著者
大窪 建史 村西 進也 柴山 明寛 後藤 正美
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会北陸支部研究報告集 (ISSN:03859622)
巻号頁・発行日
no.51, pp.53-56, 2008-07-27

平成19年3月25日午前9時42分に発生した能登半島地震は、地震規模がマグニチュード6.9震源深さは約11kmであった。石川県能登(七尾市、輪島市、穴水町)で震度6強、石川県珠洲市で震度5強、新潟県中越(刈羽村)、富山県(富山市、滑川市、氷見市)で震度5弱、石川県加賀地方で震度5弱が観測された。ここでは、地震直後に実施した悉皆調査と半年後に実施した被災地の建物復興調査の調査結果について報告する。
著者
石丸 紀興
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.312, pp.115-122, 1982-02-28
被引用文献数
1

当時計画担当者たちも市民も確かな展望を持ち得たわけではなかった。従って時に悲観的となったが, それでいて悲愴感はなく, むしろ期待のようなものを持って, 都市の基本的な面での計画思想を展開した。未曽有の大戦災を受け, あまつさえ軍都としての将来が絶望に見えたとき, そこから必然的に芽生えたのは小都市思想であった。そして, とにかく生産に従事しながら復興を図ろうという工業都市思想であった。都市の性格としては, 明快に一つの結論が導びかれたわけではないが, 総花的で核のない総合都市とか文化都市, 観光都市とかいうよりも, 工業都市が最も現実的と評価されたようである。それは実際に政策を進める実務担当者の考え方が, いわば工業都市思想によって支えられていたからである。とはいえ, 何度も繰り返すように, それは確信ではなく, 願望から出発しているところに, 戦災復興時の特徴がある。小都市思想は2つの異なる根拠から形成されていた。もはや望んでも大都市になり得ないだろうという悲観論と, 本来都市のあり方としての理想論である。被爆後の状況は, それらの2つの根拠がともに強く共存し得たという特徴があった。また, 都市移転思想が原爆の惨禍に対する恐怖や記念性を訴えた点で極めて特異であった。このような計画思想は存在を確認するだけでもそれなりの意味を提起するであろう。戦災復興計画の物的計画に関して, あるいは復興計画全体に関しては, 稿を改めて展開することとする。なお研究に当っては, 財団法人「トヨタ財団」による研究助成金(昭年54年度, 55年度)が交付されたことを記し, 感謝の意を表します。
著者
仙田 満
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.322, pp.108-117, 1982-12-30
被引用文献数
13

本研究は, こどもにとってよいあそび環境とは, という問題へのアプローチとして, 大人の中に刻まれた原風景というものに着眼した。そして時がたっても強烈なイメージとして心に焼きついたあそびの風景=<あそびの原風景>の成立条件を探ることは, こどもにとってよいあそび環境の条件を探ることになるという前提に基づいて研究を進めた。方法としては, 10代後半から50代後半の108人を対象とし, 30分ずつの個別インタビューを行い, あそび場とあそびという2つの観点から分析していき, あそび空間との関係について考察した。その結果1)原風景となっているあそび空間は, 自然スペース, オープンスペース, 道スペース, 建築的スペース, アナーキースペース, アジトスペースの順である。そして, 自然, オープン, 道まで合わせると全体の80%を占める。2)自然スペースが原風景として成立するためには, 単に木や草があればよいのではなく, そこに沢山の生物が生きている事, そして泳ぐ事ができる美しい水である事, 大自然ではなく身近な自然-小川と田んぼ-であり, そこには生物がいる事が推測される。3)道が原風景として成立する場合には, 車が少なく, 道巾がヒューマンで, 電信柱とか道祖神とかがあそびのシンボルになったりする。そして家並の間に小さな路地や, すきまのあるような変化にとんで, しかも一街区をひとまわりできる道空間であることが推測される。あるいは坂道になっていて, ソリや自転車でスリルとスピードが味わえる構造もある。4)アナーキースペースの原風景のイメージでは, 原っぱと廃材の山の両方がある場所である。チャンバラや戦争ごっこなどには, こども達の創造性を刺激し, 彼らの舞台となる。5)アジトスペースは, こども達の身近な生活環境の中に馬小屋, 倉, ポンプ小屋, 廃屋-そういう, スケールが小さく, 非生活空間である事が重要である。6)オープンスペースが原風景として成立するには, そこで行われるあそびによって(A)野球のようなボールゲームは2000m^2以上。(B)鬼ごっこ, チャンバラ等が行われるオープンスペースは600m^2〜2000m^2.(C)縄とび, ままごとは50m^2〜600m^2.というような3段階のスケールをもっており, (B), (C)は, まわりに隠れる事のできる大木, 建物, 家がある空間であることが推測される。