著者
瀬谷 共美 永井 伸夫 田村 照子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.333-337, 2010

<p>ヒトの体臭は,様々な種類のにおい成分から成り,これらによって時には不快感がもたらされることがある.本研究では若年女子のにおい成分について定量分析すると共に,被験者間の相違について検討することを目的とした.におい成分を採取するため,10人の健康な女性(年齢は21~34歳)を被験者とし,背部,腋窩に長方形の試料布(100%綿製5×10cm)を取り付けたTシャツと足底部に同様の試料布を取り付けた靴下を32時間着用させた.分析はガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)で,ヘッドスペース法により行った.結果,アルデヒド系化合物ではオクタナール,ノナナール,ノネナール,アルコール系化合物では2-エチルヘキサノール,ケトン系化合物では6-メチル-5-ヘプテン-2-オンがすべての被験者において共通して検出された.また,背部においてアルデヒドとケトンが,他の部位と比較して有意に多く検出された.ノネナールを含めアルデヒド系3種については,検出量に差はあるものの,全ての被験者において認められ,これらのアルデヒド系化合物は,背部の皮膚から分泌された脂肪酸の酸化分解反応によって産生されたものと考えられた.以上,衣服に付着した体臭成分を分析することは,心理学的及び生理学的にQuality of Life (QOL)の向上に貢献するものと思われる.</p>
著者
橋本 幸子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊消誌 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.43, no.11, pp.714-730, 2002

青年期カップルの服装傾向を規定する要因を検討するために, 2001年9月~10月に関西, 中部圏の大学生, 専門学校生を対象に質問紙調査を行った.予備調査を通して分類された服装4タイプの着用程度によって, 恋人関係にある71カップルを「服装類似カップル」「服装非類似カップル」に分類した.それらに関してステップワイズ方式の重判別分析を用い, 親密性, 衣生活スタイル, 恋愛スタイル, 役割分担行動によって予測した結果, Pragma, Storge (共に女性) , Mania (男性) , 男性的役割行動 (女性) , 『規範性』 (男性) , 男性的役割行動 (男性) , 『社会性・実用性』 (女性) が判別に寄与していた.判別分析の結果, 女性のPragma, Storgeタイプ, 男性, 女性の男性的役割行動の高さは服装の非類似傾向と, 男性のManiaタイプ, 男性の『規範性』, 女性の『社会性・実用性』の高さは服装の類似傾向との関連が示唆された.
著者
辻 幸恵
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.933-941, 2014

<p><tt>「ゆるキャラ」は地域の特産物や歴史を多くの人々にアピールするためにつくられている.本報告ではどの「ゆるキャラ」が大学生に人気があるのかを中心に調査を実施した.その結果,特に大学生たちの認知が高かった「ゆるキャラ」はひこにゃんとくまモンであった.彼らは大学生たちの好感度も高かった.ひこにゃんは大学生たちからはかわいいそして親しみやすいので人気があった.くまモンはさらに多くの理由から人気があった.かわいいと親しみやすいの他に,いやされる,わかりやすい,ほほえましい,愛嬌があるという理由があった.かわいいと感じる要因は,基調の色が白や黄色であること,丸いこと,動物のモチーフであることなどであった.キャラクターグッズは男子よりも女子の方が所持が多かった.このことから「ゆるキャラ」は女子の目線で作成された方が良いと考え</tt><tt>る. </tt></p>
著者
藤原 美佳
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.299, 2020-04-25 (Released:2020-04-25)
参考文献数
17

本研究の目的は,SNS やスマホ決済といった時代に則した要因および消費価値観に焦点を当て,ファストファッションの消費行動を規定する要因について検討を行うことである.二項ロジスティック回帰分析の結果から,SNS ではInstagram が,スマホ決済ではLINE Pay,Amazon Pay,楽天Payが,消費価値観では有名人や周囲の人の評価・評判,流行に関する項目がファストファッションの購入と関連していることが明らかになった.決定木分析の結果から,Instagram の利用が購入に対して最も重要な要因になっていることが示された.また,InstagramおよびAmazon Pay を利用し,さらにPay Pay を利用している場合においては,ファストファッションの購入が89.3%と高い値になることが示された.本研究の結果から,Instagram やスマホ決済,有名人や周囲の人の評価に関する価値観はファストファッションの消費行動の規定要因であることが示唆された.
著者
平松 隆円
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.750-757, 2007

