- 著者
-
谷治 尚子
堀 貞夫
- 出版者
- 東京女子医科大学
- 雑誌
- 東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
- 巻号頁・発行日
- vol.82, no.1, pp.E78-E82, 2012-01-31
近年網膜再生治療研究が進展している。なかでも網膜色素上皮(RPE)細胞移植については、加齢黄斑変性や網膜色素変性症などで失われたRPEの機能を補うために様々な移植方法が試されてきた。,我々は温度応答性培養皿で作製した網膜色素上皮細胞シートの兎網膜下移植について発表した。有色家兎のRPE細胞を温度応答性賠償皿で培養し、色素を持ったRPE細胞シートを酵素処理を行わずに単純に温度を下げるのみで非侵襲的に回収できた。回収したシートは3ポート硝子体手術で白色家兎の網膜下に移植した。移植したシートは網膜下に生着し細胞懸濁液の注射よりも効果的に移植できた。,しかし、この実験ではRPEシートが単層のため脆弱で、広げたまま目的の場所に移植することが難しいことから移植方法の改良が課題であった。工学系の研究者の協力を得て、先端は流体圧の変化によってしなやかに曲げ運動を行うバルーンアクチュエーターで構成された移植デバイスが試作された。シート支持体の上でシートを保持したまま支持体を筒状にシリコンチューブの中に収納し、移動後また支持体をひろげ、角膜、水晶体、硝子体、神経網膜を除去した豚眼のブルッフ膜及びRPE上に細胞シートを貼り付けることが出来た。,今後、脆弱なRPE細胞シートをどのように移植するか、医学と工学の知恵が結集すればRPE細胞シート移植は飛躍的に進歩すると思われる。