著者
辻 英明 木本 眞順美 比江 森美樹
出版者
岡山県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

大豆アレルゲンGly m Bd 28Kおよび小麦アレルゲンTri a Bd 28Kの糖鎖構造について検討を行い、いずれのアレルゲンもマンノース、N-アセチルグルコサミンを含み、キシロースおよびフコースを含有しており、これらの糖鎖はアスパラ銀結合型糖鎖であり、N-アセチルグルコサミン部分にフコースおよびキシロースが結合していることが示された。しかも、この糖鎖を含むペプチドがこれらのアレルゲンと反応するIgE抗体と特異的に発現することが明らかになった。また、Gly m Bd 28Kのタバコ培養細胞での発現過程で、すでにGly m Bd 28KのcDNAがクローニングされているが、そのcDNAはシグナルぺプチドを含んでいるものの、まだ5'側の非翻訳境域を含め全長構造は不明であり、その構造の解明が必要となり、検討を行った。その結果、従来知られていたシグナルペプチドに新たに3個のアミノ酸残基が追加され、さらに非翻訳領域20塩基が明らかになった。この結果は、タバコ培養細胞での当該アレルゲンの発現の基盤を提供するものである。
著者
横田 一正 劉 渤江
出版者
岡山県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

実空間を歩行するとき、仮想空間の情報を付加することにより、より豊かな体験をすることができる。本研究では、2つの空間の融合モデルを提案し、電子ペーパー等を考慮した携帯機器を使用したプロトタイプシステムを開発し、その有効性を確かめた。
著者
木本 眞順美 寺本 あい 渕上 倫子
出版者
岡山県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

近年、我が国においてはエビアレルギー患者の増加が目立っている。欧米では、既にエビのアレルゲンとして筋肉繊維を構成しているタンパク質であるトロポミオシンが唯一同定されているが、日本においては、その研究は進んでいない。平成13年度は、本研究課題の計画に従って、順調に実験を進め、試験したすべてのエビアレルギー患者血清において唯一トロポミオシンがアレルゲン成分として同定された。さらに、本アレルゲンに対する特異的なモノクローナル抗体を作製し、これらを利用してトロポミオシンの微量定量法(サンドイッチELISA)を確立した。平成14年度は本アレルゲンの低減化の試みの一環として、調理操作によるトロポミオシンの除去方法を検討した。この際、前年度に開発した測定系の有効性が確認された。新鮮エビを沸騰水中で10分間煮ることにより、エビに含まれるトロポミオシンの約9割が浸出液中に溶出され、この操作がエビのアレルゲン性の低減化に一つの手段として利用し得ることが示唆された。さらに進んだ低減化を図るためにはトロポミオシンのアレルゲン性の解明が必須となる。従って、次いで、日本人が常食している車エビトロポミオシンをコードするcDNAのクローニングを行い、トロポミオシン全長ならびに数種のペプチドを大腸菌において発現させた。これら組換え型タンパク質のアレルゲン性は患者血清を用いるイムノブロット法により検討した。得られたcDNAクローンは284個のアミノ酸残基からなる全翻訳領域を含んでいた。また、トロポミオシン全長を含む組換え型タンパク質は天然型トロポミオシンと同じ強度で患者血清中のIgE抗体と交叉性を示した。さらに、トロポミオシン全長を3分割、6分割したペプチドとの交叉性を検討した結果、トロポミオシンのエピトープはポリペプチド鎖上の全域に点在し、少なくとも4〜5個の領域の存在することが示唆された。
著者
坂野 純子 菊澤 佐江子 的場 智子 山崎 喜比古 杉山 克己 八巻 知香子 望月 美栄子 笠原 麻美
出版者
岡山県立大学
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.19-25, 2010

