著者
鰕原 孝康 吉川 茂
雑誌
研究報告 音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2011-MUS-89, no.3, pp.1-5, 2011-02-04

ホルンにおけるストップ奏法とは、右手の手のひらでベルをふさいで強く吹奏することで、鋭い金属的な音色を作る奏法である。この奏法において楽器の入力インピーダンスが変化することがこれまで研究されてきたが、その金属的な音色の原因については考えられてこなかった。本研究ではその原因として、(1) 伝達関数、(2) 唇の非線形振動と管内衝撃波、(3) 管壁振動の 3 つの可能性について検討し、数値シミュレーションと測定によって管壁振動がその音色の原因であることが明らかになった。
著者
東 真梨子 三橋 渉
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告 音楽情報科学(MUS) (ISSN:21862583)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.28, pp.1-6, 2011-02-04

本研究は,実環境で演奏されたピアノ多重音を自動で楽譜データに変換することを目的としている.他の様々な楽器や歌声に対して高性能な自動採譜が実現できれば,音楽的な知識がなくても作曲・編曲を簡単にでき,曲名やアーティスト名の情報がない場合の楽曲検索にも役立つだろう.また,音源分離の研究などと組み合わせることでより実用的なシステムとなるだろう.本研究では,音程や音符長の推定はもちろんのこと,音価 (音符記号) の推定,伴奏・主旋律の推定まで行う.それに伴い,信号処理に確率・統計モデルを加えることで音価の推定と伴奏・主旋律の推定に音楽的知識を取り入れる.The aim of this study is to transform polyphonic piano sound to musical scores in a real environment. Automated transcription of high quality for other instruments and singing voices can be applied to help composing music and identifying tune without information of song titles and singer names. In addition, this system can become useful when combined with the blind source separation technique. In this paper, We estimate musical note sequence and part of melody and accompaiment, not to mention pitch and note length. We therefore adopt musical knowledge by using probabilistic model in addition to technique of signal processing.
著者
吉川 茂
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告 音楽情報科学(MUS) (ISSN:21862583)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.1, pp.1-5, 2011-02-04

東大寺の正倉院に保存されている唐より伝来した尺八 (正倉院尺八) の音響的特性を歌口端および指孔開孔端での補正長さに着目して検討した。ベースとした定量的データは昭和期の調査における各運指における発音周波数の測定記録である。正倉院北倉の竹製尺八の寸法図面を基に、数値計算用モデルを設定し、歌口における入力アドミッタンスのピーク値より発音周波数を計算できるようにした。この計算周波数と吹鳴調査における発音周波数が一致するとして歌口端補正長さを推定した。また、この発音周波数が与える波長から、指孔開孔列がもたらす補正長さも求めた。これらの結果より、2 つの補正長さの周波数 (運指) 依存性、オクターブ・バランス、クロス・フィンガリングと音律異常、尺八とベーム・フルートなどについて考察した。One of the Shousouin Shakuhachis, that were transmitted from the T'ang dynasty and have been preserved in the Shousouin of the Toudaiji, is acoustically investigated focusing on the length corrections at the embouchure hole and the open-hole lattice. Quantitative data as the research basis are the records on the sounding frequencies that were measured at the investigation in the Shouwa period. Based on a geometry figure of the bamboo-made shakuhachi in the north warehouse, a physical model is constructed to calculate the sounding frequency from the maximum magnitude of the input admittance at the embouchure hole. The length correction at the embouchure hole is estimated by assuming that this calculated frequency corresponds to the blown frequency measured at the Shouwa investigation. Also, another length correction at the open-hole lattice is derived from the wavelength of the blown sound. These numerical results conducted some discussions on the frequency (fingering) dependence of the length corrections, the octave balance, the cross fingerings and the associated intonation anomaly, the Japanese shakuhachi and the western flute.
著者
佐藤 公信 竹田 史章
雑誌
研究報告 音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2011-MUS-89, no.19, pp.1-4, 2011-02-04

