著者
竹中 康将
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、高効率触媒反応を利用した非可食性バイオマスから有用なオレフィン系モノマーを高選択的に合成する技術開発を行い、得られるバイオマス由来のオレフィン系モノマーを精密に重合する新規触媒を開拓し、バイオマス度の高い新規バイオベースポリマーを合成する技術の確立を目的とした。本研究の成果として、非可食性バイオマスを原料に用いたバイオマス度の高いバイオベースアクリル樹脂合成を達成し、各種測定機器を用いた物性評価を行うと同時に、β位にアルキル基およびアリール基を有する新規なアクリル樹脂合成を達成し、各種測定機器を用いた物性評価を行った。
著者
関根 亮二
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

申請者は、初期発生で重要な遺伝子発現パターンの非対称化がNodal-Leftyシグナル系のみで可能なのか、そのパターンの形成に重要な要素は何なのかという疑問をもった。本研究は、Nodal-Lefty系を培養細胞内へ再構成し、非対称パターン形成が再現できるかどうかの検証を通じて、その疑問に答えることを目的としている。申請者は、人工Nodal-Lefty系を培養細胞(HEK293細胞)に導入し、小さな高Nodal発現領域の自律的な形成を確認し、さらにNodal伝播の亢進によりより大きな発現領域の形成を実現した。さらに、Lefty2による抑制力の向上によるさらなるパターンの改善の糸口もつかんだ。
著者
御子柴 克彦
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2013-05-31

IP3受容体(IP3R)による小胞体内腔からのCa2+放出がシナプス可塑性に関わるか大きな論争があった。プルキンエ神経特異的欠損マウスを作製しIP3R1が神経細胞のCaMKII/アクチン骨格/スパイン形成を制御することを初めて解明した(PNAS)。IP3R1の伝令RNA輸送が長期増強を制御し(Nature Neurosci),グリアのIP3R2が神経機能を調節すること(Nature Commun), IP3Rを制御するERp44が蛋白質品質管理を担うこと(Mol Cell)も発見した。IP3RによるGABA受容体制御など本研究期間内にIP3Rがシナプス可塑性を制御する多数の決定的証拠を得た。
著者
藤原 裕展
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

毛包バルジ部に存在する表皮幹細胞は、発生期を通して幹細胞の性質を獲得するが、そのメカニズムはよく知られていない。本研究では、毛包幹細胞が表皮細胞としての性質に加え、立毛筋制御のための腱様機能を持つという多機能性が幹細胞としての性質決定に関わるとの仮説を立て、それを検証した。バルジ表皮幹細胞の遺伝子発現プロファイルを他の細胞と比較したところ、バルジ幹細胞で筋肉-組織接続部に特徴的な遺伝子の発現が強く誘導されていることが明らかとなった。さらに、バルジで発現する腱組織形成に重要な転写因子Scleraxis 欠失マウスを作製したが、毛包形態や幹細胞の遺伝子発現に顕著な異常は現れなかった。
著者
長瀧 重博
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2014-04-01

南極で観測を続けるIceCube Collaborationは2013年4月、遂に大気ニュートリノ以外の起源と思われる2つのイベント(PeVニュートリノ)の検出を報告しました。これに引き続き、IceCube Collaborationは解析の続報を発信しています。その到来方向をマッピングしてみますと、まだ有意性は低いものの、銀河中心付近からやってくるニュートリノイベントが特に多いようにも見えます。本研究にて、我々は銀河中心では超新星爆発頻度が高く、多くの超新星残骸が存在していることに着目しました。その上で特に巨大な超新星爆発「極超新星爆発」がこの高エネルギーニュートリノの起源天体であると予想し、その理論計算を行いました。我々はこれまでの超新星残骸研究で開発してきた非線形粒子加速コードを極超新星残骸に応用し、高エネルギー粒子がどれだけ極超新星残骸で生成されるかを評価しました。また得られた宇宙線が銀河中心エリアに存在するガスと相互作用し、どれだけ高エネルギーニュートリノ・ガンマ線を生成するかを拡散方程式を解くことにより評価しました。得られたニュートリノの結果をIceCubeのデータと比較し、一方ガンマ線についてはGeV-TeVガンマ線観測からの制限に抵触しないか、現在慎重な解析を行いました。その結果、観測されているガンマ線のフラックスをこのモデルで満たすことは出来るが、それを説明するとニュートリノのフラックスは観測よりも桁で小さくなることが分かりました。この結果は銀河中心付近のニュートリノが系外起源であることを示唆しています。今後は更に上記で得られた成果を検討し、査読論文に投稿する予定です。本研究期間中にその論文は仕上がりませんでしたが、今後論文が受理されましたら謝辞には必ず本研究課題に言及致します。
著者
池上 弘樹 石黒 亮輔 佐藤 大輔
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

