著者
菅宮 健
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.485-497, 2000-05-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
21
被引用文献数
1

衣服の着用実態とその外気温との関連を調べることを目的とし, 北海道から沖縄に至る全国にわたって高校生の冬の着衣内容を調査した.沖縄を除いて, 気温が高いところほど, 男女高校生が上半身に着用している下着類の着用枚数及び合計クロー値が大きくなっていることが見いだされた.男子の下半身にも, 同様の傾向が見られた.高校の制服は保温性が全国的にほぼ同じなので, 沖縄を除き, 暖かいところの高校生ほど教室内で厚着をしていることになる.この興味ある現象について, 寒冷地ほど暖房が普及し室温が高いこと, ならびに寒冷適応と関連させて考察を行った.高校生が着用している下着類・靴下類・防寒用の外衣類などの品目別着用率, 及びそれらの品目の組み合わせの着用率を, 気温によるクラスター分析により区分した地域別に示した.これらのデータから寒いところの高校生ほど下着は軽装で外衣を厚着していることが判明した.
著者
小柴 朋子 田村 照子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.119-124, 1995-01-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
6
被引用文献数
3

人体皮膚の濡れ感覚感受性の支配要因を明らかにするため, 2種の方法で身体各部に濡れ刺激を負荷し, 濡れ感受性を調査した.I.面積の異なるろ紙 (12.52cm, 7.52cm, 52cm, 2.52cm) を温水で濡らして身体26部位の皮膚に貼付したときの濡れ感を測定した.被験者は成人女子5名.II.環境温25・34℃において身体6部位に対し水温・水量・荷重の異なる濡れた綿メリヤス布を接触子として静止・滑動させたときの濡れ感を測定.被験者は成人女子10名.その結果, 温度・熱流量変化が皮膚濡れ感の主たる要因であり, 荷重・水量等は温熱的要因ほどには皮膚濡れ感覚に影響しなかった.濡れ感受性には部位差が見られ, 皮膚濡れ感受性の内的支配要因として温・冷点や触点の知覚神経の分布密度が重要であることが示唆された.
著者
辻 幸恵
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.933-941, 2014-12-20 (Released:2017-11-28)
参考文献数
9

「ゆるキャラ」は地域の特産物や歴史を多くの人々にアピールするためにつくられている.本報告ではどの「ゆるキャラ」が大学生に人気があるのかを中心に調査を実施した.その結果,特に大学生たちの認知が高かった「ゆるキャラ」はひこにゃんとくまモンであった.彼らは大学生たちの好感度も高かった.ひこにゃんは大学生たちからはかわいいそして親しみやすいので人気があった.くまモンはさらに多くの理由から人気があった.かわいいと親しみやすいの他に,いやされる,わかりやすい,ほほえましい,愛嬌があるという理由があった.かわいいと感じる要因は,基調の色が白や黄色であること,丸いこと,動物のモチーフであることなどであった.キャラクターグッズは男子よりも女子の方が所持が多かった.このことから「ゆるキャラ」は女子の目線で作成された方が良いと考える.
著者
三野 たまき 松井 泉樹
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.207-216, 2008

近年, 脚の整容効果を目的とした着圧ハイソックスが多数市販されており, むくみを気にする人は足を細く見せるために圧の高い製品を選びがちである.しかし, 着圧ハイソックスの整容効果の詳細とこれが生体に及ぼす影響につては未だ明らかにされていない.本研究では快適で効果的なむくみを改善するためのハイソックスの基本設計条件を検討した.被験者は19~23歳の女子8名であった.一日2回, 測定間隔を4時間以上あけた午前と午後に, 下腿と足部の容積を自作の測定ブーツを用いて測定した.3種類のハイソックス ("ちょうど良い"と感じるAソックス, 最も低圧の市販着圧タイプのBハイソックス, Aハイソックスの上にサポーターで膝下から脹ら脛にかけて覆ったCハイソックス) を着用した時の, 被服圧とその圧感覚 (比率尺度によって評価) ・相対容積変化率 (午後の容積から午前のそれを差し引いた相対値) を調べた.すると, 足部ではAとCに比べBを着用した時の方が有意に圧は高く, かっ"きつい"と申告したが, どのハイソックスであっても相対容積変化率には差がなかった.下腿部では, A<C<Bの順に圧が有意に高く, その時の圧感覚も同一順に"きつい"と評価したが, 整容効果はAよりはB・Cであるものの, BとCは同程度であった.このことから下腿および足部の整容効果を期待する場合, 効果の期待できない足部を無理に圧迫する必要はなく, 下腿部のみの圧迫で充分であると考えた.また, 足部を圧迫せずに下腿部のみを圧迫 (Cハイソックス着用時) しても, 足部と下腿部をともに圧迫 (Bハイソックス着用時) した効果が下腿部で得られた.
著者
北島 恭代 齊藤 昌子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.784-793, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
16

