著者
狩野 晶子 尾関 はゆみ
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.18, no.01, pp.116-131, 2018-03-20 (Released:2019-04-08)
参考文献数
4
被引用文献数
2

ALT) 655名を対象に行った質間紙調査における自由記述回答の分析結呆を報告する。日本の小学校で 外国語の指導にあたる外国人ALTを対象に行った大規模質問紙調査の結呆より,本稿では自由記述質閲への回答として書かれた「JTEとの関わり」に関するコメント及び「児童との関わり」に関するコ た自由記述回答をその内容に応じて分類し項目化し,各コメントの内容に対してコーディングを行い,それぞれの項目での集計と分析を行った。外国人ALTのコメントから共通して浮かび上がる問題意識が総数の多さで客観的に示され,一例として日本人教員のクラスマネジメントカヘの高い評価と期待が見られた。また,授業前後の日本人教員とのコミュニケーションがあることが満足度につながること,授業内で自分の強みが生かされていると感じることが外国人ALTのモチベーションを高めることも示された。児童との関係においては学年特性への言及が多く出され,また特別な配慮を必要とする児童との関わりについて専門知識や研修を求めるコメントも見られた。本研究は日本の小学校での外国語指導の実情と,日本人教員や児童との教室内外での関わり方の現状について外国人ALTが持つ意見を集約し示すことで,今後の小学校外国語活動及び教科としての外国語における指導者の活用と育成や研修内容への具体的な課題と方向性に示唆を与えるものである。 本研究では全国の小学校で外国語1の授業に携わる外国籍のAssistantLanguage Teacher (以下外国人 との関わり」に関するコメントを中心に,外国人ALTが綴っ
著者
松宮 奈賀子 森田 愛子
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.16, no.01, pp.196-210, 2016-03-20 (Released:2018-08-02)
参考文献数
16

本研究の目的は,教員養成課程で学ぶ大学生を対象に,英語母語話者とのティーム・ティーチング(以下T.T.)形式での模擬授業の効果を「指導への自信」「不安」「具体的な学び」の3 観点から検討することである。外国語活動の指導法を学ぶ演習科目を履修した大学生131 名を対象として,ALT との模擬授業の実施前後における「指導への自信」の変容,「指導への不安」の実態,「ALT との模擬授業からの学びの具体」を質問紙により調査した。その結果,模擬授業前の段階で特に学生が「自信がない」と評価したのがALT との指導に関する事項であり,事後には自信に関する質問項目すべてにおいて,得点の向上が見られた。また,ALT との模擬授業は全員が実施したのではなく,実施した学生と,それを観察したのみの学生がいたが,この2 群間に自信の向上に関する差異は見られず,観察によっても一定の学びを得ることができることが明らかになった。具体的には,打合せの重要性や打合せを効率的に実施する方法,授業内でのALT の役割等についての学びがあったことが自由記述より明らかになった。このようにALT とのT.T.に関し,一定の学びを得,指導への自信は高まったものの,英語力に関する不安が依然として残ることも明らかになった。そのため,ALT との模擬授業から授業づくりや協同して指導にあたる方法を学ぶことは有効であるが,合わせて英語力の向上を目指すことがALT とのT.T.指導への自信に繋がるであろうことが明らかになった。
著者
内野 駿介
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.19, no.01, pp.162, 2019-03-20 (Released:2020-04-10)
参考文献数
26

第二言語習得研究において文法知識は暗示的知識と明示的知識の総体であると捉えられる。これまでの中学校以降の英語教育では明示的知識の獲得とその自動化が目指されてきたが,小学校段階では定型表現依存型の暗示的文法知識の獲得を目指すべきである (板垣, 2017)。しかしながら日本人小学生の文法知識を対象にした実証研究はこれまでにほとんど行われておらず,少ない先行研究の中にも明示的知識,暗示的知識の別を明らかにしたものはない。そこで本研究では公立小学校 6 校の小学 5, 6 年生 446 名を対象とし,時間制限付文法性判断課題 (TGJT) とメタ言語知識課題 (MKT) を用いて児童の暗示的知識,明示的知識を測定することを試みた。分析の結果,TGJT の全体正答率は 48.1%でチャンスレートを下回った。この値は先行研究の結果と比べて低く,先行研究で用いられた文法性判断課題においては児童が明示的知識,暗示的知識の両方を活用して回答していた可能性が示唆された。 また MKT の全体正答率は 47.5%であり,暗示的指導が中心の小学校英語教育であっても児童は明示的知識を獲得することが可能であることが示唆された。また各課題の正答率には言語項目によってばらつきがあり,児童が知識を獲得しやすい言語項目とそうでない項目があることが明らかになったほか,各課題の正答率は 5 年生よりも 6 年生のほうが有意に高く,小学校英語教育を通した明示的,暗示的知識の学習可能性が裏付けられた。これらの結果に基づき,小学校段階での文法指導のあり方について示唆を行った。
著者
米崎 里 多良 静也 佃 由紀子
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.16, no.01, pp.132-146, 2016-03-20 (Released:2018-08-02)
参考文献数
22

