著者
星野 高志 小口 和代 大高 恵莉 木戸 哲平 田中 元規 早川 淳子 佐藤 浩二 後藤 進一郎
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.432-439, 2021 (Released:2021-08-20)
参考文献数
23

【目的】回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期)における移乗・トイレ・歩行の自立判定と,自立後の転倒を調査した。【方法】対象は回復期の脳損傷者135 名とし,各動作の自立および自立後の転倒状況を調べた。自立は,①療法士が動作評価,②病棟スタッフが実生活で動作観察評価,③医師を含む多職種で判定した。また入棟時FIM,SIAS 運動,BBS を自立後の転倒の有無により比較した。【結果】各自立後の転倒者は,移乗自立77 名中9 名(11.7%),トイレ自立70 名中3 名(4.3%),歩行自立60 名中8 名(13.3%)だった。転倒者の入棟時の機能は,移乗ではFIM 運動,SIAS 運動,BBS,歩行ではBBS が有意に低かった。トイレでは有意差はなかった。【結論】移乗,歩行自立者の約1 割が転倒していた。移乗,歩行自立者のうち運動機能が低い者が転倒していた。今後,客観的指標を含めたさらなる検討が必要である。
著者
今岡 信介 佐藤 浩二
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.270-273, 2016-10-01 (Released:2017-10-15)
参考文献数
14
被引用文献数
4

回復期リハビリテーション病棟に入院し,長下肢装具(以下 : KAFO)を作製した脳卒中片麻痺患者において,発症からKAFO作製までの期間(以下 : 作製期間)が身体機能とADL能力に及ぼす影響を調査した.研究デザインは,横断的研究とし,身体機能,ADL能力と作製期間の関連性,実用歩行を規定する因子とカットオフ値を算出した.結果,作製期間と退院時FBS, 退院時NTP stage, 退院時FIM, FIM改善度は,中等度の相関が認められた.また実用歩行を規定する因子として,退院時FBS得点と作製期間が抽出され,カットオフ値は,退院時FBS得点 : 28.3点,作製期間 : 60.5日であった.このことから,作製期間は身体機能とADL能力に影響を与える重要な要因と考える.
著者
土橋 ゆかり 佐藤 友美 佐藤 浩二 大隈 まり 衛藤 宏
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.185, 2008

