著者
廣田 收 ヒロタ オサム Hirota Osamu
出版者
同志社大学人文学会
雑誌
人文学 (ISSN:04477340)
巻号頁・発行日
no.204, pp.47-70, 2019-11

宇治拾遺物語第四七話の猿楽は、宮廷の内侍所神楽における猿楽とは異なり、神々に対して奉納されるものではなく、天皇の興に応えるために世俗化されたものであることを明らかにした。
著者
秋篠 憲一
出版者
同志社大学人文学会
雑誌
同志社大学英語英文学研究 (ISSN:02861291)
巻号頁・発行日
no.79, pp.1-22, 2006-03

13世紀の前半にアングロ・ノルマン語でGui de Warewicが書かれて以来、聖人伝と騎士物語の要素を兼ね備えたGuyの物語は聴衆・読者を魅了し、その13世紀のロマンスを基にした中英語で書かれた作品も三つの写本の中に残っている。拙論では、現存する中英語版の中のCaius写本をとりあげ、典拠となったアングロ・ノルマン語版や他の中英語版と比較し、その特徴について考察する。方法としては、Caius写本独自のものであるAthelstan王のGuyへの弔詞に焦点をあてる。王が隠者として昇天したGuyへ捧げる46行にわたるこの哀悼の辞は詩の中で注目に値する。他の版に比べて簡略化が目立つこの詩人がなぜ弔詞を加筆したのか。王は主人公のいかなる"adventures"をどのように語り、評価するのか。この弔詞がロマンスにおいて果たす役割はなにか。またこの弔詞ときわめて簡略化が目立つ回心、告白の場面および重要なエピソードの改変、削除との関連性はあるのか。さらに王によるGuyの武勲の総括があるのに、なぜエピローグで詩人自身が再度Guyの生き様をふりかえるのか。これらの疑問に答えていく。Caius写本版では、騎士GuyのFelice (happyを意味するラテン語のfelixから由来)への愛の奉仕と、回心後の巡礼・隠者Guyの神への愛の奉仕が描かれる。詩人はGuyの人生がこの世の「幸福」から天の「至福」への遍歴の旅であることを教える。
著者
大愛 崇晴 オオアイ タカハル Oai Takaharu
出版者
同志社大学人文学会
雑誌
人文学 (ISSN:04477340)
巻号頁・発行日
no.194, pp.392-364, 2014-11

本稿は、17世紀イギリスの音楽理論家トマス・サモン(1648-1706)による、純正律で演奏可能なヴィオルの構想について論じたものである。その構想は、科学者団体であるロンドン王立協会主催の演奏会において実現するに至ったが、ピュタゴラス以来の思弁的な数学的音楽理論の伝統にのっとりつつも、演奏実践や聴覚的な快を重視する彼の姿勢には、同時代のイギリスにおける経験主義的な思潮が反映されているものと思われる。p.376, l.2の表記に誤りあり。(誤)「ガスパーロ」→(正)「ガスパロ」
著者
廣田 收 ヒロタ オサム Hirota Osamu
出版者
同志社大学人文学会
雑誌
人文学 (ISSN:04477340)
巻号頁・発行日
no.201, pp.101-132, 2018-03

『源氏物語』における物の怪を再検討する上で、本文に即した読み直しを試みる。そのとき、「もの」と「もののけ」「霊」との間には使い分けがあり、また登場人物の違いによって使い分けがあることを明らかにした。
著者
伊達 立晶 ダテ タツアキ Date Tatsuaki
出版者
同志社大学人文学会
雑誌
人文学 (ISSN:04477340)
巻号頁・発行日
no.201, pp.25-61, 2018-03

ロラン・バルトが「作者の死」で指摘しているように、マラルメは純粋な作品というものが詩人の消滅を含意していると述べている。マラルメのみならずボードレールにも見られるこの「作者の消滅」は、彼らがポーの詩論を受け継ぐことによって生じたものである。西洋で広まっていくこの制作方法は、象徴主義やレディ・メイド、シュルレアリスム、アクション・ペインティングなどに受け継がれる。だが同時にそれは「芸術終焉」の重要な要因なのかもしれない。As Roland Barths pointed out in his "La mort de l'auteur", Mallarmé reports that the pure work implies the disappearance of the poet. The disappearance of the author that can be seen not only in Mallarmé but also in Baudelaire arised from their adoptions of Poe's theory of poetry. This production method that became popular in Europe was adopted in Symbolism, Ready-made, Surrealism, action painting and so on. But it may be the important factor of "the end of art".
著者
廣田 收 ヒロタ オサム Hirota Osamu
出版者
同志社大学人文学会
雑誌
人文学 (ISSN:04477340)
巻号頁・発行日
no.200, pp.117-152, 2017-11

『源氏物語』における「物の怪」を再検討するために、研究史を辿り直すとともに、紫式部集の用例を読み直す。さらに、物語における「もののけ」の表記が、本文校訂によって本来の語の属性がみえにくくなっていることを指摘した。