著者
熊倉 啓之
出版者
一般社団法人 数学教育学会
雑誌
数学教育学会誌 (ISSN:13497332)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3-4, pp.99-107, 2014 (Released:2020-04-21)

多角形の1 つの内角に対して,外部にできる大きさが(360°-内角)に等しい角を「外周角」と呼ぶことにする。本研究の目的は,外周角の性質を数学的に考察した上で,外周角の性質に関わる教材化を検討し,指導展開例を開発することである。まず,外周角の性質について考察して,「六角形では,(4 つの内角の和)=(他の2 つの外周角の和)が成立する」等をはじめとして,全部で10 個の性質に整理した。次に,外周角の性質に関わる教材化について検討し,3 つの問題で構成する指導展開例を開発した。最後に,開発した教材の有効性について考察を加えた。
著者
佐藤 宣明
出版者
一般社団法人 数学教育学会
雑誌
数学教育学会誌 (ISSN:13497332)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.59-67, 2011

直線に関する対称移動を表す行列は固有値±1 をもち、不動直線と関係している。行列が昭和45 年(1970)告示の高等学校学習指導要領の科目「数学IIB」に登場して40 年以上経ち、当然、「固有値からみた不動直線」という見方が定着しているものだと思っていたが、教育現場ではそうでもないようだ。平成21 年(2009)告示の高等学校学習指導要領では、行列の内容がすべて削除されてしまうが、将来「行列」が復活するとき、若手教員たちが勉強するために「固有値」の考え方による解法を残しておく必要がある。
著者
田中 博 森 竜樹 四ツ谷 晶二
出版者
一般社団法人 数学教育学会
雑誌
数学教育学会誌 (ISSN:13497332)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1-2, pp.53-57, 2018 (Released:2019-10-16)

高校数学の数列の学習において,「統一的な見方」の導入が重要であると考える.特に「累乗の和 の公式」については,統一性のない表記による指導法に工夫の余地があるのではないかと考える. ここでは,より統一性を持った表記を提案する.この表記法は単に覚えやすいというだけでなく, 4 乗和,5 乗和等への発展にも繋がる.また,その計算手法は,「等比数列の和の公式」等へも応 用できる.
著者
守屋 誠司 加藤 卓 進藤 聡彦
出版者
一般社団法人 数学教育学会
雑誌
数学教育学会誌 (ISSN:13497332)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3-4, pp.211-219, 2016 (Released:2020-04-21)

割合問題解法のツールとしてのボックス図(乗除数量関係図)の効果を調査した。これは従来の2本数直線表現に比べて,「基になる割合である1」,「基になる量」,「比べられる量」,「比べられる量の割合」の4つの関係が,視覚的に明示できる特徴をもつ。このボックス図を用いて,割合を未習の5年生2名に対して5時間の教授介入を行った。その結果,ボックス図自体の使用は比較的容易であり,それを用いることで割合の文章題にも正しく立式できるようになることが示唆された。さらに,全国学力・学習状況調査問題の算数B問題として出題された正答率が著しく低い問題にも,正答することができた。
著者
守屋 誠司 寺本 京未 岡部 恭幸 大黒 孝文 Noppawon Theerapuncharoen
出版者
一般社団法人 数学教育学会
雑誌
数学教育学会誌 (ISSN:13497332)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.15-26, 2007
被引用文献数
2

創造性の育成を目的とした日本とタイの中学生の遠隔協同総合学習の実際について報告する。2004年11月から2005年1月にかけ,タイ国ラジャパッド地域総合大学アュタヤ校附属中学校と神戸大学発達科学部附属住吉中学校の第3学年生どうしで環境問題を採り上げて,遠隔協同総合学習の教育実験を行った。日本側は「イボニシガイヘの環境ホルモンの影響」を,タイ側は「水の汚染」をお互いに学習・調査し,その結果について交流した。環境問題が遠隔協同総合学習に適切な教材であること,また,聞く立場と発表する立場では,育成される創造性の因子が異なることが示唆された。
著者
中村 好則
出版者
一般社団法人 数学教育学会
雑誌
数学教育学会誌 (ISSN:13497332)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3-4, pp.109-118, 2014 (Released:2020-04-21)

