著者
室屋 裕佐
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.425-435, 2017-10-15 (Released:2017-10-15)
参考文献数
23
被引用文献数
4

水や水溶液の放射線化学研究は,放射線の発見から間もない20世紀初頭から長年にわたって続けられてきた。工学,医学等に幅広く共通する課題を含み,初期過程から最終生成物に至るあらゆる過程が調べられてきたが,溶媒和等の高速過程や374°C以上の高温での超臨界水中での反応機構など,なお未知の素過程を内包し,1世紀以上経った今でも研究対象であり続けている。本節では,水や水溶液の放射線化学の歴史や基礎過程,アプローチを含めた研究全体について解説する。
著者
保科 静香 黒澤 景一 高橋 翔太 加藤 浩太 吉村 公佑 奥村 幸弘 松本 尚貴 横山 雅彦 中田 正文 日比谷 孟俊 神原 陽一
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.537-549, 2018-11-15 (Released:2018-11-15)
参考文献数
13
被引用文献数
1

福島第一原子力発電所事故由来の134Csの分布を,南東北,北関東,南関東,及び甲信越などの山岳地域において,シンチレーションスペクトロメータを用いて測定した。吾妻山及び八溝山では,高度が低くなると放射線強度が増し,一方,御前山,及び大山では高度が高くなると放射線強度が増すことがわかった。このことは,特定の高度にその中心を有する放射性物質雲(プルーム)が存在し移動したことを示唆している。
著者
駒村 美佐子 津村 昭人 小平 潔
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.80-93, 2001-03-15 (Released:2011-03-10)
参考文献数
21
被引用文献数
6 9

わが国の白米の放射能汚染に対する全地球的な放射性降下物の影響を検討すべく, 全国17地点の国公立水田試験圃場からの試料採取を1959年以来37年間継続し, 放射能測定を行った。白米中の90Srと137Cs含量をmBq/kgの単位で表すと, 1963年の全国平均は90Srで269, 137Csで4179の値となり, 経年曲線上最初にして最高のピークを示した。その後, 白米中の両核種の含量は急減を続け, たとえば1975年には29と192, また1995年には5と46の値をそれぞれ示した。90Srや137Csなどの核種が米粒中に吸収される際に, 外気に触れる茎葉や籾殻からの直接吸収と, 水田表層土中の残留核種の経根的な間接吸収との2種類の経路が考えられる。37年間の観測値を解析した結果, 90Srと137Csの両核種とも, 大気中降下量の最盛期であった1963年前後では白米汚染全量の70-95%を直接汚染が占めること, しかし降下量が検出し難いほど減少した1985年以降では白米汚染のほとんどが間接汚染に起因すること, などが明らかになった。そのほか日本海側と太平洋側での白米の汚染レベルの地域差, また白米と玄米における90Srと137Csの分布比率の差異, さらに両核種の植物体内移動の難易の裏付け, などを議論した。
著者
伊藤 賢志 中西 寛 氏平 祐輔
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.206-211, 1998-03-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
16

ortho-positronium (o-Ps) の量子半径, Rps, を仮定して得られたo-Psの消滅寿命と~1nm以上の空孔の大きさとの新しい相関式を提案した。ナノメートルレベルの空間におけるo-Psの寿命, τhole (=1/λhole) は, 真空で消滅する固有寿命 (140ns) とバルク界面から浸出した厚さ△Rの電子層中の反平行スピンの電子とのピックオフ反応による寿命との分配によって, 以下のように決まると仮定した。λholo= {λR2γ=2 [1-R/R+ΔR+1/2πsin (2πR/R+ΔR) ] (f (R0)λ3γf (R) +λRα2γ (1-f (R) ) (f (R>0)ここで, λ3γ=1/140, Ra=RPs-ΔR, f (R) = (R-Ra/R+ΔR) bである。
著者
竹石 敏治 大土井 智 西川 正史
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.537-544, 1996-09-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
7
被引用文献数
1

