著者
三宅 定明 茂木 美砂子 大沢 尚 中澤 清明 出雲 義朗 中村 文雄
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.419-426, 1997-07-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
19
被引用文献数
2 1

既報, 137Csをとりこませたメダカ, Oryzias latipes, の肉と混入した肉 (対照) の, 各放射性餌料投与によるキンギョ, Carassius auratus auratus, の137Cs濃縮機構を解明するため, メダカにとりこまれた137Csの生化学的存在形態について調べた。メダカにとりこまれた137Csは, 事実上非蛋白態窒素化合物 (NPNC) 区に存在し (92%以上) , 対照である無機の137Csを混入したメダカの肉との違いはほとんどみられなかった。また, NPNC区にっきゲルろ過分離を行ったところ, 137Csをとりこんだメダカの肉では, 対照および137CsCl水溶液と同様一つの放射能ピークのみが検出され, しかも各ピークの位置はそれぞれ一致した。一方, 蛋白質の各ピークの位置は, 放射能ピークの位置と異なり, とりこまれた137Csの大部分は, 蛋白質と結合していないことがわかった。さらに, シリカゲルを用いた薄層クロマトグラフィや, 陽イオン交換樹脂による分離, リンモリブデン酸アンモニウムとの反応においても, 137Csをとりこんだメダカの肉は, 対照である無機の137Csを混入したメダカの肉と違いはほとんどみられなかった。
著者
梶原 康宏 梶原 正宏
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.37-48, 2019-02-15 (Released:2019-02-15)
参考文献数
18

安定同位体を利用した研究報告は数多くあり,今後,益々発展していくと思われる。今回,その安定同位体の分離・濃縮技術,1970年代から現在までの研究事例として13C-標識化合物を用いたビタミンB12の生合成研究,既に医療の現場で広く普及しているHelicobacter pylori感染診断のための13C-尿素呼気試法の概要について紹介し,医学・薬学における安定同位体の利用についてまとめた。

1 0 0 0 OA FLASH Radiotherapy

著者
岩田 宏満 芝本 雄太
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.279-289, 2021-07-15 (Released:2021-07-13)
参考文献数
47
被引用文献数
1

FLASH Radiotherapyは超高線量率照射のことであり,「障害が軽減される特性」を有している。そのため,放射線治療の今までの概念を覆すものであり,臨床応用ができれば,放射線治療分野でパラダイムシフトとなる潜在的可能性を秘めている。本総説では,背景,生物学的内容,メカニズムや臨床応用へ向けた取り組みなどについて紹介する。
著者
蔵 忍 吉田 淳子 吉永 春馬
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.28, no.10, pp.642-644, 1979-10-15 (Released:2010-07-21)
参考文献数
2

1) 国産品と外国製品の3Hサーベイメータについて汚染材質による検出効率のちがいを比較した結果, ガラス, デコラの表面汚染の検出効率は高く, リノリウムはやや下がり, ベニヤ板やポリエチレンろ紙ではさらに低くてガラスの約2%程度であった。2) 読みとれる計数率すなわち検出効率には両者間で約100倍の差があるが, 読みとり可能な指示値で比較すれば, その検出下限はスポット状汚染で, Aloka2×10-3μCi, Eberline6×10-4μCiであった。これを表面密度に換算すると, Aloka4.4×10-5μCi/cm2, Eberline2.7×10-5μCi/cm2となる。
著者
村山 賢太郎
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.453-460, 2018-09-15 (Released:2018-09-15)
参考文献数
8
被引用文献数
3 6

D-シャトルは,株式会社千代田テクノルと国立研究開発法人産業技術総合研究所が共同開発した小型・軽量長電池寿命の電子式積算線量計である。D-シャトルは東京電力福島第一原子力発電所事故後に開発が進められ,2013年3月より一般に供給されているが,線量計部分と表示器を分離したために,高い信頼性を有する線量計を1年間という長期間作動させ,1時間ごとの線量を記録し続けることに成功した。また,電池交換の際に校正を実施することで,線量計測の品質を維持しつつ,一般市民が簡便に自身の線量を記録し,被ばく線量の低減に活用することを可能にしている。本稿では,この新しい線量計の概要を示すとともに,これを活用した福島県内外での線量調査の実施例についても紹介し,環境測定への応用や医療への応用など今後の展望についても示した。

