著者
坂本 泉 開本 亮 高石 静代 近成 涼香
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第17回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.7-12, 2020 (Released:2020-06-19)

本研究では、「睡眠の質」に着目し、現状の睡眠ビジネスにおける課題を分析し、今後期待されるサービスを予測することを目的とした。まず現状の睡眠ビジネスにおける課題について、睡眠ビジネスに関する市場、睡眠ビジネスの全体像、睡眠ビジネスのプレイヤー、睡眠ビジネスの具体例を把握し、睡眠に影響を与える要因マップの作成をして、調査および分析を行った。次に、新聞記事を中心とした市場調査、睡眠分野でトピックになっている論文の抽出、特許調査を行い、さらに中央官庁の関連する政策から課題を分析した。その結果、睡眠の質の測定は向上してきており、病院や介護施設等を対象とするBtoBのソリューションはすでに実用化されているものの、個人にフォーカスするBtoCのソリューションが不足していることが分かった。したがって、将来においては、そのソリューションを加味したデバイスをパーソナルで使用できる睡眠ビジネスが普及すると考えられる。
著者
棚橋 佳子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.344-348, 2020-07-01 (Released:2020-07-01)

機械学習や深層学習等のAI技術を取り入れて,データベース提供サービスを充実させることは,コンテンツ業界において,スタンダードになりつつある。本稿ではAI技術が高品質のコンテンツと融合することで見られる変化を,コンテンツ・プロバイダーの立場から考察する。ユーザの関わりや観点からAI技術とコンテンツの融合がもたらすインパクトを3つのパターンに分けた:1)製品やサービスの中にAI技術を組み込むことによる“製品+AI技術組み込み型”,2)コンテンツの製作過程にAI技術を組み込む“AI技術間接享受型”,3)ユーザとコンテンツ・プロバイダーが協働でAI技術を駆使し業務改善を実現する“AI駆動・個別構築型”。本稿では,これらの事例を概観する。
著者
パテントドキュメンテーション委員会
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.335, 2020-07-01 (Released:2020-07-01)

知的財産管理が求められる業務は,事業戦略,情報分析,価値評価,発明・創造支援,ブランド・デザイン,デューデリジェンス,契約,リスクマネジメントなど様々です。こうした業務は,それぞれの専門家が様々に連携し合い,協働しながら進めてきました。一方,近年のIT技術の進展は,AI,RPA,IoTなどを駆使したより高度な情報化社会を生み出し,知的財産の分野ではIPランドスケープという言葉も頻繁に聞かれるようになってきました。こうしたいわばAI時代において,インフォプロの今後はどうなるのでしょうか。本特集号では,「知財活動に従事するインフォプロとしての心構え」,そして近年注目されている「IPランドスケープ」について解説された今年1月の新春セミナー「情報調査・分析およびインフォプロの今後」を軸に,知財情報の調査・分析業務の効率化,ツールとの協働・共創,インフォプロが吸収・成長すべきこと,身に着けたほうが良いスキル・知識・経験など,各国の状況や知財AI活動,学術文献調査の実態も含めて,各分野で最も輝いている専門家に執筆をお願いしました。はじめに,野崎篤志氏(株式会社イーパテント)の今年1月の新春セミナー「情報調査・分析およびインフォプロの今後」を,録音とプレゼン資料を基に再現しました。これを受けて,棚橋佳子氏(クラリベイト・アナリティクス・ジャパン株式会社)には,コンテンツ・プロバイダーとしてのお立場から,特許のみではなく学術文献についても含めて,今後のデータベースはAIの発展とともにどのように変化していくのかについて解説いただきました。平尾啓氏(アイ・ピー・ファイン株式会社)には,知財AI活用研究会の研究事例についてご紹介いただき,AIの具体的な知財活動への活用について解説いただきました。酒井美里氏(スマートワークス株式会社)には,「AIとの付き合い方」という視点で,各国のAI活用状況を紹介いただきながら,サーチャ-がAIと向き合うための心構えについて解説頂きました。つづいて桐山勉氏(はやぶさ国際特許事務所)に,IPランドスケープと各種AIを駆使してC-Suiteを説得できる,将来のインフォプロ像について提言いただきました。最後に,和田玲子,中村栄両氏(旭化成株式会社)に,企業におけるIPランドスケープの取り組みについて,自社の戦略的な知財情報活動を振り返りつつご紹介いただき,インフォプロが吸収すべきこと,身に着けたほうが良いスキル・知識・経験などについて,人材育成の立場からもまとめていただきました。今回の特集は,AI情報検索の分類からその活用,インフォプロのAIへの向き合い方,そして未来のインフォプロ像と人材育成までを盛り込みました。是非皆様の知的財産業務にお役立ていただけたらと存じます。PD委員会(佐藤秀顕,大島優香,桐山 勉,江口佳人)知財担当理事(屋ヶ田和彦)
著者
塩谷 綱正 堀池 彰夫 髙梨 睦 橋本 道枝 神谷 昌男
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第17回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.27-30, 2020 (Released:2020-06-19)

