著者
小磯 学
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.43-51, 2015 (Released:2015-10-27)
参考文献数
46
被引用文献数
1

数千年間育まれ,今日のヒンドゥー教へと受け継がれてきた牛の神聖視は,乳とその加工品,糞や尿にも浄化作用や豊饒をもたらす力があるとする独自の世界を形成している.なかでも牛糞は,祭りや儀礼の場では神像が作られ,また祭り火の燃料として重要な役割を果たしている. ここでは,今日の祭りにおける牛糞の利用について総括する.先行研究は乏しく事例報告が限られているため,その嚆矢として位置づけたい.
著者
白石 典之
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.3-8, 2023-06-30 (Released:2023-06-30)
参考文献数
37

本稿では,ゴビ砂漠以北のモンゴル高原を対象に,牧畜の伝来から遊牧の開始,さらに騎馬遊牧民の成立までのプロセスを,考古資料にもとづき論じた.紀元前3000年ごろ,アルタイ山脈からハンガイ山地にかけての地域に,中央アジアからアファナシェヴォ文化が到来し,ヒツジ・ヤギ・ウシによる牧畜を伝えた.この新来の集団は,在地の狩猟採集民と交わり,紀元前2500年ごろには,家畜とともに遊動性の高い生活を始めた.これをモンゴル高原における遊牧の初現とする.遊牧は,紀元前2000年ごろの湿潤化で良好な草原が広がったモンゴル高原西北部に拡大した.紀元前1250年ごろには家畜化したウマが到来し,車両の牽引に用いられ,紀元前1000-900年ごろには騎乗をこなす騎馬遊牧民が形成された.
著者
砂野 唯
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.81-90, 2016 (Released:2016-11-07)
参考文献数
24

エチオピア南部に暮らすデラシャとコンソは,モロコシとトウモロコシから作った穀物酒を主食とするという世界でも極めて珍しい食文化をもつ.デラシャとコンソの居住域は隣接しており,生態環境,歴史,文化,社会などに多数の共通点が見られる.双方ともに半乾燥地で虫害が激しいという厳しい環境下であるうえに,面積の大半を石の転がる斜面地が占める.厳しい環境に暮らす彼らは,穀物を固形食や糖化飲料よりも摂取し易いアルコール飲料として大量に摂取し,生存に必要な栄養を摂取するという,酒食文化を形成して暮らしてきた. 類似点の多い双方の酒食文化であるが,その詳細は異なっている.デラシャは少ない労働力しか投入せず,わずかな種類の作物しか栽培しない.そのため,食材の種類は少なく,食事内容のうち地酒が占める割合が大きい.しかし,流動食である地酒はすぐに空腹となるため,デラシャは余暇の時間を全て,地酒の摂取に当てている.一方,コンソは多大な労力を投入して,土地を徹底的に利用して多種類の作物を栽培している.そのため,食材の種類が多く,食事内容のうちイモ類やマメ類,野菜類が占める割合は高い.集約的な農業を営んでいるため,余暇の時間は少なく,食事時間は固定されている.また,デラシャの醸造方法には保存性を高めて日々の醸造工程を簡略化する工夫が凝らされているのに対して,コンソでは10世帯以上がグループになって順番に醸造作業を担うことで,醸造にかかる負担を軽減している.さらに,それぞれの地酒の風味は全く異なっており,デラシャもコンソも自分たちが飲み慣れた地酒を好んで飲む. このように,双方の酒食文化は栽培作物や農法,生活様式,社会関係,味覚などの多角的な要因に影響されて成り立っている.
著者
真木 太一 西山 浩司 守田 治 脇水 健次 鈴木 義則
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.1-10, 2015 (Released:2015-08-31)
参考文献数
11

