著者
杉田 創 駒井 武
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.573-587, 2020

<p>石油系炭化水素を対象とした発光バクテリアを用いた簡易土壌汚染評価手法の開発を目的として,既往の研究においてガソリン等の主要な構成成分であるn-アルカンの急性毒性影響が調べられた。しかしながら,ガソリン等多くの石油系炭化水素製品には分岐アルカンも多く含まれている。本研究では,試験対象物質としてアルカン構造異性体であるペンタンの構造異性体2種類及びヘキサンの構造異性体5種類に加えて環状アルカンであるシクロヘキサンを用い,分子構造による発光バクテリアに及ぼす急性毒性影響の差異の有無を調べた。メタノールに溶解したアルカン構造異性体を検液とした試験における急性毒性影響の強さは,反応時間60分での相対発光強度比が50%となるアルカン濃度の推測値を基準にすると,2-メチルブタン<n-ペンタン<2,2-ジメチルブタン<シクロヘキサン<3-メチルペンタン≦2,3-ジメチルブタン≦2-メチルペンタン<n-ヘキサンであった。構造異性体間の試験結果の比較から,分岐アルカンよりも直鎖アルカンの方が発光バクテリアに対して強い急性毒性影響を持つと評価された。加えて,直鎖部分の炭素数が多い物質ほど急性毒性影響が強いことが示唆された。</p>
著者
波毛 康宏 西村 良司
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.487-492_1, 1994-11-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
2
被引用文献数
2 1
著者
吉本 周平 土原 健雄 白旗 克志 石田 聡
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.227-240, 2016-05-31 (Released:2016-10-25)
参考文献数
43
被引用文献数
1 1
著者
駒井 武
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.47-54, 2019-02-28 (Released:2019-09-12)
参考文献数
13
被引用文献数
2 1

東日本沿岸における津波堆積物の性状と地球化学的特性を中心に,津波堆積物に含有する重金属類や塩分の組成について表層土壌や海底堆積物と比較した結果について述べた。また,現場調査の結果として得られた各種分析データを用いてリスク評価を行い,地下水および土壌環境への影響について考察し,津波堆積物のリスク管理の在り方について検討した。津波堆積物では土壌と比べて砒素および鉛の含有量,溶出量が高く,地下水飲用の制限等が必要な場合もあった。一方,多くの場合では,所定のリスク管理を実施した後に津波堆積物を復興資材として活用可能であることが分かった。
著者
齋藤 光代 安元 純 杉山 歩
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.525-545, 2020
被引用文献数
1

<p>本稿では,地下水と生態系との関係についての既存研究の動向を把握するとともに,今後の課題や展開を明らかにすることを目的とし,あらゆる物質循環および生態系に関与する「微生物」の地下水中での動態に加え,地下水に影響を受ける生態系(Groundwater Dependent Ecosystems: GDEs)のうち,特に,地下水流出域に相当する沿岸海域に分布し,物質循環や生物多様性の保全にとって重要な役割を果たす「藻場」と「サンゴ礁」生態系に着目し整理した。微生物については,従来地下水の飲料水適用や汚染浄化を主要な観点とした研究が多く行われてきたが,近年では地下水流動と微生物動態の関係などに着目した研究も徐々に進んできている。また,藻場やサンゴ礁については,海底湧水(Submarine Groundwater Discharge: SGD)の影響が顕著な地域を対象とした研究により,藻場に対しては,SGDが栄養塩の供給源として海草や海藻類の存在量増加に寄与する反面,種の多様性は低下させる傾向にあること,また,サンゴ礁に対しては,SGD経由の栄養塩供給が増加して海域の富栄養化を招いた場合,ある種の藻類の増殖やサンゴの骨格密度や繁殖能の低下を引き起こし,結果としてサンゴ礁の脆弱性を高めることが報告されている。ただし,いずれについても,地下水との関係については未だ科学的に未解明な部分が多く,多様なサイトにおける調査結果の蓄積や新たな手法の適用に加え,生物地球化学,微生物学,および生態学などの分野の研究者が地下水学を通じて連携し,更なる理解を深めていくことが重要である。</p>
著者
蔵田 延男
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
日本地下水学会会誌 (ISSN:00290602)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.109-115, 1983-05-31 (Released:2012-12-11)
参考文献数
3

