著者
常盤 洋子 矢野 恵子 大和田 信夫 今関 節子
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.43-52, 2002-01-01 (Released:2009-10-21)
参考文献数
30

【背景と目的】女性にとって出産期は母親になる危機的移行期ととらえることができ, 出産体験は母親の自尊心や産褥早期の母子相互作用にプラスまたはマイナスに影響する可能性があると考えることができる.多胎児の出産はハイリスクな状態におかれるため, 母子ともに生命の危険にさらされる機会が多く, 母親が出産による心的外傷を受ける危険性が高いことが考えられるが, 双胎児を出産した母親の出産体験の自己評価と母親意識の関係についての実証的研究は少ない.そこで, 本研究では, 双胎児を出産した母親の出産体験の自己評価と産褥早期の母親意識との関係について検討することを目的とした.【対象と方法】調査の対象は, 双胎を出産した母親11名, 初産婦7名, 経産婦4名.不妊治療による双胎7名, 自然双胎は4名である.分娩様式は, 経膣分娩2名, 帝王切開11名である.研究期間は平成11年2月~平成12年8月であった.経膣分娩をした母親は産褥3日目に, 帝王切開分娩の場合は一般状態が安定し, 創部痛の訴えがなくなったことを確認してから面接が実施された.面接内容は出産体験の自己評価と母親意識の2項目について半構成的面接が実施された.具体的には, 出産体験については, 「出産はどうでしたか」, 「あなたの出産体験は点数をつけるとしたら何点ですか」, 「その理由は何ですか」の3項目について面接を行った.母親意識の形成・変容については, 母親になった実感として, 「母親になった実感はどのようなときに感じますか?」, 「母親としての充実感」, 「子どもの養育についての気持ち」, 「子どもの成長についての気持ち」の4項目について面接が実施された.面接の内容はテープに録音し, 逐語録を作成した後, 出産体験の自己評価と母親意識について内容分析を行った.【結果】100点を満点とする母親の自己採点による出産体験の満足度は出産様式による違いは認められず, 個々の理由によるものであることが示された.出産体験の自己評価に影響を及ぼす要因は単胎を出産した母親を対象にした常盤ら (2001) の先行研究の結果と違いはなかった.具体的には妊娠期の健康管理, 分娩方針に関するインフォームドコンセント, 出産に対する満足感, 新生児の健康状態, 出産直後の児への接触, 分娩時・分娩直後の産科医療スタッフの関わりがあげられた.【考察】産褥早期に出産体験を肯定的に評価した母親は双子の育児に積極的に関わる態度が確認された.一方, 出産体験を否定的に受け止めている母親は産褥早期に授乳を拒んだり, 子どもを可愛いと思えないなど母親になる心理過程において専門家の心理的援助を必要とすることが示唆された.
著者
Uchida Yoko
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.23-29, 2012

Objectiye: To validate the Outcome and Assessment Scale for Dementia Care (OASDC) by comparisonwith the Multidimensional Observation Scale for Elderly Subjects (MOSES). Methods: The targetswere 126 Jap anese nurses, together with 126 of their demented patients. The self- administered question-naire asked the nurses about the condition of their patients. The questionnaire consisted of 20 OASDCitems, including the base attributes of the nurses and their patients, and 40 MOSES items. OASDC wassubjected to a factor analysis and the correlations between OASDC and MOSES were explored.Results: The factor analysis revealed that OASDC had 5 factors : Self-care; Tranquility; Social role;Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia (BPSD),; and Caregiver and the cumulativecontribution ratio of all five factors was 63.196. There was a significant correlation between OASDCand MOSES except for the items of care factors (r=O.201 to O.926, p<O.05). Conclusion : The evalua-tion almost completely secured the validity of the construct validity and contemporary validity of theOASDC.
著者
下平 きみ子 伊藤 まゆみ
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.31-40, 2012
被引用文献数
2