2013年12月27日に降水量の少ない瀬戸内海気候区の愛媛県西条市北方の,主として瀬戸内海上空で航空機により液体炭酸散布人工降雨実験を行った.雲頂高度2740 m,気温-13℃,風向西北西,雲底高度1070 m,気温-2℃,風向西北西,雲厚1670 mの下層域高度1370 mの積雲(気温-5℃)に液体炭酸を強度5.5 g/sで,11:23~11:48の内の約14分間,総量4.9 kg散布した.液体炭酸の散布によって,西条市役所・中心街で11:50頃にやや強めの降雨強度5 mm/h程度の降雨を5~10分間観測した.また,西条市消防本部では13:00(推測12:00直後)までに0.5 mmの降水を確認した.これらは人工降雨と推測された.液体炭酸散布後,11:30~11:50に積雲が西条市上空で急速に発達し短時間に降水となった後,背の高い積雲は局地的な人工降雨によって急速に衰退し,散布1時間後の12:30には山間域の雲も急激に消失した.西条市南部山間地では散布位置・時刻・風向から人工降雨の影響はなかったが,新居浜市南部山間域では人工降雨が顕著で降雨の終始を目視で確認できた.新居浜市消防本部の大生院,別子山では風向・風速・時刻等からそれぞれ0.5 mm,4.0 mmの人工降雨があったと推定された.四国中央市南部山間域のアメダス富郷では11:50~12:00に0.5 mmの降水を観測している.これは散布時刻・位置,風向西北西,風速15 m/s等を考慮して人工降雨と推測された.西条市・新居浜市・四国中央市付近では液体炭酸散布時の11:30頃にはすでに降水の可能性は減少した状況で,本来降らなくなっていた雲から人工降雨を起こした可能性が高い.徳島県三好市のアメダス池田の降雨0.5 mmとアメダス京上の降雨2.0 mmは,風向・風速,時刻等から人工降雨と判断された.その影響範囲は散布域の風下約80 kmにまで及び,中心線は東西の別子山-京上であった.2013年12月27日の西条市付近での人工降雨実験は成功したと判断される.

15 0 0 0 OA 畜フン名称体系

著者
包 海岩
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.33-41, 2015 (Released:2015-10-27)
参考文献数
9

モンゴル牧畜民は,五畜といわれるウシ,ウマ,ラクダ,ヒツジ,ヤギを中心に飼育してきた.これらの五畜は,モンゴル牧畜民の日常生活の様々な場面で利用されている.さらに,重要なのは,畜フンの利用である.モンゴル牧畜社会では,五畜のフン名称は30以上も存在する.畜フンは乾燥かつ冷涼なモンゴル高原で,暖房と調理の最重要燃料であり,草原の極めて重要な肥料でもある.本稿では,内モンゴル自治区シリンゴル盟の事例を中心に五畜の畜フン名称体系の特徴を明らかにした.
著者
平田 昌弘
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 : 日本沙漠学会誌 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-11, 2002-07-25
参考文献数
26
被引用文献数
3
著者
Abdullah ALSHANKITI Shagufta GILL
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.101-106, 2016 (Released:2017-01-25)
参考文献数
46

Sandy soils are low in nutrient content and water holding capacity leading to frequent application of both nutrients and water to meet crop requirements. One of the best ways to improve soil properties and prevent nutrient losses is to improve soil quality through the use of organic amendments and minimizing the use of fertilizers. In order to achieve this we conducted a green house experiment using ten treatments with three replicates setting up a randomized block design to investigate integrated effects of chemical fertilizer, compost, bio-fertilizer and biochar on maize crop productivity and improvement in nutrient availability. The study revealed that application of compost and biochar did not impair plant growth and showed no signs of stress or nutrient deficiency. The results showed 19 % increase in plant height and 29% increase in the fresh biomass when biochar was used with the chemical fertilizer (T8) compared to where only chemical fertilizer was applied (T3). It was also found that when half of the chemical fertilizer than was applied in combination with bio-fertilizer and biochar (T10), a similar increase (19.6 %) in plant height and fresh biomass was found compared to when chemical fertilizer was added alone (T3). Cation exchange capacity and organic carbon content increased by 48-52 % and 9-15% in T8 and T10 compared to T3 in the postharvest soil respectively
著者
上村 明
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.67-76, 2023-06-30 (Released:2023-06-30)
参考文献数
10

本論文は,過去約10年間にモンゴルの牧畜民が経験した変化について,2009年から2011年と2021年から2022年にトゥブ県バヤンウンジュール郡において行った調査のデータにもとづき論ずる.調査は,無作為抽出した牧畜民世帯に対するアンケートと自由形式のインタビューによって行われた.調査の結果,牧畜民は,突然の砂嵐,春の冷雨,夏の干害,降水量のピークが夏の初めから秋に移るなど,異常気象が以前とくらべて頻繁に起こるようになったと考えていることが明らかになった.それとともに,多くが顕著な牧地の悪化を認識している一方,世帯の所有する平均の家畜頭数は2011年に比べて2022年は約2倍になり,家計は変わらないかよくなったと認識している.牧畜民世帯の状況を見ると,牧畜民の平均年齢は上昇し,単独で牧畜を営む世帯が増えた.さらに,ほとんどの世帯は夫婦のみが牧畜に従事しており,そこに労働負荷が集中している.これに対して,家計の向上によって,牧畜移動を容易にする韓国製トラックやワゴン等の導入が進み,車の燃料代などの移動コストの負担力も増している.もっとも大きな変化は,長距離の移動をするようになったことである.とくに,50 km以上の移動を行った世帯の割合が顕著に増えている.牧地の悪化と家畜の増加によって必要に迫られ,長距離の移動を余儀なくされていることは,牧畜民が営地や牧地に対して,排他性の強い権利でなく,より弱い権利を求める傾向を生んでいると考えられる.
著者
冨田 敬大
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.17-24, 2023-06-30 (Released:2023-06-30)
参考文献数
20

