著者
藤井 伸二
出版者
日本植物分類学会
雑誌
分類 : 日本植物分類学会誌 (ISSN:13466852)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.103-107, 2013-08

Cuscuta chinensis is often confused with the related naturalized species as C. pentagona. The specimens kept in the herbaria were examined and the distribution of C. chinensis in Japan was shown.
著者
北村 四郎
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.118-129, 1933-03-01

セイタカタンポポ(Taraxacun elatum KITAMURA). 関西の山地に生ずるこのタンポポは,総苞の外片が長楕円形なる事はカンサイタンポポに似るが,総苞はより大きく,丈高く,果実が細長く,花梗は花後頗る長く,種々の点で異なるので別種とする.クシバタンポポ(Taraxacum pectinatum KITAMURA). 備中阿哲郡野馳村大野部で,田代善太郎氏の採取された植物である.葉が櫛歯状に分裂せる点が目立つ,花梗は葉よりも短く,総苞の外片は廣卯形で,内片の1/3長に達する.花は濃黄色である.コタンポポ(Taraxacum Kojimae KITAMURA). 千島幌莚島の産,小型のもので,葉は葉柄殆どなく開出し,花梗は一本,総苞外片は被針形なるを特徴とする.ヒロハタンポポ(Taraxacum latifolium KITAMURA). 朝鮮咸鏡北道の産,大井次三郎氏が延岩洞一上村間で採集された植物である.葉は特に幅廣く,総苞は長楕円形で,内片の1/2長を越す,先端に明瞭に小角を持っている,花は黄色.カラフトタンポポ(Taraxacum sachalinense KITAMURA). 従来ミヤマタンポポなる名称の下に,多くの種類が一括されていた.これもその中の一部分で樺太幌登山の産である.葉は舌状をなし,通常分裂せず,総苞は〓葉では黒緑色である点はタテヤマタンポポに似ているが,総苞はずっと小さく,外片には明瞭に小角を具えている.
著者
渡邉- 東馬 加奈 大井- 東馬 哲雄
出版者
日本植物分類学会
雑誌
分類 (ISSN:13466852)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.131-151, 2016 (Released:2017-01-16)

日本に分布するオオバウマノスズクサとアリマウマノスズクサ(別名: ホソバウマノスズクサ)の識別においては,葉形態に基づく混同がしばしば見受けられる.葉が心形であるものがオオバウマノスズクサ,三裂のものがアリマウマノスズクサと区別されることがある.しかし,これら2種それぞれに心形葉~三裂葉がみられ,種内のみならず個体内においても葉形態は変異に富み,またその変異は種間においても連続的である.一方,これら2種は花形態により明確に区別され,オオバウマノスズクサは舷部が黄緑色で広倒卵形,アリマウマノスズクサは舷部が濃紫褐色で倒三角形である.本調査では,オオバウマノスズクサとアリマウマノスズクサの分類学史を踏まえ,混同している状況を整理することで,これら2種の正しい識別形質を普及することを目的とする.
著者
織田 二郎 村長 昭義
出版者
日本植物分類学会
雑誌
分類 : bunrui : 日本植物分類学会誌 (ISSN:13466852)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.163-173, 2015-10-14

Color of pollen grains of Chrysosplenium album Maxim. (s.l.) in vital conditions were yellow from Fukushima Pref. to north-east Gifu Pref., while those were white from south-west Gifu Pref. to Miyazaki Pref. These results are geographically so stable that color of pollen grains is valuable for diagnostic character between C. album var. album (white) and var. stamineum (yellow). Boundary area between var. album and var. stamineum is probably located around Gujo-shi, Gifu Pref., concordant with Wakabayashi(2001)'s recognition.
著者
寺尾 博
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類,地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.45-64, 1979
被引用文献数
1