<B>【目 的】</B> 一般病院で身体的治療を受ける認知症高齢者のケアを担う看護師への教育研修実施のための教育ニーズの把握と教育プログラム内容の抽出をする. <B>【対象と方法】</B> 急性期治療を行う2病院の整形外科病棟の看護師, 各6名に, フォーカス・グループインタビューを行い, 逐語録からデータを質的帰納的に分析した. <B>【結 果】</B> 「認知症高齢者のケアの困難」から8カテゴリ,「認知症高齢者のケアで心がけていること」から5カテゴリ,「教育研修について希望すること」から4カテゴリが抽出された. <B>【結 語】</B> 教育ニーズとしては, (1)認知症高齢者の状態の理解, (2)BPSD・危険行動の理解, (3)せん妄の理解, (4)認知症高齢者の世界の理解, (5)急性期病棟での具体的事例を用いて認知症高齢者のケア方法の理解, 教育プログラム内容は, (1)認知症の疾患・治療, (2)認知症高齢者の理解とアセスメントツール, (3)BPSD・危険行動の行動分析と介入の実際, (4)せん妄とその対応, (5)認知症患者の言動の意味, (6)認知症高齢者との関わり方, (7)認知症患者とのコミュニケーション, (8)急性期病棟での事例を通した看護過程の展開, が抽出された.
著者
Shinozaki Tetsuya Fukuda Toshio Watanabe Hideomi Takagishi Kenji
出版者
北関東医学会
雑誌
The KITAKANTO medical journal (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.147-151, 2004-05-01
被引用文献数
1 8

A seventeen-year-old boy was referred to our hospital, complaining of continuous pain of his left wrist joint. Plain roentgenogram showed an osteolytic lesion at the distal end of the radius. An operation in which the tumor was curetted was performed suspecting giant cell tumor. Pathological diagnosis was of a giant cell tumor. One month after the operation, radiological findings showed local recurrence with an expanded lysis. Wide resection of this tumor followed by a vascularized fibular graft was performed. Six months after the second operation, soft part swelling suggesting local recurrence was again prominent. Upper arm amputation was performed because of the bad local condition. The pathological diagnosis of these operative specimens was of giant cell tumor similar to that of the initial specimen. Multiple metastases appeared eight months after the third operation. In spite of intensive treatment, the patient died of respiratory failure. Autopsy revealed that pathological features from metastatic specimens were similar to those of osteosarcoma, not giant cell tumor. When we encounter patients presenting with a giant cell tumor, especially when they are younger than the age at which such lesions usually occur, we should bear in mind the possibility of an osteosarcoma and perform intensive chemotherapy and surgery.
著者
吉田 久美子
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.119-120, 2009-02-01 (Released:2009-03-13)
参考文献数
10
著者
龜沢 勝利
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:00231908)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.293-300, 1955-11-01 (Released:2009-10-15)
参考文献数
16
著者
武居 明美 伊藤 民代 狩野 太郎 小野関 仁子 前田 三枝子 堤 荘一 浅尾 高行 桑野 博行 神田 清子
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.133-139, 2005 (Released:2006-07-07)
参考文献数
31
被引用文献数
5 1 6

【背景と目的】 外来化学療法を施行しているがん患者の不安を把握する目的で調査を行なった. 【対象と方法】 A病院外来点滴センターに通院中で同意の得られた男性33名女性48名, 平均年齢58.6±10.0歳の81名を対象とし, STAI質問紙を用いて調査した. 【結果】 不安得点は男性より女性が高く, 非乳がん患者より乳がん患者が, 60歳以上より60歳未満が有意に高かった. また診断からの年数では, 1年未満より1年以上が, PSが良い者より悪い者が高かった. 【結論】 外来で化学療法を受けているがん患者は正常成人と比較し, 状態不安得点が高かった. 不安得点が高くなる要因として, 5つの項目が明らかになった. 今後は不安内容を特定すること, 不安得点が高くなる要因がある患者への優先的な援助, 実践的援助法をシステム化してスムーズに対応していくことが課題である.
著者
辻村 弘美
出版者
北関東医学会
雑誌
The KITAKANTO medical journal (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.129-136, 2006-05-01

