著者
中島 誠 吉田 俊和
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.111-121, 2009 (Released:2009-03-26)
参考文献数
43

人が複数の関係間で帳尻を合わせるように行動するという「世界に対する衡平(Equity with the World; EwW)」仮説を検討するため,大学生161名を対象とした実験を行った。研究では特に個人内要因の影響に着目し,向社会的規範を指示する程度としての「援助規範意識」と,出来事の肯定的評価と関連する「正当世界信念(Belief in a Just World; BJW)」を取り上げた。実験において参加者は2度の報酬分配状況に置かれ,一度目では実験操作として過大,過少,衡平のいずれかの報酬を受け取った。その後,参加者は分配者として第三者に報酬を分配するよう求められた。結果はEwW仮説から予測される行動と概ね一致していたが,援助規範意識の高い個人は過去に過少な分配が行われても,第三者を通して不衡平を回復しなかった。参加者の行動と情動を比較すれば,BJWの高い個人は過去の不衡平にネガティブな情動を感じにくいために,第三者に衡平な分配を行うことが可能だと解釈できる。一方,援助規範意識の高い個人は第三者に衡平に分配することでより満足を感じており,個人内要因ごとに異なるプロセスが示唆された。これらの結果から,人々がどんな条件においても単純にEwW回復行動を見せるわけではないことが示された。
著者
渡辺 匠 唐沢 かおり
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.2012, (Released:2022-05-03)
参考文献数
36

自由記述方式の質問をもちいた過去の研究では,人々にとって自由意志は「何ものにも制約を受けず,自分の心理状態にそって行動を選択する」ということを基本的に意味すると示唆されている。しかしながら,人々の自由意志信念に関する既存の尺度は,人々の素朴な自由意志概念ではなく,研究者の理論的な自由意志概念にもとづいて作成されてきた。そこで著者らは他行為可能性,行為者性,制約からの自由の3つの因子から構成された,人々の素朴な自由意志信念を測定するための新たな尺度を作成した。本論文では,3つの研究で約4,000人の回答者(大学生および一般成人)が分析にふくまれている。その結果,予測されていた因子構造や尺度の信頼性が確認された。それにくわえて,他行為可能性と行為者性の得点は,道徳的な責任帰属の得点と正の相関関係をもつことが明らかになった。これらの知見は,心理学および哲学の文献と照らし合わせて議論されている。
著者
安藤 香織 大沼 進 安達 菜穂子 柿本 敏克 加藤 潤三
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.1-13, 2019 (Released:2019-08-23)
参考文献数
40
被引用文献数
1

本研究では,環境配慮行動が友人同士の相互作用により伝播するプロセスに注目し,調査を行った。友人の環境配慮行動と,友人との環境配慮行動に関する会話が実行度認知や主観的規範を通じて本人の環境配慮行動の実行度に及ぼす影響を検討した。調査は大学生とその友人を対象としたペア・データを用いて行われた。分析には交換可能データによるAPIM(Actor-Partner Interdependence Model)を用いた。その結果,個人的,集合的な環境配慮行動の双方において,ペアの友人との環境配慮行動に関する会話は,本人の環境配慮行動へ直接的影響を持つと共に,実行度認知,主観的規範を介した行動への影響も見られた。また,ペアの友人の行動は実行度認知を通じて本人の行動に影響を及ぼしていた。結果より,友人同士は互いの会話と相手の実行度認知を通じて相互の環境配慮行動に影響を及ぼしうることが示された。ただし,環境配慮行動の実施が相手に認知されることが必要であるため,何らかの形でそれを外に表すことが重要となる。環境配慮行動の促進のためには環境に関する会話の機会を増やすことが有用であることが示唆された。
著者
孫 英英 矢守 克也 谷澤 亮也
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.75-87, 2016 (Released:2016-09-07)
参考文献数
9
被引用文献数
4 4