本研究は,数年後に迫る小学校外国語活動の教科化および低学年化に対して,小学校教員は現在どのような不安を抱いているのか,そして,その不安はこれまでの教員の意識調査で明らかになった不安とどのように異なるのかを明らかにし,小学校外国語活動・英語教育をサポートするための教員研修のあり方について提案することを目的とする。これまでの意識調査で用いられてきた質問形式は主に多肢選択式が多く,質問項目が調査側の視点や思いに偏る傾向になるため,本研究では,自由記述式を採用し,教員の心情をそのまま表現できるように工夫した。そして計量テキスト分析を通して,小学校教員の外国語活動の教科化および低学年化への不安の構造化を試みた。その結果,教科化および 低学年化には「教員の英語力・指導力」「国語や他教科とのバランス」「児童の負担・混乱」に関する共通の不安が抽出され,また教科化のみの不安として「評価への不安」が,また低学年化のみの不安として教員の「小学校英語教育の本質の理解」が抽出された。「教員の英語力・指導力」に関する不安は,20 年前の小学校英語導入期から課題として長年指摘されてきたものであるが,相も変わらず,その課題は教員の心の中から払拭されず未解決のままであり,そして,「低学年化する本質的な理由がわからない」といった新たな不安も加わり,外国語活動の新たな政策が実施されようとしている。
著者
加賀田 哲也 村上 加代子 伊藤 美幸 川崎 育臣 森田 琢也 チェン 敦子
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.15, no.01, pp.142-154, 2015-03-20 (Released:2018-08-02)
参考文献数
12

文部科学省(2012)によると,日本の公立の小・中学校等の通常学級に在籍する児童生徒の約 6.5%が特別な支援を必要としている。つまり,40 人学級であれば,2.6 人が該当することになる。 一方,平成19 年度より特別支援教育の対象となった発達障害のある児童生徒への教育的支援および合理的配慮に関する英語教育からの関心と実践は,他教科に比べて乏しいと言える。しかしながら,昨今,特別支援教育の視点を取り入れた外国語教育における研究は,教育の権利としての児童生徒のニーズに加え,外国語学習を支援したいと願う教員からのニーズも高く,遅ればせながら,日本においてもようやくその必要性が意識されつつある。そこで,本稿では,発達障害である「自閉症スペクトラム障害」「注意欠如・多動性障害」「学習障害」の特性を概観した上で,2013年に小中教員を対象に実施した「英語学習に関する実態調査」に基づき,英語授業における「困難さ」を明らかにする。また,巻末の資料に,学びのユニバーサルデザイン (UDL) の視点を踏まえながら,特別な支援を要する児童が在籍する通常学級での授業づくりへの手がかりを示したい。
著者
階戸 陽太
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
JES journal = 小学校英語教育学会学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.102-114, 2012-03-20

本研究は,外国語活動必修化後の小学校教員の外国語活動に対する意識を探ること,更に,必修化後の課題について質的研究手法を用いて明からにすることを目的とする。調査は半構造化インタビューによるものとした。参加者は,石川県の小学校教員3名であり,この3名は,必修化前にインタビューを行った際に,教員間の外国語活動に対する意識差について,指摘していた。分析は,インタビューを書き起こし,グラウンデッド・セオリー・アプローチ(戈木, 2008)を基本にしながら,構造構成的研究法(SCQRM)(西條, 2007)の考えを参考に行った。この結果,外国語活動に対する小学校教員間の意識差については,これまでの積み重ねで「慣れ」が出てきていること,また,一方で「もう外国語活動については考えたくない」意識があることが明らかとなった。さらに,教員間に意識差があることが示された。
著者
萬谷 隆一
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.21, no.01, pp.70-81, 2021-03-20 (Released:2022-04-01)
参考文献数
18
被引用文献数
2