日本海要素に関する植物地理学的な研究を進める過程で,Oxalis acetosella L. s.l.の一新変種,ヒョウノセンカタバミ subsp. acetosella var. longicapsula TERAOを日本海要素のひとつとして認めることができた。本報では,主として日本産のO. acetosella s.l. に関する観察結果に基づき,ヒョウノセンカタバミについて植物地理学的な考察を行なうと共に,O. acetosella s.l. の種内分類群の整理を行なった。ヒョウノセンカタバミは,主として本州の日本海地域に分布し,チシマザサを伴なったブナ林に多くみられ,長楕円形の〓果をつけ,全体により大型になる点で,コミヤマカタバミ subsp. acetosella var. acetosella から区別される。また本変種は,染色体数が2N=44で,基本数11の4倍体とみなされる。コミヤマカタバミの染色体数については,これまでに,ヨーロッパや北米産の植物で2N=22の2倍体のみが多くの研究者により報告されているが,日本産のものには,2N=22の2倍体と2N=44の4倍体のあることが明らかとなった。日本においては,2倍体は,北海道,本州,四国及び九州に分布し,主として亜高山帯の針葉樹林下に生育している。それに対し,4倍体は,本州中部地方の太平洋側及び四国,九州に分布し,主として暖帯上部,特にスギの植林下に多く生育し,2倍体とは明らかにその生育域を異にしている。4倍体は2倍体に比べ,全草がやや大きく,種子もより大きくなる傾向を持つが,両者の間に明瞭な形態的ギャップは認められない。したがって,4倍体は,2倍体とは異なった生育域に分布を確立したcytological raceとみなされる。ヒョウノセンカタバミ(4倍体)とコミヤマカタバミの4倍体は,いずれも減数分裂の際に,22個の2価染色体を形成するので安定した4倍体である。また両者は,基本的に同一の核型を有している。このことは,両者が同一の起源を持つことを示唆するものである。同一種内,あるいは近縁種間で,本州の日本海側に分布するものが,本州の太平洋側や,四国,九州に分布するものに比し,全体により大型になる例は,系統を異にするいくつかの植物群において,平行的にみられることが知られている。ヒョウノセンカタバミと,コミヤマカタバミの4倍体の間に認められる形態的な差異も,この地理的な傾向に対応するものと考えられる。したがって,ヒョウノセンカタバミは,コミヤマカタバミの4倍体から,本州の日本海側の環境条件に適応的に分化したものと推定される。カントウミヤマカタバミ subsp. griffithii EDGEW. et HOOK. f. var. kantoensis TERAO は,本州の関東地方に分布し,球形ないし卵形の〓果をつけ,小葉裏面の毛が散生する点で,ミヤマカタバミ subsp. griffithii var. griffithii から区別される。染色体数は,両者とも2N=22で,核型も基本的に同一である。長野県,上高地においては,コミヤマカタバミの2倍体とミヤマカタバミに加えて,両者の中間的な形態を示すものが得られた。この中間型は,1)コミヤマカタバミとミヤマカタバミが相接して生育する所に散点的にみられる; 2)減数分裂に異常がみとめられ,正常な花粉をほとんど形成しない; 3)核型が不整いになる; 4)結実する例が見られない,などの事実から,コミヤマカタバミの2倍体とミヤマカタバミの雑種と推定された。
著者
Kenji Suetsugu Alberto Bruno Izai Sabino Kikuchi Monica Suleiman Hirokazu Tsukaya
出版者
日本植物分類学会
雑誌
Acta Phytotaxonomica et Geobotanica (ISSN:13467565)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.117-121, 2017 (Released:2017-09-12)

Several new populations of the mycoheterotrophic orchid Kalimantanorchis nagamasui from Sabah, Borneo, Malaysia, are reported. The species was previously considered endemic to West Kalimantan, Borneo, Indonesia. Given that the continued discovery of new species and distributional records of mycoheterotrophic plants have been made from only a limited number of surveys in a small selection of sites, it is likely that further surveys in Borneo will reveal additional occurrences. The description of the morphology, in particular on the underground parts and size variation, of K. nagamasui is also updated.
著者
植田 邦彦
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類,地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.117-126, 1980