本研究は,行政や専門家が防災・減災に関わる際の基本スタンスを問い直し,防災・減災活動における当事者の主体性の回復をはかったアクションリサーチである。研究する主体となる行政や専門家とその客体的対象となる地域住民との間に一線を画す自然科学的な研究スタンスが,行政や専門家の過度にパターナリスティックな関与と地域住民の主体性の喪失との間に見られる悪循環が生じているとの考えに立って,両者の共同的実践を中核に据えたアクションリサーチを導入した。具体的には,津波リスクがきわめて高い高知県沿岸のある地域社会において,個別避難訓練を提案し実施した。訓練結果に基づき,当事者の主体性の回復という観点において注目すべき3つの事例を取り上げて考察を行った。第1は,どのような避難訓練を行うか,その計画・立案における主体性が回復された事例,第2は,避難訓練を地域内でより活発に推進・展開するための活動において主体性が回復された事例,第3は,個別避難訓練の実施を通じて,訓練そのもの,あるいは防災・減災活動という限定された側面における狭義の主体性ではなく,こうした活動が地域社会やそこに暮らす人びとに対してもつ意味や大義を根底から問い直す点において,当事者が主体性を発揮した事例であった。
著者
浅野 良輔
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.158-167, 2011 (Released:2011-03-08)
参考文献数
39
被引用文献数
1

健康生成モデルは,精神的健康をより力動的でポジティブな視座から捉えようとする理論である(Antonovsky, 1979, 1987山崎・吉井監訳,2001)。しかし,これまでの健康生成モデルに関する研究では,個人内過程のみが扱われるに留まっており,個人間の相互影響過程を考慮した検討が必要である。本研究では健康生成モデルに基づき,恋愛関係における知覚されたサポートと親密性が,首尾一貫感覚を介して,精神的健康を促進するというモデルを仮定し,二者の個人内過程と個人間過程を検証した。恋愛カップル85組を対象とする質問紙調査を行った。構造方程式モデリングによる分析の結果,(a)個人の首尾一貫感覚はその個人の精神的健康を直接的に促進する,(b)個人の首尾一貫感覚を介して,知覚されたサポートと親密性はその個人の精神的健康を促進する,(c)男性の首尾一貫感覚を介して,女性の知覚されたサポートは男性の精神的健康を促進する,しかし,女性の親密性は男性の精神的健康を抑制するということが示された。以上の結果から,恋愛関係と健康生成モデルの個人内過程,ならびに個人間過程との関連性が議論された。
著者
久木田 純
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.125-137, 1984

本研究は, 自集団以外の他集団と共に課題を遂行する状況において, 集団間の友好性と達成度の高低, 集団成員間の達成度の高低が, 集団内および集団間の報酬分配の公正感をどのように規定するかを検討した。<BR>集団間の関係が (1) 友好的である場合を実験I, (2) 非友好的である場合を実験IIとし, 各々の実験において友人二人 (個人達成度の高・低) からなる2集団 (集団達成度の高低) に対し報酬を支払う相互依存的状況が設定された。集団内分配と集団間分配において公平 (equity) と平等 (equality) の二つの分配原理につき, 個人決定と集団決定の状況で分配原理の選択を行なわせた。<BR>主な結果は以下の通りであった。<BR>(1) 個人決定による集団内分配原理の選択では, 実験I・実験IIの両者において一貫して高達成度の成員が平等原理を, 低達成度の成員が公平原理を選択した。<BR>(2) 集団決定による集団内分配原理の選択において, 実験IIの低達成度集団以外の条件では, 公平原理よりも平等原理が多く選択され, また, 平等原理を選択した集団での集団決定においては高達成度の成員の強い影響力があったことが見出された。<BR>(3) 個人決定による集団間分配原理の選択においては, 実験Iでは公平原理よりも平等原理が多く選択され, 逆に実験IIでは平等原理よりも公平原理が多く選択された。<BR>(4) 集団決定による集団間分配原理の選択においては, 実験Iでは, 集団の達成度にかかわりなく平等原理が多く選択され, 実験IIでは, 高達成度の集団は平等を多く選択し, 個人決定とは異なる選択をしたのに対し, 低達成度の集団は個人決定と同様公平原理を多く選択した。<BR>これらの結果については, 利己的・非利己的分配の観点から考察され, 特に, 低達成度条件においてはそれが個人であると集団であるとを問わず, 非利己的分配原理の選択を行なうものと考察された。
著者
篠原 弘章 三隅 二不二
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.136-154, 1977
被引用文献数
1

