著者
但馬 康宏
出版者
岡山県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

文脈自由言語の部分言語族のひとつである単純決定性言語について,そのある部分言語族は多項式教示可能であることを示した.この結果は,多項式時間での教示可能性と多項式時間での質問による学習可能性の本質的な違いの一例となっている.さらに,本研究により得られたアルゴリズムを文書の段落分割アルゴリズムに応用し,テキストデータを話題に応じた段落に分割する手法を開発した.この手法は,分割精度において従前の良く知られた手法よりも高性能であることが実験的に示された.またこれらを思考ゲームの着手決定アルゴリズムに応用し得ることを示し,実験的にその有効性を示した.
著者
渡邉 富夫 山本 倫也
出版者
岡山県立大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2009

かかわりが実感できるコミュニケーションを実現するためには、身体性を活かす仕組みの導入が不可欠である。本研究では、身体的リズムの引き込みに着目することで、人のコミュニケーション特性に立脚したインタラクションを実現するインタフェースの研究開発を進めている。本年度は、以前から開発を進めてきた、語りかけに対して葉っぱと茎が絶妙のタイミングでうなずき反応する、うなずく草花「ペコッぱ」「花っぱ」の身体的集団引き込みシステムを開発展開し、デモンストレーション実験を積極的に行い、システムとしての完成度を高めるとともに、各種イベントで公開展示し、身体的インタラクションの不思議さや重要性をアピールした。また、インタラクションにおける身体的引き込みによるキャラクタへのなりきりに着目し、音声入力と頭部動作入力を併用した身体引き込みキャラクタケータイを開発することで、遠隔非対面、二人一組で評価実験を行った。その結果、身体動作として重要な頭部動作量を直接反映させることで、キャラクタへのなりきりが容易に実現可能であることを示した。また、複数人でのなりきりの効果を活かすアプリケーションとして、実空間と仮想空間の双方を共有することで、ごっこ遊びのようにグループワークを進め、コミュニケーションを楽しむことができるエデュテインメントシステムを開発した。これら一体感が実感できる身体的コミュニケーションインタフェースのプロトタイプ開発の研究成果に関して、ヒューマンインタフェースシンポジウム2010優秀プレゼンテーション賞,第12回IEEE広島支部学生シンポジウムHISS優秀プレゼンテーション賞を受賞した。
著者
鈴木 伸一
出版者
岡山県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1.研究の目的視覚障害者の道路横断に生じる心身のストレス状態を明らかにするとともに,各種ストレスが歩行にどのような影響を及ぼすかを検討することを目的とした.2.対象全盲の視覚障害者6名.被験者の単独歩行歴は20年〜35年であった.3.手続き市街地域の音響式誘導設備が設置された横断歩道(道幅11.6m)を利用し,単独歩行時の生理的反応(心拍率,皮膚電気反射:トーヨーフィジカル社製),心理的反応(POMS不安・緊張尺度),騒音音圧(Rion社製騒音計),横断軌跡,方向見失い(内観)を測定した.各被験者の試行回数は11〜16回であり,総データ数は85であった.4.結果と考察各指標の変化を検討した結果,心拍,皮膚電気反射ともに騒音音圧が上昇する時期と同期して上昇するが,覚醒のピークは皮膚電気反射の方が早い傾向にあった.この結果は昨年度の結果を支持するものであった.また,歩行軌跡のパターンをクラスター分析によって検討すると,歩行軌跡は「離脱無し」,「離脱後復帰」,「離脱」,「後半離脱」の4パターンに分類可能であった.各群における各指標の差異を検討した結果,横断初期(0秒〜5秒)の騒音音圧に顕著な違いが認められ,離脱群の初期騒音は離脱無し群に比べて顕著に高かった.そこで,横断初期の騒音音圧のデータを基準として騒音高群(70db以上)と騒音低群(65db以下)を構成し,ストレス反応の差異を検討した.その結果,騒音高群における横断開始後7〜8秒後の皮膚電気反射は騒音低群にくらべて顕著に高く,横断開始後14〜15秒後の心拍率は騒音低群に比べて顕著に低いことが明らかにされた.これらの結果は,昨年度の研究において示唆された知見を支持していた.以上本研究の結果をまとめると,(1)横断歩道離脱度の高い試行は,初期騒音が高い,横断前半の皮膚電気反射が高い,横断後半の心拍率が低いという特徴がある,(2)横断中の皮膚電気反射の変化は騒音音圧の変化と類似したパターンを示す,(3)横断後半の心拍率は,離脱度の高い試行ほど低い,(4)皮膚電気活動は情緒的反応成分を反映し,心拍率は方向定位に伴う認知的反応成分を反映している,と言うことができる.これらのことから視覚障害者の単独歩行による横断歩道離脱に及ぼすストレスの影響性を考察すると,視覚障害者が横断初期に高い騒音を経験することによって情緒的なストレス反応が高まり,それによって方向定位に関連する認知的活動が妨害され,離脱が生じると考えることができる.
著者
渕上 倫子 寺本 あい
出版者
岡山県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