【はじめに】<BR>協調運動障害や仮性球麻痺に加え、発動性低く訓練に対しても消極的な症例に対し病前の生活様式や興味関心を把握した上での活動が有効であった。今回の経験を振り返り発動性を引き出す為の活動提示の視点を報告する。<BR>【作業療法評価】<BR>80歳代、男性、診断名は脳梗塞後遺症、左右不全麻痺、両側仮性球麻痺、Br.Stage右上下肢stageVI、左上下肢stageV。難聴、嚥下・構音障害で著明あり、Yes、No程度の意思疎通は可能。B.I.は25点。であり、セルフケアは車椅子主体で要介助状態。家族構成は妻・娘の3人。<BR>【目標】<BR>3ヶ月で可能な限り妻と娘との在宅生活が継続して行えるよう、セルフケアが見守りから軽介助にて遂行可能となる。併せて、日中は落ち着いて生活できる活動を探り、生活リズムを確立する。<BR>【経過】<BR>更衣・整容の訓練を1週間導入するも訓練を拒否した。そこで、本人の意思が向けば主体的に動くことができる点を生かし、 (1)本人自ら関心を示した活動 (2)生活歴に基づく活動(3)OTが「これは症例が集中してできる」と考えた活動、の3つの視点から活動選択し、これらの活動を通して発動性を引き出し日中落ち着いて生活でき生活機能の改善に結び付ける事を試みた。以下、各活動選択の経過を記す。(1)では活動への関心が高いものを探る際の指標として、日常生活の中で注意が止まる、指を差す、物を手に取って見る、他者を呼んで何らかの主張を示す、の4点を重視した。その結果、「屋上へ行く」、「猫と触れ合う」、「陶芸」に関心を示した。 (2)では、なじみのある活動や手続き記憶を通して発動性を生かす事ができると考え生活歴に基づく活動を提示した。結果、「囲碁」、「新聞を読む」を選択した。 (3)では様々な環境を設定する事で関心を広げる事も必要と考え「パズル」、「棒体操」、「絵画」を実施した。<BR>【その後の経過】<BR>訓練時は、本人の関心を示した屋上にて歩行を行いその後、訓練室にて囲碁を実施する等、内容を組み合わせた。この結果、意欲的に歩行し能動的に軽介助歩行が行えるようになり、自分の意思をジェスチャーにて伝えることや感情表出も多く見られるようになった。日常生活場面では、身体耐久性は向上し介助量の軽減が図れ、約3ヶ月で目標達成となった。最終時、B.I.35点。在宅訪問の際は、仏壇に参る為やトイレに行為に妻との軽介助歩行が可能であった。退院6ヶ月後も、妻と散歩や畑に行く等、日中は離床し本人らしく在宅で過ごしている。<BR>【まとめ】<BR>訓練に対して拒否的で日中落ち着かない患者に対して、セルフケアへの直接的な訓練だけでなく様々な環境で本人の行動を評価し興味や関心を生かした作業活動を選択・提示する事が、活動のきっかけとなり心身機能面や活動面の機能向上には重要であった。
著者
上原 江利香 佐藤 浩二 森 敏雄 森 照明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Bb1427, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 ギランバレー症候群(以下、GBS)は、自己免疫性機序により急性発症する末梢神経疾患である。比較的予後は良好とされているが、約20%以内が後遺症を残すという報告もある。回復期リハ病棟に入棟するGBS患者は回復遅延例である事が予測されるが、臨床症状は様々であり症例報告に留まる事が多い。今回、過去8年間に当院回復期リハ病棟に入棟したGBS患者のADL経過について整理したので報告する。【方法】 平成15年4月1日~平成23年3月31日の期間にGBSを主病名として当院回復期リハ病棟へ入棟した8症例であり、この内GBSの亜型であるFisher型2例と再燃し転院した1例を除いた5症例を対象とした。5症例の基本情報及び、極期症状、入棟から1カ月ごとのADL能力を症例ごとに整理した。なお、ADL能力はBarthel.Index(以下、B.I.)を用いた。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は当院の倫理委員会の規定に沿って行った。【結果】 症例1は脱髄型の男性39歳、症例2は軸索型の男性67歳、症例3は軸索型の男性75歳、症例4は軸索型の女性80歳、症例5は軸索型の男性41歳であった。平均年齢は60.4±19.2歳、当院入棟までの平均経過日数は55.6±23.4(30~88)日であった。急性期加療では全症例がIVIGを施行し、症例1、5はステロイドパルス療法を併用していた。また、極期に全症例が四肢麻痺を呈し、症例1、2は呼吸筋麻痺により人工呼吸管理を行っていた。入棟時のB.I.は症例1~5それぞれ、60、40、40、40、15点であった。ADLの経過をB.I.の項目別で整理すると、食事は症例1、2は入棟時自立、介助を要した3例の内、症例4、5は入棟から10~20日で自立した。症例3は退院時も介助を要した。椅子とベッド間の移乗は症例4が入棟時自立、介助を要した4症例全例が60~90日で自立した。整容は症例1が入棟時自立、介助を要した4例の内、症例2、4、5は30日~90日で自立した。軸索型の症例3は退院時も介助を要した。トイレ動作は全例が入棟時介助、30~150日で全例自立した。しかし、症例3、5は下衣の操作に補助具の使用、衣服の工夫が必要であった。入浴は入棟時に全例が介助を要し、症例1、4は入棟から120~150日で自立した。症例2、3、5は退院時も介助を要した。移動は入棟時、全例が介助、30~150日で全例が歩行自立した。症例1、3、5はロフストランド杖、症例2は下肢装具とロフストランド杖が必要であった。階段昇降は入棟時全例が介助、症例1、2、4、5は入棟から120~150日で自立、症例3は退院時介助を要した。更衣は入棟時全例が介助、症例1、2、3、4は30~150日で自立したが、症例5は退院時も介助であった。排便・排便コントロールは入棟時、症例3、4が自立、介助を要した症例1、2、5は入棟から14~20日で自立した。退院時B.I.は症例1~5までそれぞれが、100、95、75、100、90点に改善した。なお、5症例の平均在院日数は147日±17.9日であり全症例が自宅退院に至った。【考察】 当院へ入棟した患者5症例は日本神経治療学会/日本神経免疫学会合同の治療ガイドラインで予後不良因子として挙げられている高齢者や呼吸筋麻痺などの重度麻痺、軸索障害などの項目に当てはまった。また、入院時B.I.は脱髄型の症例1を除くと4例が40点以下であり、回復遅延例と考える。ADL能力の経過をB.I.の項目別で整理すると、自立に要した期間や達成度から概ね排便・排尿コントロール、食事、整容、トイレ動作、移動、更衣、階段昇降、入浴の順で難易度が高いと考える。自立しなかった項目を整理すると、整容や食事といった比較的容易な項目で減点となる症例がいた。これは、上肢に麻痺が残存した症例の特徴であり、手指の拘縮を認めた症例では補助具の装着も困難であった。一方、下肢麻痺が残存した場合は下肢装具や歩行補助具の使用により、退院時には全症例が歩行自立した。これらから、上肢麻痺がADL能力獲得の阻害因子となる可能性が高い事が示唆された。その為、GBS患者に対しては、早期より上肢の機能改善を目的とした機能訓練と補助具の活用、上肢装具による拘縮予防に努める事が重要と考える。【理学療法学研究としての意義】 回復期リハ病棟における、GBS患者に対するアプローチの意義は機能回復を促し、ADLを獲得させ、社会復帰に繋げる事であり、円滑な訓練転換のためにはGBS患者の訓練経過を理解しておく必要がある。今回の結果は、適切な訓練展開や目標設定の指標の一助として活用できるものと考える。
著者
松野 義晴 川端 由香 小野 祐新 佐藤 浩二 足達 哲也 小宮山 政敏 門田 朋子 森 千里
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.203-207, 2002-10-01
参考文献数
2
被引用文献数
2

