著者
信濃 卓郎 和田 敏裕
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.31-42, 2020-01-15 (Released:2020-01-15)
参考文献数
35
被引用文献数
1 1

東京電力福島第一原発事故に由来する福島県を中心とした農地,陸水域及び海域の放射性セシウム汚染から8年が経過し,これまでの取組と現状,今後の対策についてまとめた。農業現場では放射性セシウムの移行抑制対策として長期的な土壌のカリウムの適切な管理が求められる。水産現場では,海面・内水面漁業ともに放射能汚染に起因する様々な課題を抱えており,今後,中長期的視点に基づく漁業活動の再生や復興支援が重要となる。
著者
稲村 泰弘 中村 充孝 新井 正敏
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.65, no.7, pp.319-324, 2016-07-15 (Released:2016-07-15)
参考文献数
12

一般にガラスやアモルファスと呼ばれる構造的に無秩序な物質は,比熱や熱伝導率といった熱輸送現象において低温領域で結晶とは異なる性質を普遍的に持つことが知られている。これらの熱的物性は,中性子非弾性散乱実験やラマン散乱実験で観測されるBoson Peakと呼ばれる低エネルギー励起と直接関連付けられる。また,中性子非弾性散乱実験で得られる振動状態密度は,普遍的低温熱物性に対する2準位系理論モデルの正当性を支持する。
著者
森田 雅明 角森 史昭 松山 諒太朗 森 俊哉
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.91-95, 2013 (Released:2013-02-28)
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

三浦半島の活断層群周辺の地下水中のラドン濃度の調査を行った。調査地域の平均の地下水ラドン濃度は5.8±4.8Bq L-1,最高の値は17.2±1.0Bq L-1であった。また,採水地点と断層との間の距離に対してラドン濃度をプロットすると,断層線上の低いラドン濃度の領域の周りに高いラドン濃度の領域が存在した。これは,高いラドン濃度の領域が断層破砕帯の存在を示していると推測される。
著者
柴田 德思 桝本 和義
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.605-618, 2018-12-15 (Released:2018-12-15)
参考文献数
2

東京大学原子核研究所は,1997年に高エネルギー加速器研究機構に統合され,その役割を終えた。研究所を廃止するに当たり放射線施設の除染と管理区域解除,有害物質の除去を行い,跡地は西東京市に売却され,西東京市の憩いの森公園として利用されている。ここでは,放射性汚染の除染,有害物質除去,住民説明会について記載する。
著者
松原 隆彦
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.201-213, 2014-04-15 (Released:2014-04-25)
参考文献数
9

20世紀末に宇宙膨張の加速が発見され,アインシュタインが最初に導入してから捨て去ったことで有名な宇宙項が,再び脚光を浴びるようになった。宇宙項は理論的に不自然な存在であるため,宇宙項を一般化したダークエネルギーの概念が導入されて盛んに研究されている。現在のところ,ダークエネルギーについての理論的な理解は非常に乏しいと言わざるを得ないが,今後の宇宙観測の拡大に期待が寄せられている。本稿では,近年大きな話題を集めているダークエネルギー研究に関する現状を概観する。
著者
高田 大輔 安永 円理子 田野井 慶太朗 中西 友子 佐々木 治人 大下 誠一
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.517-521, 2012 (Released:2012-10-26)
参考文献数
6
被引用文献数
9 9

放射性核種の降下時に土壌表面を被覆していた鉢植え樹体と非被覆の鉢植え樹体を比較することにより,土壌由来の放射性Csのモモ樹体中への移行を検討した。土壌中の放射性Csは被覆処理により6分の1に低下した。被覆の有無にかかわらず,根の放射性Csは検出限界値以下であった。地上部の放射性Cs含量は地下部に比べて多いが,被覆の有無による差は見られなかった。以上のことから,事故当年において地上部の放射性Cs濃度に対する土壌中の放射性Csの寄与は極めて少ないことが示唆された。
著者
山口 彦之
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.240-253, 1966-09-15 (Released:2010-07-21)
参考文献数
116
被引用文献数
2 1
著者
川浦 稚代 青山 隆彦 小山 修司
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.55-66, 2005-03-15 (Released:2011-03-01)
参考文献数
17
被引用文献数
3 3

蛍光ガラス線量計とフォトダイオード線量計を設置した人体ファントム線量計測システムを用いて, 頭部一般撮影検査及び頭部X線CT検査における患者の臓器及び実効線量評価を行った。5種類の頭部一般撮影検査における脳線量は, 0.46~1.08mGyであった。水晶体線量は, 水晶体に直接X線が当たるような頭部正面 (AP) 及びタウン撮影法において最も高かった。また, 頭部一般撮影検査における実効線量は, 0.03~0.06mSvであった。一方, 頭部X線CT検査 (ルーチン検査) における実効線量は, 1.7mSvであり, 頭部正面 (AP) 検査よりも50倍以上高いことがわかった。急性脳梗塞の診断に用いられるPerfusion検査においては, 最大皮膚線量が712.0mGyとなった。しかしながら, その値は, ICRP Publ.59で提唱されている一時脱毛のしきい値3Gyよりも低かった。また, 頭部X線CT検査における水晶体線量 (ルーチン検査: 55.0mGy, Perfusion検査: 39.6mGy) は, ICRP Publ.60で提唱されている検知可能な水晶体白濁のしきい値0.5~2.0Gyよりも低い値を示した。
著者
髙田 和子
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.475-488, 2015-07-15 (Released:2015-07-28)
参考文献数
32

体内での栄養素の動態や利用についての研究において,安定同位体を利用する価値は高い。本稿では,二重標識水(Doubly labeled Water:DLW)法と,指標アミノ酸酸化(Indicator Amino Acid Oxidation:IAAO)法を紹介する。DLW法は,H218Oと2H2Oを使用し,自由に生活している状況でのエネルギー消費量を最も正確に評価する方法とされている。IAAO法は,多くの場合,13Cで標識したL-フェニルアラニンを指標として,体内でのアミノ酸の利用を評価する。安定同位体の活用により,従来の方法より対象者への負担が少なく,栄養素の利用を評価でき,幅広い対象における研究が可能である。