著者
渡辺 大作 阿部 省吾 植松 正巳 阿部 榮 遠藤 祥子 後藤 浩人 小林 隆之 藤倉 尚士 小形 芳美 伴 顕 平野 貴 杉本 喜憲 斎藤 博水
出版者
日本家畜臨床学会 ・ 大動物臨床研究会
雑誌
日本家畜臨床学会誌 (ISSN:13468464)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.41-45, 2004-11-10 (Released:2009-04-22)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

牛クローディン-16(CL-16)欠損症19頭およびそれ以外の腎不全黒毛和種牛2頭におけるビタミンA(VA)とレチノール結合蛋白質(RBP)の動態および過長蹄の発現について調査した。CL-16欠損症では、1-6ヶ月齢の子牛3頭を除き84%で過長蹄がみられた。CL-16欠損症を過長蹄群と正常蹄群にわけて正常黒毛和種子牛群36頭と比較したところ、過長蹄群ではRBP、VA、尿素窒素(UN)およびクレアチニン(Cre)の有意な増加がみられ、正常蹄群ではVAのみ有意な増加がみられた。RBPはVA、UN、およびCreと有意な正の相関を示し、VAはVA添加飼料が給与される5-13ヶ月齢で著しい高値を示した。腎不全牛2頭(腎盂腎炎、腎低形成症)でも過長蹄がみられ、VAおよびRBPは高値を示した。CL-16欠損症で正常蹄の牛は、若齢または軽度の腎障害であったことから、過長蹄はCL-16欠損症に特異な症状ではなく、重度の腎機能障害の持続により発現すると考えられた。
著者
酒井 由紀夫 飛永 崇晴 酒井 博史 伊藤 広記 石田 剛 田中 省吾
出版者
日本家畜臨床学会 ・ 大動物臨床研究会
雑誌
産業動物臨床医学雑誌 (ISSN:1884684X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.Supple, pp.259-263, 2015-03-31 (Released:2015-12-02)
参考文献数
11
被引用文献数
1

4歳齢ホルスタイン種経産牛において食欲不振,頚静脈の怒張および胸垂の冷性浮腫が認められ,心音聴取が困難であったため,臨床的に創傷性心膜炎が疑われた.心臓超音波検査でも心外膜にフィブリン様構造物の付着を確認したため創傷性心膜炎と診断された後に斃死した.剖検の結果,心外膜の絨毛性増殖および心耳部の心外膜下層における白色結節が認められたが,クギなどの異物による創傷性病変は確認されなかった.牛白血病抗体が陽性で病理組織学的検索および免疫組織化学的染色結果より,本症例は心外膜における心膜中皮腫と地方病性牛白血病に起因すると思われるB細胞性リンパ腫が併発した稀な心臓腫瘍の1例と考えられた.
著者
山岸 則夫 入江 陽一 能登 はる菜 浪岡 徹 岡田 啓司 大澤 健司 内藤 善久
出版者
日本家畜臨床学会 ・ 大動物臨床研究会
雑誌
日本家畜臨床学会誌 (ISSN:13468464)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.16-19, 2006-06-10 (Released:2009-04-22)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

30日齢のホルスタイン種子牛1頭(雄)が、急性に落ち着きなく寝起きを繰り返し、起立時には腹部を蹴り上げるなどの疝痛症状を示した。排便量は少なく、腹部は進行性に膨満し振盪にて拍水音が聴取された。血液一般検査では、白血球数の著しい増加が顕著であった。腹部X線検査では、ガスが膨満しループ状になった小腸が腹腔内全域に観察された。右〓部切開による試験的開腹では、ガスで膨満した小腸が腹腔内に充満していた。触診にて腸問膜根の約180°反時計方向への捻転を確認し、これを用手的に整復した。術後、症例は速やかに回復した。
著者
生田 健太郎 西森 一浩 安田 準 岡田 啓司
出版者
日本家畜臨床学会 ・ 大動物臨床研究会
雑誌
産業動物臨床医学雑誌 (ISSN:1884684X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1-8, 2014-06-30 (Released:2014-07-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

