著者
今城 周造
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.102-110, 1995-07-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
11
被引用文献数
1

本研究の目的は, 説得の圧力の増大が, 説得効果の減少を常にもたらすかどうかを検討することであった。実験計画は, 2 (リアクタンス喚起の必要条件: 喚起小・喚起大) ×3 (自由への脅威: 脅威小・脅威中・脅威大) の2要因配置であった。被験者は, 被告が有罪であることを示唆する起訴状の要約を読む。次に弁護側の主張の要約を読むが, 喚起大条件では, 被告が無罪である可能性も同程度あることが示唆された。最後に被験者は, 被告有罪の立場を主張する法律専攻学生の意見を読んだ。この意見文には3種類あり, それぞれ押しつけがましい表現を0, 3または6個含む (自由への脅威の操作)。予測は以下の通りであった。(a) 喚起小条件では, 脅威が小から中へ増大すると説得効果が減少するが, さらに脅威が増大してもそれ以上の説得効果の減少は見られないであろう。(b) 喚起大条件では, 脅威が増大するほど, 説得効果は減少するであろう。(c) 脅威大条件の説得効果は, 喚起小条件と比べて, 喚起大条件において小さいであろう。説得後意見の結果については, 必要条件×脅威の交互作用が有意であり, 予測は支持された。リアクタンス喚起には, その必要条件が満たされる程度による上限があること, 自由への脅威が大きいほど説得への抵抗も大きいという単純な関係ではないことが示唆された。
著者
水鴬 友昭 林 理
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.178-184, 1995-11-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
4
被引用文献数
3 3

本論文では原子力発電開発に従事する専門家と一般人の原子力発電やその他の工学的技術や製品に対するリスク認知構造の違いを明らかにすることを目的とし, それを解明した。因子分析の結果, それぞれの構造は「恐ろしさ」と「未知性」の2因子モデルで説明することができることがわかり, 専門家における知識は科学全体として知られていることを「わかっている」こととし, 個人的な知識のみを知識とはせず, 科学的に明らかにされていれば知識とみなす傾向があり, 一般人は個人的に知っていることを「わかっている」こととする傾向があることが判明した。また, 専門家と一般人をボンドし, 原子力発電に関係する項目をそれぞれ比較した結果, 専門家は一般人と較べ比較的に「未知性」, 「恐ろしさ」ともに低く, 知識量の差により, 原子力発電に対する恐ろしさが変化していることが判明した。これにより, 一般人に個人的な正しい知識を与えることにより, リスク構造認知の差を小さくすることが可能であることが判明した。
著者
松原 敏浩 吉田 俊和 藤田 達雄 栗林 克匡 石田 靖彦
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.93-104, 1998-06-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
30
被引用文献数
2 2

本研究は学校組織行動の因果関係のプロセスを検討しようとするものである。先行研究に基づいて一つの因果モデルが構成された。すなわち, リーダーシップ→組織風土, 教師のモラール→教師の学習指導スタイル→子どもの行動特徴である。リーダーシップ, 組織風土, 学習指導スタイル, 子どもの行動特徴, 子どもの親の学校への態度などの尺度の構成がおこなわれた。小学校の教師を対象にして組織行動の因果モデルを検討するために郵送調査が行われた。367名から有効なデータが得られた。主な結果は次のようなものであった。1. 因子分析の結果は各尺度がほぼ前回通りの因子構造をもつことを示した。2. 管理職のリーダーシップは組織風土や教師のモラールと密接な関係を示した。また組織風土や教師のモラールは教師の学習指導スタイルと密接な関係を示した。3. パス解析の結果はモデルが全体としてはほぼ支持されることを示した。結果についての討論がなされた。
著者
牧野 幸志
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.86-102, 1999-06-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
60
被引用文献数
1

本稿は, 説得に及ぼすユーモアの効果を検討した先行研究の結果を整理し, ユーモアの効果とその生起メカニズムを検討することを目的とした。最初に, 従来の実証的研究における3つの重大な方法論的問題点 (実験計画上の欠陥, 実験手続きの欠陥, 分析方法の欠陥) を指摘した。それらの問題点をもたない適切な先行研究の分析から以下のことを明らかにした。まず, 説得に及ぼすユーモアの主効果はみられないと報告する研究が多いが, ポジティブな主効果 (促進効果) を示す研究が一部みられた。しかし, ネガティブな主効果 (抑制効果) を示す研究は皆無であった。次に, ユーモアは8つの要因と交互作用することが明らかとなった。その方向は, 説得効果の促進と抑制のいずれの方向でもみられた。この結果は, 精緻化見込みモデルから解釈された。ユーモアの効果の生起メカニズムに関しては, 説得過程の媒介要因と考えられるメッセージへの注意, メッセージの評価, および送り手への好意への促進効果と受け手の肯定的感情への促進効果が有力であることが示唆された。さらに, 生起メカニズムを情報処理の観点から検討した。最後に, 今後の研究の方向性として, 1) ユーモア刺激の種類と量の効果の検討, 2) 受け手のユーモアのセンスによる効果の違い, 3) 情報処理の観点からのユーモアの効果の生起メカニズムの再検討, の3点を指摘した。