オオヤマレンゲ Magnolia sieboldii は,モクレン属オオヤマレンゲ節に分類される落葉性大本植物である。雄〓の色・葉形・葉の大きさ・毛の色と量・花の咲き方・樹形・樹高及び生育環境に変異が見られ,その変異に地理的なまとまりがあるので,2亜種,日本(谷川連峰から屋久島)と中国の安徽省・広西省に分布するオオヤマレンゲM. sieboldii ssp. japnicaと,朝鮮,南満州に分布するオオバオオヤマレンゲ(新称) M. sieboldii ssp. sieboldii を認める。オオヤマレンゲは,古く花壇地錦抄(三代目 伊藤伊兵衛,1695)にあげられており,また地錦抄附録(四代目 伊藤伊兵衛,1733)によれば延宝年間(1673〜1680)に江戸に栽培用として持ち込まれた。その後,岩崎灌園は草木育種(1819)と本草図譜(1828)で,雄〓の色に紅白の2種類があるとしている。オオヤマレンゲの名は大峰山に生えているため,つけられたということなので,日本に自生していることは,当時すでに知られていた。伊藤圭介は栽培されていたオオバオオヤマレンゲの標本をSIEBOLDにわたしたが,ラベルには日本の高山に自生と書かれている。その標本がもとになって,オオバオオヤマレンゲ M. parviflora SIEB. et ZUCC.(non BL.)が記載された。伊藤圭介が両者を混同していた事は,後年著した小石川植物園草本図説(1881)からもうかがえる。彼は,濃赤紫色の雄〓が示されているオオバオオヤマレンゲの絵に,日本の深山に自生するオオヤマレンゲの説明文を書いている。更に,雄〓に紅色と紫色の2種類があって,紅色のものは中国産のオオヤマレンゲであると誤った説明をしている。欧米では,上記の文献等は訳されてはいたが,雄〓の色に2種類あることは問題にされず,日本の種苗商より得たオオバオオヤマレンゲは日本産と信じられていた。それと,WILSONらが朝鮮より持ち帰ったものは,当然のことながら,同一物とされてきた。こうして,長らく日本のオオヤマレンゲの実体は,顧みられず,状況は日本においても同様であった。文献にみられる限りでは,岡ら(1972)の山口県植物誌でのオオヤマレンゲの記載をきっかけに,ようやく雄〓の色が注目され始めたようである。また,園芸的に栽培されているものは朝鮮産ではないかとの疑いも生じていた。オオバオオヤマレンゲは,朝鮮では少し山地に入れば極めて普通で,様々な環境下で旺盛に生育しており,3-10mの大灌木〜小喬木である。それに対し,オオヤマレンゲは,深山に点在し,やせ尾根や岩場,林縁等の限られた所にのみ生え,1〜3mの灌木で,葉もより小さく毛も少なく,全体的にひ弱な印象を受ける。大峰山以外では稀な植物で,オオヤマレンゲ節の他の種と,生育地・分布型・樹形等を比較して考えると,遺存種といっていいだろう。雄〓の色は,前者では本節の他種同様,濃赤紫色であるが,後者では白地に紅色が少しさす程度である。この様に,両者は容易に区別がつき,明らかに分類群を異にする。しかし,葉・花・毛等の形質を,個々にとり出してみた場合,雄〓の色をのぞいて,変異が連続してつながってしまう訳ではないが,多少とも変異は重なりあう。更に,モクレン科を通じて重要な分類形質である葉裏面の毛を両者間で比較すると,オオバオオヤマレンゲの方が,図2に見られる様に,色素沈着のない細胞が長い点等で違うものの,細胞構成や直毛で基部からねている点ではまったく同一である。こうしたことを考え合わせると,両者は互いに独立種として扱える程ではなく,地理的亜種としてとらえるのが適当であろう。八重咲きのものが時にオオバオオヤマレンゲに見られ,花彙(1765)や上記の小石川植物園草木図説,白井光太郎(1933)の樹木和名考等に絵がのせられており,欧米の書にもよく紹介されている。和名・学名とも様々につけられているが,正式に記載された学名はなく,また分類群としても認められない。オオヤマレンゲに6枚以上の花弁はまず見つからないが,オオバオオヤマレンゲでは6〜8枚の花弁は普通で,同一の木に6枚の花弁の花と八重咲きのものが同時に咲いたりする。