1 0 0 0 OA 5.食品

著者
林 徹
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.363-373, 1998-04-15 (Released:2010-07-21)
参考文献数
8
著者
中村 綾子 大崎 進 早渕 尚文
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.343-352, 2001-08-15 (Released:2011-03-14)
参考文献数
12
被引用文献数
3 2

2000年6月から11月までの福岡県久留米市中央浄化センターの放流水と下水汚泥中の99mTc, 123I, 67Ga, 201Tl, 111Inと131Iの放射能濃度を測定した。あわせて, 処理区域内の四つの医療機関に対して, 患者に投与した放射性医薬品の投与量の調査も実施した。処理場の放流水中には, 投与量の99mTcでは約1.1%, 123Iでは約1.5%, 67Gaでは約4.3%, 201Tlは約0.4%の放射能が検出された。これらの核種の濃度は, 法令で定められた濃度限度の約1/100000に相当した。131Iは, 処理場の汚泥中のみで検出され, 放流水中では検出されなかった。汚泥中の131Iの有効半減期は, 汚泥の連続測定から概算して約5.5日であった。下水処理システムにおける核医学で使用した放射性核種の移行過程を, コンパートメントモデルを用いて分析した。その結果, 下水処理場へ流入している排水中の放射性核種の濃度が, 濃度限度の約1/10000から1/1000程度であると推察された。
著者
新吉 直樹 清野 智史 上垣 直人 藤枝 俊 植竹 裕太 中川 貴
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.171-177, 2022-07-15 (Released:2022-07-07)
参考文献数
13
被引用文献数
1

放射線照射により誘起される反応を利用し,Sn系ナノ粒子を合成した。SnCl2水溶液に60Co γ線を照射すると,金属Snナノ粒子が生成した。照射により生成する還元性活性種によりSn2+イオンが還元され,ナノ粒子化したものと考えられる。カーボン担体を添加して照射すると,SnO2ナノ粒子が得られた。担体表面に金属Snナノ粒子が分散担持することで微細化し,酸化したと考えられる。放射線を用いた合成法がスズにも適用可能であることが示された。
著者
小林 泰彦
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.63-83, 2022-03-15 (Released:2022-03-16)
参考文献数
45

食品照射は多くの国のニッチなマーケットで成功し,照射による植物検疫処理も急増している。日本の食品規制当局は,ニーズが見えないことと社会受容の未熟を理由に規制の見直しに消極的だが,国による安全性評価とその結果の周知がない限り,消費者の誤解を解くことは容易でない。今まず必要なのは,社会受容のための消費者教育ではなく,照射食品の安全性と有用性を正当に評価し,消費者の誤解を恐れてニーズを言い出せない事業者に正確な情報を提供することである。
著者
浅井 祥仁
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.43-54, 2017-01-15 (Released:2017-01-15)
参考文献数
4
被引用文献数
1

LHC(Large Hadron Collider)で2012年ヒッグス粒子が発見された。ヒッグス粒子の発見は,「標準理論」最後の未発見粒子が発見されたというだけの話ではない。真空の概念を変えるこの発見は,時空や真空への物理へとパラダイムシフトへの幕開けである。この新しいパラダイムでは,宇宙の暗黒物質や暗黒エネルギーの理解や,宇宙誕生の謎に迫ることが期待されている。本解説では,ヒッグス粒子の基礎と,実験でどのように発見したかを解説する。
著者
鈴木 一道 田淵 秀穂 石松 健二
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.282-287, 1974-05-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
4

シリコンp-n接合素子および147Pm線源 (有効放射能0.1~0.2Ci) をそれぞれ5枚交互に重ねあわせて原子力電池を構成した。最大出力1.2μW, エネノレギー変換効率0.3%を得た。単色電子ビームを使用した実験から, 素子の最大出力は入力の1.2~1.3乗で増加することがわかった。147Pm線源に対して最大出力を与えるシリコンp-n接合素子の接合部深さは2~4μであった。さらに, 147Pmを線源にした場合, 素子の放射線損傷による最大出力の低下は5%/6, 200時間であった。
著者
石川 奈緒 内田 滋夫 田上 恵子
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.519-528, 2007-09-15 (Released:2011-03-01)
参考文献数
21
被引用文献数
28 17

