著者
田中 章詞 唐木田 亮 瀧 雅人
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
学術変革領域研究(A)
巻号頁・発行日
2022-06-16

ここ十数年のうちに起こった機械学習(Machine Learning)の技術の劇的な発展のうちの多くが、深層学習(Deep Learning)の手法によるものであることは疑いの余地がないが、それにもかかわらず深層学習は従来の統計的機械学習の常識から見ると理論保証が難しいこともよく知られた事実である。本研究では従来の機械学習の理論研究手法に加え、物理学からもたらされた知見を結合し、深層学習の理論/応用の両方にさらなる深い理解、発展をもたらすことを目的とする。
著者
浜中 雅俊 東条 敏 平田 圭二 吉井 和佳 北原 鉄朗
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

メロディレンダリングの自動化を達成する.構築するシステムではまず,ユーザが作成中のメロディで変更 したい部分を選択する.すると,タイムスパン木分析器が付近のメロディを分析しタイムスパン木が抽出され る.次に,メロディレンダリングによって,タイムスパン木の構造を維持しながら差し替えできるメロディ候補が複数作成される.そして,メロディ候補が提示されユーザが選択する.これを繰り返していくことでメロディに変更を加え,メロディ全体がユーザの意図に近づいていく.レンダリングシステムは,作曲家の生産性を向上するツールとなることが期待される.
著者
深井 貴明
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

近年、様々な分野でデータが爆発的に増加し、これを共用 HPC 環境で計算処理する需要が増えている。しかし、現在の共用 HPC はユーザーが管理者権限を持つこと (以後 root 化) ができないため、クラウド環境と比べユーザーによるソフトウェアの導入やシステムレベルの最適化が困難である。これまで 共用 HPC 環境での完全な root 化はセキュリティと性能のトレードオフがあり実現されていない。本研究ではこのトレードオフを解決するシステムを軽量ハイパバイザというシステムソフトウェアを基に設計し、共用 HPC 環境の性能を維持しつつ安全な root 化の実現する。
著者
西村 信哉 湊 太志 LIANG HAOZHAO 今井 伸明 西村 俊二 有友 嘉浩
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

rプロセス元素合成は、宇宙における鉄より重い元素の主要な起源である。rプロセスの元素合成経路は安定核から大きく離れた中性子過剰側にあり、原子核の物理的性質が未解明である。rプロセスが起こる天体環境も長らく未解明であったが、近年、重力波・マルチメッセンジャー天文学の進展により、対応する天体現象キロノヴァが観測された。本研究では、重力波天文学の新しい知見を踏まえ、元素合成と原子核の理論計算の両者を「アップデート」する。原子核理論の最近の成果を基に代表者が構築してきた元素合成計算を拡張する。rプロセスを対象に、核物理と天体物理の双方の不定性を踏まえ観測から理論を制限する。
著者
小林 俊秀 村手 源英 石塚 玲子 阿部 充宏 岸本 拓磨
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

生体膜に於いて脂質はランダムに配列しているのではなく、脂質二重層の内層と外層の脂質組成は異なり、内層のみ、外層のみをとっても特定の脂質がドメインを形成している。しかし生体膜における脂質の詳細な分布状態はほとんど明らかになっていない。私たちは特定の脂質、あるいは脂質複合体や脂質構造体に特異的に結合するプローブを開発するとともに、それらのプローブを用い、超高解像蛍光顕微鏡、免疫電子顕微鏡法等さまざまな顕微鏡手法を用いて、脂質ラフトをはじめとする脂質ドメインの超微細構造を解析し、また細胞分裂や細胞接着等や種々の病態における脂質ドメインの動態を併せて観測することにより脂質ドメインの機能の解明を試みた。
著者
水間 広
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