The Hashirimizu spring had been utilized for the city water supply of Yokosuka City, since one hundred years ago.“ Where the spring water come from ?” was a mysterious question for a long time.From 1976 to 1978, we could chtllenge to elucidate the semieternal puzzle by means of thermal-infrared imagery method (on air), measurement of temperature of sea-water (by sea), gammaray survey (carborn), geological test boring, pumping water well test and others.It was presumed that the origin of the spring water would be came up from plural brecciated rock zones in Neogene formation.The brecciated zones are extending from the western coast to the eastern coast of Miura peninsula and accordingly the spring has distinct characteristics in constant flowing quantity and water quality all the year round, in spite of its too-small catchment-area compared with yielding amounts from the spring.Next, we could understand that, the yield of the spring had only 300 cubic meters a day or a little more as a surplus, beyond the daily yield of 2,700 cubic meters a day. This matters was actually certified by installation of a horizontal water collector with radially installed strainers at a suitable site to get superfluous ground-water.
著者
井手 淨 鈴木 弘明 古閑 仁美 嶋田 純
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.197-203, 2019-08-31 (Released:2020-03-04)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

熊本地域における地下水観測井の管頭標高値は,2016年4月に発生した熊本地震で変動している可能性が高いが,地震後の再測量に対する方針は管理行政団体毎に異なる。そこで,2017年3月に観測井管頭標高の一斉再測量を実施し,地震後の水位標高値が再測量した値を基準とするよう独自に補正値を求めた。また地震前後の管頭標高値の変動が地震による地盤標高の変動量と整合しないケースも確認された。検証の結果,地震以前の管頭標高値にエラーが考えられた。これについても熊本地震以降の一斉再測量値を基準に地震による地盤変動量を差し引くことで,地震以前の管頭標高値を再現する補正値を併せて求めた。本報告では補正値の導出過程を報告する。
著者
村下 敏夫
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
日本地下水学会会誌 (ISSN:00290602)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.60-70, 1976-07-31 (Released:2012-12-11)
参考文献数
11

The land subsidence and the sea-water intrusion have proceeded naturally from overdraft of ground water in the urban, industrial regions and the coal-fields in Japan.For the prevention of these damaging effects the laws and the ordinances have controlled the volume and rate of ground-water withdrawal in many urban and industrial zones. And the coal-mining is now closed in many fields. The ground-water levels have been recovering as a result of the conservation of the ground-water resources. But undesired results e. g. re-issue of springs, re-wetting or upheaval of groung surface have produced because of the recovery in several zones and fields.The region of ground-surface upheaval coincides with a region where subsidence produced on a large scale. The observation records of ground-water level and subsidedence show that the ratio of upheaval to recovery in artesian pressure head is about 1 or 2 to 1,000, and that there is time lag between its recovery and the corresponding upheaval in a zone having a greater percentage of unconsolidated clay.An amount of the upheaval is able to calculate as the expansion of elastic artesian aquifer due to the recovery of its pressure head applying Lohman's formula (1961). in Kawasaki-shi, the value of the calculation is nearly equal to that of releveling of bench marks and of observation records.Producing of undesired results due to overdraft or control of ground water suggests that it is important to maintain withdrawal of water within the limits of safe yield.
著者
広城 吉成 小田 圭太 Md. Abdul HALIM Abdur RAZZAK 神野 健二
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.25-32, 2008-02-29 (Released:2012-12-11)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

鉄の多くが水酸化第二鉄として存在するような酸化環境下では,土壌中に存在するヒ素の多くは鉄を含む堆積物に吸着されている.本報は,鉄とヒ素の化学的相互作用に着目し,その第一段階として,カラム実験により酸化還元環境の変化に伴うヒ素と鉄,マンガンの動態について考察した.その結果,土壌が還元環境になると鉄が溶出し始め,同時期にヒ素濃度が増加し始めた.一方,マンガンとヒ素の挙動には相関性がなかった.還元状況下で鉄とヒ素を含む水が酸化環境におかれると,水中の鉄,ヒ素濃度はそれぞれ低下した.
著者
高井 健太郎 田瀬 則雄
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.145-157, 2000-05-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
20
被引用文献数
4 1