本研究は新たな声紋認証手法の開発を目的とする.提案システムは特徴量抽出に Fast Fourier Transform を用い,識別器に未知のパターンに対して排除能力が優れた Radial Basis Function Networks(RBFN) を用いる.提案手法は RBFN の出力細胞数を 1 としているために,特定個人の認識と未知のパターンの排除に優れると予測される.実験により認証対象者となる被験者の未学習データを評価し,提案手法の認証率および排除率を確認する.
著者
吉川 茂
雑誌
研究報告 音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2011-MUS-89, no.1, pp.1-5, 2011-02-04

東大寺の正倉院に保存されている唐より伝来した尺八 (正倉院尺八) の音響的特性を歌口端および指孔開孔端での補正長さに着目して検討した。ベースとした定量的データは昭和期の調査における各運指における発音周波数の測定記録である。正倉院北倉の竹製尺八の寸法図面を基に、数値計算用モデルを設定し、歌口における入力アドミッタンスのピーク値より発音周波数を計算できるようにした。この計算周波数と吹鳴調査における発音周波数が一致するとして歌口端補正長さを推定した。また、この発音周波数が与える波長から、指孔開孔列がもたらす補正長さも求めた。これらの結果より、2 つの補正長さの周波数 (運指) 依存性、オクターブ・バランス、クロス・フィンガリングと音律異常、尺八とベーム・フルートなどについて考察した。
著者
千田 崇文 吉川 茂
雑誌
研究報告 音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2011-MUS-89, no.2, pp.1-4, 2011-02-04

本研究では 2 つの異なる初期条件: “up-plucking” と “down-plucking” が与えられた際のサワリ機構との接触を伴う撥弦振動を高速度ビデオカメラを用いて可視化した。その結果、振動周期や高周波の形成過程に関して初期条件が弦振動に与える影響が確認された。
著者
伊藤 泰典 高橋 公也 宮本 真孝 高見 利也 小林 泰三 西田 晃 青柳 睦
雑誌
研究報告 音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2011-MUS-89, no.17, pp.1-6, 2011-02-04

圧縮流体の解析ツールである Large Eddy Simulation(LES) を用いて、2 次元、および 3 次元エッジトーンのシミュレーションを行った。Lighthill の音源分布を計算し、渦度分布と音源の関係を考察した。
著者
中嶋 俊 吉川 茂
雑誌
研究報告 音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2011-MUS-89, no.4, pp.1-6, 2011-02-04

擦弦振動は定常状態において弦上を 1 つの角が回転するという特徴を持つ弦振動 (ヘルムホルツ運動) である.このことはヘルムホルツによって明らかにされた.本研究では擦弦振動の立ち上がりの部分,すなわち過渡状態からの数値シミュレーションを行い,擦弦点だけではなく弦全体の振動の様子についても解析を行った.その結果,ヘルムホルツ運動が形成されるためには弓の加速度が必要であり,擦弦振動が安定した振動となるためにはナットでの減衰が重要であることが分かった.また,定常状態の振動の様子はヘルムホルツが提唱したような単純な三角形ではなく擦弦点にも弦の曲がり角が存在するのではないかということが予想される結果が得られた.
著者
山口 直彦 管村 昇
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告 音楽情報科学(MUS) (ISSN:21862583)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.10, pp.1-6, 2011-02-04

既存の音楽理論を計算機科学の立場からとらえなおし,理論化しなおそうとする 「計算論的音楽理論」 の研究が進められてきたが,これらはいずれもクラシック音楽理論を中心に考えられてきた.ジャズ音楽理論に基づいて作曲された楽曲が数多く流通する昨今,ジャズ音楽理論を計算論的音楽理論として再構築する試みが必要であると考えられる.そこで筆者は F.Lerdahl の提唱した TPS(Tonal Pitch Space) に着目した.TPS は和声学の知識を和声間距離という概念を用いて定式化し,計算機上に実装できるようにした興味深い理論である.しかしながら TPS もまたクラシック音楽理論を基礎としており,そのままではジャズ音楽理論が扱う複雑な和音に対応することができない.本発表では、TPS を拡張する形で,ジャズ音楽理論を計算論的音楽理論として記述する手法を提案する。Reconstruction of "Music Theory", namely from traditional music theory to computational music theory, has become important in recent years. However these theories are based on classical music. Nowadays, popular music are composed using jazz music theory. Reconstructing computational music theory from jazz music theory is required. In this paper, computational music theory from jazz music theory, by extending TPS(Tonal Pitch Space) proposed by F.Lerdahl, is described.
著者
三好 真人 柘植 覚 ChogeKipsangHillary 尾山 匡浩 伊藤 桃代 福見 稔
雑誌
研究報告 音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2011-MUS-89, no.23, pp.1-6, 2011-02-04

