著者
高瀬 美由紀 寺岡 幸子 宮腰 由紀子 川田 綾子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:02859262)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.103-109, 2011-09-20
参考文献数
67

本研究の目的は,国外文献を通して,看護実践能力の概念を検証することである。文献検索はCINAHLとMEDLINEを用い,nurs*とcompeten*のキーワードを掛け合わせて実施した。対象出版年は2000年から2009年とした。その結果,60文献を抽出した。看護実践能力の概念は,Rogersの概念分析法を用いて検証した。その結果,看護実践能力とは,看護実践における専門的責任を果たすために必要な個人適性,専門的姿勢・行動,そして専門知識と技術に基づいたケア能力という一連の属性を発揮できる能力,と定義できた。しかし,看護実践能力の発揮レベルについては総意が得られておらず,認識の統一が必要である。また,看護実践能力の構造化や先行・帰結因子の探求が不十分であり,看護実践能力の概念を確立するためには,さらなる検証が必要とされている。
著者
北尾 良太 鈴木 純恵 土井 香 清水 安子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.1_123-1_133, 2013

脳卒中者は,医療者の判断とは違う視点で自らの病いを経験している。本研究の目的は,回復期リハビリテーション病棟入院中での脳卒中者一人ひとりの病い経験がどのように成り立っているのかを,当事者の立場に立って記述することである。病いの経験の語りは,現象学的視座を手がかりに,医療者の枠組みでとらえることなく記述された。 3名の経験を本研究で記述(分析)した。彼らは,急性期では自身の意識がおかしいと自覚しない。彼らは,その朦朧としたなかで見たり感じた世界や,覚醒後に他者から聞いた自分の状況を織り交ぜながら,自身の発症時の経験をかたちづくっていた。そして彼らは,医療者とのかかわりを積み重ねていくなかで,あとで自身の病いの意味がわかってきていた。こうして彼らは自身の経験を更新し,回復期での療養行動に反映していた。看護師は,日々の看護実践が患者にどう反応されているのか,常に問い続ける姿勢をもってかかわる必要がある。
著者
新美 綾子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.4_33-4_44, 2011-09-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
42

新卒看護師が実施する輸液ラインのある患者の寝衣交換技術を看護教員と看護実践者が同時に観察する方法を通して,新卒看護師の看護技術に対する看護教員と看護実践者の評価の視点と到達基準を明らかにした。看護教員は技術面に焦点をあて,⑴教授内容である基本的な方法で行われているか,⑵患者を尊重した丁寧な実施であるか,⑶一人でやり遂げることができるかを評価の視点とし,看護技術を一人でやり遂げることを到達基準としていた。看護実践者は,臨床現場のやり方を基準に,⑴声かけなどの患者応対面はどうか,⑵患者に苦痛や危険がなかったかを評価の視点とし,臨床現場と同じ状態で患者に苦痛,負担なく安全にできることを到達基準としていた。さらに,看護実践者には,声かけと出来栄えにより看護技術全体の評価を決定づける傾向を認めた。また,看護実践者が評価の基準としている臨床現場のやり方を,看護教員は基本から離れている実施としてとらえる相違を認めた。
著者
谷本 千恵
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.5_61-5_70, 2007

本研究の目的は保健師の当事者グループに対する認識と関わりの実態を明らかにし,セルフヘルプ・グループとしての機能を発揮するための支援方法の基礎資料を得ることである。A県内の保健師348名全員を調査対象者とし自己記入式調査票を郵送した。149名を有効回答とし分析対象とした(有効回答率42.8%)。保健師はサポートグループを立ち上げセルフヘルプ・グループを目指して支援していた。サポートグループとセルフヘルプ・グループに共通の援助機能を認識していたがセルフヘルプ・グループ独自の援助機能についての認識は低いことが示唆された。当事者グループへの支援は当事者の主体性を重視しつつも場合によっては専門職のリーダーシップやサポートが必要と考えていた。9割が当事者グループへの関与は自身にプラスになると認識していた。当事者グループの発達段階に応じた支援方法を検討していくためにも当事者グループの呼称統一の必要性が示唆された。
著者
出羽 恵子 叶谷 由佳 佐藤 千史
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.4_101-4_107, 2004

病院の言葉遣いに対する指導内容と実際の看護職の言葉遣いに対する患者満足度の関連を明確にするために,東京23区・大阪市・島根県・鳥取県で一般病床数100床以上の全病院の看護管理者を対象とし,看護職の「様」呼称・敬語使用の統一状況と,それらのうち,敬語使用統一病院の入院患者(以下,統一群)と不統一病院の入院患者(以下,不統一群)に対し,看護職の実際の言葉遣いと患者満足度を調査した。 「様」呼称統一の割合は入院において低く,敬語使用統一の割合は外来,入院とも高かった。「統一群」の患者は看護職からより丁寧な言葉で話されていることが有意に多かった。「統一群」の患者はより丁寧な言葉遣いを希望することが有意に多く,「統一群」・「不統一群」間で病院や看護職への患者満足度に有意差はなかった。看護職の言葉遣いがより丁寧であるほど,病院や看護職への患者満足度が有意に高かった。
著者
出羽 恵子 叶谷 由佳 佐藤 千史
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:02859262)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.101-107, 2004-09-10
参考文献数
8

病院の言葉遣いに対する指導内容と実際の看護職の言葉遣いに対する患者満足度の関連を明確にするために,東京23区・大阪市・島根県・鳥取県で一般病床数100床以上の全病院の看護管理者を対象とし,看護職の「様」呼称・敬語使用の統一状況と,それらのうち,敬語使用統一病院の入院患者(以下,統一群)と不統一病院の入院患者(以下,不統一群)に対し,看護職の実際の言葉遣いと患者満足度を調査した。<br> 「様」呼称統一の割合は入院において低く,敬語使用統一の割合は外来,入院とも高かった。「統一群」の患者は看護職からより丁寧な言葉で話されていることが有意に多かった。「統一群」の患者はより丁寧な言葉遣いを希望することが有意に多く,「統一群」・「不統一群」間で病院や看護職への患者満足度に有意差はなかった。看護職の言葉遣いがより丁寧であるほど,病院や看護職への患者満足度が有意に高かった。
著者
長瀬 睦美 澤田 愛子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.4_17-4_28, 2009

本研究の目的は,喉頭全摘出術を受けて失声した患者が代替コミュニケーション手段を獲得する過程を,彼らの体験や思いに焦点をあてて明らかにし,彼らへの看護的支援の示唆をえることを目的とした。データの収集は半構成的インタビューで行った。研究対象は喉頭ガン・下咽頭ガン等の治療のために喉頭全摘出術を受けて失声した在宅療養中の6名であった。データは質的研究手法により分析した。結果,3つのメインカテゴリーと9つのカテゴリー,31のサブカテゴリーを抽出した。喉頭摘出者は,失声によって様々な体験や思いを余儀なくされているが,彼らを取り巻くサポートは十分であるとはいえないのが現状である。今後は,発声会の役割を充実させ,家族,そして医療関係者との連携を強化し,社会的なサポートシステムを確立していくことが重要であり,看護師等の医療関係者の一層の介入が望まれる。