本研究は,小学校英語教育における望ましい指導形態として,専科教員,担任教員,あるいはティーム・ティーチング(TT)が良いかについての教師の意識と,その意識に関連する要因を探る。北海道内の小学校教師64名に対し,質問紙調査を行い,指導者として専科教員・担任教員・TT のそれぞれがどの程度望ましいかについて評価してもらった(指導体制意見)。さらに指導体制意見と,専科・担任の立場,指導観(定着,正しい英語の習得,伝え合い,児童理解,授業規律,授業の活動構成)との関連性について分析した。分析の結果,1)専科・担任・TT のうち,担任単独の指導よりもTT がより支持されたこと,2)指導体制意見においては,専科・担任の立場で差異はみられないこと,3)担任教員に比して,専科教員が「授業規律」が重要であると答える傾向があること,4)「授業規律」を重視する教員ほど,専科教員が教えるべきではないと考える傾向があり,その傾向は特に担任教員に顕著にみられること,さらに「活動構成」が重要であると考える教員ほど,TT が望ましいと答える傾向があること,などが明らかになった。結果にもとづき,専科・担任のメリット・デメリットについての示唆を探るだけでなく,小学校英語における望ましい教師の資質や制度について考察した。
著者
萬谷 隆一 堀田 誠 鈴木 渉 内野 駿介
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.22, no.01, pp.200-215, 2022-03-20 (Released:2023-04-01)
参考文献数
110
被引用文献数
1

本研究の目的は,小学校英語教育学会での研究のあゆみを整理して俯瞰することで,これまでの研 究の成果と課題を明らかにし,今後の方向性を示唆することである。本研究においては小学校英語教 育学会の紀要・学会誌の論文を整理分類し,客観的にその傾向を見出すことに努めながらも,学問的 意義・実践的な意義の視点からの解釈を含めたナラティブレビューの手法を取った。『小学校英語教育 学会紀要』(第 1 号~第 11 号)及び JES Journal(Vol. 12~Vol. 21)に収録されている全論文(N = 242) を分析対象とし,タグ付けにより 19 の研究分野に分類した。また発行時期を,2008 年以前,2009~ 2017 年,2018 年以降の 3 期に分け検討した。分類の結果,最も多かったのは「教材」であり,次いで 「第二言語習得」が多かった。一方で,論文数が少なかったのは「特別支援教育」と「教師の発話」 であった。論文数の増減傾向から,4 つのタイプの研究分野が見受けられた。1)どの期間においても 一定の論文が投稿されていたカテゴリ(例:「指導法」「指導者」),2)どの期間においても論文数が少 なかったカテゴリ(例:「聞くこと」,「教師の発話」,「特別支援教育」),3)時代を経るにしたがって 論文数が増えているカテゴリ(例:「第二言語習得」,「教材」,「情意」),4)時代を経るにしたがって 論文数が減っているカテゴリ(例:「教員養成・研修」,「小中連携」)が見受けられた。
著者
岸本 映子
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.15, no.01, pp.125-140, 2015-03-20 (Released:2018-08-02)
参考文献数
12

本研究は、英語の冠詞と「文法的な数」(以後<数>と表記する)の指導の枠組みを認知言語学の視点から体系的に提示し、さらにその動画教材の作成を目的とする。その有効性は小学校の実践授業で検証する。 冠詞や<数>は日本語話者の学習者にとっては、学習の困難点の一つとして指摘されている。理論的には認知心理学や脳科学や第2言語習得理論など学際的な先行研究の知見を活用して枠組みを構築する。学習者が中学生以上の場合、可算性は対象物の構成要素と境界を軸とした7段階のイメージ・スキーマを設けて(岸本2014)指導するが、学習者が小学生の場合、それを4段階に限定した動画教材を作成する。冠詞は不定冠詞とゼロ冠詞に焦点化し、定冠詞は本研究では扱わない。学習者が日本語話者の場合、対象物のカテゴリー分類の練習を、冠詞と可算性を軸とした4種類の指導順序で提示した。小学校で使われている教材のHi, friends!より語彙(名詞)を分析し、動画にする語彙を選定した。それぞれの名詞ごとに20~30秒程度の動画 を作成した。Hi, friends!(1)でも可算名詞の不可算化のような意味の拡張が出現していることを指摘し、意味拡張の指導の必要性を示した。また日本語との比較を通して、英語とのずれに気づかせ、日本語に対しても客観的に振り返る要素を指導に取り込んだ。動画を通して、人間が対象を捉える概念(対象を認識するイメージ)を可視化し、体系的にわかるように工夫した。小学校の実践授業を通して一定の成果が得られた。
著者
平嶋 美鈴 名渕 浩司
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.17, no.02, pp.85-100, 2017-03-20 (Released:2018-08-02)
参考文献数
21