本研究では、大学生の精神障害者への否定的な態度をスティグマ的反応尺度により把握し、その因子構造と関連要因を明らかにすることを目的とする。青森県、大阪府、岡山県、東京都、奈良県の大学生を対象にビニエット方式で質問紙調査を実施した。ビニエットの事例疾患はうつ病、統合失調症、ぜんそくの3種類を用意し、それらを無作為に対象者に振り分けた。分析項目はビニエットの人物に対するスティグマ的反応、疾患事例、回答者の性別、専攻分野とした。大学生のスティグマ的反応を検討するために最尤法を用いたプロマックス回転による探索的因子分析を行った。その結果、「精神障害者と接することへの不安」「精神障害者の責任能力への不信」「精神科医療を受けていることへの抵抗感」「精神障害者の知的能力や生産性への期待」「精神疾患への恥辱」の5因子が抽出された。一元配置分散分析と多重比較の結果、「精神障害者の責任能力への不信」「精神障害者への恥意識」因子は、ぜんそく群よりもうつ病群および統合失調症群にスティグマ的反応が強い傾向がみられたが、両者の間には差はみられなかった。専攻分野別では「精神障害者の責任能力への不信」「精神障害者の知的能力や生産性への期待」「精神疾患への恥意識」3因子では、看護系が社会福祉系、人文社会系理工系に比べてスティグマ的反応が小さい傾向がみられた。そのうち「精神疾患への意識」因子は社会福祉系が理工系に比べてスティグマ的反応が小さい傾向がみられた。
著者
河合 大介
出版者
岡山県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

最終年度となる本年度は、1.美学的課題を美術史研究の実践に照らし合わせて検討すること、2.赤瀬川原平の〈匿名性〉への関心をより発展的に考察するために、「千円札裁判」についての研究をすすめた。これまで作者の意図についての美学的・哲学的研究から、作品解釈において想定されている作者の意図を、一般的な好意における意図とは区別して、作品解釈の場面に固有な概念として考察する必要性が予測された。その予測に従って、特に美術史研究における意図への参照について検討し、美術史研究者を中心とする研究会で研究発表をおこなった。そこでの議論を通じて、美術史研究においては、作者の意図を示す資料も他の資料と同等にその正当性を検証されるのであり、とくに「意図」を特権的に扱うことはあまりないことがわかった。したがって、少なくとも歴史的な作品研究において、「意図」について論じることの妥当性や、それにかわる新たな体系の可能性について考察するという課題があきらかになった。また、赤瀬川原平の「模型千円札裁判」に関する研究では、前年度の東京文化財研究所での研究発表を発展させ、成城大学美学美術史学会において発表を行い、論文として公表した。そこでは、模型千円札についての赤瀬川の説明が時間とともに変化していくという点、また、赤瀬川にとって制作意図とは作品完成後に現れるという考えに至っている点を示した。ここには、意図と作品との因果関係に関する重要な洞察が認められる。これらの成果をもとに、次年度には研究会を開催して検討を深めた上で、最終的な成果を学会等に発表する予定である。
著者
渡邉 富夫
出版者
岡山県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

うなずきや身振りなどの身体的引き込みをロボットやCGキャラクタのメディアに導入することで一体感が実感できる身体的コミュニケーション技術と、メディアの場にはたらきかけることで場を盛り上げる身体性メディア場の生成・制御技術に基づいて、発話音声からコミュニケーションの引き込み動作を自動生成する【音声駆動型身体的引き込み技術】、身体動作に連動して直接動作する【身体連動型身体的引き込み技術】、タイピングからコミュニケーションの引き込み動作を自動生成する【タイピング駆動型身体的引き込み技術】を開発し、感情移入インタフェースの基盤を構築した。
著者
吉村 征浩 山下 広美 丸田 ひとみ 荒木 彩 荒岡 千尋
出版者
岡山県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