染織文化財を修復する際には,劣化,損傷した部分に別の布を当てて行われることが多く,修復される布と修復に用いる布の適合性が修復の出来映えを左右し,更に染織品のその後の寿命を左右する重要な要因となる.現在,補修布の選択は,修復を行う人が触感や経験から判断して行っており,客観的なデータに基づいた選択は行われていない. 本研究は被修復布と補修布の適合性を布の剛軟度の点から明らかにすることを目的とし,その第一段階として,染織文化財に使用されている布の剛軟度測定法(立ち曲げ法)を考案し,江戸時代以降の染織品に使用された絹布と染織文化財の修復に使用された絹布127 種の剛軟性を測定した.得られたデータをJIS L 1096 のハートループ法の結果と比較し,立ち曲げ法から得られたデータの有効性を確認した. 立ち曲げ法で測定した結果から,江戸時代の小袖裂と明治時代以降の着物裂,および修復用絹布の諸特性(厚さ,平面重,織密度,織組織)と剛軟性を定量的に明らかにした.その結果から江戸時代の小袖裂は,明治時代以降の着物裂に比べ薄地で軽く,軟らかい傾向にあることが分かった.
著者
小菅 啓子 井上 和子 富田 弘美 杉山 真理 小林 茂雄
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.34, no.12, pp.640-651, 1993-12-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
10

下着と上着の着用意識の関係, 並びに, 下着・上着の着用意識と社会心理的特性との関係を検討することを目的とし, 学生・OL・母親を対象に質問紙法により調査を行った.主な結果は次の通りである.(1) 下着・上着の着用意識について, それぞれ, 因子分析を行い各々8因子を抽出した.下着の因子は, コーディネイト志向, デザイン性, 規範意識, 機能性, 習慣性, 趣味嗜好性, 経済性, 着用感である.上着の因子は, ファッション志向, 多様嗜好, 心理安定感, 自己顕示, 個性化, 経済性, 外観性, 素材意識である.(2) 抽出された下着及び上着の着用意識の各因子間の相関を, 正準相関分析により解析した.下着の経済性の因子は, 上着の経済性, 多様嗜好性の因子との間に関連があり, 更に下着のコーディネイト志向の因子は, 上着の自己顕示, ファッション志向, 心理安定感, 素材意識との間に関連がある.(3) 下着・上着の着用意識と社会心理的特性の関係は, 双方の着用意識について, 自己顕示欲と好奇心との間に相関の有意性が認められた.(4) 被験者群の違いは, 下着の着用意識において, 母親は実用性, 学生は経済性を重視する傾向にあり, 上着の着用意識においては, 学生・OLは服装によって心理安定感を得, 母親は経済性や素材意識などの機能面を重視していることが認められた.更に, 社会心理的特性については, 学生は同調と情報欲求, OLは自己顕示欲, 母親は同調の各特性と, 下着の着用意識との間に相関の有意性が多く認められた.
著者
大矢 勝
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.503-508, 2001-08-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
9
被引用文献数
1
著者
大矢 勝 甲斐 義明
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.510-517, 2011-08-20 (Released:2016-12-03)
参考文献数
12

洗浄への炭酸水素ナトリウム(重曹)の利用に関して,インターネット上の消費者情報の実情を調査するとともに,関連事項の実験的検証を行った.インターネット上では炭酸水素ナトリウムの洗浄利用について肯定するものが大部分を占め,その洗浄力の根拠として水の軟化作用を挙げているものが多かった.洗浄試験の結果,一般の洗剤類に比べて油脂,パラフィン,カーボンブラック,酸化鉄,ヘモグロビンなどの汚れ除去性は劣り,石けんに加えた場合も石けん単独よりも洗浄力が低下するが,脂肪酸に関しては高い洗浄力を示した.炭酸水素ナトリウムは高濃度で利用することが前提なので,強いアルカリ緩衝作用によると考えられる.炭酸水素ナトリウムが水を軟化するには30~60分以上の時間を要するので実用上は関係しない.水生生物毒性は非常に低いが,洗浄へ利用する時は使用量が多いためにLCI評価で不利な結果が得られる.総合的にみて炭酸水素ナトリウムは環境配慮型の洗浄剤として高くは評価できない.
著者
坂本 ゆか 中村 竜也 大矢 勝
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.528-534, 2021-08-25 (Released:2021-08-25)
参考文献数
15

米のとぎ汁は古来より洗浄剤として用いられてきたが,実際の洗浄力のレベルや,その洗浄メカニズムについては明らかにされていない.そこで,脂肪酸と無極性油をモデル汚れとして用いて米のとぎ汁の洗浄力をSDS 水溶液,米ぬか溶液,麺のゆで汁などと比較するとともに,米のとぎ汁に含まれるタンパク質やデンプン等をモデル化した試料液による洗浄性と比較した.また表面張力,粒度分布等のデータから,洗浄力要因について推定した.その結果,米のとぎ汁にはかなりの界面活性作用が認められ,SDS ほどではないが水よりは明らかに優位な油汚れに対する洗浄性が認められた.またその要因として,固体デンプン粒が固体状界面活性剤や研磨剤として作用し,さらに溶解タンパク質や米ぬか油等が複合的に作用して洗浄力を発揮していることが推定された.更に米のとぎ汁に関するWEB 上の消費者情報を分析した結果,洗浄メカニズムに言及した情報は少なく,一部で非科学的な主張も見られた.しかし,米ぬか油,デンプン,タンパク質等の個別の要因を挙げているサイトが比較的大きな割合を占めており,うまく活用することにより科学的な消費者教育に利用できる可能性が示唆された.