本稿では,楽曲に適切な印象値を自動付与する手法を提案する.提案手法は特徴抽出手法及び印象値付与手法から構成される.特徴抽出手法では,楽曲の印象値付与に有効と考えられる音量,音色,リズム,和音に関する特徴量を抽出する.印象値付与手法では,抽出された特徴量を用いてニューラルネットワークにより楽曲に印象値を付与する.401 個の楽曲パターンを用いて印象値付与実験及び主観評価実験を行い,提案手法の有効性を検証した.
著者
中嶋 俊 吉川 茂
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告 音楽情報科学(MUS) (ISSN:21862583)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.4, pp.1-6, 2011-02-04

擦弦振動は定常状態において弦上を 1 つの角が回転するという特徴を持つ弦振動 (ヘルムホルツ運動) である.このことはヘルムホルツによって明らかにされた.本研究では擦弦振動の立ち上がりの部分,すなわち過渡状態からの数値シミュレーションを行い,擦弦点だけではなく弦全体の振動の様子についても解析を行った.その結果,ヘルムホルツ運動が形成されるためには弓の加速度が必要であり,擦弦振動が安定した振動となるためにはナットでの減衰が重要であることが分かった.また,定常状態の振動の様子はヘルムホルツが提唱したような単純な三角形ではなく擦弦点にも弦の曲がり角が存在するのではないかということが予想される結果が得られた.A sharp corner travels back and forth on the bowed string in the steady state. This motion (called the Helmholtz motion) was first discovered by Helmholtz. We were carried out numerical simulations of the bowed string vibration in the starting transients. The wave motion was analyzed not only at the bowing position but over the whole string. As the result, it suggested that (1) the acceleration of the bowing is needed to create the Helmholtz motion and (2) loss at the nut is important to stabilize the bowed string motion. Also, the bowed string motion is such a simple triangle as Helmholtz suggested, and a small corner is likely to be formed at the bowing position.
著者
佐藤 和哉 平井 重行 丸山 一貴 寺田 実
雑誌
研究報告 音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2011-MUS-89, no.14, pp.1-6, 2011-02-04

プログラム動作を理解させるための,実行時における関数呼び出しの構造を音楽的な表現手法を導入して可聴化するシステムを提案する.ここでは,音楽のリズム表現を導入することで,可聴化した結果がエンタテインメントとして楽しみながら,かつプログラム動作の理解を支援できるようにすることを目指している.今回は,関数呼び出し構造に対し,異なる観点でリズムパターンの適用ができるようにし,その効果や利点を確認できるようにした.
著者
佐藤 和哉 平井 重行 丸山 一貴 寺田 実
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告 音楽情報科学(MUS) (ISSN:21862583)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.14, pp.1-6, 2011-02-04
被引用文献数
1

プログラム動作を理解させるための,実行時における関数呼び出しの構造を音楽的な表現手法を導入して可聴化するシステムを提案する.ここでは,音楽のリズム表現を導入することで,可聴化した結果がエンタテインメントとして楽しみながら,かつプログラム動作の理解を支援できるようにすることを目指している.今回は,関数呼び出し構造に対し,異なる観点でリズムパターンの適用ができるようにし,その効果や利点を確認できるようにした.We propose a program sonification system focused on the nesting structure of function calls at the runtime. In this paper, we apply several sonification methods to various programs, and compare their results. We use musical expression, especially rhythm patterns for the sonification. This enables the user to enjoy listening to the sound as an entertainment in addition to understanding the processing flow of the program.