酢酸摂取はメタボリックシンドローム予防に効果的であり、ラットにおいて運動持久力を増加させ、骨格筋におけるミトコンドリア生合成の増加、筋線維の遅筋化を引き起こす。本研究ではL6筋管細胞を用い、骨格筋における酢酸の作用機序を明らかにすることを目的とした。酢酸添加による作用には、酢酸代謝に伴うAMP/ATP比の上昇を介したAMPK活性化と、短鎖脂肪酸受容体GPR43およびカルシウムシグナル伝達を介したAMPK活性化が関与することが本研究において明らかとなった。酢酸摂取は、運動と同様の効果(AMPK遅筋線維の増加)を骨格筋にもたらし、新たなサルコぺニアの予防・治療法に繋がる可能性がある。
著者
石村 久美子
出版者
岡山県立大学
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.41-51, 2007

健康増進法第2条によって自らの健康増進が国民の責務となった今、人々の生命・健康を守るとは、どのようなことだろうか。健康に価値を置く一方、不健康には不利益を容認することは健康を強いることであって、主体的な健康を涵養することにはつながらない。ところが、医療費抑制を主眼とする昨今の医療制度改革によって、所得による生活格差が生命・健康の領域にまで格差を及ぼしている。無保険者の増加やいのちの経済化は、根源的な平等感の喪失と将来の懸念を増すばかりである。今、多くの国民が望んでいることは、だれもが必要なときによりよい医療を受けられる安心である。そのためには、貧富の差による「健康の不平等」を容認せず、健康阻害を招くような医療費抑制ではなく、平等・公正・質の高い医療を提供するために、公的責任に値する財源の投入をしなければ解決できない問題であると考える。
著者
新田 陽子
出版者
岡山県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

加熱無毒化ができないアレルギー食中毒の新たな予防策として、食品中に蓄積したヒスタミンを除去する方法について検討した。食品に付着した菌が産生するヒスタミンの多量摂取でアレルギー様症状が現れるこの食中毒では、ヒスタミンが無色、無臭であることから汚染食品を事前に見分けることは困難であり、また通常加熱で分解されないため、現在の対策は低温保存を徹底してヒスタミンを増やさないことである。しかし一旦ヒスタミンが蓄積した食品への対策がないため、毎年食中毒が発生していると考えられる。ヒスタミンは水溶性であることから、下ゆでにより食品からゆで汁に溶出すると考えられるが、どの条件でどの程度溶出するかは検討されていない。そこで、食中毒レベル以下のヒスタミン量にするための下ゆで条件について調べた。近年保育施設の給食でヒスタミン食中毒が連続して発生しており、厚生労働省食中毒統計資料内ヒスタミン食中毒と思われる事例の15件中7件(2016年)および13件中5件(2015年)が保育所給食および学校給食で発生している。また保育所給食および学校給食の患者数が全体の約8割を占めている。つみれによる食中毒が多いことから、赤身魚すり身中にヒスタミンを一定量添加したサンプルを作成し、その中からのヒスタミン除去法を検討した。食中毒レベル(100mg/kg以上)のヒスタミンを添加して作成したイワシのつみれを下ゆですることでヒスタミンが除去されるかを検討した。ヒスタミン溶出量の定量にはヒスタミン定量キット(はチェックカラーヒスタミン)を使用した。
著者
市村 美香 松村 裕子 佐々木 新介 村上 尚己 森 將晏
出版者
岡山県立大学
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.55-63, 2011

本研究では、前腕で静脈穿刺をする際に、静脈怒張を得るために実際に臨床で行われている方法を明らかにする目的で、質問紙を作成して実態調査を行った。回収率は70.5%であり、このうち309名の回答(有効回答率99.4%)を分析対象とした。静脈怒張を得るために最もよく行う方法として、割合が高い順にマッサージ(20.7%)、温める(20.1%)、クレンチング(18.4%)、叩く(15.9%)、手をしっかり握らせる(13.3%)の5つの方法に1割以上の支持が集まり、マッサージ、温める、叩く方法は、標準採血法ガイドラインが推奨する方法と一致していた。この他には、駆血帯をきつく締め直す方法(4.5%)と腕を下してから駆血する方法(3.6%)を提示したが、支持する人は少数であった。一方、これらの方法を行ったことがある人が感じる主観的効果が最も高かったのは、もっともよく行われるマッサージではなく、温める方法であった。このことから、多忙な臨床現場においては、すぐに実施できる方法を優先する傾向があり、それを試してみてから、手間や時間はかかるが効果のある方法を行っているのではないかと考えられる。また、それぞれの方法における手技は、回答者により様々であることが分かり、今後は、静脈怒張の効果を検証した上で、簡便で確実な手技を示すことが必要と考えられた。
著者
中嶋 和夫 種子田 綾
出版者
岡山県立大学
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.31-36, 2004