肉眼解剖実習は,医歯科大学生にとって人体の構造および機能を学ぶ上で,重要な基礎科目の一つである。本学において,解剖実習に供される遺体は千葉白菊会会員から提供いただいている。ところで,本学の解剖実習施設は,本学医学生およびコメディカル学生以外には公開していなかった。以前より,実習施設に関しては,会員から「死後自らのご遺体を預ける施設について見学したい」といった要請があったが,その機会を実現するには至らなかった。しかし,平成13年3月に解剖実習施設内の面会室および実習室の改装が終了したことを機に,要請に応えることおよび施設の現状を会員に知っていただくことを目的として,同年10月に開催された千葉白菊会総会時に希望者に対して見学会を実施するに至り,その成果を含めここに報告する。見学会には112名が参加し,見学箇所への移動に支障のない会員を10名程度のグループに分け,面会室,霊安室,遺体保管室および解剖実習室の順に見学を行った。なお,移動の困難な会員については待機場所において映像による見学を行った。後日,見学会に関するアンケート調査を行ったところ,参加いただいた8割の会員から返答をいただき,見学会全体を通して肯定的な回答をいただいた。特に,実際に施設見学を行った会員の回答によって(1)スタッフの対応,(2)見学時間,(3)見学内容,さらには映像による見学を行った会員の回答にみられるとおり,(1)映像の出来映え,(2)映像に関する説明,(3)放映時間については,その肯定的な回答を約6割の会員から得た点からすれば,及第点をクリアーしているといっても過言ではなかろう。
著者
和田 琢 秋山 雄次 横田 和浩 佐藤 浩二郎 舟久保 ゆう 三村 俊英
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.433-438, 2012 (Released:2012-10-31)
参考文献数
22
被引用文献数
6 28

アバタセプト(ABT)を投与後に肺間質影の増悪がみられた関節リウマチ(RA)の1例について報告する.55歳時にRAおよび間質性肺炎を発症した.間質性肺炎は副腎皮質ステロイド大量療法で改善した.RAは多種の疾患修飾性抗リウマチ薬およびインフリキシマブに対して抵抗性であった.タクロリムス(TAC)が有効であったが難治性の掻痒感と下痢のため中止となった.2ヶ月後,関節炎が増悪したためABTの国内第III相試験に参加した.ABT投与2日目から白色痰が出現.痰培養は陰性であり投与13日後に胸部CTを施行した.2ヶ月前に比して間質影の増悪がみられたため,臨床試験は中止された.関節炎に対しABT投与27日後にプレドニゾロンを2 mg/日から10 mg/日に増量した.ABT投与44日後に胸部CTを再検した結果,間質影は改善傾向を示した.本例の発症機序については,ABTによる間質性肺炎の増悪以外に,TAC中止による間質性肺炎の増悪,RA増悪による間質性肺炎の悪化,ウイルス感染の関与なども考えられた.新規抗リウマチ生物学的製剤であるABT投与後に間質性肺炎が増悪した症例は未だ報告されておらず,これが最初の症例報告である.ABTと間質性肺炎増悪の因果関係は不明であり,このような症例の蓄積が必要であると考える.