著者
大橋 純一 Jun'ichi OHASHI
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
言語科学論集 (ISSN:13434586)
巻号頁・発行日
no.1, pp.15-26, 1997

東北方言の/ki/の発音実相を、音響学的手法により、客観的に明らかにする。と同時に、その地理的・年代的状況に基づき、発音実相の通時的展開を追究する。なお、それに際しては、/k/子音の二重調音的発音と/i/母音の中舌的発音との関連性に着目し、展開上、両者が密接に関わっていると考えられることを述べる。介入摩擦音二重調音的発音中舌的発音
著者
黒木 和人
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
言語科学論集 (ISSN:13434586)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.13-24, 1998-11-20

山本有三の「ふりがな廢止論」によって、近代の振仮名は「廢止」の方向にむかった。しかし、その理念のみで「ふりがな廢止」となったのではない。その陰には、やさしくわかりやすい文章を目指そうという有三の努力があった。その努力は、振仮名の機能に頼らない新しいかたちの口語文として結実していった。
著者
蔡 雅芸 Ya-Yun TSAI
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
no.6, pp.35-46, 1996-09-30

「これ、面白くない?」という疑問文を文末上昇の音調で発話すると、発話時の場面によっては、話者自身の持っている意見に対して聞き手に同意を求める同意要求的疑問文になる。本来なら、このような同意要求的疑問文の音調は、アクセント核を保ちつつ文末のみが上昇する音調であるが、最近は新種の音調の出現も指摘されている。本稿はこの音調について、東京の若者の発話のピッチ曲線によるパターンの確認と分類を行い、更にその機能の考察を試みたものである。
著者
東ヶ崎 祐一
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.73-83, 1995-09-30

上古漢語のわたり音共起形は, 中古漢語までに変化して解消される。その過程は「主母音の消失」「主母音と韻尾の融合」「韻尾の消失」に分類される。素性構造理論を用いて分析することにより, 変化の過程がOCP (Obligatory Contour Principle) 違反を回避する変化であると説明できることを示した。
著者
曹 再京 JAE-KYUNG CHO
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
言語科学論集 (ISSN:13434586)
巻号頁・発行日
no.4, pp.1-12, 2000

本論では、終助詞「よ」の機能を明らかにするために文レベルと談話レベルにおいて考察を行った。文において終助詞「よ」は、「話し手の聞き手への呼びかけ」という本質的な機能と表現効果が重なって表れる。談話においては、文レベルの本質的な機能から談話を展開していく上で、会話促進やポライトネス等のストラテジーとしての機能が二次的に派生する。終助詞「よ」本質的な機能談話機能ストラテジー
著者
李 香蘭
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.13-24, 1992-09-30

辞書の記載による外来語のアクセント型を拍数別に調査し, その特徴を明らかにした。2・3拍語では原則からはずれた例は少なく, 頭高型が大部分をしめている。4拍以上の語には, -3拍目に特殊拍やアクセント核を前にずらす音韻的な要因が含まれている語か多いため, -4型や-5型が多く現れている。4拍語は, 日常生活によく使われている語や縮約された形の語が多いため, 平板型が目立つ。5拍語以上では, 外国語の意識がはたらいて原語に多い第1音節にアクセントを置く傾向が見られる。複合語アクセントは, 原則とほぼ一致しているか, 後部要素が2拍語の場合は一定したアクセント型は見られない。平板型特殊拍アクセント核をずらす要因複合語アクセント
著者
鹿島 英一
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.13-24, 1993-09-30