冷凍耐性の悪い食品のテクスチャー改善を目的として、ゲル状食品(卵豆腐、寒天、高粘弾性寒天、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、κ-カラギーナン・ローカストビーンガム混合、カードラン、脱アシル型ジェラン、ネイティブ型ジェランなどのゲル)および卵黄を約-20℃、100〜686MPaの高圧力下(高圧冷凍後大気圧下の-30℃で保存)、または、大気圧下の冷凍庫中(-20℃、-30℃、-80℃)で冷凍し、解凍後の外観、離水量、物性(ゲル:クリープメータによる破断強度解析、卵黄:粘弾性測定)と微細構造(クライオ走査電子顕微鏡観察)を比較した。また、凍害防御物質として各種糖類(蔗糖、トレハロース、グルコース、糖アルコール等)の役割について検討した。更に、-20℃で高圧力処理中の試料の温度変化を測定することにより、-20℃での液相→氷Iへの相転移の挙動を検討した。その結果、200〜400MPaでは-20℃でも凍っておらず、圧力解除時に急速な試料の温度上昇がみられた。過冷却温度が低く圧力解除時に短時間に凍結し、微細な氷結晶が多数生成したため、圧力移動凍結品は良好であった。大気圧下や100、686MPaでは過冷却温度が高く、少ない核を中心として大きな結晶ができたため、離水も多く解凍後の品質が悪化した。5%、10%、20%と糖濃度の増加に伴い凍結点が低下し、解凍後の物性と微細構造が良好となったが、糖の種類により大差なかった。また、ゲルの種類により冷凍耐性や物性変化の様相が異なった。カードランやネイティブ型ジェランガム(脱アシル型ジェランガムは悪い)、ι-カラギーナンのゲルは冷凍耐性が良く、普通の寒天より高粘弾性寒天のほうが離水が少なく良好であった。κ-カラギーナンにローカストビーンガムを添加すると冷凍耐性が向上した。卵黄は200MPa以上でタンパク質の変性による粘度上昇が顕著であったが、蔗糖添加により卵黄の流動性が増し、冷凍および高圧力によるレオロジー変化が抑えられた。
著者
渡邉 富夫 神代 充 山本 倫也
出版者
岡山県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

音声対話におけるうなずきや身振りなどの身体的リズムの引き込みをCGキャラクタやロボットなどのメディアに導入することで、身体的インタラクションを促進させ、一体感が実感できる身体的コミュニケーションシステムを研究開発した。本システム・技術は、メディアロボット・コンテンツ制作や携帯電話・インターネット等の音声対話インタフェース、音声認識ソフトへの導入など、広範囲な応用が容易に可能で、うなずく植物「ペコッぱ」など商品化した。
著者
永井 成美 森谷 敏夫 坂根 直樹 森谷 敏夫 坂根 直樹
出版者
岡山県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

20歳代女性の3~4割に、低体重または標準体重でありながら体脂肪率が高い、いわゆる「隠れ(正常体重)肥満」やその予備群である「隠れ(正常体重)肥満傾向」が認められるとの報告がある。若い女性特有の「太りたくない」という強い思いから、食事のカロリーのみを気にして食事の質が良くない場合に、筋肉量、骨量の低下と体脂肪量の増加によって「隠れ肥満」が形成されると考え、食行動パターンやダイエット歴、体組成、代謝・自律神経活動等の生理学的特性や遺伝的特性(肥満関連遺伝子多型)などからその成因を検討した。さらに、カロリーだけでなく食事の「質」を重視した3回の介入試験を「隠れ肥満」若年女性を被験者として実施し、その有効性についても評価した。研究の成果は、10件の論文、17件の学会発表、2冊の著書により公表するとともに、NHK健康番組やその関連雑誌等によって広く紹介された。
著者
福 知栄子 倉知 桂子 若林 敏子 内本 充統
出版者
岡山県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

岡山県内ファミリーサポートセンター依頼会員調査からセンター活動の活用状況や期待および課題を捉え、さらに全国アドバイザー調査からはセンター活動の支援状況や支援プロセスおよび今後の課題等を把握した。また、事例を通して地域子育て支援活動としてセンター活動が果たすコーディネート機能について検討した。依頼会員は、子育てへの安心感(緊急支援)を得ることやワークライフバランスを図るために登録をしている。提供会員には、子どものケア・ニーズへの対応とともに、親のニーズへの対応も期待している。地域住民参加型の子育て支援ネットワークづくりへの依頼会員の貢献が今後の課題である。アドバイザー調査からは、センター活動がひとり親、障害のある親、外国人の親等多様な家族を支援する実態がみえる。支援活動の質を左右するマッチング場面のアドバイザー同席は半数である。提供会員研修には、手どもの育ちや応急手当等と子育て不安への理解等親関連の内容も含まれる。センターが地域関連機関との間で情報交換をするのは、保健所や保育所が最も多く、次に子育て支援センターや主任児童委員等である。個別ケース支援の連携もあり、アドバイザーのコーディネート機能による地域連携活動として、くらしが不安になる離婚前後での支援や親の精神的不安が強い時期の支援等の事例がみられる。今後の課題は、提供会員の量的拡大と質的向上、関連機関との連携の充実、アドバイザーの知識・技術の向上等である。適切で柔軟なコーディネートができるアドバイザーの質的向上のための研修体制・スーパービジョン体制の確立が重要である。子育て家族が抱える課題を共通理解し、地域で子どもと家族を支援するチームとして支援者と親が協働で活動することが今後のセンター活動の展望を切り開く。