自治体は、人や資金等が限られているため、解決すべき社会課題を的確かつ効率的に抽出する必要がある。社会課題の抽出手法としてデータ解析や集団討議等が存在しているが、従来の手法では地域性と客観性の両立が困難であった。そこで、本研究では、高齢化を題材に、市議会議事録を情報源にして、地域性と客観性を保ちながら新規な社会課題を抽出する手法を検討した。高齢化が進み、種々の高齢化関連施策が展開されている富山市をベンチマーク都市に選定した。富山市の過去4年の市議会議事録を目視とテキストマイニングで解析して、新規な社会課題の候補を選定した。次に、富山市と地理的及び人口条件が類似し、高齢化比率が富山市よりも低い調査対象都市を選定し、これらの都市の市議会議事録に、選定した上記社会課題が含まれているかを確認した。その結果、全ての調査対象都市で従来認識されていなかった高齢化に関する新規な社会課題を抽出できた。
著者
斉藤 美貴子 前岩 幸
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第17回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.21-26, 2020 (Released:2020-06-19)

企業が新規事業を立ち上げるにあたっては、社会ニーズに合致した事業であることを見極め、また、事業化するための課題を解決する必要がある。企画部門は、企業全体を俯瞰して、複数の事業部を巻き込んだ大きなビジネスモデルを策定する役割を担う。本研究では、企画部門が新たなビジネスや課題を事業部に提案すると仮定して、陸上養殖を研究題材に、情報の活用手法を模索した。Web情報から未来を予想し、発想を展開する手法を報告する。この発想法により、新たな技術確立の必要性や新ビジネスの可能性を見つけることができた。更に、論文調査、特許調査で得られた情報も加え、クロスSWOT分析し、バックキャストによる事業ストーリーを作成したので報告する。
著者
棚橋 佳子 褚 冲 澤谷 弾
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第17回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.49-53, 2020 (Released:2020-06-19)

本研究では、基本特許数、成功率、グローバル率、影響度の4つの指標に基づいて、9年間にわたり世界のトップ100機関を毎年特定しているDerwent Top 100 Global Innovatorの各年の結果をまとめ、2014年―2020年の7年の経年変化を調査した。Top 100に入るには、出願者全体の中で、4つの指標がどの指標においてもバランスよく良い位置を占めることが要求される。9年間のTop100の総合点は上昇続け、特許数とグローバル性で抜きんでていた大企業も、出願すべき特許を厳選し、影響力を与える特許を出すこと、特許のエコシステムを牽引することが要求されるつつある。9年間における100社選出は日米の企業が拮抗する中、2国で70%を占めてきた。しかしながら、出願者数や特許数そのものが増加し続ける中、4つの指標の重みが変わってきた。トップの情勢が変わりつつあることを2020年のレポートで考察する。
著者
古崎 晃司
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.303-308, 2020-06-01 (Released:2020-06-01)

ウェブでの情報資源を相互にリンクして公開したLOD(Linked Open Data)は,知識の相互関係をグラフ構造で表したナレッジグラフ(知識グラフ)としても位置づけられる。本稿ではLODをナレッジグラフとして活用するための技術について解説する。具体的には,オープンな知識ベースとして公開されているWikidataを例として,URIによるデータへのアクセス,SPARQLクエリを用いた検索,利用できるツール類といった技術を中心に紹介する。さらに,同様の技術が利用できるLODを国内での公開事例を中心に示し,LODをナレッジグラフとして活用するための基本情報を提供する。
著者
炭山 宜也
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.283, 2020-06-01 (Released:2020-06-01)