本研究は, 集団体験を中心とする全国公開研修セミナーにおける2つの訓練計画の効果性を集団発達の過程から検討したものである。被験者は一般企業からの参加者24名。被験者は2つのグループに折半され, セミナーの10セッションに渡る集団過程のうち, 1つの群 (Aグループ) は前半の5回が事例討議 (PMTコース), 後半の5回がSensitivity Training (STコース) であった。他の1群 (Bグループ) はAグループとは逆順のコースを採った。PMTコースでは. P機能とM機能の2つの尺度から成る質問紙を用いて, 各メンバーは討議行動について自己評定と他者評定を行なった。また, すべての10回の会合について会合の魅力が調査された。結果は以下の通りであった。<BR>1. 討議のリーダーシップ行動についての自己評定と他者評定の認知的不一致は3つの測度を用いて分析された。<BR>(1) 自己評定からの他者評定の差を測度とした時の認知的不一致の方向は, 過少評定の方向で生じた。これはP, Mいずれの機能についてもAグループよりBグループで大きかった。<BR>(2) 自己評定と他者評定の相関を用いた認知的不一致を検討すると, AグループではP, Mいずれの機能も第2セッション以降すべて有意な相関を示し, 他方, Bグループでは, M機能の第4セッションのみの相関が有意で, 他はすべて有意な相関が見られなかった。それ故, 自己評定と他者評定の相関による認知的不一致は, AグループよりBグループで大であった。<BR>(3) 自己評定と他者評定の差の絶対値を測度とした認知的不一致は, AグループよりBグループが大であった。また, セッションの進行に伴なう認知的不一致の縮少は, M機能よりもP機能において顕著であった。以上の認知的不一致の両群の相異は, グループ内のリーダーシップ構造の構造化, 未構造化と関連して考察された。<BR>2. 会合魅力の上昇型は, BグループよりAグループに多い傾向にあった (p<. 10)。また, 会合魅力のセッション間の因子分析によると, Aグループでは後期の因子の寄与率が最大であった。この因子は, メンバーの相互啓発と関連するものとして考察された.<BR>3. セミナー全体の総合評価の高い者は, BグループよりもAグループに多い傾向が示された (p<. 10)。
著者
宮崎 弦太 池上 知子
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.194-204, 2011 (Released:2011-03-08)
参考文献数
21
被引用文献数
6 1

本研究は関係へのコミットメントと関係相手からの受容予期が社会的拒絶への対処行動に及ぼす影響を検討した。219名の大学生が質問紙調査に参加した。参加者は,親友または知人との関係におけるコミットメントと相手からの受容予期の程度,そして,その相手からの拒絶場面における感情状態と行動傾向を評定した。その結果,知人よりも親友のほうが,関係相手からの受容予期は強く,関係へのコミットメントが強いことが明らかとなった。また,知人よりも親友のほうが,拒絶に対する関係志向的行動が促進され,関係破壊的行動は抑制されることが示された。媒介分析とパス解析の結果,コミットメントと受容予期はそれぞれ直接,拒絶への関係志向的行動を促進し,関係破壊的行動を抑制すること,そして,受容予期はコミットメントを強めることで間接的にも拒絶への対処行動に影響することが明らかとなった。これらの結果は,拒絶への対処行動を規定する要因は,相互依存理論とリスク制御システム理論という観点から統合的に理解する必要があることを示唆している。
著者
吉田 俊和
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.104-109, 1991
被引用文献数
1

