著者
北中 順惠
出版者
兵庫医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

覚せい剤メタンフェタミンによる薬物依存状態に、豊かな環境(回転皿)がどのように影響するか、マウスを用いて検討を行った。三日間ICRマウスに回転皿使用を試みたところ、マウスは日に日に回転皿を回しており、一方で食餌、飲水等に変化はなく、豊かな環境を提供していると判断した。メタンフェタミン投与によりマウスは自発運動量が増加し、依存性が確認されるが、そこに回転皿の直接的影響は確認できなかったが、依存性を消去するためのメタンフェタミン投与休止期間中に回転皿が存在すると依存性の消去促進が確認できた。
著者
小西 弘江
出版者
兵庫医科大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

文書により研究同意を得た健常人ボランティアより毛根を20本程度採取して、total RNAを抽出した。精製後、マイクロチップ電気泳動システム(コスモアイ)を用いてRNAの分解がないことを確認後、逆転写反応とCy3標識反応を行い、試料に含まれる全てのmRNAからCy3標識されたアミノアリルaRNAを増幅・合成した。この増幅産物をDNAマイクロアレイチップをもちいて、ハイブリダイゼーションをおこない、毛根に発現する遺伝子のスクリーニングを行った。スクリーニングの結果、ケラチン17、ケラチン10、トランスグルタミナーゼ1、SPINK5等の遺伝性皮膚疾患の原因遺伝子の発現が確認された。しかし、ケラチン1など発現が確認されない遺伝性皮膚疾患関連遺伝子も存在した。文書により研究同意を得た健常人ボランティアの毛根より、total RNAを抽出し、high fidelityのポリメラーゼを用いたRT-PCRを種々の条件のもとでおこなった。その結果、翻訳領域を全て含んだケラチン17、ケラチン10、トランスグルタミナーゼ1、SPINK5のcDNAを増幅することができた。このPCR産物はシーケンスすることにより目的とする遺伝子が増幅されていることを確認した。これらのプロトコールは今後の臨床における先天性皮膚疾患の確定診断に役立てていく予定である。一連の実験により、ケラチン17、ケラチン10、トランスグルタミナーゼ1、SPINK5は毛根をもちいた遺伝子解析が確定診断に使用できることが分かった。
著者
笹原 祐介 喜多野 征夫 家本 敦子 吉川 良恵 中野 芳朗 森永 伴法 竹内 勝之 川真田 伸 村上 能庸 玉置(橋本) 知子
出版者
兵庫医科大学
雑誌
兵庫医科大学医学会雑誌 (ISSN:03857638)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.95-104, 2007-12

我々は抜去した毛髪の毛包からケラチノサイトの培養を試み,培養法を確立するとともに得られたケラチノサイトの特性を検討した.このケラチノサイトは毛包バルジ部分に存在するバルジ幹細胞に由来するとされている.成人ボランティアよりインフォームドコンセントを与えられ毛髪を抜去することで毛包を採取した.男性10名,女性10名,年齢は20歳代から70歳代であった.各毛包提供者において,初期遊出が観察された率(初期遊出率)は20.0〜100%,平均48.5%であり,毛包提供者の全例で初期遊出細胞が得られた.これにより抜去毛包からの毛包ケラチノサイトの初代培養は性,年齢にかかわらず可能であることが示された.細胞数倍加時間は,対数的増殖を示す継代3〜5代の期間において27〜31時間,平均28.4時間であった.1毛包より最終的には1.4×10^<11>〜7.3×10^<12>の細胞数が得られ,継代2代から平均約26.2回の分裂を経たことになった.細胞数倍加時間や総細胞数は毛包提供者の性,年齢にかかわらずほぼ一定であった.またRT-PCRにより,継代4代までCD34遺伝子のmRNA発現が認められた.このことから得られた細胞は個体のエイジングにかかわらない体性幹細胞であるバルジ幹細胞に由来すると考えられた.このようにヒトバルジ幹細胞は,抜毛により侵襲が少なく採取でき,エイジングに関係せず一定の細胞数を効率よく,確実に得られるため再生医療の細胞材料として有用と考えられた.
著者
振津 かつみ BERTELL Rosalie LAURENCE Glen BEIVERSTOCK Keith MOHR Manfred JAWAD Al-ali OMRAN Habib DOUG Weier RIA Verjauw GRETEL Munroe 佐藤 真紀 豊田 直己
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

「非人道的無差別殺傷兵器」のひとつである劣化ウラン兵器の国際規制について、国際社会が進むべき方向性を決めるための根拠となる、同兵器の環境・健康影響の科学的知見と社会学的論点について、調査研究を行った。以下がその成果である。(1)劣化ウラン兵器が使用されたイラク南部バスラの医師らによる癌登録の整備と疫学調査に協力した。また、現時点での同地域の癌の特徴と動向を確認した。(2)劣化ウラン兵器に関する「国連決議」の議論を調査し、国際規制における意義を確認した。(3)劣化ウランの健康影響に関する科学論文のレビューを行い、広く国際社会が共有できる資料としてまとめた。(4)予防原則の軍縮分野での適用について、文献調査を行い、劣化ウラン問題に即した予防原則のあり方について考察を行った。
著者
植木 昭紀 磯 博行 佐藤 典子
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

アルツハイマー型認知症における神経病理学的変化がプレパルスインヒビションを制御する神経回路に影響すると考えられ、プレパルスインヒビションの測定がアルツハイマー型認知症の前駆段階と考えられる健忘型軽度認知障害、軽度アルツハイマー型認知症、正常加齢を判別するための簡便な非侵襲的検査として応用できる可能性がある。
著者
三村 治 出澤 真理 石川 裕人
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

平成17年度は弱視モデルの作製・骨髄間質細胞のドーパミン産生神経細胞への分化誘導・弱視モデルへの細胞移植方法の検討を行った。弱視モデルは生直後より暗室下で飼育することにより作製した。骨髄間質細胞はDezawaらの報告と同様にドーパミン産生神経細胞への分化誘導が可能であった。弱視モデルへの細胞移植は脳脊髄液経由で細胞懸濁液を第4脳室に注入することにより可能であった。平成18年度は17年度に続いて弱視モデルへの細胞移植を行い、抗体アレイやPCRを用いた解析を行った。抗体アレイでは弱視モデルのタンパク発現を網羅的に解析することが可能であり、種々のタンパクとりわけ、ドーパミン前駆タンパク(Tyrosine hydroxylase;Th)が脳において発現が増強していたが、網膜では既報のようにThの発現は減少していなかった。Apoptosis関連タンパクやMAP kinaseに関するシグナルタンパクなどは脳・網膜共に発現の減少傾向を認めた。これらの結果は既報と同様であり弱視に伴う発現変化を捉えている。抗体アレイの結果をうけPCRを用いた確認実験を行った。PCRではThが弱視網膜においてdown regulationを認め、既報と合致した。細胞移植された弱視脳ではMAP kinase関連タンパクやNeurofilament、GFAPなどの神経グリア系のUp regulationを認めた。この結果から弱視モデルに対するドーパミン産生神経細胞の脳脊髄液経由移植は、弱視モデルによって惹起された様々なシグナル回路に作用し、アポトーシスの回避や神経・グリアの選択的生存をもたらし、さらには弱視モデルにおけるドーパミン量を増加させることとなった。今後、既存のLevodopaの投与と本研究で行った細胞移植の効果との比較検討を行う必要性があり、大型動物での安全試験等も施行していきたい。