自閉症スペクトラム障害(ASD)の病因に、周産期の神経免疫機構異常の関与が示唆されているが、生後の社会性行動異常との関連は未だ不明な点が多い。我々は母体疑似ウイルス感染により再現された病態モデルマウスを無麻酔下による脳機能イメージング法(PETやfMRI)を用いて同一個体で長期間追跡した結果、正常発達マウスと比較して神経機能ネットワークや糖代謝活性異常を見出し、また、ASD患者研究と同様の結果が得られた。本研究では、モデルマウスの生後神経機能ネットワーク異常と脳内ミクログリア活性による神経シナプス形成異常との関連性を調べ、ASDの病態メカニズムの一端を明らかにする。
著者
坂井 南美 野村 英子 花輪 知幸 大橋 聡史 奥住 聡
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

特に若い原始星L1527について、化学診断を通したエンベロープ・円盤構造の同定、円盤のワープ構造の発見など、独自の手法による成果を挙げてきた。このような初期円盤構造は、原始惑星系円盤で捉えられているリングやスパイラル構造、また、系外惑星における軌道面の多様性の起源の端緒を捉えたものであり、より多くの初期円盤の観測でその一般性を検証することが求められる。数auスケールでの円盤構造の高分解能観測によりこの課題に応えるとともに、多波長観測により、ダスト成長を円盤構造形成過程との関係から解明する。これらを通し、"原始星進化の過程で、惑星形成がいつ始まるか"という問題を提起し、その大要を明らかにする。
著者
前川 禎通 中堂 博之 大谷 義近 Puebla Jorge
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

1915年にアインシュタイン達は磁性と回転運動の等価性を明らかにした。これは力学回転と電子のもつ角運動量(スピン)が角運動量保存則で繋がっていることを証明するものである。物質の持つ角運動量の間には、角運動量保存則を介して相互変換が可能である。本研究では、物質の巨視的な回転に加えて、流れに現れる渦運動など、様々な力学回転と物質中のミクロな角運動量(スピン)との相互変換による新たな分野「スピンメカトロニクス」を構築する。
著者
今村 俊幸 工藤 周平 鈴木 厚 廣田 悠輔 鈴木 智博 椋木 大地
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

エクサ時代のメニイコア環境下において、システム実行効率を向上するための数値計算アルゴリズムならびにタスク技術周辺を数値線形計算の視点から研究する。将来にわたって持続可能な高性能な数値計算ソフトウェアのための開発フレームワーク実現に注力し、数値線形代数カーネル構築の経験から発想される新たなタスクスケジューリング技術(非同期・条件付き・競争的スケジューリング)を研究する。同技術要件をスケジューラプロトタイプとして試作し、既存数値線形代数ソフトウェアに取り込み高性能化・高並列化を実現する。更にエクサ時代のターゲットなる高次元データ解析向け数値計算ソフトウェアに対しても適用範囲を広げていく。
著者
大熊 盛也
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2019-06-28

この新学術領域研究の成果として生まれる微生物のリソースを、一般の研究者が利活用できるように整備する。本領域研究で分離培養・解析される難培養微生物を含む多数の微生物を受け入れて、保存・維持・品質管理を実施する。微生物リソースについての関連情報を整備して学術上に貢献にするとともに、利活用いただくことで研究コミュニティーや産業界も含めた社会に貢献することをめざす。難培養微生物のシングルセルゲノム解析や高度の培養技術により他の計画研究の支援も行う。
著者
McHugh Thomas
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2019-06-26

The overall goal of this project is to better understand memory. To achieve this we will combine techniques to label and monitor groups of neurons encoding a specific event in an animal’s life. This approach allows us to focus on how groups of neurons organize their activity during learning and recall of information. Our experiments will clarify how their connections and dynamic interaction underlie memory in healthy brain and uncover new interventions to treat memory loss that accompanies aging and disease.
著者
平瀬 肇 今野 歩
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

