著者
横井 彩 山中 玲子 森田 学 山崎 裕 柏﨑 晴彦 秦 浩信 友藤 孝明 玉木 直文 江國 大輔 丸山 貴之 曽我 賢彦
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

舌の上に白い苔のように付着している汚れ(舌苔)の面積と、口の中のアセトアルデヒド濃度について、健常者65人(男性51人、女性14人)で調査し、舌苔の付着面積が大きい人は、付着面積が小さい人に比べ、口の中のアセトアルデヒド濃度が高くなることを明らかにしました。その理由として、舌苔に含まれる細菌がアセトアルデヒドの産生に関与していると考えられ、舌苔を取り除く舌清掃を行うと、口の中のアセトアルデヒド濃度が減少することも確認しました。
著者
和田 麻友美 山崎 裕 村井 知佳 中村 裕介 佐藤 淳 秦 浩信 北川 善政
出版者
北海道歯学会
雑誌
北海道歯学雑誌 (ISSN:09147063)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.106-113, 2014-03

非定型歯痛(Atypical Odontalgia: AO)は,明確な原因がないにもかかわらず歯やその周囲に疼痛を訴える疾患であり,歯科医師は診断や治療に苦慮することが多い.当科で診断したAO症例の臨床経過および治療効果を明らかにする目的で後ろ向き研究を行った. 対象は2010年1月から2012年5月の期間に,当科で最終的にAOと診断した22例(男性:5例,女性:17例,平均年齢:54歳)であった.主訴は歯痛9例・抜歯後疼痛6例・歯肉痛5例・インプラント術後疼痛1例・上下顎の顎骨疼痛1例であった.病悩期間は半年未満9例(41 %)・半年~1年3例(14 %)・1年以上10例(45 %)であった.全例が当科受診前に他の歯科医療機関を受診していた.前医で行われた治療は,歯内療法・歯周療法・レーザー照射・スプリント療法・補綴療法・薬物療法など多岐にわたっていた. AOの臨床診断のもと,13例に対して当科で薬物療法を行った.使用した薬物は,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor, SSRI:10例),ベンゾジアゼピン系抗不安薬(benzodiazepine derivative, BZD:9例)の順に多く,これらのうち7例が両者の併用例であった.治療効果は13例中7例(54 %)で疼痛の改善が認められた.改善した7例のうち,6例はSSRIとBZDとの併用療法であった. SSRIとBZDの併用による薬物療法はAO症例に有効である可能性が示された
著者
上田 倫弘 林 信 新山 宗 秦 浩信 今待 賢治
出版者
一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.135-143, 2018
被引用文献数
1

日本において,ニボルマブはプラチナ抵抗性の再発・転移頭頸部癌に対する治療薬として使用が承認された。ランダム化,オープンラベル,第Ⅲ相試験であるチェックメイト141試験にてその有効性は示され,治験参加医師が選択した単剤化学療法剤よりも優れた全生存率が得られた。<br>しかし,一方では,免疫に関係した有害事象は深刻である。特にわれわれがこれまでに経験したことがないような免疫関連の炎症に伴う有害事象(irAEs)が大きな問題である。口腔外科医は免疫チェックポイント阻害薬を使用する治療では医療連携が必要不可欠である。特に重要である医療連携は,<br>1. 腫瘍内科との適格例の診断<br>2. 腫瘍内科との有害事象管理<br>3. 各臓器障害に関する専門各科への対診<br>4. 病勢については必ず自分自身で把握しておくことの以上である。<br>今後,進行頭頸部癌において免疫チェックポイント阻害薬と他の殺細胞性化学療法剤の併用療法(同時あるいは順序を決めて)が期待される。
著者
坂田 健一郎 山崎 裕 佐藤 淳 秦 浩信 水谷 篤史 大内 学 北川 善政
出版者
日本口腔内科学会
雑誌
日本口腔内科学会雑誌 (ISSN:21866147)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.39-43, 2012 (Released:2013-07-31)
参考文献数
26
被引用文献数
5

