明らかにする.方法:国内文献29件を対象にRodgersの概念分析を行った.結果:前提要件3つ,属性4つ,帰結4つのサブカテゴリーから,各一つの【カテゴリー】が抽出され,医療分野の応援は,生き方の模索が続く健康問題を抱える人への【自分らしくあることの困難性への共感】に基づいて,医療者が【その人が自分らしく生きるために味方になり新たな活動を試みる】ことで【その人の主体性の高まりに医療者としての自分らしさが充実していく】過程であった.味方になるとは,医療情報を分かりやすく伝えること,対象者と願いを共に考え支えること,対象者の思いを代弁し共感を周囲に波及させ仲間を作ることにより,その人らしさを支えることだった.結論:医療分野での応援は,対象者のその人らしさを大切にしたい医療者の新たな活動の創出を助ける概念と考えられた.
著者
渡邊 龍之介 木田 亮平 武村 雪絵
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.63-71, 2022 (Released:2022-08-11)
参考文献数
22
被引用文献数
2

目的:看護職の労働条件,相対的に偏りのある勤務割り振り(以下,相対的偏り)や勤務日・休暇のコントロール感不足(以下,コントロール感不足)とバーンアウトや身体愁訴との関連を検証する.方法:2020年1~2月,交代制勤務に従事する看護職を対象にweb調査を行った.バーンアウトの下位尺度(情緒的消耗感,脱人格化,個人的達成感)と身体愁訴を従属変数とし,基本属性,労働状況,相対的偏りおよびコントロール感不足を順に投入する階層的重回帰分析を行った.結果:分析対象者は394名だった.階層的重回帰分析の結果,最終モデルでは労働状況には統計学的有意差を認めず,相対的偏りは情緒的消耗感と脱人格化に,勤務日や休暇の見通しのなさは情緒的消耗感に,急な休暇取得のしにくさは脱人格化と身体愁訴に関連した.結論:交代制勤務に従事する看護職にとっては労働状況よりも相対的偏りやコントロール感不足と心身のストレスとの関連が明らかになった.
著者
大西 奈保子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.225-234, 2015-01-25 (Released:2016-02-09)
参考文献数
20
被引用文献数
3

家族が在宅で患者を看取れるように支援することは,がん患者の在宅ケアには不可欠である.そこで,がん患者を在宅で看取った家族の覚悟を支えた要因を明らかにすることを目的として,がん患者を在宅で看取った家族15名からなぜ在宅で看取ることができたのかという問いを立てて半構成的インタビューを試み,その内容をGrounded Theory Approachの手法を用いて分析を行った.その結果,115のコード,32の概念,8のサブカテゴリー,3のカテゴリーが抽出された.がん患者を在宅で看取った家族の覚悟を支えたカテゴリーは,家族の人生観・死生観である《在宅での看取りを受け入れる思い》,家族を取り巻く人間関係である《周囲の人々の協力》,家族が患者・家族の置かれた現状を認識する《在宅ケアを継続する勇気》であった.家族の在宅での看取りの覚悟を支えるには,これらの要因に介入していくことが必要であることが示唆された.
著者
増田 恵美 島田 真理恵
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.464-472, 2017 (Released:2018-03-23)
参考文献数
16

目的:分娩後に骨盤周囲にさらしを巻く群(介入群)と巻かない群(対照群)では,産褥早期の骨盤周囲径測定値,腰背部痛の状況と腰背部痛による日常生活上の支障の程度について違いがあるのかを明らかにすることを目的とした.方法:介入群45名と対照群37名に,妊娠末期,産褥1,4日目に骨盤周囲径測定と質問紙調査を行い統計学的に分析した.結果:骨盤周囲径測定値は,2群間で差はなく,2群ともに妊娠末期の値より産後の値の方が小さかった.腰背部痛は,2群ともに各時期において6割程度の者が自覚し,痛みの程度に差はなかった.対照群では,産褥1日目に背部痛が発生する者が多かった.2群ともに日常生活上の支障については産褥経過とともに軽減していた.結論:産褥早期の骨盤周囲径は2群ともに妊娠末期より減少したが,さらしを巻くことにより,さらに骨盤周囲径を減少させる効果は確認されなかった.産褥早期にさらしを巻くことは背部痛の予防に寄与すると推測された.
著者
川崎 千恵 麻原 きよみ
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.4_52-4_62, 2012-12-20 (Released:2013-01-09)
参考文献数
21
被引用文献数
1