現在のところ, トリチウム取扱施設において室内空気中に放出されたトリチウムを回収するたあに, 加熱された貴金属触媒塔およびその後段の冷却された吸着塔で構成されるトリチウム回収装置が用いられている。しかしこの方式では, トリチウムと同時に空気中に含まれる大量の水蒸気も同時に回収されるため, 吸着塔が大きくなり, 触媒塔の加熱装置や吸着塔の冷却装置の故障の際には, トリチウムの回収性能が低下するなどの欠点がある。本報告では, 冷却装置を設けない吸着塔と, その後段に加熱装置を設けない触媒塔により構成されたトリチウム回収システムを提案する。この方式では, 前置吸着塔において処理ガス中の水蒸気が, 触媒の酸化性能を阻害しない程度まで捕捉されることにより, 触媒の活性が維持される。またトリチウムが貴金属触媒の親水性担体に酸化された後に, 吸着や同位体交換反応によって, 入口ガスよりも高いT/H比で捕捉できる。
著者
大下 誠一 川越 義則 安永 円理子 高田 大輔 中西 友子 田野井 慶太朗 牧野 義雄 佐々木 治人
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
Radioisotopes (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.329-333, 2011-08-15
参考文献数
11
被引用文献数
4 6

福島原子力発電所から約230km離れた,東京都西東京市における研究圃場において原発事故後に栽培された野菜及び土壌の,<SUP>134</SUP>Csと<SUP>137</SUP>Csの放射能を測定した。試料は植え付け47日後のジャガイモの葉,並びに,苗の定植40日後のキャベツの外葉を用いた。両者共,<SUP>134</SUP>Csと<SUP>137</SUP>Csの総量は9Bq/kg以下となり,摂取制限に関する指標値500Bq/kgより低い値であった。土壌は約130Bq/kgであり,天然の<SUP>40</SUP>Kの約290Bq/kgと比較しても低い値であった。キャベツの外葉を水で洗浄する前後の放射能像をイメージングプレートにより得たが変化は見られなかった。
著者
柴田 徳思
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.208-215, 1999-03-15 (Released:2011-03-10)
参考文献数
4
被引用文献数
8 7
著者
山本 哲夫 三枝 健二 有水 昇 国安 芳夫 伊東 久夫
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.331-342, 2001-08-15 (Released:2011-03-14)
参考文献数
13

千葉大学病院のホールボディカウンタを用いて, 405名の健常人と186名の患者を対象に, 全身カリウム (K) 量の測定を行った。全身K量は以下に示すレファレンス値として算出した。すなわち20歳代の健康人の全身K量を標準値とし, 体表面積で除し, かつ年齢と男女差を加味して補正し%表示した。405名の健常人のレファレンス値は100.65±9.22%であった。各疾患ごとのレファレンス値は以下のようになった。肝硬変: 94.24±11.22%, 慢性肝炎: 95.74±11.24%, 甲状腺機能亢進症: 99.37±10.8%, バーター症候群: 82.0±9.01%, 周期性四肢麻痺: 93.99±9.86%, 筋無力症: 97.34±6.42%, 低カリウム血症: 90.64±11.76%であった。また子宮癌, 乳癌, 貧血, 高血圧症ではそれぞれ, 97.78±11.5%, 99.22±8.88%, 96.64±12.73%, 98.5±9.63%となった。14例が75%以下の異常低値を示した。その内訳は肝硬変1例, 高血圧症3例, 糖尿病1例, 低カリウム血症3例, 周期性四肢麻痺1例, バーター症候群2例, 薬物中毒2例, 乳癌1例であった。バーター症候群の1例, 周期性四肢麻痺の3例, 高血圧症2例, 肝硬変1例, 筋無力症1例では, 経時的に全身K量が測定され, 病状の経過との間に関連が見られた。
著者
高橋 寿郎
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.53-60, 1967-01-16 (Released:2010-07-21)
被引用文献数
1 1
著者
小田切 丈
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.417-424, 2017-10-15 (Released:2017-10-15)
参考文献数
14

光子及び荷電粒子と物質との相互作用について,入射粒子と物質内原子分子との衝突断面積の観点から基礎的事項をまとめた。
著者
小幡 宗平 片岸 正 根津 光也
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.39-45, 1962-02-01 (Released:2010-07-21)
参考文献数
25

1957年当場のアイソトープ課にガンマ線照射室が建設され, チューリップ球根に対する影響について実験中である。照射第1年目の効果について試験し, 第2年目以後の変化の模様についても詳細に観察し, チューリップの芽条変異誘発について検討した。1) 線量率試験の結果, 50r/h以下で1~3kr照射の場合仔球の生産は抑制されない。2) ガンマ線により花弁に条斑点が出現するが, これには一定の傾向があり, またその形状は球根の発育分化と関係がある。3) Athleetについて照射第4年までの変化について観察した結果, チューリップにおける芽条変異は‘キメラ説'で説明されるとした。
著者
渡辺 鐶 印田 順一 源河 次雄
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.69-73, 1972-02-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
2
被引用文献数
1 1

