著者
伊藤 倫子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.401-409, 2011-10-01 (Released:2017-04-20)
参考文献数
62

図書購入予算が減少を続ける現在,米国図書館はインターライブラリー・ローン(ILL)を利用し図書館間のリソース・シェアリングを効果的に行うことで対応している。世界的な減少傾向に反し,米国のILL活動は以前活発であるが,その要因として,図書館がITを積極的に活用し,図書館のサービスやマネジメント技術の向上を図ってきた点が指摘できる。一方で,新しいサービスの導入や電子リソースの急激な増加に伴い,図書館は新たな問題に直面している。本稿は,米国におけるILL活動について概観し,ILLサービスの変化,発展,あるいは課題について述べる。
著者
坂本 泉 開本 亮 高石 静代 近成 涼香
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.36-42, 2021-01-01 (Released:2021-01-01)

本研究では,「睡眠の質」に着目し,現状の睡眠ビジネスにおける課題を分析し,今後期待されるサービスを予測することを目的とした。まず現状の睡眠ビジネスにおける課題について,睡眠ビジネスに関する市場,睡眠ビジネスの全体像,睡眠ビジネスのプレイヤー,睡眠ビジネスの具体例を把握し,睡眠に影響を与える要因マップの作成をして,調査および分析を行った。次に,新聞記事を中心とした市場調査,睡眠分野でトピックになっている論文の抽出,特許調査を行い,さらに中央官庁の関連する政策から課題を分析した。その結果,睡眠の質の測定は向上してきており,病院や介護施設等を対象とするB to Bのソリューションはすでに実用化されているものの,個人にフォーカスするB to Cのソリューションが不足していることが分かった。したがって,将来においては,そのソリューションを加味したデバイスをパーソナルで使用できる睡眠ビジネスが普及すると考えられる。
著者
田中 雅章
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.23-27, 2021-01-01 (Released:2021-01-01)

看護系専門学校では,平成27年度よりデジタル教科書を導入した。1年間で使用する全教科書50冊のうち,専門科目を中心とした39冊でデジタル教科書を導入した。開講される授業の約80%でデジタル教科書を使った授業が行なえるようになった。彼らはほとんどのデジタル教科書の機能,特に付箋機能を使用していた。全ての教科書のデジタル化を希望する学生は,従来の紙の教科書を希望する学生よりもデジタル教科書の機能をより深く理解して活用していた。
著者
南雲 秀雄
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.16-22, 2021-01-01 (Released:2021-01-01)

大学で使用する学習用の電子書籍は,単なる紙の書籍の電子版ではない。電子書籍ビューアーを含めたシステムは,教科書コンテンツが組み込まれた学習管理システムに近いものである。その中には,授業グループの管理,アンケートの使用,付箋・メモの追加・共有,独自教材の追加など様々な学習のための機能が備わっており,工夫次第で,効果的な学習活動を実現できる。本稿では,大学の授業で使用する学習用の電子書籍について,ビューアーの特徴,使用に際して必要な設備・機器をまとめた上で,活用事例を紹介し,さらに普及のために検討すべき点について述べる。
著者
三瓶 徹
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.2-7, 2021-01-01 (Released:2021-01-01)

教育現場には,電子教科書,デジタル教科書,電子ジャーナル,電子学術書と呼ばれている電子書籍が存在する。その活用方法・目的は多岐に亘るが,ファイル形式はEPUB3とPDFが主流である。初等・中等教育でのデジタル教科書の導入は,授業運営方法の大きな変革とともに始まったところであり,大学についても教育改革の一端として図書館の電子化が進められてはいるが,欧米に大きく遅れている。本稿ではファイル形式の面から現状を紹介するとともに,その抱えている問題点などを示す。著作権法改正をイノベイティブなサービス創造のチャンスと捉え,教育現場における電子教科書の利用とその方法の分析を通して,今後のあるべき姿を考察する。
著者
大橋 拓真
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.1, 2021-01-01 (Released:2021-01-01)