本研究は, 観察者の有・無条件において, 公的自意識の高・低が失敗経験を与えられることによって, 先行試行の原因帰属や次試行の課題遂行にどのような影響を及ぼすかを検討した。実験デザインとして, 2 (公的自意識の高・低) ×2 (観察者の有・無) の4条件群を設定した。教養心理学受講生162名の中から公的自意識高群と低群それぞれ38名ずつを抽出し, ランダムに観察者有・無条件に割り当てた。実験者は大学4年生男子であり, 実験課題は4文字アナグラム課題である。被験者は入室後, 練習試行を3分間行って失敗経験をした後, 原因帰属 (能力, 努力, 課題の困難さ, 運) の4要因の合計が10になるように評定させられた。その後, 5分間の本試行が行われた。観察者有り条件では, 実験中常に実験者が被験者の前方に着席したが, 観察者無し条件では, 教示以外の時は被験者右前方の衝立の後ろに位置した。<BR>その結果, 公的自意識の高い群は, 失敗の原因を内的で安定した要因に帰属させる傾向がみられ, 自己客体視状態が高まることによって低められる自己評価に合致する帰属を行うという認知的斉合性理論からの予側が支持された。課題遂行の増加量に関しては, 公的自意識よりも観察者の影響が強くみられ, 観察者が存在することにより増加量の抑制がみられた。これにより, 公的自意識は原因帰属に, 観察者の存在は課題遂行に, それぞれ独立した効果を及ぼしている可能性が考察された。
著者
具志堅 伸隆 唐沢 かおり
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.40-52, 2007
被引用文献数
1

本研究は,情動的メッセージと反すう思考による説得プロセスを検証した。大学生277名が情動的なエピソードによって死刑制度の必要性を訴える情動的メッセージ,あるいは客観的な報告によってこれを訴える客観的メッセージを提示された。その後,実験参加者は態度評定に先立って,死刑制度に対する考えを記述するか(反すう思考群),死刑制度と無関連な事柄について記述するか(反すう妨害群),あるいは直ちに態度評定を行った(直後評定群)。その結果,死刑制度に関する反すう思考は,情動的メッセージ群においてのみ,態度変化を促進した。さらに,パス解析によると,情動的メッセージ群では情動的な思考によって態度変化が媒介されていたのに対し,客観的メッセージ群では認知的な思考によって媒介されていた。情動的メッセージの内容に関する反すう思考が態度変化を促進するメカニズムが議論された。<br>
著者
脇本 竜太郎
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.58-71, 2009
被引用文献数
2

本研究では,存在論的恐怖と愛着不安・回避傾向が成功・失敗についての自己の帰属と親友からの帰属の推測に及ぼす影響について検討した。近年,対人関係が存在論的恐怖を緩衝する効果を持つことが明らかにされている。そして,Wakimoto(2006)は存在論的恐怖が顕現化すると日本人は関係維持のため謙遜的態度を強めることを報告している。これに,日本人が他者による謙遜の打消しや肯定的言及など支援的反応を期待するという知見を併せて考えると,存在論的恐怖は自己卑下と共に他者からの支援的反応の期待を高めると考えられる。また,このような影響は愛着不安・回避傾向により調節されると考えられる。これら予測を現実の成功・失敗についての原因帰属を用いて検討した。大学生52名が実験操作の後に過去の実際の成功・失敗について自分自身の帰属と親友がどのように帰属してくれるかの推測について回答した。その結果,MS操作により自己卑下的帰属が強まる条件では,親友からの支援的な帰属の期待も強まることが示された。一方,親友からの支援的な帰属の期待が必ずしも自己卑下的帰属の高まりを伴わないことも示された。これら結果を近しい他者を通した関係による存在論的恐怖管理の様態及び互恵的関係の形成における存在論的恐怖の影響という点から論じた。<br>
著者
野波 寛 坂本 剛 大友 章司 田代 豊 青木 俊明
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.2103, (Released:2021-11-11)
参考文献数
35
被引用文献数
4

当事者の優位的正当化とは,NIMBY問題の構造を持つ公共施設の立地に関する決定権をめぐって,人々が当事者(地元住民など)に他のアクター(行政など)よりも優位的な決定権を承認する傾向と定義される。これは,当該施設に対する当事者の拒否の連鎖を生むことで,社会の共貧化をもたらす。優位的正当化の背景には,マキシミン原理と道徳判断の影響が考えられる。地層処分場を例として,集団(内集団ないし外集団)と当事者(統計的人数ないし特定個人)による2×2の実験を行った。内集団のみならずマキシミン原理が作動しない外集団でも,当事者の優位的正当化が示された。この傾向は,内集団において当事者が特定個人として呈示された場合に,より顕著であった。また,個人志向の道徳判断から当事者の正当性に対するパスは内集団で顕著であった。NIMBY問題に対する道徳研究からのアプローチには,今後の理論的な展開可能性が期待できる。
著者
大淵 憲一
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.127-136, 1986