【目的】中国で整体看護普及のために看護過程学習会を開催し,その理解度や関心度などを検討した.【方法】河北省唐山市の病院で働く,臨床経験5年以上の看護師23名を対象に,質問紙調査を行った.【結果】講義内容の項目の中で最も理解度が高かったのは,「看護過程の5段階」で23名中18名(78.3%)であり,「臨床で活用できる」と回答したのは16名(69.6%)であった.「看護診断」と「情報関連図」に関しては最も理解度が低かった.また,「臨床で看護過程を用いることの利点」に関しては16名(69.6%)が良く理解できたと回答しているものの,「臨床で活用できる」と回答したのは5名(21.7%)だけであった.【結語】看護過程の概論的なことは理解できていても,実際に看護過程を事例に展開することは困難である.
著者
常盤 洋子 國清 恭子
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.295-302, 2006 (Released:2006-12-26)
参考文献数
54

【目 的】 文献研究により, 出産体験の自己評価に関する研究の現状と課題を明らかにし, 出産体験の自己評価に関する研究に有効な変数を得ることを目的とする. 【研究方法】 1960年~2001年までの論文を対象に, "childbirth experience", "self evaluation", "scale" をキーワードにして, CINAHL, MedLine, 医学中央雑誌を中心に検索した. 【結 果】 131論文が検出され, 出産体験の自己評価について記述がなされ, 学術論文の形式が整っている47論文を選んで概観した. 出産体験の臨床的意義が明らかにされ, 出産体験の自己評価のアセスメントに有効な産科的, 心理・社会的変数が抽出された. 【結 論】 今後の研究の課題と方向性について, 以下, 3つの視点を明らかにした. (1)分娩経過の正常・異常による出産体験のとらえ方の相違を比較できる大きいサンプルによる調査の必要性, (2)出産体験の自己評価と産後の心理的健康 (例えば, 産後うつ傾向, 自尊感情) との関連についての実証的研究の必要性, (3)出産体験の再構築と意味づけに関する実践的研究の必要性が示唆された.
著者
高井 良樹 飯野 佑一 堀口 淳
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.255-258, 2009-08-01 (Released:2009-09-11)
参考文献数
6
被引用文献数
1

Mondor病は乳房およびその周囲の前胸壁に多く認められる浅在性の血栓性静脈炎で, 比較的まれな良性疾患である. 当院で3年10ヶ月の間に経験した41例のMondor病症例について検討した. 男女比は1 : 40. 年齢は26~73歳 (平均43.5歳) であった. 発生部位は右 : 左=14 : 27で左に多く, 上腹部から乳房部を経て腋窩に至る部に分布していた. 原因は35例 (85.4%) が特発性であった. 4例は乳癌手術の既往 (術後2ヶ月~ 2年4ヶ月) があり, 1例は乳腺生検後20日, 1例は授乳中であった. 症状は前胸壁皮膚の有痛性の索状物や皮膚陥凹である. ほとんどの症例は経過観察のみで1 ~ 2ヶ月で自然治癒した. Mondor病の診療で大切なのはこの病気について正しい知識を持ち, 他の乳腺疾患を否定することである.
著者
内田 陽子 梨木 恵実子 小玉 幸佳 河端 裕美 鈴木 早智子 高橋 陽子 斉藤 喜恵子 滝原 典子
出版者
北関東医学会
雑誌
The KITAKANTO medical journal (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.25-31, 2009-02-01
被引用文献数
1

【背景・目的】病院スタッフからみた老人看護専門看護師臨地実習の評価を明らかにすることである.【対象と方法】調査協力に同意が得られた病院スタッフ74名に対して,自記式質問紙法を行った.【結果】実習生の関わりとCNSの6つの役割に対する評価は「学生のケアプランは良かった」「スタッフに対する意見,アドバイスは良かった」等について高得点を示した.その他,「根気よく関わる大切さがわかった」等のスタッフ自身への良い変化の回答もみられた.しかし,これらの得点は,看護師とそれ以外のスタッフでは差がみられた.【結語】学生はスタッフに実習や役割を理解してもらうことが必要であり,そのためには,他職種に対する積極的な関わりが必要である.
著者
辻村 弘美 森 淑江 高田 恵子 宮越 幸代
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.51-58, 2009-02-01 (Released:2009-03-13)
参考文献数
13