放射性セシウム (137Cs, 半減期30年) は放射性廃棄処分や原子力事故の際の環境影響評価において重要な放射性核種である。本研究では, 日本各地から採取した30試料の水田土壌を用いて, 137Csの収着挙動に対する土壌特性の影響を検討した。各土壌試料の土壌-土壌溶液分配係数 (Kd) をバッチ収着実験から求めた。更に, 土壌へ固定される137Csの割合を得るため, 逐次抽出実験を行った。土壌特性として, pH, 陽イオン交換容量 (CEC) , 全炭素含量, 全窒素含量, 粘土含量を測定し, 更に, X線回折法を用いて, 土壌中の粘土鉱物の同定を行った。特に, Csを強く固定するイライトの含量を, 相対量として得た。全土壌について, 137CsのKd値は269~16 637L/kg (幾何平均2286L/kg) であった。Kd値と各土壌特性との相関をSpearmanの順位相関 (相関係数Rc) を用いて解析したところ, Kd値と相関を示したものは粘土含量のみ (Rc=0.55, p<0.005) であった。一方, 土壌への137Cs固定率は粘土含量より相対イライト含量と高い相関があった (Rc=0.68, p<0.001) 。以上の結果から, 土壌への137Cs固定率の推定には粘土含量ではなくイライト含量が非常に重要であることが示唆された。
著者
等々力 節子
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.55-62, 2022-03-15 (Released:2022-03-16)
参考文献数
15

食品の放射線照射は,科学的根拠により設定された国際基準や規範に沿って実施され,照射食品は実用レベルで市場流通している。本稿では,技術の応用範囲,照射食品の国際的評価と国際基準について概説する。同時に,日本の研究開発の歴史や関係機関でなされた議論の内容を説明し,現在の国内状況の理解に役立てる。最後に,食品照射に関する国際的な協調研究の動向を示し,今後の技術開発の方向性を展望する。
著者
静間 清 岩谷 和夫 葉佐井 博巳
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.36, no.9, pp.465-468, 1987-09-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

Background γ-ray spectra and 54Mn spectra were measured with a Ge detector in a low-background shielding using various inner linings; Lucite, Al, Fe, Cu and Pb. The experimental results show that the background counting rate in the energy region 0-500 keV and backscattered γ ray increase in a shielding with low Z linings, It can be qualitatively understood through a simple calculation considering the γ-ray absorption and scattering processes in the shielding material.
著者
丹野 宗彦 山田 英夫 村木 俊雄 田渕 博己 村田 啓 千葉 一夫 浅津 正子 小野寺 洋子 千田 麗子 染谷 一彦
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.271-274, 1983-06-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
6

ラットを用いて絶食時の飼育温度が甲状腺ホルモンの代謝, 動態にどのような影響を及ぼすか検討した。その結果, 23℃, 5日間の絶食では, 血清サイロキシン (T4) , 3, 5, 3'-トリヨードサイロニン (T3) , free T4およびreverse T3 (rT3) 値は対照群に比して有意の低下を示した。絶食群間でT4, free T4およびrT3値を比較してみると, free T4値は低温になるほど増加傾向を示したのに反して, T4値は, 23℃, 18℃, 15℃絶食群間では有意差を認めなかった。また, rT3値は寒冷になるほど増加傾向を示した。30℃絶食群ではいずれの甲状腺ホルモンも対照群に比して著明な低下を示した。これらの実験結果より, 絶食時の甲状腺ホルモンの代謝は, 絶食時の気温により変動し得ることを示唆するものである。
著者
豊嶋 厚史 篠原 厚
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.67, no.10, pp.461-469, 2018
被引用文献数
4

<p>近年,アスタチン-211(<sup>211</sup>At)を用いたα線内用療法に関する核医学的研究が世界各地で盛んに行われている。本稿では,<sup>211</sup>Atの製造法や分離精製法など,核医学研究を行うために必要な核・放射化学的な研究手法について説明する。また,最近活発になってきたアスタチンの化学研究について簡単に紹介する。</p>
著者
渡部 直史 兼田 加珠子 白神 宜史 大江 一弘 豊嶋 厚史 篠原 厚
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
アイソトープ・放射線研究発表会
巻号頁・発行日
vol.1, 2021

<p>近年、α線核種を用いた核医学治療が注目されている。α線核種のアスタチン(<sup>211</sup>At)を用いたTargeted alpha therapyは難治性がんの新たな治療戦略として、非常に有望であり、担癌モデルを用いた非臨床試験では大変良好な成績を示した。現在、難治性甲状腺がんに対するアスタチン化ナトリウム注射液を用いた医師主導治験の開始準備を進めており、早期の臨床応用を目指している。</p>