味覚障害の主因は亜鉛欠乏とされ,治療は主に亜鉛製剤の補充療法が行われている。しかし,実際の臨床において亜鉛製剤の補充で効果がない症例を経験することが多い。また,我々の過去の報告では心因性と同様にカンジダ症,口腔乾燥症,舌炎などが味覚障害を引き起こすことがわかってきた。そこで今回,当科外来の味覚異常を訴えた患者で,実際に血清亜鉛値が低下しているか否かを検索するために,味覚異常を主訴に当科を受診した患者(n=144:味覚異常群)と,年齢と性別が一致した他疾患患者(n=159:対照群)の血清亜鉛値,亜鉛/銅 < 0.7を比較検討した。血清亜鉛値のカットオフ値を4段階に設定した(60μg/dl未満,64μg/dl未満,70μg/dl未満,80μg/dl未満)。血清亜鉛値の平均値,中央値,最高値,最低値は,味覚異常群で,74.4,72.0,155,45.0μg/dl,対照群で,74.2,73.7,156,49.0μg/dlと両群間に差は認めなかった。血清亜鉛値のカットオフ値を60μg/dl未満に設定した時のみ,60μg/dl未満を示した症例は対照群と比較して味覚異常群で有意に多かった(味覚異常群14%,対照群6%)。亜鉛/銅 < 0.7に含まれる割合は,味覚異常群64%,対照群61%と両群間に有意差は認めなかった。本研究では血清亜鉛値が高度に低下している場合以外は,味覚異常の自覚症状と血清亜鉛値の関連は認めなかった。以上から,血清亜鉛値は味覚異常を訴える患者すべてを対象とすると必ずしも反映しないことがわかった。
著者
加藤 卓己 山崎 裕 佐藤 淳 秦 浩信 大内 学 守屋 信吾 北川 善政
出版者
北海道歯学会
雑誌
北海道歯学雑誌 (ISSN:09147063)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.121-139, 2013-03

以前我々は,余市町における在宅自立前期高齢者を調査し,口腔カンジダ菌の検出率は,年齢,客観的口腔乾燥の有無,有床義歯の有無と有意に関連することを報告した.約3年後の今回,同町で再調査を行う機会を得た.本研究の目的は,口腔カンジダ菌の関連因子(特に客観的口腔乾燥と有床義歯)に関して詳細に検討し,保菌状態に与える影響を明らかにすることと,約3年の経時的変化を調査し加齢による保菌状態の変化を明らかにすることである.余市町の在宅自立高齢者に対し,2012年に実施した口腔健康調査の際に,明らかな口腔カンジダ症を認めなかった198人(平均年齢75歳)を対象とした.尚,198人中134人は前回の調査と同一の被験者であった.被験者に対して,全身と口腔の健康に関する質問票を記入させ,歯科医師が口腔診査を行った.カンジダ菌培養検査は,舌背および義歯粘膜面より採取した検体を同菌の選択培地であるクロモアガー培地で培養した.被験者全体の口腔カンジダ菌の検出率は80%で,義歯使用者は89%であった.検出率と有意に関連していた因子は,単変量解析の結果(p<0.05)飲酒歴,残存歯数,有床義歯の有無の3つであり,今回は客観的口腔乾燥に有意差は認めなかった.単変量解析で有意差を認めた3項目でロジスティック解析を行ったところ,有床義歯の有無のみが有意に関連する独立因子であった(オッズ比3.5).上顎義歯粘膜面の培養結果から,口蓋が被覆され,人工歯の歯数がより多く,義歯床面積がより大きな義歯は,カンジダ菌検出率が有意に高くなった.また,検出される菌数は,口蓋部よりも歯槽部に有意に多く付着していた.約3年の経時的な変化により,口腔カンジダ菌の検出率は63%から79%と有意な上昇を認め,カンジダ陰性から陽性に転化した被験者において有意に変化した背景因子は,口腔清掃状態であった.3年以内の短期間にカンジダ菌を保菌した被験者の菌叢は,3年以上保菌していた被験者よりも単独菌種の割合が有意に高かった.以上の結果より,今回は客観的口腔乾燥に有意差は認めなかったが,有床義歯の使用および加齢は口腔カンジダ菌の保菌率および菌叢の変化と関連した因子であることが明らかとなった.