本稿では社会人と大学生を被験者に, Averillの質問紙「怒りの経験」を使って攻撃反応の要因を検討した. まず, 反応11項目の因子分析から, 願望・実行の両水準で同じ4因子が得られ, それらは「直接的攻撃」, 「攻撃転化」, 「非攻撃的解決」, 「怒りの抑制」と解釈された。次に, これらを基準変数とし, 一方, 個人要因 (年令, 性別), 状況要因 (加害者の性別, 被験者との関係, 地位, 被害), 認知判断 (悪意の知覚, 原因帰属), 情緒過程 (敵意的動機, 道具的動機, 怒りの強さ) を説明変数とする数量化分析I類を行った。主な結果は次の通り。(1) 直接的攻撃反応は, 心理的被害が強く, それが不合理な原因に帰属され, 敵意的動機が喚起され, 加害者が身近な人の時に生じやすく, 対象が目上の人だったり女性だったりすると抑制されやすかった。(2) 攻撃転化は, 若年者に多く, 認知的要因が弱いのに情緒的要因が強いなど衝動的性格が認められた。(3) 非攻撃的解決が試みられるのは, 加害者と被験者の間に元々良好な関係があり, 被害が悪意に帰属されず, 敵意的動機が弱く道具的動機が喚起されている時だった。(4) 怒りの抑制は, 被害が個人的な性質のもので他者の共感を得にくく, また, 加害者が明確な攻撃意図を持っていたり目上の人であるなど, 報復の危険が高い時に行われやすかった。
著者
藤沢 〓 浜田 哲郎
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.35-46, 1960 (Released:2010-03-15)
参考文献数
21

Fスケールによって測定される人格構造を明らかにするために認知的, 情動要因あるいは社会的-文化的要因および個人的経験的要因等の背景的要因を追究し, 併せてFスケールのresearch vari-ableとしての価値をも検討した。結果を要約すると次の通りである。A. 日本語版Fスケールの作成1. 項目得点平均は原著のスケールと殆んど差異がなかった。しかし, SD, DP平均は原著の方が大きかった。即ち, 原著のスケール構造は異質性が大で. 筆者のは等質性が大であると考えられた。2. 原著と比較して得点差の大きい項目が見出された。これによって, 彼我の文化-社会構造の差異が人格構造に影響を与えていることが示唆された。3. 原著と比較して一段階信頼度が低く, 筆者のスケールにはまだ改訂の余地が残されている。B. ロールシャツハ・テストとTAT4. ロールシャツハ図版IとVに多く出現した “威嚇” 反応はFスケール高得点者の人格特徴を示すコンテントであった。5. TAT図版13の “殺” と “性” 反応は高得点者にドミナントに見られるパターンであると考えられた。6. 従って, 高得点者の人格には“威嚇” , “殺” , “性” に対する態度指向性あるいは潜在的不安があることか示唆された。7. 高得点者の反応は多義的な刺激図形に対して不寛容であった。C. 連想時のGSR8. 高得点者は性的, 情緒的刺激語に対する連想反応が中性語に対するそれよりも優勢な者がいずれの測度においても多かった。9. 低得点者の中には中性語に対す反応の小さい者もおり, 反応の仕方が多義的であることを示した。10. 連想に伴うGSRの潜時は高低両得点者を弁別するに最も有効な測度であった。11. 刺激語の種類にかかわらず, 反応時間, 潜時, 反射量, 反射持続時間のいずれの測度でも高得点者の数値の方が大であった。12. これらの高得点者の友応特徴は潜在的な情緒不安あるいは性に対する過度の態度指向性を投影しているものと考えられた。D. 知覚のかたさ13. 反転図形の観察において「構え」が反転回数に及ぼす効果は低得点者の方が大きかっに。しかし, 両群間に有意差はなかったが, 分散差は有意であった。14. 両群の反転比の差異は傾向としては認められるが, 2つのクラスターをのぞぐと有意差はなかった。しかし, 全得点および5つのクラスター得点では有意な分散差が認められた。15. 反転比とF得点との間には多/自とは正の相関, 自/少とは負の相関が見られたが, 相関性が有意であったのはクラスターfの自/少とgの多/自の2つであった。16. 全体得点と自/少, クラスターeと多/自との間には有意な曲線相関が見出された。即ち, 反転比がF得点へ回帰することが示された。17. この事実は低得点者にsubgroupとしてのrigid lowsの存在が明らかになった。18. 従って, Fスケールによる人格の硬さと知覚の硬さとの関係が, 図形反転における多義性不寛容の形で現われることが検証された。19. この関係は全得点とだけでなく, クラスターd以外の全てのクラスターとの間に認められ, 特にクラスターe, f, gは図形反転と密接な関係にあると思われた。
著者
狩野 素朗
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.73-82, 1967