ガスフロー計数管のプラトー曲線などに悪影響を与える線源表面の電荷の影響について実験を行なった。4πβ比例計数管の下側の陽極を外して線源支持台を取り付けた。A1膜につけた線源を線源支持台にのせてAl膜に流入する電流の測定, およびAl膜に一定の電位を与えた。また線源支持膜の電導度は線源支持台と陰極間に109~1013Ωの超高抵抗器を接続して調節した。これらの測定と同時に上半分の2πβ計数管のプラトー曲線を測定した。得られたおもな結果は, a) プラトー曲線は線源電位に比例して移動する。b) 線源支持膜の抵抗の増大につれてプラトー開始電圧は高くなり, 長さも長くなる, などである。
著者
斎藤 正明 今泉 洋 加藤 徳雄 石井 吉之 高橋 優太 斎藤 圭一
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1-6, 2007-01-15 (Released:2011-03-01)
参考文献数
12

濃縮試料の計数率から未濃縮試料の計数率を差し引いたものは, 正味の計数率に (濃縮倍率-1) を乗じたものである。この関係を利用して, バックグラウンド計数を差し引くことなく正味の計数率を得ることができる。トリチウムの電解濃縮測定法に適用し, その結果を検証した。環境濃度レベルにおいて, 測定値及び測定誤差は従来法と同程度であった。この測定法はトリチウム濃縮分析において実用的にも有効であることが確認できた。
著者
島 長義 村中 健
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.455-461, 2007-08-15 (Released:2011-03-01)
参考文献数
10

A newly designed electrolytic device to enrich tritium in environmental water is proposed. This device is composed of a solid polymer electrolytic film (SPE film) and porous, dimensionally stable electrodes (DSE) . In our design a platinum mesh was inserted between the SPE film and the anode DSE so that the device can be easily disassembled and the used SPE film can be replaced with a new one after each use. A thin gold plate with a number of minute holes in it is used as current collector in both electrodes allowing the electrolytic gas to be released progressively.An electrolytic current of 6A was passed through the device to obtain a volume reduction factor of five by keeping a temperature of water bath at 2°C or lower. After that, our device achieved a tritium recovery factor of 0.836 ± 0.021 (n=4) . Such a value is greater than the value obtained using a commercially available apparatus operated under the same experimental conditions. It is thought that this greater efficiency depends on the difference between electrolytic temperature produced in our device and the temperature in the commercially available one.
著者
大和 愛司
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.104-108, 1981-02-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
13
被引用文献数
7 7

茨城県内の三か所で1974年10.月~1979年12, 月に, セルロース・アスベストフィルタを用いて採取した地表大気浮遊塵中の239, 240Puおよび90Srを測定した。大気中の239, 240Pu濃度は0.041~1.9μBq/m3 (1.1~52aCi/m3) , 90Sr濃度は2.3~87μBq/m3 (0.062~2.3fCi/m3) であり, 両者の放射能比 (Pu/Sr) は0.8~2.6%の範囲で平均1.7%であった。これら二核種の大気中濃度の季節変動は全般的に互いに類似しており, その濃度は, 二, 三の例外を除いて, 中国核実験後および春季に増加した。
著者
池田 正道 小沢 隆二 波多 和人 篠崎 善治 飯塚 義助
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.115-117, 1964-03-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
3
被引用文献数
3

トリチウムガス刺激による螢光体の励起発光について, 2種の螢光体の発光強度特性を測定し, トリチウム量と発光強度の関係を検討した。ガラス管球内壁に螢光体結晶を1層になるよう塗布し, この中にトリチウムガス2キュリーを導入して, トリチウムガス圧に対する発光強度を測定した。トリチウムガス圧に対する発光効率は, ガス圧が上がると次第に減少する。これは, トリチウムガス自体によるβ線の自己吸収として説明され, 実験結果とよく一致する関係を導き出した。この自発光光源は, 標示用光源のほかに, 比較標準光源としても利用できると期待される。