本研究は障害児の母親の育児負担感と精神医学的障害の関係を明らかにすることを目的に行った。調査対象は、S県とW県内の障害児通園施設を利用するすべての母親とした。調査内容は児の特性(性、年齢、障害手帳)、母親の基本属性(年齢、児の数、家族構成)、育児負担感、精神医学的障害で構成した。育児負担感は「障害児育児ストレス認知尺度」で、また精神医学的障害は精神健康調査票「GHQ-12」で測定した。育児負担感を独立変数、精神的健康を従属変数とする因果モデルのデータヘの適合度を構造方程式モデリングで解析した。前記の因果モデルのデータヘの適合度は統計学的許容水準を満たしていた。育児負担感の精神医学的障害に対する寄与率は43.9%であった。以上の結果から、障害児の母親の育児負担感を軽減するために有効な介入方法を積極的に導入することの必要性が示唆された。
著者
松村 裕子 市村 美香 佐々木 新介 村上 尚己 森 將晏 荻野 哲也
出版者
岡山県立大学
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.31-38, 2012

静脈穿刺時に有効な静脈怒張を得るための適切な駆血圧を検討すると共に、静脈怒張度の客観的指標を得ることを目的に、種々の駆血圧における触知静脈怒張度(怒張度)、および静脈断面積等の変化について検討した。対象者は健常成人46名、マンシェットを上腕に装着し、20〜100mmHgで1分間駆血した。駆血圧は順不同とした。駆血後の怒張度は駆血圧80mmHgまでは増加したが、100mmHgではやや減少した。駆血圧60mmHgと80mmHgの間には怒張度に有意な差がみられなかったが、他の駆血圧間では有意な差がみられた。怒張度は圧迫にて静脈が潰れ始める圧力(静脈触知した時の血管抵抗の指標)、静脈拡張比、静脈断面積の順で相関が高く、皮膚表面から静脈までの距離との間にはやや負の相関がみられた。以上より、駆血圧は60mmHgが適切であり、怒張度の客観的指標としては圧迫にて静脈が潰れ始める圧力が最も適切と考えられた。
著者
中島 伸佳 桑木 信輔 石原 浩二 田中 英彦
出版者
岡山県立大学
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.39-48, 2012

植物性食品を中心とした食生活は、生活習慣病の予防や治療に効果があるとされている。乳酸菌や酵母により発酵熟成させた植物発酵エキスは、多種多様な植物性原料を用いて、発酵と糖蔵という伝統的な食品保存技術を応用した発酵食品である。本研究では、植物発酵エキスの有効性(栄養的特性や保健機能)に関する研究を行った。植物発酵エキスには、58.5%の炭水化物、3.7%のタンパク質、1.3%の脂質をはじめ、18種類のタンパク質構成アミノ酸や種々のビタミン類、食物繊維、ファイトケミカル(ポリフェノール、テルペノイド等)が含まれていた。さらに、植物発酵エキスは抗酸化作用、血圧上昇抑制作用、抗菌作用、抗アレルギー作用、抗炎症作用、チロシナーゼ阻害作用を有していることを「in vitro 試験」により明らかにした。
著者
福 知栄子
出版者
岡山県立大学
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.67-77, 1996