本研究は,トップダウン的リタラシー指導法の一つとして「指追い」が,2つのタイプのテキスト(中学校1 年生用英語検定教科書のテキスト,ナーサリー・ライムのテキスト)それぞれにおいて効果があるか検証を行った。公立小学校の5,6年生362 名を対象に,音声と文字間の対応を文・単語・音素—書記素の3 つの単位に分けて一致課題を行い,指追いを行った後に実施した同形式のテストでどのように結果が変化するかを比較した。 結果は,教科書テキストを用いた場合には指追いの効果は見られなかったが,ナーサリー・ライムのテキストを用いた場合では,指追いを行ったグループのみ音素—書記素単位での一致課題の得点が有意に伸び,単語単位でも点数の伸びが有意傾向を示す結果となった。 これらの結果から,これからの小学校における英語教育でリーディングにつなげるリタラシー指導を行う際には,ナーサリー・ライムのテキストを用いて指追いを行うことにより,児童は文という長い文字のまとまりの中からでも,音素—書記素対応関係まで暗示的に学習できることが明らかとなった。
著者
佐藤 剛
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.21, no.01, pp.54-69, 2021-03-20 (Released:2022-04-01)
参考文献数
24

2020 年度より外国語が5・6年生において教科となり,7社から検定教科書が出版され自治体ごとに採択された教科書を使用した授業が開始されている。しかし,指導される語彙はどの教科書を使用するかにより異なる可能性があることも事実である。そこで本研究は,平成29 年告示の学習指導要領下で使用される教科書の語彙データからコーパスを作成し,教科としての英語授業において児童が共通して理解できるように指導するべき受容語彙のリストを作成することを目的とする。その開発過程とコーパスおよびリストに含まれる語彙の分析から,検定教科書の異なり語数,総語数がLet’s Try!とWe Can!と比較して大きく増加していること,各社教科書の異なり語数は,新学習指導要領に示されている600 語から700 語を大きく超えていること,そして,教科書間において異なり語数,総語数ともに違いがあることが明らかになった。そのため,小学校の英語の授業において,語彙項目ごとにその重要度を判断し,軽重をつけた語彙指導の必要性が示唆された。最後に,開発したリストの教科書の英文に占めるカバー率から,リストの上位1,000 語を小学生が共通して学習するべき受容語彙,その中の上位600 語を確実な定着を求める語として設定した。このように,指導するべき語彙をデータによって客観的に示すことは,小学校の英語の授業における効率的な語彙指導およびスムーズな小・中連携のための基礎資料となることが期待される。
著者
篠村 恭子
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.18, no.01, pp.20-35, 2018-03-20 (Released:2019-04-08)
参考文献数
10
被引用文献数
1

本研究は,初等教育教員養成段階の大学生の小学校での「理想の外国語授業1」のイメージ(以下,「理想の授業」)が児童英語教育関連科目の1 年間(前期・後期)の受講を通してどのように変容するかを明らかにすることを目的とする。調査は,平成28 年度に計4 回(前期・後期講義それぞれの初回と最終回)行い,毎回の講義終了時に学生に記録させた振り返りレポートの記述と併せて分析した。 受講した学生のうち,中学校英語科教員免許状を取得予定で自身の英語運用能力に対する自信が高い学生(学生A)と取得予定は無く英語運用能力に対する自信が低い学生(学生B)の2 名を抽出し, SCAT(Steps for Coding and Theorization,以下,SCAT;大谷,2011)という質的分析の手法を用いて分 析を行った。その結果,学生A は受講を通して「理想の授業」に変容が見られ,徐々に外国語授業の「指導者」としての視点を獲得していったが,学生B については1 年間を通して「理想の授業」に大きな変容は見られず,外国語授業の「指導者」としての視点の獲得も見られなかった。
著者
植松 茂男 佐藤 玲子 伊藤 摂子
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.68-83, 2013-03-20 (Released:2017-10-05)