昨年度に引き続き、マウス大脳皮質のニューロピル(神経網=微小突起の集合体)からのCa2+イメージングを行った。NMF解析法では、アストロサイトと神経細胞の局所ニューロピルシグナルを上手く分離できないことを実感しつつある。そこで、今年度の後半にニューロンには赤色蛍光Ca2+センサーを発現できるAAVベクターを利用した。本課題の目標の一つである「tDCS によるニューロピルの信号変化とその物理メカニズムの検証」をするために、遺伝子改変動物を用いて、光遺伝学的にアストロサイト由来ニューロピルのみに内因性Ca2+上昇を惹起する実験を行った。その結果、麻酔下と無麻酔の状態では異なる神経細胞の活動形式が観測された。今後は実験数を増やし、無麻酔の状態で起こる神経活動の変化のメカニズムを追究する予定である。また、もう一つの目標である「経験依存的なニューロピル反変化とグリア活性による動物の行動様式の変化」に取り組むために、顕微鏡下における恐怖条件付け学習装置の導入を行った。具体的には頭部を固定した状態で、筋電位信号を指標として聴覚刺激によるフットショックの条件付けを行った。試行錯誤が多かったが、漸く二光子イメージングが出来る段階に近づきつつある。さらに、アストロサイトの内因性Ca2+上昇が抑制される2型IP3受容体欠損マウスを用いて海馬脳波を測ったところ、経験依存的にリップル波の振幅と発生頻度が下がることを見出した。アストロサイトのCa2+上昇の後に起こる変化の物質的な面に迫るため、マイクロ電磁波を利用したマウス脳の固定も準備しつつある。昨年度に報告した薬理的に興奮させた状態でのニューロピルのシグナルであるが、思いがけない現象を見出しつつある。これについても2018年度中に論文発表を目指したい。
著者
横倉 祐貴
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2016-08-26

ブラックホールのエントロピーはその表面積で与えられ、熱力学エントロピーとネーターチャージの二つの側面をもつ。本研究の目的は、その両者の関係を明確にすることであり、それはホログラフィの起源や情報問題の解明につながるものである。今回、蒸発するブラックホールのself-consistentな解を球対称性という条件だけから構築できた。その解では、ブラックホール内部の物質のエントロピー密度を体積積分すると、エントロピー面積則が再現される。また、量子力学的に、熱力学エントロピーをネーター保存量として定式化できた。これらは上記のブラックホールエントロピーの2つの側面をつなげるものだと期待できる。
著者
今村 俊幸 大井 祥栄 深谷 猛 廣田 悠輔 椋木 大地 山本 有作 藤堂 眞治
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、数万から数億のコアプロセッサが搭載される計算システム環境下において、過去に蓄積された高性能な数値計算サービスを新しい数学原理に基づき実現することを目的にし、「異粒度数値カーネル構築」と共に「非同期的な数値計算アルゴリズム」の2大テーマのもと、1)非同期的数値計算アルゴリズムに関する理論と実用レベルにある省通信・省同期アルゴリズムについて研究しCAHTRやFDTD向けの手法を提案した。更に、2)超メニイコアでのスケーラブルな軽量コード生成のための自動チューニングなどの核基盤技術研究を推進し次世代数値計算ソフトウェアの新技術創出に繋がる新機軸探究を進めた。
著者
和田 章
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究課題では、赤血球に感染したマラリア原虫の増殖と金属イオンの関係性に着目し、金属イオンに相互作用する新たな分子リガンドを探索した。その結果、マラリア原虫の増殖を抑制する特殊な分子リガンドを発見した。そして、その分子リガンドは、既存のマラリア治療薬であるクロロキンに耐性のあるマラリア原虫に対しても増殖抑制効果を発揮することを明らかにした。さらに、細胞レベル及び動物レベルでの多角的な評価により、新たなマラリア治療薬候補としての有用な特徴を見出している。
著者
曽田 繁利
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究課題では、強相関系の量子ダイナミクスを明らかにすることを目的に、密度行列繰り込み群法を応用した強相関量子シミュレータの開発を行うことである。平成29年度に実施した強相関量子シミュレータの開発における進展は、時刻の異なる状態について、密度行列繰り込み群法によりそれぞれの時刻の状態を表現するために最適化された異なるヒルベルト空間の表現で与える新たな時間依存密度行列繰り込み群法の手法を開発した。ここで開発された手法は、動的密度行列繰り込み群法で用いられるマルチターゲットの手法を応用し、異なる時刻の状態をひとつの最適化されたヒルベルト空間の表現で与える場合と比較して、半分程度の制限された基底の数でよりより高精度な結果を得ることが確認された。特に密度行列繰り込み群法の計算コストはこの制限された基底の数の3乗で与えられることから、本課題で開発された手法は非常に有効であると考えられる。また、同時にこの密度行列繰り込み群法の大規模並列化を進め、本研究の対象である強相関量子系の量子ダイナミクスの研究を行った。平成29年度の研究成果としては、幾何学的なフラストレーション効果により量子モンテカルロ法では取り扱いが困難な系を中心に、三角格子ハバード模型やKagome-strip鎖の新奇量子相の研究、またSPring-8等の大規模実験施設と連携したキャリアドープされた銅酸化物高温超伝導体の電子状態の解析等を行った。また、本研究課題で開発を行っている多次元系へ応用可能な時間依存密度行列繰り込み群法の応用研究として組合せ最適化問題に対して有効であると考えられる量子アニーリングに対する応用研究を行い、その研究成果を国際会議において発表した。
著者
大武 美保子
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2017-04-01