本研究では.環境庁による調査でホウ素による汚染が確認されている.千葉県睦沢町の瑞沢川流域と.市原市から大多喜町にかけての養老川流域を研究対象地域とし147本の地下水サンプルを採取した.そして対象地域付近の地下水中のホウ素濃度とホウ素含有地下水の水質の特徴を明らかにし.ホウ素の起源を推定した.分析の結果.147サンプル中21サンプルから旧指針値の0.2mg/Lを超過するホウ素が検出された.ホウ素濃度が旧指針値を超過していた井戸は比較的集中していることが多かった.ホウ素を比較的高濃度に含む地下水では.Na+.HCO3-濃度.pHやECなどの値が高く.弱アルカリ性を示し.Ca2+の値は極端に低く.茶褐色に着色していることが多いなどの特徴があったが.水質データのクラスター分析によってアルカリ非炭酸塩型とアルカリ重炭酸塩型の2種類に分類された.アルカリ非炭酸塩型の汚染地下水についてはホウ素の主な供給源は化石水であること.またアルカリ重炭酸塩型の地下水に関しては地質起源と推定された.
著者
髙本 尚彦 嶋田 純 白石 知成
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.325-343, 2017-11-30 (Released:2018-02-13)
参考文献数
35
被引用文献数
2

地層が堆積した当時の水文情報が残っている可能性のある霞ヶ浦において,海水準変動,塩濃度変化,堆積物の堆積過程といった長期的な変遷を考慮した非定常の2次元鉛直断面地下水流動解析を行った結果,既往調査で得られた2地点のコア間隙水の塩濃度プロファイルを概ね再現することができ,2地点の陸域からの淡水地下水の寄与の違いを定量的に示すことができた。解析結果からも,湖岸に近いSiteK-1は地表水だけでなく陸域からの地下水の影響を受けやすい環境であるのに対し,湖心付近のSiteK-2は陸域からの地下水の影響を受けにくい環境であった。非定常解析を行うことにより,以上なような詳細な水文環境の変遷状況が明らかとなった。
著者
堀池 昭
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.315-325_1, 1994-09-20 (Released:2012-12-11)
参考文献数
16
被引用文献数
1
著者
小寺 浩二 濱 侃 齋藤 圭 森本 洋一
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.237-249, 2014-08-30 (Released:2014-10-21)
参考文献数
12
被引用文献数
2
著者
西村 宗倫 川﨑 将生 斉藤 泰久 橋本 健志
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.125-158, 2017-05-31 (Released:2017-06-28)
参考文献数
22
被引用文献数
1

水循環基本法の制定等を踏まえて,水循環解析の社会的実装の促進が求められる。そこで,国土交通省国土技術政策総合研究所では2016年3月に地方公共団体等向けの手引き書として,水循環解析の手順や必要な資料等を「水循環解析の技術資料」にとりまとめた。これを補足するものとして,本報告は,福井県大野盆地において実施した水循環解析について,モデルの設定手法や再現性の検証手法について詳述したものである。特に,水循環解析の再現性について地下水位に着目した検討を行った結果から,構築したモデルの高い再現性を示した。本報告は,持続可能な地下水の利用と保全に水循環解析を活用することの一助になると考えられる。
著者
浦越 拓野 徳永 朋祥 茂木 勝郎
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.181-197, 2005-05-25
参考文献数
19
被引用文献数
6 3

海底地下水湧出現象は,陸域水循環系の出口のひとつとして,また,陸域起源物質の沿岸域への供給経路のひとつとして重要である.海底地盤中の地下水流れのポテンシャル場や水理特性は,海底地下水湧出現象を規定する要因であり,これらを明らかにすることは,海底地下水湧出現象を理解する上で重要である.そこで,本研究では,海底地盤中の2深度での間隙水圧の長期連続測定から,鉛直間隙水圧分布と水理特性を評価する手法の開発を行い,海底地下水湧出の存在が知られている黒部川扇状地沖合に適用した.その結果,海底面下0.5m及び0.84mでの間隙水圧が静水圧よりそれぞれ0.23kPa及び0.63kPa程度高いことが明らかになった.また,波浪に対する間隙水圧の応答から,地盤のhydraulicdiffusivityが0.3-1.2m<SUP>2</SUP>/sと評価された.これらから,海底地下水湧出の流束は1.8×10<SUP>-6</SUP>-5.6×100<SUP>-5</SUP>m/sと推定された.
著者
川満 一史
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.195-200_1, 1991-09-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
6
被引用文献数
1