【背景・目的】 看護は各国の様々な背景や状態により異なると考えられる. 中国で活動した青年海外協力隊員の面接調査と国際協力機構への報告書を分析し, その差異を明らかにすることで, 国際看護協力における示唆を得る. 【対象と方法】 看護師隊員4名の報告書計20冊と本人への面接結果を対象とし, 日本の看護と異なる点を抽出した. 【結 果】 「臨地実習において学生が行う基本的な看護技術」の80項目中, 日本と異なる看護に関する記述は41項目で, 対象者全員が差異があると述べた看護は, 「創傷管理技術」, 「与薬の技術」, 「身の回りの援助は家族が行う」, 「看護記録」であった. 4名中3名が差異があると述べた看護は, 「膀胱内留置カテーテル法」, 「点滴静脈内注射・中心静脈栄養管理」, 「手洗い」などであった. 【結 論】 日本と中国の違いが示唆されたので, 中国での看護技術の教育や臨床での状況について把握していく.
著者
山崎 恒夫
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.177-178, 2013-05-01 (Released:2013-06-13)
著者
齊田 綾子 飯田 苗恵 鈴木 美雪 大澤 幸枝 牛久保 美津子
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.109-117, 2013-05-01 (Released:2013-06-13)
参考文献数
15
被引用文献数
1 2

【目 的】 標準的な二次医療圏の回復期病院における急性期病院からの転入患者の特性と退院先を明確にし, 地域完結型医療を推進するための示唆を得る. 【対象と方法】 2007年度の転入患者265人の診療記録の遡及調査を行い, 記述統計および退院先により比較検討した. 【結 果】 対象者は平均76.5歳, 脳血管疾患47.1%で, 41.6%が入院後に介護保険を申請, 91.3%に退院調整がされた. 退院先は40.0%が施設, うち18.9%は介護老人保健施設であった. 退院先施設が居住地の二次医療圏内である者は77.4%で, 介護老人福祉施設では50.0%であった. 退院先が自宅か否かの比較では, 回復期病棟への入院, 紹介元病院での入院期間, 入院期間, 医療処置の有無, ADL, 認知機能, 家族員数に有意差が見られた. 【結 語】 加療に加え, ADL改善, 認知症進行防止, 介護保険の申請支援, 退院調整の情報共有等とともに在宅・生活重視型施設の医療体制整備の必要性が示唆された.
著者
神田 清子 飯田 苗恵 狩野 太郎
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.379-387, 2001-11-01 (Released:2009-10-21)
参考文献数
32
被引用文献数
1 1

【背景・目的】がん化学療法に伴う味覚変化に対して, 看護者が行っているセルフケア教育の内容を明らかにすることである.【対象と方法】全国の500病院で働く病棟の副婦長1000名であり, 郵送法による質問紙調査を施行した.回収は634名 (回収率63.0%) であり, 該当なし, 記入不備を除く568名について分析を行った.セルフケア教育内容は自由記述により回答を求め, 内容分析を行った.【結果】看護者の約59%が患者・家族を対象として, がん化学療法に伴う味覚変化に関するセルフケア教育を行っていた.セルフケア教育内容で一番多い項目は, 「味覚変化時の食事」, 次いで「症状・徴候の観察」, 「味覚回復のための含嗽液」であった.教育内容としては, 味覚変化の原因と出現時期, 観察, 食事, 含嗽, 味覚刺激方法など一連のセルフケア教育を行っていることが明らかになった.味覚を回復するための含嗽液として, イソジン, レモン水, 氷水が高頻度に指導されていた.【結論】セルフケア教育内容として, 味覚変化時の食事指導は定着しつつある.しかし, 薬剤投与中の金属味への対処方法の教育は行われておらず教育内容に含める必要があることが明らかになった.さらに味覚を回復するために実践されているレモン水については, その効果が曖昧のまま指導されており介入研究が必要であることが示唆された.