今月号の特集は,「教育現場における電子書籍の活用」と題してお届けします。スマートフォンの普及を始めとする技術進歩の恩恵により,電子書籍は今まで以上に身近で活用されるものとなりつつあります。また,現在もなお事態が終息していない新型コロナウィルスへの対策が求められている状況下では,遠隔地からでもコンテンツを閲覧できることは大きなメリットとなります。そして,文字だけでなく画像や音声などの情報も扱うことのできる電子書籍の特長は,研究や教育活動を進めるうえでも役立つことかと思います。本特集においては,遠隔地からの閲覧のみならず様々な可能性を持つ電子書籍の,教育現場における活用にスポットを当て,その特長や実際の現場での使用例などを紹介します。また,電子書籍を閲覧するために必要なビューワーにも着目し,その機能や活用についてもご紹介します。はじめに三瓶徹氏(日本電子出版協会)には,電子書籍そのもののファイル形式の面から現状や問題点,今後についてご説明いただきました。矢口勝彦氏(図書館流通センター)には電子書籍プラットフォームの提供者側からの視点として,TRCの電子図書館を例として概要やメリット,導入事例などをご紹介いただきました。南雲秀雄氏(新潟青陵大学)には電子書籍を閲覧する際に使用するビューアーについて,ビューアーの持つ機能や授業においての活用事例についてご紹介いただきました。田中雅章氏(ユマニテク短期大学)には電子書籍配信サービスの導入において,運用や注意点,学習への活用といった部分についてご説明いただきました。マクヴェイ山田久仁子氏(ハーバード・イェンチン図書館)には,海外の事例として,現在の環境下におけるオンライン教育での電子資料活用の事例を,職員としての観点も踏まえてご紹介いただきました。本特集では電子書籍が持つ様々な機能やメリットをご紹介しました。読者の皆さまが電子書籍を活用するための,そして新たな活用方法を模索するためのご参考となれば幸いです。(会誌編集担当委員:大橋拓真(主査),青野正太,今満亨崇,南雲修司,水野澄子,南山泰之)
著者
和田 玲子 中村 栄
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.366-372, 2020

<p>経営層に戦略的IP情報を資するIPランドスケープを遂行する知財アナリストには,調査・解析ツールの機能を使いこなすデータ解析能力と,経営層にインパクトを与える事業課題を浮き彫りにし,その解決手段の候補を導き出す解析シナリオ構築力が特に求められる。AI時代は,データ解析がAIによってレベルアップし,それを用いる解析シナリオに広がりや深みを出せる,アナリストにとって追い風の時代である。本稿では,旭化成における戦略的な知財情報の活動の歴史を振り返りながら,最近のIPランドスケープの活動を紹介し,AI時代のアナリストに求められる解析シナリオ構築力とそのレベルアップについて述べる。</p>
著者
福田 徹哉
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.218-222, 2015

農文協は「農文協図書館」(1982年〜)開館後,農業の専門書店「農業書センター」(1994年〜)を千代田区大手町の旧JAビル内に開店させ(現在は神田神保町にて営業),その後「ルーラル電子図書館」(1996年〜),通販専門の書店「田舎の本屋さん」(1997年〜)を開設スタートさせてきた。現在は二つの専門図書館と二つの専門書店を農と食の総合情報拠点として位置付け,利用者,読者に連携して応えていく活動を展開している。「農家を減らさない」「農家の元気を育てる」ことこそ「地方創生」の根源に据えるべきであり「地域活性化」はこのことを抜きにしては考えられない。農文協図書館には地域と農家の元気を育てる実践的な情報がたくさんある専門図書館だ。農村を中心とした地域活性化につながる実践的なテーマに応えるレファレンスと蔵書の充実が農文協図書館の役割といえる。
著者
塩谷 綱正 神谷 昌男 髙梨 睦 堀池 彰夫 橋本 道枝
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.12, pp.595-599, 2020-12-01 (Released:2020-12-01)

自治体は,高齢化をはじめとした複雑な社会課題に向き合うことが求められている。従来,社会課題の抽出手法として集団討議やデータ解析等が存在しているが,特定の自治体の社会課題を客観的,かつ,合理性高く成立させた手法はない。そこで本研究では,高齢化を題材に,客観性を保ちながら,その地域における新規な社会課題を抽出する手法を検討した。市議会議事録を情報源として採用し,ベンチマーク都市と調査対象都市の比較を行うという本研究で検討した手法により,各自治体にとって,高齢化に関する新規な社会課題を客観性高く抽出できることがわかった。本研究で検討した手法は,自治体での活用が期待される。