超流動3HeのA相では、クーパー対が3Heという中性原子で構成されているにも関わらず、磁場と軌道角運動量の間に微弱な相互作用が生じ、マクロな性質に影響を及ぼす可能性がある。この現象の検証を行うため、超低温高磁場冷凍機と実験セルの整備を行った。これと同時に、3He-4He混合液表面に出来る3He薄膜の研究を行った。この3He薄膜では、上下の面はきれいな表面であるため、明確な検証実験が可能と考えられる。この3He薄膜の性質の解明のため、3He-4He混合液上の電子の移動度測定を行った。移動度の詳細な解析により、3He準粒子は表面で3He薄膜との間で異常な散乱をしている事が明らかになった。
著者
大泉 匡史
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

神経ネットワークにおける情報の統合を測る指標である、「統合情報量」を情報理論、情報幾何学の枠組みから新たに導出した。これまで提案されてきた統合情報量の指標は、いくつかの数学的な問題点を抱えていたが、本研究において導出した新しい指標はそれらの問題点を解決したことになる。また、神経ネットワークの解析などで良く使われる、移動エントロピーやGranger因果性などの因果性を測る指標と統合情報量との関係性が明らかになり、統合情報量の直観的な理解が進んだ。提案した新しい指標をヒトのfMRIデータに適用し、意味のない刺激を見ている時は、意味のない刺激を見ている時に比べて統合情報量が低くなることを示した。
著者
ファガラサン シドニア
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

我々の研究により獲得免疫系が腸内共生細菌の成長や分布に寄与していることが明らかになった。Foxp3+T細胞はFirmicutesに属する細菌の多様性を促進しており、炎症抑制やパイエル板でのIgA選択制御といった胚中心内外での免疫制御に寄与していることが明らかになった 。Foxp3+T細胞により制御されている多様で選択されたIgAレパトワが多様な細菌叢に結合し腸管のホメオスタシスに役立っている一方で、T細胞非依存的なIgAは細菌の保持より排除に寄与していることが明らかになった。以上の結果は腸内の免疫-細菌共生機構を理解する上で重要な結果であると考えられる。
著者
戸島 拓郎 上口 裕之 久保山 友晴
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

糖鎖による生命活動の制御様式として、糖鎖がコアタンパク質を介さずに直接的なリガンドとして特異的な受容体を活性化するという新概念が脚光を浴びている。本課題では、神経軸索の成長円錐の応答性を指標として、生理活性を持つ糖鎖機能ドメインとその受容体、さらにその下流で惹起される一連の細胞内シグナル伝達経路を解析した。その結果、コンドロイチン硫酸とケラタン硫酸が両方向性の軸索ガイダンス因子として機能することが明らかになった。
著者
竹市 博臣 軍司 敦子
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

m系列変調法は、脳波・脳磁図から事象関連電位およびそれに相当する信号を加算平均なしで短時間で記録する方法として開発された。この研究課題では、発達障害である自閉症スペクトラム障害(あるいは、自閉症スペクトラム症)(ASD)に着目し、ASD児の社会的特異性から、ヒトの声に特異的な反応をm系列変調法を用いて計測する実用的な方法の開発を行った。ヒトの声をm系列変調したものを健常成人に聴取させた場合、右半球の2~3の電極から記録されるβ帯パワーから声特異的反応が得られることが明らかになった。
著者
谷藤 学 佐藤 多加之 内田 豪 大橋 一徳
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-06-28

本研究は、物体像表現の空間構造の解明(課題1)、物体像表現の空間構造と時間構造の統合理解(課題2)、脳における物体像のスパース表現の意味を解明する(課題3)の3課題から成る。そのそれぞれについて以下の進展があった。(課題1)前年の実績報告にある初期視覚野の3次元機能構造の可視化について、さらに、解析に検討を加え、論文として発表した。(課題2)物体像表現の時間構造の理解に関係した課題として、注視課題でトレーニングしたサルから様々な位置に提示した視覚刺激の対する高次視覚野の応答を記録し、視野のどこに提示されるかによって、応答の潜時が異なることを発見した。同様の記録を初期視覚に関連する領域でも行った結果、このような物体像の提示位置による潜時の違いは見られなかった。これらのことから、物体像の提示位置によって、異なる神経回路メカニズムで情報が低次から高次に送られていることが示唆された。この成果は論文として公表された。(課題3)自然画像の断片の中から高次視覚野の物体像応答を説明できる図形特徴を抽出するアルゴリズムについて交差検定など様々な方向から検討を行い、妥当性を明らかにした。研究の過程で大きな問題となったのは神経細胞の応答の試行毎のゆらぎである。一般にゆらぎの影響を除くためには、多くの試行について記録する必要がある。しかし、慣れによって試行を繰り返すと応答が次第に減弱するという問題点がある。我々は試行回数を増やす代わりに、より多くの物体像の応答を計測することで問題の解決をはかることができた。