目的:在日中国人女性の,育児経験における困難と困難への対処のプロセスを記述する.方法:日本で出産を経験し学童までの子どもを育てた経験を持つ,首都圏近郊在住の中華人民共和国出身の在日中国人女性8名に半構造的面接を行い,質的記述的分析を行った.結果:育児で繰り返し遭遇する困難として«日本の文化的な母親をイメージできない»,«異文化の見えない壁に遮られる»,«異文化の中で自分を見失う»の3つの困難が段階的に抽出された.また,対処方法として,«予期できない困難に学習を重ね対処する»が抽出された.困難に繰り返し対処する結果得られるものに«母親としての新しい自分を見出す»が抽出された.困難への対処を経て得られたものとして,«母親としての新しい自分を見出す»が抽出された.結論:本研究の結果を困難の各段階でみられた在日中国人女性の心の変化や対処に着目したところ,Pedersenの5段階モデルと類似していたことから,育児を始めることで文化変容を迫られ,母親になると同時に異文化適応を経験していることが示唆された.
著者
髙谷 新 安保 寛明 佐藤 大輔
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.375-384, 2022 (Released:2022-12-21)
参考文献数
35

目的:看護職員のワーク・エンゲイジメントと看護師長の自己効力感の関連について,看護職員による所属部署の看護師長に対するリーダーシップの認識の媒介効果を明らかにすることを目的とする.方法:16医療機関の看護師長,看護職員を対象に看護職員のワーク・エンゲイジメントと看護師長の自己効力感,リーダーシップについて質問紙調査を行った.看護職員269名を対象にマルチレベル媒介分析を行った.結果:看護職員による看護師長のリーダーシップの認識は看護師長の自己効力感と看護職員のワーク・エンゲイジメントを完全に媒介していることが明らかとなった.看護師長の自己効力感と看護職員のワーク・エンゲイジメントにおけるリーダーシップの認識の媒介効果は個人レベルでの効果であることが示唆された.結論:看護師長の自己効力感は看護職員によるリーダーシップの認識を介して,看護職員のワーク・エンゲイジメントに影響を及ぼしていることが明らかとなった.
著者
為永 義憲 蒔田 寛子 藤井 徹也
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.244-251, 2020 (Released:2020-12-02)
参考文献数
13

目的:訪問看護師のICTを用いた遠隔からの医師の死亡診断を補助することへの自信感や不安と遠隔死亡診断に用いる看護技術の自信等の関連を明らかにし,遠隔死亡診断が普及するための課題を検討する.方法:全国1785カ所の訪問看護ステーションの看護師に無記名自記式質問紙調査を実施した.単純集計後,死亡診断に関する認識と看取り体制,看護技術の自信等との関連をみた.結果:325名を有効回答(18.2%)とした.死亡診断に関する認識として,遠隔死亡診断をできないと思う者は176名(54.2%)であり,理由は「家族が納得しない」が最も多かった.死亡診断に関する認識は,身体観察項目に対する自信,死亡診断等GLや医師法21条の認知等と関連した.結論:訪問看護師が遠隔死亡診断をできると認識するには,死亡診断関連の情報を得ることや身体観察技術の向上が重要と示唆された.
著者
大久保 暢子 亀井 智子 梶井 文子 堀内 成子 菱沼 典子 豊増 佳子 中山 和弘 柳井 晴夫
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.31-38, 2005-03-20 (Released:2012-10-29)
参考文献数
11
被引用文献数
3 1