本研究は,2011年度に小学校英語活動経験がある小学校6年生に対して,英語習熟度テストと英語活動に関する情意アンケートを実施した結果のまとめである。同時に実施した小学校教員に対してのアンケートも参考にしながら,小学生が英語活動をどのように受け止め,どのような「学び」があったのか,教える側の教員の意見も参考にしつつ明らかにしようとする,総合的なアプローチの開始部分である。協力を得た各小学校に於いて開始学年や総履修時間数が異なるため,総履修時間数別に4群に分けた。それらのグループ間比較で,時間数が一番少ないグループに比べて,一番多いグループは,習熟テストのスコアも高く,情意アンケートにおいても肯定的な回答が多かった。
著者
酒井 英樹 内野 駿介
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.100-115, 2018

<p><tt>本論文は,「小学校教員養成外国語(英語)コア・カリキュラム」(東京学芸大学</tt>, 2017<tt>)が提案する知識・技能及び英語運用能力の点から,小学校教諭免許状の取得を希望する大学生が大学における養成期間中に何を学び,身に付ける必要があるのかを調べるために行った調査研究の結果を報告するものである。初等英語科指導法の受講生に対して「小学校教員養成外国語(英語)コア・カリキュラム」の項目の理解度及び自身の英語力の自己評価を問う質問紙調査を行った。また,受講生から</tt>TOEIC <tt>の得点を得た。受講生のうち</tt>2 <tt>年生</tt>103 <tt>名の回答を分析した。その結果,全ての項目について自己評価が低かったが,特に指導法に関する内容についての項目の自己評価が低かった。英語力の自己評価については,受容能力に比べて産出能力の自己評価が低かった。コア・カリキュラムで求めている</tt>B1 <tt>レベルについては,読むことについては</tt>59.2%<tt>の学生が肯定的な自己評価(「ややできると思う」と「できると思う」)をしていたが,聞くこと,話すこと[やり取り],書くこと,話すこと[発表]の順で肯定的な回答の割合が少なくなり,話すこと[発表]については</tt>27.3%<tt>の学生しか肯定的な自己評</tt><tt>価 </tt><tt>をしていなかった。また,英語運用能力については,コア・カリキュラムで提案している</tt>B1 <tt>以上に達している学生は</tt>19 <tt>人(</tt>18%<tt>)であった。これらの結果に基づき,カリキュラムの改善・充実のための示唆を考察した</tt><tt>。 </tt></p>
著者
山本 玲子 池本 淳子
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.17, no.02, pp.38-53, 2017-03-20 (Released:2018-08-02)
参考文献数
11

本研究は,小学校国語科で行われているローマ字指導を,英語文字指導の一環と位置づけ,英語科・国語科を融合させたことばの学びが,英語・日本語の言語形式への気づきや習得につながるかを実証することを目的とする。まずローマ字教育の歴史と現状を概観することで,日本で訓令式が定着した経緯とヘボン式への切り替えが円滑に進まなかった理由と現状の課題を明らかにした。児童の立場に立ったことばの教育の推進のために,国語科と英語科(外国語活動)が連携しローマ字指導を変えていく必要性が明らかになった。さらに教員への質問紙調査により,英語教育・情報教育の充実による小中学校現場の変化とヘボン式ローマ字の需要を確認した。小学校教員はヘボン式の指導は訓令式より困難であると感じており,ヘボン式の指導法を研修したいと要望していることが明らかになった。 そこで教員が指導に不安を持たないよう工夫したヘボン式ローマ字教材として絵本と練習帳の2 種類の教材を開発し,公立小学校3 年生で実際に使用し効果を検証した。
著者
酒井 英樹 内野 駿介
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.18, no.01, pp.100-115, 2018-03-20 (Released:2019-04-08)
参考文献数
9