2020年6月号の特集は「ウェブを基盤とした社会」です。ティム・バーナーズ=リーが1989年に生み出したWWWの仕組みは,ウェブ上の情報資源の拡大に伴い人々の行動に影響を与え続けています。例えば,ウェブの情報検索による調べ物や,SNSによるコミュニケーション,ウェブサービスを利用した商品購入など,日々の生活にウェブは欠かせない存在になっています。本特集では,ウェブの成り立ちや仕組み,社会や私たちの生活に与える影響について5人の方々から解説をいただきました。総論では東京大学の大向一輝氏に,ウェブが人々のコミュニケーションや社会のあり方に与えた影響について2010年代を中心に概説いただき,今後の課題についてについて「法」「規範」「市場」「アーキテクチャ」の観点から議論していただきました。NTTセキュアプラットフォーム研究所の奥田哲矢氏には,ウェブサービスを支える通信技術について,セキュリティの観点からSSL/TLSとPKIに関する歴史と仕組み,そして今起こりつつある変化について解説をいただきました。国立情報学研究所の武田英明氏には,ウェブと社会との関りについてウェブの本質である「繋ぐ」ための仕組みや技術から解説をいただきました。大阪電気通信大学の古崎晃司氏には,多種多様な知識データを統合的な一つの知識ベースとして扱うナレッジグラフの技術について解説をいただきました。名古屋大学の笹原和俊氏には,ウェブの負の側面について,フェイクニュース拡散の仕組みを中心に解説をいただきました。登場から30年余りたったウェブの広がりが,今後の私たちの情報行動や生活そのものにどのような変化をもたらしていくかを見つめなおす特集となれば幸いです。(会誌編集担当委員:炭山宜也(主査),南山泰之,今満亨崇,野村紀匡)
著者
栗山 正光
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.461-466, 2004-09-01 (Released:2017-05-25)
被引用文献数
1

OAIS参照モデルは,デジタル情報の長期保存システム構築に関する有力な指針であり,国際標準規格ともなっている。本稿では,保存のためのメタデータに焦点を絞り,0AIS参照モデルに示された情報パッケージの概念と,それに基づいて行われているメタデータの枠組み規定の実際について論じる。OAIS参照モデルは,デジタル情報の保存活動を行っている諸機関で広く認知されているものの,それぞれが規定する実際の保存メタデータの枠組みは,0AISの情報パッケージの構成とはかなり異なった形でなされているのが実状である。個々のニーズと相互運用性・再利用性とのバランスが今後の課題となる。
著者
池田 貴儀
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.428-433, 2010-10-01 (Released:2017-04-25)
参考文献数
25

感情労働とは,肉体労働,頭脳労働と並ぶ第三の労働のあり方であり,サービス業において重要な要素とされている。感情労働による感情のコントロール技術は,利用者をはじめ様々な人と接する図書館員にとって,種々の業務をこなしていく上で欠かせないスキルといえる。その一方で,感情をコントロールすることは,本来の感情と業務として求められる感情との間にズレを生じさせる。感情労働は人と接することで満足感や充足感を得る肯定的な面とともに,感情のズレによりストレスの増加やバーンアウトの誘発を招くという否定的な面を持ち合わせている。本稿では,この感情労働という視点に着目し,図書館業務との関わりについて紹介する。
著者
油谷 曉
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.249-254, 2020-05-01 (Released:2020-05-01)

常に安心して安全にインターネットが使用できるように,各組織にはネットワークインフラ構築部門やセキュリティ対策チームが存在し,互いに連携しながら外部からの攻撃やマルウェア感染を未然に防ぐ活動を行っており,個人が使用するパソコンや各種サーバの機能不全/個人情報や機密情報の漏洩/Webサイトの改竄などのインシデントを発生させないことを活動目標としている。本稿では,セキュリティ技術やサイバー攻撃について解説した後,大学という特殊な組織で情報セキュリティを確保するために行っている様々な手法や試み,そして日々の戦いについて紹介する。
著者
蔦 大輔
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.238-243, 2020-05-01 (Released:2020-05-01)

サイバーセキュリティの確保は,本来,各々の組織において自主的に取り組むべきものであるが,近年のサイバー攻撃の巧妙化・複雑化により,自組織だけでの対策には限界があるということから,サイバーセキュリティに関する情報共有体制の活動が一層活発化している。本稿では,現在活動を行っている主なサイバーセキュリティに関する情報共有体制を紹介しつつ,平成31年にサイバーセキュリティ基本法の改正により組織されたサイバーセキュリティ協議会について,関係する条項を簡単に解説のうえ,情報共有を促進するための協議会の特徴や,立ち上げ以来の協議会の活動について紹介する。