平成29 年度は,研究項目1, 2, 3について研究を進めた.1. 共想法支援システムに基づく主体価値発展支援システムの開発:共想法支援システムを発展させ,異なるテーマに対する話題探し,および,同じテーマに対する他者の話題の閲覧を通じ,利用者の主体価値発展を支援するシステムを設計した.2. 認知行動療法の理論と会話データの分析に基づくテーマの設定とプログラムの考案:共想法形式の会話データから主体価値を推定する手法を,思春期を対象に実施した共想法における会話データを分析することを通じて検討した.好きなおやつをテーマに,高校一年生を対象として,共想法形式の会話を体験する演習を実施した際の,話題提供の発言を文字起こししたデータを分析対象とし,主体価値が反映していると考えられる内容の項目を探索した.値段や食欲,体重といった制約条件の中での葛藤を反映し,本人の自由裁量があると考えられるおやつというテーマ設定は,特に思春期における主体価値を推定する上で有効である可能性が示唆された.3. 認知行動療法と会話支援技術における評価指標に基づく主体価値発展評価指標の選定:引きこもりの若者が集うサポートステーションの運営者に,共想法を体験頂いた上でヒアリングを行った.また,精神科デイケアにおいて利用者を対象に,共想法を試行した上で,リハビリプログラムを考案した.主体価値発展評価指標を,総括班との議論を通じて選定し,実験計画を策定した.
著者
土屋 晴文 榎戸 輝陽 湯浅 考行
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、雷の発生や雷雲が上空を通過する時に、ガンマ線のみならず中性子や電子の反物質である陽電子がどのようにして生成されるのかを明かすことを目的としていた。そのため、冬に雷が頻発する日本海沿岸の柏崎刈羽原子力発電所構内において、雷や雷雲からの放射線の観測を実施してきた。2017年2月に発生した雷に伴い、発電所の構内に備えたわれわれの検出器が雷の発生から100 ms ほど続く強烈なガンマ線と陽電子の兆候を示す信号を捉えた。詳細な解析により、雷の中でガンマ線と大気中の窒素との間で光核反応と呼ばれる核反応が発生し、中性子や陽電子の起源となることを世界で初めて実証した。
著者
辻田 祐一
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

MPIにおける入出力インタフェースであるMPI-IOの代表的な実装であるROMIOでは、高速な並列入出力機能を有しているが、ノード内に複数のプロセスを起動する場合において十分な性能を発揮できない問題があった。そこで本研究では、ファイル入出力を行うプロセスの配置や、ファイル入出力操作に合わせて行うデータ通信の順番に関して、ノード間・ノード内のプロセス配置に配慮した最適化手法をROMIOに適用し、ユーザが設定したプロセス配置に関係無く、高い入出力性能が発揮できる実装を実現した。