看護大学における高等教育・継続教育としての e-learning (以下 EL と称す) は, 時間的・物理的制約を解消する有用な手段である. 今回, 国内の保健医療福祉機関に勤務する看護職計1,270名 (有効回答率36.6%) を分析対象として EL に関するニーズ調査を行った. その結果の一部を参考に仮説を立て, 因果モデルを想定し, 因子分析・共分散構造分析を用いて説明を試みた.結果: (1)「直接交流がないことへの不安」,「ELの内容や費用への不安」,「1人で学習することによる不安」といったEL受講への不安がなければ「ELの受講希望」は高くなり, 中でも「直接交流がないことへの不安」が「EL受講希望」に最も強く影響していた. さらに, (2) 大学の単位や認定看護師の教育単位といった「単位取得が可能」であれば「EL受講希望」は高くなることも明らかとなった. 以上のことから, 看護高等教育・卒後教育におけるEL導入は, スクーリングや対面式講義など直接交流の機会がもてること, 大学や認定看護師の講義単位が取得できることが重要であることが示唆された.
著者
麻原 きよみ
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-12, 1999-03-25 (Released:2012-10-29)
参考文献数
35
被引用文献数
6 1

本研究は, 過疎農山村における家族介護者の老人介護と農業両立の意味を探求することを目的とした. 方法論としてエスノグラフィを用いた. データ収集は27名の要介護老人の介護者, 住民および保健医療福祉関係者に対するインタビュー, 参加観察, 村の書類, 資料等の検討であった. 得られたデータを方法と動機の観点から分析した結果, 以下のことが明らかとなった.(1) 農村介護者は介護と農業両立の仕事の調整方法として, 1日の生活時間に両者を組み込でいく <介護と農業の組み込み戦略> を用いていた.(2) 介護と農業両立の動機づけには, <伝統的価値規範の内面化>, <村落共同体的集団原理に従う>, <農業継続困難な現状の受け入れ>といった消極的動機づけ, <老人に対する愛情>, <生き甲斐としての農業>, <行為へ価値づける> 積極的動機づけがみられ, これは介護と農業を調整する自己認識の調整であった.(3) 農村介護者の消極的動機づけによる介護と農業継続の内面化, および自らの主体性に意味づける積極的動機づけから, <農村介護者は介護と農業を両立できることに自己存在の意味を見出す> をテーマとして抽出した. このテーマは, 農村介護者の現実への対処行動だけでなく, 自己を積極的に意味づけて生き抜く, 農村介護者の生き方をも示していた.以上のことから, 農村介護者の伝統的価値規範を問題意識化することなく受容する認識面, およびそれを支持する社会的環境面の問題を提示するとともに, 介護と農業継続に関する農業の重要性について述べ, 地域看護実践のあり方を考察した.
著者
川北 敬美 細田 泰子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.196-203, 2022 (Released:2022-10-15)
参考文献数
26

目的:子育て期にある女性看護師(以下,子育て期看護師)におけるワーク・ファミリー・エンリッチメントの資源を明らかにする.方法:日本病院機能評価機構の認定病院に勤める未就学児を養育する女性看護師16名に半構成インタビューを実施し,質的記述的に分析をした.結果:子育て期看護師の仕事役割から得られる資源は,【ケア能力】【指導力】【効率性】【充実した感情】【社会性育成の環境】【経済的な安定】であり,家族役割から得られる資源は,【共感力】【受容力】【視野の広がり】【調整力】【ヘルプシーキング行動】【充実した感情】であった.結論:すべての子育て期看護師は,実感の差はあるものの,仕事の経験が家族役割に,母親等家族役割の経験が仕事役割の質を向上させる資源を獲得していた.それぞれの役割で得られる資源は,相互に影響し合っており,一つの資源を得ることが他の資源獲得のトリガーになることが示唆された.