昨今、日本語へのカタカナの進出振りは留まるところを知らないかのようである。一方、日本語より一足先に国際化した(シンガポールの)華語にも外来語が氾濫している。中国語の比ではない。無論、既存の漢字を転用するわけである。日華両語ともただ置かれた環境に独自に反応しているだけである。だが、外来語の表記 (処理) 法を見る限り、よく似た現象にいろいろぶつかる。本稿ではこの問題を取り上げ、日本語のカタカナと華語の表音文字の異同に関して二つほど論じた。一つは表音文字表の作成の試みであり、もう一つは表記のゆれ方の相違である。前者はカタカナの用字法との対照を基に、当地の実際の文字資料を使って行なった。また、後者では日本語の音のゆれと華語の文字のゆれが、表記体系の中で似た役割を果たしていることを指摘した。
著者
曺 再京
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
言語科学論集 (ISSN:13434586)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.37-48, 2001-11-15

順接と逆接の論理を盛り込むことによって、「妥当な推論の結果としての話し手の判断」と「話し手の認識の確認や再確認」という二つの機能が「やっぱり」には認められる。さらに談話においても、複文より複雑な構造をなすものの、順接と逆接の論理が適用される。その結果、順接の論理からは、応答表現としての「やっぱり」の機能が認められ、逆接の論理からは、発話を修正する (repair) 機能が認められる。そして、話者交替 (Turn-taking) のシステムにおける発話の順番取りの機能、話題導入のシグナルとしての機能が両論理から認めれる。
著者
飯田 寿子
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
言語科学論集 (ISSN:13434586)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.25-36, 2002-11-20

並立関係をもつ合成語は、構成要素間の関係を文法的な側面からも解釈できるのかどうか検討するために、特に二構成要素 (「男女」「上り下り」等) からなる並立合成語内に助辞を挿入させ、合成語が成立するか調査した。その結果、九種類の類型があることを確認した。これら結合類型が存在する理由のひとつとして、結合力と特定度の相関程度で差異が発生し、種マの結合類型を形成させたと結論づける。
著者
佐藤 直人 Naoto SATO
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
言語科学論集 (ISSN:13434586)
巻号頁・発行日
no.1, pp.63-74, 1997

はじめに、日本語のナガラ節が、付帯状況と逆接という二つの意味に対応して、それぞれVP内、NegPに付加するという観察が得られることを示す。この観察は、ナガラ節の性質を説明する理論が如何なるものであれ捉えなければならないものであるが、この妥当性を満たすという要件は可能な理論の幅を狭める。ナガラ節がもつ意味によって付加する位置が決定されるという理論より、付加する位置によって意味が決まるとする理論の方が自然な説明が与えられるため、そのような理論が望ましいことを論ずる。
著者
松崎 寛 Hiroshi MATSUZAKI
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 = Journal of the Department of Japanese, Tohoku University (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.85-96, 1995-09-30

本稿では、従来の日本語教科書におけるプロソディーの諸要素の表示方法を調査し、それらの問題点を踏まえて改良した新教材、「プロソディーグラフ」を提案する。これは、音声分析機器を用いて日本語話者の発話のF0曲線をわかりやすく視覚化したもので、これにより、アクセント、イントネーション、リズムなどを総合的に理解させられる。この教材を用いて韓国人日本語学習者を指導し、効果を測定した。その結果、アクセント核やイントネーション符号を付与するだけの方法に比べ、本方式では発音に向上が見られた。
著者
李 香蘭
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.13-24, 1992-09-30

辞書の記載による外来語のアクセント型を拍数別に調査し, その特徴を明らかにした。2・3拍語では原則からはずれた例は少なく, 頭高型が大部分をしめている。4拍以上の語には, -3拍目に特殊拍やアクセント核を前にずらす音韻的な要因が含まれている語か多いため, -4型や-5型が多く現れている。4拍語は, 日常生活によく使われている語や縮約された形の語が多いため, 平板型が目立つ。5拍語以上では, 外国語の意識がはたらいて原語に多い第1音節にアクセントを置く傾向が見られる。複合語アクセントは, 原則とほぼ一致しているか, 後部要素が2拍語の場合は一定したアクセント型は見られない。
著者
藤原 真理
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.120-131, 1991-09-30