本研究の目的は, 化粧の日常的な感情調整作用に注目し, 男女別に化粧を含む日常生活行動の心理的負担や化粧 (スキンケア) の感情調整作用について検討し, それらが個人差要因といかに関連しているのかを明らかにすることである<BR>日常生活行動では, 男女とも「友人とのおしゃべり」「睡眠」「音楽」などが気晴らしになり, 「テスト勉強」「通学」「学校の授業」は負担になることがわかった.<BR>スキンケアの感情調整作用には, 『やすらぎ』と『はずみ』があり, 朝と夕という一日の活動の始まりと終わりといった生活サイクルと感情調整作用が関連し, 公的自意識と私的自意識が影響していることがわかった.
著者
鍵山 和香 RÜTHSCHILLING Evelise Anicet
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.656-663, 2013-07-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
20

多民族を対象とした下着の企画や設計の指針を得ることを目的として,ブラジルの下着の市場調査ならびに,ブラジル人女子大生(17歳~39歳)の下着の着用実態(241名),体つきの意識(229名),所持ブラジャーの実物調査(50枚)を実施した.ブラジル市場で多かったブラジャーのタイプは,ワイヤー入り3/4カップ,シンプルなデザイン,モールドカップ,土台なしタイプであった.女子大生が所持していたブラジャーも同様の傾向を示した.着用していたショーツは,ヒップを包みこまないタイプが83%を占めた.アウターにひびき難く,自然なシルエットになる下着を志向していた.理想とする体型はくびれ型,バストは半球型,ヒップは三角形型であった.バストを理想に近づける方法として,ブラジャー着用に次いで,55%のものが乳房整形手術をあげた.ブラジル人女子大生の体つきの意識を同年代の日本人と比較すると,ブラジル人は日本人より豊満な体格であるが自己を細いと評価し,日本人のような痩身志向は認められなかった.
著者
西岡 敦子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.332-338, 2013

<p><tt>現代では,「化粧は女性がするもの」とされている.しかし,自分を美しく見せたい,他人に良く思われたいという気持ちで化粧をする女性がいるのであれば,同じ気持ちで男性が化粧をしても良いのではないか.男性の化粧行動に対して,周囲の違和感がない環境になれば,生きやすいと感じる男性も出てくるのではないか. </tt></p><p><tt>そこで,日本の男性の化粧行動の経緯を概観し,今後の男性の化粧行動について個人の意識,意見も踏まえて考察した. </tt></p><p><tt>男性は化粧をするものではないという意識が広がり始めたのは明治時代である.その後,男性用化粧品,男性用エステ,男性向け美容雑誌,化粧をした男性有名人の影響,眉を整えたスポーツ選手の活躍で,男性の化粧に対する周囲の意識は徐々に変化していった.化粧をしたい,また,普段からしているという男性や,男性にも化粧をして欲しいという女性も存在していることもわかった.</tt></p><p><tt>今後,男性の化粧行動も受け入れられていく可能性は大いにあるだろう.しかし,男性の化粧行動が受け入れられたとしても,現在,成人女性に対して存在する,化粧をして当たり前であり,すべきであるという社会風潮が男性にも広まってはならないと考え</tt><tt>る. </tt></p>
著者
平松 隆円
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.849-856, 2014

<p><tt>本研究は,化粧規範意識を他者意識・自意識・形式主義・独自性欲求がどのように規定するのかについて検討を行なうことが目的である.学生男子</tt>190<tt>人(平均年齢</tt>=20.08<tt>歳,</tt>SD=1.69<tt>),学生女子</tt>342<tt>人(平均年齢</tt>=19.33<tt>歳,</tt>SD=1.27<tt>),親世代男子</tt>47<tt>人(平均年齢</tt>=49.30 <tt>歳,</tt>SD=4.99<tt>),親世代女子</tt>158<tt>人(平均年齢</tt>=47.44<tt>歳,</tt>SD=4.33<tt>)を対象に,化粧規範意識,自意識,他者意識,形式主義,独自性欲求などを内容とする質問紙調査を行なった.その結果,おおむね学生男子では形式主義と独自性欲求が,学生女子では外的他者意識,公的自意識,私的自意識,形式主義,独自性欲求が,親世代男子では私的自意識が,親世代女子では内的他者意識,空想的他者意識,公的自意識,形式主義が化粧規範意識を規定していた.</tt></p>
著者
川上 梅
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.224-233, 2020-03-25 (Released:2020-03-25)
参考文献数
12