不登校やいじめ等学校生活をめぐって子どもたちの悩みはますます深まってきている。また、学校には生活保護家庭の子どもやひとり親家族の子ども、さらに虐待を受けている子どもなど様々な福祉問題を抱えている子どもたちがいる。こうした子どもたちの教育と福祉の問題に適切に対応して、豊かな子ども時代を確保し、その発達を保障していく必要がある。わが国においても学齢期の子どもたちへの教育と福祉の協働のサービス体系を作り上げる必要性が高まってきている。本稿では、学校をコアとした福祉ネットワークの存在する英国をとりあげ、子どもと家族のための援助サービスである教育ソーシャルワーカーの専門職としての役割を分析する。学校と家庭の中間にあって子どもと家族が抱える諸問題への援助を提供しつつ、子どもの教育保障において独自の役割を果たしている姿を明らかにし、わが国における教育と福祉の協働のあり方を考える上での示唆を得たい。
著者
高橋 泰嗣 佐藤 亮太郎 川畑 洋昭 高橋 浩光 加藤 幹雄 高橋 眞映
出版者
岡山県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

バナッハ空間の構造を調べるには、空間のもつ様々な性質及びそれら諸性質の相互の関係を詳細に考察することが必要である。本研究では、古典的なノルム不等式及びその一般化を用いて、空間の様々な性質を特徴づけ、諸性質の相互の関係を明らかにした。以下に、得られた結果の概要を示す。1.Clarkson型不等式とバナッハ空間の幾何学:Clarkson不等式(CI)の一般化として、多次元版及び重みつきを考察した。また、これらの不等式を用いて、空間の様々な性質(type-cotype,一様凸性など)を特徴づけた。更に、ランダムClarkson不等式の一般化も考察した。2.Von Neumann-Jordan(NJ-),James(J-)定数とバナッハ空間の幾何学:バナッハ空間のNJ-定数をJ-定数を用いて評価した。また、空間の正規構造係数をNJ-定数で評価した。更に、J-定数の一般化としてJames型定数を導入し、これらの定数との関連で空間の様々な性質を考察した。3.Hlawka型不等式とその拡張:空間のtype-cotypeとの関連でHlawka不等式の一般化を考察した。また、Hlawka不等式の拡張を積分形で与え、その応用としてDjokovic不等式を重みつきで与えた。これらの逆不等式の考察、及び、新たな解釈なども与えた。4.Absolute normについて:空間の幾何学的性質の多くが2次元的であることから、C^2上のabsolute normに着目し、その基本的な性質を対応する凸関数との関連で調査した。また、一般のバナッハ空間の直和にabsolute normを導入し、この空間の一様凸性や狭義の凸性を対応する凸関数との関連で調べた。更に、C^n上のabsolute normについても考察した。その他、種々のノルム不等式の拡張、エルゴード定理の拡張、ウェーブレット解析の応用などについて成果を得た。これらは、学会誌及び各種のシンポジウム等で発表した。
著者
渡邉 富夫
出版者
岡山県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

実感し共感するかかわりの場のヒューマンインタフェースの観点から、うなずきや身振りなどの身体的リズムの引き込みを音声駆動型身体引き込みキャラクタInterActorや身体的インタラクションロボットInterRobotに導入したシステムを開発展開し、身体的インタラクション・コミュニケーションの引き込みに基づく共感インタフェースを研究開発した。本研究で開発した身体的コミュニケーション技術がゲーム大手の作品等に導入・実用化された。
著者
小武内 清貴
出版者
岡山県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究課題では,平織炭素繊維とPA6シートからなる炭素繊維強化熱可塑複合材料(CFRTP)に対し,超音波加振したニードルを面外方向に繰り返し刺突する超音波加振ニードルパンチ処理を提案した.超音波加振ニードルパンチ処理を施したCFRTPの曲げ特性およびModeI層間破壊じん性を調査した結果,超音波加振ニードルパンチ処理によってCFRTPの面外方向に杭状の樹脂流れが誘起されることが分かった.この杭状の樹脂流れによって,超音波加振ニードルパンチ処理はCFRTPの曲げ特性を損なうことなく,ModeI層間破壊じん性を向上可能であるとの知見を得た.
著者
松田 雅子 中島 恵子 西村 美保 ルール ミシェル
出版者
岡山県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