モンゴル科学アカデミー地理学研究所の研究者たちは,1980年代に協同組合下の牧民の移動を調査し,その理論化を試みた.本稿ではこれらの研究成果のうち,『モンゴル人民共和国の牧民の移動』をもとに,社会主義時代の放牧地の利用・管理の特徴について検討する.彼らは,標高差や地形の違いを季節ごとに使い分ける牧畜システムを科学的に裏付け,自然条件および資源を完全に利用する「正しい」移動を明らかにしようとした.
著者
田淵 俊人 小林 孝至
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.29-43, 2019-06-30 (Released:2019-06-26)
参考文献数
66

野生種トマトは,南米・アンデス山地の太平洋沿岸やガラパゴス諸島に分布し,自生地の多くは乾燥地や半乾燥地で独自の多様な生態系を作り上げている.これらは,人々がトマトを利用していく上で大変重要な形質を多く含み,品種改良をする上で貴重な遺伝資源となっているが,その形質や生理学的な特徴はほとんど知られていない.その一方で,地球規模の環境変化,人為的な開発により種自体が絶滅,あるいは自生地そのものの消失が危惧されている.また,利用にあたっては,国際法が適用され自生地からの導入や利用が規制されている.本稿では,野生種トマトについて種の特性を詳述するとともに,遺伝資源としての保全,利用上のルールなどについて概説する.
著者
高橋 究
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.66-72, 2018-09-30 (Released:2018-11-13)
参考文献数
24

5-アミノレブリン酸(ALA)は,ヘムやクロロフィルといった,エネルギー生産など生物の根幹機能を担う重要な分子であるテトラピロール化合物の代謝系における出発物質で,生物に普遍的に存在する,生命の根源物質とも称される天然アミノ酸である.生体におけるALAの生理作用は,農業分野で見出されたのち,医学・ヘルスケア分野においても多彩で加速度的な応用がなされており,当該分野へのALAの応用について概説する.
著者
島田 沢彦 中西 康博 木村 李花子 渡邉 文雄 渡辺 智 山本 裕基 伊藤 豊 大山 修一 ファドモ Aマロウ
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.61-67, 2019-09-30 (Released:2019-10-24)
参考文献数
8

東京農業大学とジブチとの25年に渡る共同研究で培ってきた成果は,JST・JICA共同実施の地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)への課題「ジブチにおける広域緑化ポテンシャル評価に基づいた発展的・持続可能水資源管理技術確立に関する研究」の採択により評価され,2019年度から新たなフェーズとして社会実装へとつなげることとなった.本報では,これまでのジブチでの成果,今後5年間で展開される研究のビジョン,持続可能なパストラルアグロパストラル(農牧業)・システムの実装への課題および達成されるSDGsについて紹介した.
著者
Naruya SAITOU Shayire SHOKAT
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.223-226, 2017 (Released:2017-05-04)
参考文献数
24

Family Camelidae includes Guanaco and Vicuna in South America and two-humped camels (Camelus bactrians and C. ferus) and one-humped camels (C. dromedarius) are distributed from Eurasia to Northern Africa. We reviewed studies on mitochondrial and nuclear DNA of camels. We collected 37 complete mitochondrial DNA sequences of Camelid including those of now extinct Camelops which distributed in North America from DDBJ/EMBL/GenBank International Nucleotide Sequence Database. Neighbor-joining trees were constructed for these sequences, and evolution of family Camelidae and genus Camelus are discussed with special reference to demographic changes of C. bactrians and C. dromedarius.
著者
尾崎 孝宏
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.9-15, 2023-06-30 (Released:2023-06-30)
参考文献数
20