泌乳牛における糞尿排泄量,窒素(N)出納,養分消化率および第一胃微生物態N合成量(MNS)と血液成分との関連性を検討するため,初産牛と経産牛を4頭ずつ供試し,一期14日間のクロスオーバー法で全糞尿採取法によるN出納試験を行った.糞尿排泄量,N出納,養分消化率およびMNSに関する27項目を目的変数とし,血液成分を3つの説明変数群(飼料摂取前,飼料摂取後および飼料摂取前後の差,各13項目)として,81例の重回帰分析を行った.その結果,有用な重回帰式(決定係数(R2) ≧0.5)が62式得られた.これらのうち,飼料摂取前の血液成分を説明変数群とした場合,尿中へのN排泄量,糞尿合計へのN排泄量,乳中へのN排泄量,尿中へのN排泄割合および非繊維性炭水化物(NFC)消化率において精度の高い重回帰式(R2≧0.8)が得られた.飼料摂取後の血液成分を説明変数群とした場合,尿量,N摂取量,糞中へのN排泄量,尿中へのN排泄量,糞尿合計へのN排泄量,糞中へのN排泄割合,N消化率,粗脂肪消化率およびNFC消化率において精度の高い重回帰式が得られた.飼料摂取前後の差を説明変数群とした場合,生糞量,糞中へのN排泄量,糞尿合計へのN排泄量,中性デタージェント繊維消化率において精度の高い重回帰式が得られた. 以上のことから,血液成分が泌乳牛の糞尿排泄量,N出納および養分消化率を反映していることが証明され,野外での把握が困難であったこれらの値を血液成分から推定できることが示唆された.
著者
和田 賢二 小形 芳美 大塚 浩通 小岩 政照 永幡 肇
出版者
日本家畜臨床学会 ・ 大動物臨床研究会
雑誌
産業動物臨床医学雑誌 (ISSN:1884684X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.53-63, 2011-11-01 (Released:2013-05-17)
参考文献数
31
被引用文献数
2

マイコトキシンはカビが産生する二次代謝産物であり,生体に対してさまざまな危害をもたらす.カビが発生した自給粗飼料の給与により成績不振に陥る牛群がしばしばみられるものの,マイコトキシンとの関係については明らかにはされていない.そこで,自給粗飼料のマイコトキシン濃度と牛群の生産性および疾病発生状況,白血球機能に対するマイコトキシンの影響ならびにマイコトキシン吸着剤の飼料添加による防除効果を調査した.購入飼料および自給粗飼料(計172検体)のアフラトキシンB1(AFB1),デオキシニバレノール(DON),ゼアラレノン(ZEA)を酵素免疫測定法により測定したところ,グラスサイレージおよびデントコーンサイレージで各マイコトキシン濃度が高い傾向にあった.AFB1濃度が高い自給粗飼料を給与している酪農場では牛の淘汰率が高く,1頭当たりの年間乳量が低い傾向にあった.また,マイコトキシンの重複汚染により子牛の増体量の低下,下痢症の増加と長期化および流早産の増加が認められた.またin vitroでは,マイコトキシンはリンパ球の幼若化および好中球の化学発光反応を抑制した.自給粗飼料のマイコトキシン汚染が疑われる農場において,吸着剤を飼料添加したところ,AFB1濃度が高値であった農場では乳汁中アフラトキシンM1(AFM1)濃度の低下および免疫細胞の増加が認められ,死亡率が減少した.ZEAが高値であった農場では繁殖成績に改善がみられ,早産を伴う周産期病が減少した.以上の知見から,自給粗飼料はマイコトキシンに汚染されている危険性があり,それらの継続的な摂取は白血球機能を介して,牛の生産性および疾病発生と関係していることが示唆された.さらに,飼料への吸着剤の添加は生体に対する各種マイコトキシンの影響を低減させる効果があることが確認され,生産農場における有効な対応策のひとつであることが示された.