著者
粕田 晴之 福田 博一 林 和 相賀 美幸 島崎 則子 越智 芳江
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.132-135, 1999-05-20 (Released:2010-07-21)
参考文献数
28

本邦での手術時手洗いはスクラブ剤を使用したブラシングを中心に行われてきたが, この方法は皮膚を損傷するおそれのあることと手洗い時間が長いという欠点を有している.我々は, 先に看護婦を対象としグローブジュース法を用いて擦式エタノール薬を併用した短時間手洗い法の有用性について報告したが, 今回は医師を対象として検討した.手洗い前の片手当り手指生菌数が104cfu以上で, 「現行の手洗い法: 4%クロルヘキシジンを用い, 素洗いと3回のブラシングで計8分間の手洗い」と「新しい手洗い法: 4%クロルヘキシジンを用いた揉み洗い2回と爪周囲のブラシング1回, 0.2%クロルヘキシジン添加エタノール液を用いたラビング1回で計4分間の手洗い」を2回づつ実施できた外科系医師28名を対象とした.指数減少値からみた減菌効果が, 「現行の手洗い法」では手洗い直後および3時間後が1.49±0.66 (M±SD) および0.99±0.71であったのに対し, 「新しい手洗い法」ではそれぞれ1.61±0.55および1.44±0.52と高い値を示し, 3時間後では両者に有意差が認められた (p<0.05).「新しい手洗い法」は, 揉み洗い中心の短時間で簡便な方法であるにもかかわらず, 手洗い直後ばかりでなく, 手袋をして3時間後にも引き続き殺菌効果を持続する有用な手洗い法であることが示された.
著者
高橋 夕子 岡部 忠志 沖村 幸枝 本田 孝行 加藤 祐美子 川上 由行
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.270-274, 1999-11-30 (Released:2010-07-21)
参考文献数
23
被引用文献数
1

日常業務における看護婦の手の細菌汚染状況を調べ, ゲル状および液状アルコール性消毒剤の消毒効果について検討した. まず, 女性2名, 男性1名で消毒剤の消毒効果について検討した. 両消毒剤とも女性ではメーカ推奨量で十分な効果が得られた. 手の大きい男性では不十分であったが, 増量することにより十分な消毒効果が得られた. つぎに看護婦8名を対象とし, 引継ぎ, 検温, 清潔業務別に細菌汚染について検討した. どの業務においても看護婦の手は10種類以上の細菌に汚染されており, 水を使用する清潔業務において最も強い細菌汚染が認められた. 院内感染で問題となるMRSAや.Pseudomonas aeruginosa汚染も単発的に認められた.Bacillus属を除く細菌に対して液状消毒剤, ゲル状消毒剤共に良好な消毒効果が得られた. 医療従事者は常に自らの手が細菌に汚染されていると考えるべきであり, 患者に接する場合, 安価な液状消毒剤, ベッドサイドで使用できるゲル状消毒剤を使い分けることにより, ある程度院内感染を防ぐことが可能であると考えられた.
著者
森兼 啓太 小西 敏郎 阿部 哲夫 阿川 千一郎 西岡 みどり 谷村 久美 野口 浩恵 小林 寛伊
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.139-144, 2000-05-18
被引用文献数
7

消化器手術後の手術部位感染 (SSI) サーベイランスを米国のNNISシステムに従って施行した.対象は当科で9ヵ月間に施行された消化器外科開腹手術症例364例とした.感染制御チームを結成し, 巡回により基礎データを収集しSSIを拾い上げ, 外科医が創を観察しCDCの基準に従ってSSIか否かを判定した. 一方でCDCのSSI防止ガイドラインのうち現状を改善することが可能と思われる対策を講じ, 介入を行いつつサーベイランスを継続した.まず, 初めの4ヵ月間の創分類III, IV (汚染, 感染創) の症例ではそれぞれ9例中5例 (56%), 10例中9例 (90%) と高率にSSI発生を認め, 全体のSSI発生率に対する大きな撹乱因子となると考え, 以下の検討から除外した.創分類I, II (清潔, 準清潔創) の症例におけるSSI発生率は全体で35/323 (10.8%) であり, 術式別に分類しても, またrisk index score別にみてもNNISのデータより約3-5倍の高率であった.しかし, 米国では後期SSI発生症例を遺漏している可能性がある. 全例に術後30日のサーベイランスを遂行できた我々のデータとCDCのデータとの単純な比較はできないと思われた.サーベイランスの施行に並行して介入を行い, 主として抗生物質の術前投与が徹底された.しかし本研究期間内にSSI発生率の低下はみられなかった. 今後も継続的にサーベイランスを施行していく必要があると考えられた.
著者
高良 武博 大湾 知子 加藤 種一 上原 勝子 津波 浩子 佐久川 廣美 備瀬 敏子 久田 友治 新里 敬 健山 正男 比嘉 太 佐久川 廣 草野 信周 斎藤 厚
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.267-273, 2004-05-10
被引用文献数
13

MRSA分離患者が多かった病棟において, 看護行為前後の手指衛生行動としての手洗いと手指消毒を経時的に参与観察し, 接触伝播に対する防止対策を検討した.看護行為全体に対する直接看護行為の割合は46%で, 診療・治療の介助が16.2%, 排泄ケアが9.8%と高く, 手指衛生行動の実施率は排泄ケア前後が46.6%と最も高かった. それらの行為後では流水による手洗いが多く, 実施場所はナースステーションが多かった. 手指衛生行動の必要場面の実施率は行為前より行為後が高く, 診療・治療の介助前が12.5%, 介助後が30%, 排泄ケア前が11.1%, ケア後が55.6%であった. しかし, MRSA患者に対しては排泄ケア, 入浴介助時の手袋着用率は高いが, 取り外し後の手指衛生行動の実施率は低かった. 手指衛生行動の関連要因では, 直接看護行為後に必要な手指衛生行動の実施率は看護経験年数と正の相関を認めた. 以上の結果より, 手指衛生行動の教育・啓発活動としては, ケア前後及び手袋取り外し後の手指衛生行動の遵守強化, 連続看護行為時の手指消毒の推奨, 手洗い設備としては, 看護行為場所から手洗いシンクへの移動時の接触伝播防止として, 各病室の手洗いシンクへの石鹸やペーパータオルの設置が必要である. 今後, 手指衛生行動の評価には看護行為実践時の経時的観察が必要であり, 看護行為及び手指衛生行動を経時的かつ迅速に評価できる観察・評価表を考案した.