著者
日高 洋
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.331-341, 2012 (Released:2012-06-29)
参考文献数
23

中央アフリカ・ガボン共和国東部にあるオクロ鉱床は,今から約20億年前に自発的に核分裂連鎖反応を起こした痕跡のある,いわゆる「天然原子炉」の化石であることが知られている。オクロ鉱床内外の元素の安定同位体組成の変動を調べることによって,天然原子炉内で起こった核反応の特徴づけや,核分裂生成物の原子炉内外での長期的な挙動解析を行った事例について紹介する。
著者
井上 登美夫
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.667-678, 2013 (Released:2013-09-27)
参考文献数
5

テクネチウム製剤の原料である放射性同位元素モリブデン-99(以下「99Mo」という)は100%を輸入に依存している。99Moの9割以上は,世界にある数基の原子炉により生産されている。限られた原子炉によって生産されているため,近年一部の原子炉の故障等により,世界的な99Moの供給不足が生じるという問題が連続して発生した。原子力委員会はこの問題に対して「原子力政策大綱に示している放射線利用に関する取組の基本的考え方に関する評価」(平成22年6月1日)の報告書に,「関係行政機関が,産業界・研究開発機関等の関係機関と緊密に連携・協力しつつ,国としての対応について検討を進めていくことが必要である。」との考え方を示した。これを受けて,官民(内閣府,厚生労働省,文部科学省,研究機関((独)日本原子力研究開発機構(以下「原子力機構」という),(独)放射線医学総合研究所),医学関係学会,事業者等)の関係者が,99Moとテクネチウム-99m(以下「99mTc」という)の安定供給のあり方について検討する検討会1)が開催され,筆者は委員長としての責務を負うこととなった。本稿ではその検討会の報告をもとに,我が国における99Moの安定供給に向けた方向性と課題について概説する。
著者
遠藤 いず貴 石井 伸昌 大橋 瑞江 松本 一穂 内田 滋夫
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.321-329, 2017

<p>TRU廃棄物の地層処分生物圏評価において,気体の<sup>14</sup>Cの植物体への移行が考慮されていない。気体の混合に寄与する風を評価するため,2つのイネ科植物群落の3測定高で風速を測定した。両群落のバイオマスは同じだったが,群落-2に比べて群落-1の草丈は78%であり,群落密度は2倍だった。群落上に対する群落内の風速は密な群落(群落-1)で制限された。群落密度が群落内の気体の滞留および植物への<sup>14</sup>Cの移行に影響することが示唆された。</p>
著者
辻 成人 中司 等 山本 吉之 阿知波 一生 柴田 靖彦 春藤 英雄 竹内 憲彦 住本 吾一 岩田 宏道
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.153-156, 1991-04-15 (Released:2010-07-21)
参考文献数
3

133Xe Gas concentration during the examinations of the lung ventilating scintigraphy using 133Xe for three cases, was measured continuously by the flow type ionization chamber to estimate effective dose equivalent to the operator. The air flow distribution of the examination room was also measured for reference to examining the behavior of 133Xe gas. The air around the patient lingers for few minutes or more. Based on the derived air concentration (DAC) in ICRP Publication 30, effective dose equivalent to the operator per examination was estimated to be 0.1-1.0μSv, which was lower than expected.

1 0 0 0 OA 1 歴史

著者
野田 真永 村田 和俊 中野 隆史
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.367-369, 2015-06-15 (Released:2015-06-27)
参考文献数
6
被引用文献数
1

X線の発見から本年で120年経つが,その間,物理工学面の技術革新により放射線治療は格段の進歩を遂げた。粒子線治療は,速中性子線治療から始まり,現在では陽子線・重粒子線治療が世界で計57施設にて実施されるようになった。この粒子線治療の発展には1940年代以降の粒子線加速器開発技術の進歩が大きく関与している。
著者
川端 祐司
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.199-206, 2008 (Released:2008-03-31)
参考文献数
30
被引用文献数
1
著者
中村 充孝
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.93-99, 2017

<p>粉末試料や非晶質などといった等方的試料のダイナミクスを研究対象とする場合,チョッパー分光器による中性子非弾性散乱測定は,定常炉の三軸分光器と比較して圧倒的な優位性を示す。特異な物性を発現する新規物質を発見した場合,研究の初期段階にあっては,単結晶を育成することができず,粉末試料しか得られないことも多いが,J-PARCの強力なパルス中性子ビームを用いることで,早々とダイナミクスに関する研究を展開することが可能である。すでにJ-PARCで稼働中の3台のチョッパー分光器は,今もなお装置高度化や新規解析手法の開発を継続しており,今後,革新的な研究成果を創出しうるポテンシャルを十分備えている。</p>