著者
遊間 義一 金澤 雄一郎
出版者
兵庫教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,個人属性(親への愛着)の再犯に対する抑止効果が,非行少年たちが生活している地域社会の属性(完全失業率及びその前年との差)にどのような影響を受けているのかを,1991年に日本全国の少年鑑別所に初めて入所した少年6238名を対象として検討した。階層的母集団分割生存分析モデルを用いて解析すると,親への愛着,完全失業率,完全失業率の前年との差の主効果は,いずれも理論的な予測と一致する方向で有意となった。さらに,親への愛着と完全失業率に関する二つの変数の交互作用も有意であることが見いだされた。
著者
市井 雅哉
出版者
兵庫教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

研究I地域のボランティアによる3群で外部刺激への持続的注意を調べた。3群はPTSD群、高ストレス群、健常群である。PTSD群はPTSD症状と外傷経験ともに持っている。高ストレス群はPTSD症状はあるが、外傷経験はない。健常群はいずれもない。(1)外傷体験を経験しているPTSD群は、外部刺激へ注意を持続させる数唱課題得点が健常群および高ストレス群よりも低く、健常群と高ストレス群は数唱課題得点に差はなかった。(2)現在への注意の主観的得点がPTSD群は高ストレス群よりも低く、高ストレス群は健常群より低かった。外傷経験のみがこの違いを説明するとは言えない。研究II注意、自己没入、PTSD症状、抑うつ症状を含んだ質問紙データに重回帰分析を適用した。564名の健常成人を対象とした。結果、過覚醒症状が注意指標を説明し、注意指標が抑うつ症状を説明し、再体験(侵入)症状は抑うつ症状を説明した。研究III10名のPTSDクライエントに対して3回のEMDR治療前後で持続的注意指標を測定した。数唱得点、現在への注意得点ともに上昇した。研究IVEMDR治療によって改善した一人のPTSDクライエントにおいて、心拍数、外傷症状、注意指標の変化、関連を検討した。結果として、治療初期においては、過覚醒、侵入の改善に伴って、数唱得点の改善、外傷記憶想起時の心拍数のセッション内の低下が見られた。治療後半は回避が問題となり、心拍数との関連は見られなかった。以上から、PTSDと注意、認知指標の関連が認められ、注意、認知指標がEMDRの治療メカニズムの解明にも有効であることが示唆された。
著者
平野 亮
出版者
兵庫教育大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

骨相学は,19世紀前半の西洋世界を席巻した「脳科学」であり,その社会的・文化的影響については欧米を中心につとに研究の蓄積をみる。しかし,開化期以降の日本にも教育分野を含めた様々な領域でその流入が認められるにも拘わらず,これまでまとまった検討はなされてこなかった。そこで本研究では,①骨相学の流入・受容・展開についての広く文化的な概説史,②その理論が骨相学と知りながら受容した教育分野の歴史,③そうとは知らずに影響を被っていた教育分野の歴史,の3つのアプローチでこの主題に取り組む。近代以降の日本の教育学・思想の源流を探ると同時に,「啓蒙」時代の日本の一つの文化史を描き出すことを目指す。