カナダ文学の旗手であるマーガレット・アトウッドの作品世界を、長編小説、短編小説、詩、カナダの文学思潮の4つの側面から解明した。研究代表者は長編小説を担当し、分担者の中島恵子は短編小説を中心に研究を進め、それぞれ、博士論文をまとめた。研究分担者の西村美保は、アトウッド文学におけるイギリスの影響、とくにヴィクトリアニズムの展開についてまとめた。研究分担者の、ミシェル・ルールはアトウッドの詩および子ども向けの本の関係について考察した。3冊の書籍、3冊の翻訳書、7編の論文を出版し、学会発表を8回行った。
著者
山本 倫也
出版者
岡山県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

対面コミュニケーションでは,単に言葉によるバーバル情報だけでなく,音声に対するうなずきや身振り・手振りなど言葉によらないノンバーバル情報が相互に同調して,対話者同士が互いに引き込み合うことでコミュニケーションしている。本研究では,この身体リズムの引き込み原理を小型パートナーロボットに導入することで,ロボットとかかわりあいながら学ぶ学習システムの開発した。まず,昨年度提案した音声駆動型うなずきロボットを介した協調学習のコンセプトに基づき,引き続き,PC制御による駆動機構の設計・製作と,駆動ソフトウェアの開発・評価を行った。ここでは,カメラとプロジェクタを搭載したプロトタイプロボットを開発し,評価実験を行った結果,ロボットを介した映像中継におけるうなずき反応提示の効果を示し,この成果を国際会議で発表した。また,ロボットを介した情報提示を円滑にするために,情報提示インタラクションにおける動作と発声のタイミング制御の有効性を明らかにした。ここでは,動作と発声を同時に生成するのではなく,適度に発声を遅延させることで「好き」「丁寧」など好ましいインタラクション効果をもたらすことを明らかにして,原著論文にまとめた。さらに,ロボットを介して教師から生徒に教えるために,顔パーツをモニタ前面に表示し,頭部に入り込んだような「面の皮」表示による教示インタフェースの開発・評価を進め,有効性を明らかにした。とくに,CGキャラクタによるプロトタイプではあるが,招待展示やイベント等でデモンストレーションを行い,体験できる形でシステムの有効性を示すことができた。
著者
小武内 清貴
出版者
岡山県立大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は曲げ損傷を受けた炭素繊維強化熱可塑複合材料(以下CFRTP)の修繕性を明らかにすることである.強化材を平織炭素繊維布,母材を PA6 とするCFRTP を作製し, 4 点曲げを行うことによって曲げ負荷に伴う CFRTP の損傷形態を調査した.その結果,作製した CFRTP では 2.0%程度の曲げひずみを与えた時に圧縮側で初期層間はく離が発生した. また 2.5%程度の曲げひずみを与えた時,試験片の圧縮側に局所的な座屈の発生が確認できた.本研究では 2.0%の曲げひずみ負荷を与えた試験片を軽損傷材,2.5%の曲げひずみ負荷を与えた試験片を重損傷材とし,これらの損傷材のパッチ貼付に伴う曲げ特性回復様相を調査した.その結果,圧縮側に適切な枚数のパッチを貼付することにより,軽損傷材,重損傷材共に処女材の曲げ特性と同程度まで回復させることが可能であった.次に,ニードルパンチ処理が CFRTP の曲げ特性に与える影響を調査した.その結果,ニードルパンチ処理によって層間強度が向上し,曲げ負荷初期に発生する層間はく離を抑制できることがわかった.そこで損傷材の修繕にパッチ貼付とニードルパンチ処理を併用したところ,修繕材の曲げ特性はパッチ貼付のみによって修繕したもののそれよりも向上した.