助詞「よ」の下接によって《下品さ》が生じる文には, 文脈的背景としての「話題となる情報の持ち出し方・扱い方の点における話し手の非優位性 (受動性・消極性)」が認められるのに対して, 「よ」に備わった表現性は「述べる情報に関する話し手の聞き手に対する優位性」に深く関わっている。「よ」こよってもたらされる《下品さ》は, このような, 一見, 相反する立場が一文において両立する二重性によりもたらされる。
著者
野瀬 昌彦
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
言語科学論集 (ISSN:13434586)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.61-72, 2004-12-25

フィンランド語の様格形 "-na/-na" の用法は意味的に, 属性やステータスを表すグループ, 動詞や形容詞と現れて状態を表すグループ, 時間表現, そして場所関係等の語彙的な用法の4つに分類することができる. 本論では, 実際の用便鯛査から様格形の意味用法を分類し, それぞれのグループの割合を調べた. 加えて, 様格形が語順に現れる位置を調査し, 様格形の4つの意味カテゴリーと語順に現れる位置との間に相関関係があることを主張する.
著者
瀧川 美穂 Miho TAKIGAWA
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
言語科学論集 (ISSN:13434586)
巻号頁・発行日
no.1, pp.75-86, 1997

『方言文法全国地図』の命令形の分布図を見ると、富山県呉西地域は形式のばらつきが大きく、分布が不明瞭であるが、それは当地域の命令表現が、複数の方言形の形式を、強要度や性差によって共通語と異なる枠組みの中で使い分けするようになっているためである。形式の層ごとに見れば、当地域にも均質な層が見られ、改めて平野部と山側との地域差をつかむことが可能となった。方言文法全国地図富山県呉西地域命令表現強要度男女差
著者
蔡 雅芸 Ya-Yun TSAI
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
no.5, pp.25-36, 1995-09-30

東京語における「動詞未然形+ウ・ヨウ」と「動詞連用形+マショウ」は同じ文法「意志」と「勧誘」との二つの意味を表すことができる。この二つの表現ではアクセント核は元来後ろから二拍目のところにあるが、最近、特に若い女性の場合にアクセント核が消失した上昇調のイントネーションがよく聞かれる。この現象については、先行研究が「浮き上がり調」と名付けた。本研究は東京語の意志表現と勧誘表現のイントネーションがアクセント核を保ったままであるか、アクセント核が消失した「浮き上がり調」であるかどうかについて、気分による相違や男女差、年齢差との関連などを考察する。浮き上がり調ピッチパターン心理的事情
著者
桑本 裕二 YUJI KUWAMOTO
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
言語科学論集 = Journal of linguistic science, Tohoku University (ISSN:13434586)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.25-35, 1998-11-20

日本語に見られる略語のうち、もとの語がいわゆる超重音節を含む場合、分節音削除をともなった特殊な形成を行う。超重音節は一般に避けられる傾向が強く、日本語においてもその構造は様々に論じられてきており、その存在を認めない説もある。本稿では、略語形成の分析から、超重音節は存在することの新たな根拠を提示した上で、超重音節の2音節への再構成は、通常は起こらず、フットが bisyllabicity に従うときにのみ許される過程であることを示す。
著者
金 仙姫 Sun Hee KIM 東北大学大学院
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 = Journal of the Department of Japanese, Tohoku University (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.41-53, 1992-09-30

辞書類などでは「についての」と「に関する」が同じ用法を持つものとして扱われており、一方「に対する」は「についての」や「に関する」とは別の用法を持つものとして扱われている。それに対して本稿では、この三つの表現の語彙的意味の違いを主に文献の実際的な用例を中心に検討してみた。その結果は次の通りである。(1)「についての」や「に関する」は内容 (情報) を表す用法を持っている。しかし「についての」は知的行為を表す語と共起しやすいが、「に関する」はタイトルの提示を要求する傾向が強い語と共起しやすい。(2)「に対する」は態度を表す語と共起しやすい。心的態度 (評価・認識など) を表す語の場合は「についての」は「に対する」と共に共起しやすいが、「に関する」は共起しにくい。