本論文は,「小学校教員養成外国語(英語)コア・カリキュラム」(東京学芸大学, 2017)が提案する知識・技能及び英語運用能力の点から,小学校教諭免許状の取得を希望する大学生が大学における養成期間中に何を学び,身に付ける必要があるのかを調べるために行った調査研究の結果を報告するものである。初等英語科指導法の受講生に対して「小学校教員養成外国語(英語)コア・カリキュラム」の項目の理解度及び自身の英語力の自己評価を問う質問紙調査を行った。また,受講生からTOEIC の得点を得た。受講生のうち2 年生103 名の回答を分析した。その結果,全ての項目について自己評価が低かったが,特に指導法に関する内容についての項目の自己評価が低かった。英語力の自己評価については,受容能力に比べて産出能力の自己評価が低かった。コア・カリキュラムで求めているB1 レベルについては,読むことについては59.2%の学生が肯定的な自己評価(「ややできると思う」と「できると思う」)をしていたが,聞くこと,話すこと[やり取り],書くこと,話すこと[発表]の順で肯定的な回答の割合が少なくなり,話すこと[発表]については27.3%の学生しか肯定的な自己評価 をしていなかった。また,英語運用能力については,コア・カリキュラムで提案しているB1 以上に達している学生は19 人(18%)であった。これらの結果に基づき,カリキュラムの改善・充実のための示唆を考察した。
著者
松宮 奈賀子 森田 愛子
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.15, no.01, pp.95-110, 2015-03-20 (Released:2018-08-02)
参考文献数
12

本研究の目的は小学校教員養成課程に在籍する大学生を対象に,外国語活動指導への不安を軽減するための方策の一つとして「学級担任の役割を意識した英語スピーチ練習」を実施し,その効果を検討することである。スピーチ練習は2013 年度後期の外国語活動指導法に関する演習科目の中で4 回に渡って実施し,127 名の大学2 年生が参加した。本スピーチでは単に流暢に話すことを目指すのではなく,児童が分かるような工夫をしながら伝える,という「学級担任としての発話」を意識することを求めた。4 人グループで順番にスピーチを行い,スピーチはタブレットを用いて録画した。スピーチ後には録画された映像を見て,振り返りを行い,次回への課題を明確にさせた。本スピーチ練習を体験し,事後アンケートに回答した122 名の学生の本実践の効果に対する自己評価を調査した結果, 85%以上の学生が本実践は「学級担任としての英語力」の向上に役立ったと評価し,基本的には本実 践は英語力向上感に寄与するものと受け止められた。しかしながら「教壇に立って英語を話すことに自信がついた(不安が減った)」と回答した学生は全体の39.3%にとどまり,自信の向上(不安の減少)につながるとはいえない結果であった。ただし,履修後に残る不安・課題について調査したところ,英語力を最大の不安と回答した学生の割合が例年と比較して20%程度減少し,「自信がついた」とまではいえないものの,本実践が指導への不安軽減に功を奏した可能性があると考えられた。
著者
内野 駿介
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.15, no.01, pp.83-94, 2015-03-20 (Released:2018-08-02)
参考文献数
7

本稿は,全国の大学で開講されている外国語活動の指導に関する講義の開講形態及び授業内容に関する実態調査の報告である。小学校教員養成課程の設置されている全国の国公立大学及び東京都に所在する私立大学において,平成26年度(一部大学は平成25年度)に開講されている講義のカリキュラム及びシラバスを分析した。 対象とした大学の90%弱で少なくとも1つの講義が開講されており,大部分の学生に外国語活動の指導のあり方について学ぶ機会があることがわかった。開講講義数は小学校英語専攻を設置している大学で最も多く,英語専攻はあるが小中の区分の無い大学や英語専攻の設置されていない大学とは著しい差が見られた。また,最も多く扱われている内容は「模擬授業」(22.86%)で,次いで「指導法」(21.25%),「教材」(9.08%),「英語力向上」(6.93%)の順であった。「模擬授業」と「指導法」が各大学で扱われている回数とその大学で開講されている授業数との間に強い正の相関が見られ(それぞれr=.85, .71),実践的な内容はどの大学でも同程度の割合で扱われていることが明らかになった。 外国語活動は英語という言語を扱う領域であり,実践的な内容を教員養成段階で扱うことは有意義である。今後教科化・時数増へと向かっていく中,本研究の結果が教員養成のカリキュラムを考える 一助となることを願っている。