1998 年から2018 年までの偶数年11 年分の成人女子の消費者意識(生活価値観,消費,衣食住)に関する計61 項目の肯定率データ(博報堂生活総合研究所による)に主成分分析を適用した結果, 衣に関する消費者意識を3 主成分に集約した.第1 主成分(寄与率35.4%)は若い年齢程高い,年齢差を表す主成分であり,時代差はほとんど認められなかった.第2 主成分(寄与率24.6%)はこだわり意識の強弱を表す主成分で,20 年間,全年齢層で漸減する時代差を表す主成分であり,所謂スローライフからファストライフへの移行を示していた.第3 主成分(寄与率11.9%)はブランド品の良さを評価し,ディスカウントショップでも良いから買いたいと思い,品数が揃っている実店舗までわざわざ買いに行くという意識を表す主成分であった.1998 年には若い年齢層で顕著であったこのバブル期のファッション意識は2008 年頃までに終焉を迎えた.
著者
薩本 弥生 丸田 直美 斉藤 秀子 諸岡 晴美
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.80-89, 2017-01-25 (Released:2017-01-27)
参考文献数
9

ブラジャー着装時のズレ防止や防振性の観点から,動作時の胸部動態や着装感に年齢・身体特性・ブラの種類が及ぼす効果を明らかにするために以下の実験を行った.被験者は若年群9 名(19-22 歳),中年群6 名(40-62 歳)を対象とした.胸部の身体特性を明らかにするため三次元画像解析による身体形状,胸部圧縮変形量,超音波画像診断による脂肪厚,衣服圧を計測した.振動やズレを計測するためにハイスピードカメラによる三次元動作解析を行った.ブラの着装条件は,補整ブラのワイヤ有とワイヤ無,スポーツブラ,ノーブラの4 種,運動は前方挙上(180˚)である.ハイスピードカメラによる三次元動作解析により動作時の乳頭点では,補整ブラよりスポーツブラの振動抑制効果が高く,中年群は若年群より振動が大きくブラによる差が小さいこと,中年群では脂肪厚が厚くカップサイズが大きい人ほど振動もズレも大きいこと,若年群では胸部の圧縮変形量が小さい人ほど振動が小さいことが明らかとなった.動作時の衣服圧は乳頭位とサイドパネルではスポーツブラが補整ブラよりも有意に小さいが,下部胸囲では逆だった.動作後の着装感評価でズレ感は振動感および快適感に相関があった.動作時には適度に下部胸囲位を圧迫したブラは振動やズレを抑えるため快適と感じると考えられる.
著者
村﨑 夕緋 諸岡 晴美 渡邊 敬子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.248-254, 2019-03-25 (Released:2019-03-25)
参考文献数
8

本研究では,三次元計測装置を用い,審美性に影響を及ぼす背部体表面の凹凸を定量化することを目的とし,30 歳代および60 歳代の被験者を用い,数種のデザインの異なる補整ブラを試料として実験を行った. はじめに,正中矢状面と肩峰点を通る前頭面との交線から放射状に背部の垂直断面を算出し,体表面の凹凸が最も明瞭に表れる部位が後ろ正中線から70°~75°の範囲であることを捉えた.後腋点を通る垂直断面で中心から体表面までの水平距離をL とし,ヌード時からの差をへこみ量(δ)と定義し,ブラの上辺および下辺テープ部分の衣服圧とδとの関係を検討し,δが衣服圧に依存していることを確認した.また,重回帰分析により,δが衣服圧および体表面の圧縮変形量と有意な関係をもつことが立証された.以上の結果から,δはブラ着用時の背部シルエットの凹凸による審美性の低下を最小にするブラの圧設計のための指標として有用であろうと結論付けられた.