構造内地位に関する4種類のグラフ論的指数を課題解決集団内のコミュニケーション構造に適用することによって各指数の妥当性を吟味した。ここで検討した各指数は, 有向グラフ (digraph) によって対応させられる集団構造内における成員の地位をあらわすもので, 強化-弱化性指数, 成員強化値指数, 等価多段階地位指数, それに荷重多段階地位指数である。<BR>本研究では実験的に設定した課題解決集団において, 各指数による成員の地位順位 (仮説順位) と, 実験によって成員が解決に達する速さとの順位に相関があることを仮定し, 各指数による仮説順位と結果順位との相関の度合の比較を試みた。<BR>課題として4名あるいは5名からなる集団による「犯人さがし」というゲームを用い, 課題解決に必要な情報伝達のために, 実験者による行動制限法を用いて5種類のコミュニケーション構造が導入された。<BR>各構造内成員の全体的課題解決順位と, 4種類の指数による成員地位順位との間の順位相関を求めた結果, 相関係数の値は強化-弱化性指数, 成員強化値指数, 等価多段階地位指数, 荷重多段階地位指数の順に大きな値を示すことが見出され, 荷重多段階地位指数は実験に用いた5種類の構造のすべての結果と有意 (p<. 01) な相関を示した。このことから課題解決集団におけるコミュニケーション構造内の地位指数の内では, 荷重多段階地位指数が成員の課題解決能率と最も高い相関を示すことが明らかとなった。<BR>多段階地位指数との相関が大であることからして, 成員の課題解決能率に影響した要因は, 本実験の条件においては, その位置の情報入手可能性の度合であろうと考察される。また間接的関係は直接的関係よりもその効果性が減少していったことについては, 本実験のコミュニケーションが, 問題解決の手段となる情報の伝達という, いわゆる道具的コミュニケーションである一方, 実際にはその伝達には何等かの自己目的的要因 (あるいは感情的効果) が介入ないし付加し, 段階数の増加にともなってその効果が大となったことのためであろうと考えられる。
著者
三隅 二不二 中野 繁喜
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.10-22, 1960