小中学校の通常学級に発達障害等の児童生徒が約6.5%在籍している。しかし,実際には6.5% には入らないが学習面等に困難をもつ児童生徒がその周辺にも存在し,算数学習においても彼らへの指導の在り方は喫緊の検討課題である。そこで,本研究では,算数学習におけるつまずきに関する先行研究をもとにつまずきとその支援を分析・整理し,算数学習につまずきのある児童への指導の在り方を検討するための基礎的な資料を得る。分析の結果,算数学習におけるつまずきを,①学習活動に関するつまずきと②学習内容に関するつまずき,③その他のつまずきに整理した。また,数学教育研究でのつまずきは学習内容に関するものが多く,学習活動に関するものが採り上げられていない。一方,特別支援教育研究でのつまずきは学習活動に関するものを含んでおり,学習内容に関するつまずきも数学教育研究のものとは異なるものが少なくない。これらのつまずきの関連を考慮して算数学習におけるつまずきを捉え直して,算数学習につまずきのある児童に対する指導を検討してくことが必要であることが示唆された。
著者
岡部 進
出版者
一般社団法人 数学教育学会
雑誌
数学教育学会誌 (ISSN:13497332)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1-2, pp.21-27, 1994 (Released:2020-07-06)

新聞を見ると,学校数学がたくさん登場している。それなのに学校数学は日々の生活に関わっているかと質問すると,回答は否定的である。特に高校生になると,生活に関わっている数学は算数の四則計算程度だという。学校数学が庶民レベルにないことの表れである。本稿は,その打開のための提案と,実践の方向性をしめした。
著者
沼田 稔
出版者
一般社団法人 数学教育学会
雑誌
数学教育学会誌 (ISSN:13497332)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3-4, pp.13-15, 1997 (Released:2020-07-06)

代数的な式をグラフを使って解くという発想はどこから生まれているか。代数学の発展の中で,空間を解析するのに強力な方法を与えるために座標は導人された。グラフで方程式の解を求めると言うのはデカルトの精神に反する。また,この問題は具象と抽象についての本質的な問題を含んでいる。方程式に対応するグラフを描くのは方程式の一つの表現,描かれたグラフは具象であって,抽象的な方程式そのものではない。グラフをいくら読んでも方程式の解は得られないと言うことを意識化しなければならない。この問題は,小学校の算数,中学校の数学の間の数学教育の連続性と質の変化,さらには現代数学の方向とも係わっており,こうした視点から問題点を整理した。
著者
中村 好則
出版者
一般社団法人 数学教育学会
雑誌
数学教育学会誌 (ISSN:13497332)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1-2, pp.39-50, 2016 (Released:2020-04-21)

約98%の生徒が高校へ進学し,高校の数学指導でも多くの課題を抱えている。その1つに,高校教育として生徒に共通に身に付ける学力を確保するために,数学学習における生徒のつまずきと支援を検討することがある。本研究では,特に,生徒に共通に身に付けさせる必履修科目である数学Ⅰの「二次関数」の学習内容の理解に焦点を当て,高校卒業後の学生の様相を明らかにし,①数学学習のつまずきと支援を考察するための基礎的な資料を得ることと,②「二次関数」の指導への示唆を得ることを目的とする。そのために,公立短期大学校の第1学年の学生を対象に質問紙調査と学力調査を実施し,それらの結果を分析した。
著者
後藤 学
出版者
一般社団法人 数学教育学会
雑誌
数学教育学会誌 (ISSN:13497332)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3-4, pp.171-182, 2015 (Released:2020-04-21)

本稿では,幼児期における数学教育はどのような内容が研究・実践されてきたのかを文献研究によって明らかにした。また,それをもとに幼児教育の中で数学教育を実践するための可能性を検討した。検討項目は幼児期における数学に関する指導内容,幼児教育における数学教育の取り組み,数学教育の内容・方法としての妥当性,小学1年の教育内容も含めた接続の在り方である。文献は心理学と数学教育両面から研究されている著作を対象とした。その結果,幼児期における数学の指導内容は数学,心理学それぞれの立場からすでに体系化されているが近年はそういった包括的な実践研究はあまり見られないことが明らかになった。当時の研究・実践内容は現代でも充分実践が可能でありかつ必要で,4氏の実践した教育内容をはじめ数学的な内容は幼児教育の中で取り組んでいく必要がある。