本研究は, アメリカにおけるレヴィーン, リピット, ホワイトによる, いわゆる "専制的" , "民主的" , "放任" 指導法に関する諸研究の成果を, 社会-歴史的背景を異にする日本において, 更に検証しようとしたものである。<BR>被験者として福岡市高宮小学校5年生の男子30名 (年令10-11才) を用いて等質集団6組を編成し, 課題として福岡県の模型地図作成をえらんだ。本報告の結果を要約すれば, 次の如くである。A. 仕事に対する熱心さ<BR>(1) 指導法の変更前においては, 専制的指導者の下で最高であったが, 変更後においては (特に変更後の最終日においては) 民主的指導者の下の方が最高となった。平均値としては専制的集団が最も熱心であった。<BR>(2) 自由放任的指導者の下では, 他の二集団に比較して仕事に対する熱心度は最低であった。<BR>(3) 民主的指導タイプの集団では, 仕事に対する熱心度は上昇傾向が著しく, 最終日には最高となった。<BR>(4) 指導タイプ変更後, 最も著しい下降を示したのは, 専制的指導から自由放任的指導へ変更されたときであった。<BR>B. 攻撃的反応の頻度に関しては, 専制型に移行した場合は, いづれの場合も減少した。民主型に移行した場合は, いづれの場合も著しく増大した。自由放任型に移行した場合は, 民主型からの移行の場合は減少し, 専制型からの場合は増大した。<BR>C. 友好的発言の頻数に関しては, 専制型に移行した場合は, 民主型からの場合は減少し, 自由放任型からの場合は増大した。民主型に移行した場合は, いづれの場合も著しく増大した。自由放任型に移行した場合は, 専制型から移行した場合は著しく増大し, 民主型からの移行の場合は変更前と差異がなかった。<BR>D. 課題解決を遂行途中, 指導者が不在になった時の, 各集団成員が示した反応塚数の変化について<BR>(1) 攻撃的専制集団の場合は, リーダー不在時に, 不平不満や注目をひく発言が増大し, 集団中心的発言や知識を求めたり与えたりする発言, 仕事中心の発言が減少し, 一方仕事外の発言が増大している。<BR>(2) 服従的専制集団の場合は, 友好的な快活的な発言が増大した。<BR>(3) 民主的集団の場合は, リーダー不在によって, 同僚依存や攻撃性が著しく増大し, また, 注目をひく発言, 集団中心的発言, 知識を求める, 与える発言が増大した。一方, 仕事外会話が減少した。<BR>(4) 自由放任的集団の場合は, 不平不満が著しく増大したが, その他では著しい変化はあらわれなかった。
著者
加藤 潤三 野波 寛
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.194-204, 2010 (Released:2010-02-20)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

本研究の目的は,2種類の目標意図(地域焦点型目標意図・問題焦点型目標意図)およびコモンズの連続性認知が地域住民の環境配慮行動に及ぼす影響を検討することである。琵琶湖の流域住民335名に対する質問紙調査を行った。共分散構造分析による分析の結果,問題焦点型目標意図は,行動意図に対して幅広く影響しており,特にその影響は個人行動意図に対して強いことが明らかになった。また地域焦点型目標意図は,問題焦点型目標意図に影響を及ぼし,間接的に行動意図に影響を及ぼしていることも示された。コモンズの連続性認知は,各目標意図だけでなく,個人行動意図・集団行動意図にも有意な影響を及ぼしていた。以上より,地域住民の環境配慮行動を促進させるためには,コモンズの連続性認知を喚起させることが重要であることが示唆された。
著者
林 幸史 藤原 武弘
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.17-31, 2008
被引用文献数
2

本研究の目的は,日本人海外旅行者の観光動機の構造を明らかにし,訪問地域・旅行形態・年令層による観光動機の違いを比較することである。出国前の日本人旅行者1014名(男性371名,女性643名)を対象に観光動機を調査した。主な結果は以下の通りである。(1)観光動機は「刺激性」「文化見聞」「現地交流」「健康回復」「自然体感」「意外性」「自己拡大」の7因子構造であった。(2)観光動機は,年令を重ねるにつれて新奇性への欲求から本物性への欲求へと変化することが明らかになった。(3)アジアやアフリカ地域への旅行者は,今までにない新しい経験や,訪問国の文化に対する理解を求めて旅行をする。一方,欧米地域への旅行者は,自然に触れる機会を求めて旅行をすることが明らかになった。(4)個人手配旅行者は,見知らぬ土地という不確実性の高い状況を経験することや,現地の人々との交流を求めて旅行をする。一方,主催旅行者は,安全性や快適性を保持したままの旅行で,外国の文化や自然に触れることを求めて旅行をすることが明らかになった。これらの結果を踏まえ,観光行動の心理的機能について考察した。<br>
著者
刀根 辰夫
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.171-174, 1970 (Released:2010-03-15)
参考文献数
2

Y-G性格検査の結果による性格類型と, その各尺度に対応する項目による自己評定の結果とを, 尺度上での位置の一致度に着目して分析すると, 過大評価, 過小評価において関連が認められ, 特に不安定-不適応群に過大評価が多い傾向が認められた。