モンゴルの遊牧という生業を規定するのはステップの自然環境である.しかし,遊牧民も社会や国家の中で生きており,人文社会的な事象が彼らの遊牧実践に大きく影響している.例えば近現代においては,社会主義化や民主化といった政治経済体制の変化が大きな影響を与えてきた.本稿では,科学技術や社会制度から波及する要素,主として諸インフラを取り上げて論じる.モンゴルにおける近現代に発生した質的変化として,セメントや重機を使った建築や井戸などの構造物の出現が挙げられる.例えば1950年代末から本格的に始まるネグデル期のインフラ構築は,学齢期の子供や高齢者の越冬地としての定住集落と,遊牧民の労働場所としての草原の双方を睨みながらの季節移動や営地選定といった,現在まで続く新たな空間利用の形態をもたらした.また移動技術と結びついたモータリゼーションも近現代の質的変化の一つである.2000年以降には季節移動の手段としての自己所有の自動車の普及や,放牧を含む近距離移動手段としてのバイクの利用などが頻繁にみられるようになった.また同時期に及した生活用具の中で,特に大きな影響力を持っていると思われるものは,発電機と蓄電池のセット,携帯電話,プラスチック容器などである.プラスチック容器は従来,世帯レベルでの商品化が困難であった乳製品を容易に運搬可能とした点で大きな意義があるが,その背景として携帯電話の普及によるコミュニケーションの簡便化,さらには携帯電話の利用を可能とする電力へのアクセスによってもたらされた変化である.現状ではインターネットが遊牧実践に及ぼす影響の更なる増大が予測される.近年,スマートフォンの普及に伴いSNS利用の拡大などが見られ,その結果インターネットへのアクセス可否が営地選定に大きな影響を及ぼしている.この新しいインフラの普及は過去の社会制度の変化や災害と同様,再び彼らの牧畜戦略を変化させる可能性がある.
著者
片山 直美
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.25-29, 2022-06-30 (Released:2022-06-30)
参考文献数
10

長期間の宇宙滞在を可能にするためには宇宙における様々な生命維持に関する研究が必要である.特に食糧生産に関する研究は重要で,そのために様々な植物性ならびに動物性の栄養素が摂取できるような食材料の取捨選択,栽培ならびに飼育方法の確立が求められている.食材料を確保するうえで,宇宙空間に循環型社会(ミニ地球)を構築し,無駄のない食糧利用を考える必要がある.そのためには昆虫の食糧としての利用は不可欠である.現在地球上の食糧危機回避に関する昆虫食の果たす可能性と役割について,FAOならびにWHOから提唱された内容は,宇宙空間においても同様に役立つ内容である.そこで宇宙空間での昆虫食の可能性について概説する.

1 0 0 0 OA 人類と砂漠化

著者
篠田 雅人
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.45-61, 2021-09-30 (Released:2021-10-05)
参考文献数
81

砂漠化は各乾燥地特有の人為および気候の作用による複合現象であることから,本論は,その発生,強化,拡散の過程を農業史および気候史の中でとらえることを目的とした.世界の気候植生地域には,その自然資源に適合した農法(農業様式)が発生,変化したが,農業の自然改変力が再生能力を上回る場合は,その地域特有の砂漠化を引き起こした.このような農法の変化と砂漠化の過程は,森林,疎林,草原・砂漠の3時系列に類型化されることを示し,砂漠化対処についても同類型の農法・砂漠化対処法を水平移転,時間移転できる可能性を示唆した.
著者
小茄子川 歩
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.59-63, 2015 (Released:2015-10-27)
参考文献数
1

本論は,インド・ハリヤーナー州ヒッサール県に所在するラキー・カース村とラキー・シャプール村において実見した牛糞燃料の多角的利用方法について報告したものである.夏雨型の半乾燥気候に属する両村では,自然環境に起因する諸問題と日々蓄積する牛糞の処理という現実的問題のもっとも効果的な解決策の一つとして,女性達により一年を通して3種類の牛糞燃料(ゴーレイ,テープリー,ゴサ)が製作され,調理などの日常的場面と儀礼などの非日常的場面において多角的に利用され続けている。
著者
田中 賢治
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.27-33, 2020-12-25 (Released:2020-12-25)
参考文献数
1

植物活性剤,化粧品原料等に利用されるフルボ酸は,日本の森林土壌中に含まれる有用な有機酸であるが土壌中に微量しか含まれておらず,これらの用途に利用するために海外から採掘された有限資源を輸入して国内で利用してきた経緯がある.こうした状況の中,日本の森林から間伐によって産出される木質資材と木炭等の生産過程で産出される有機酸を利用することによって有機物の縮合・重合を促すことに成功したことから,人工的にフルボ酸を高純度で量産化できるようになってきた.このように量産化されるようになってきたフルボ酸は,国内外での環境改善に利用されていることから,一般的なフルボ酸等の高分子化合物の解説と環境改善への利用について説明する.
著者
鎌田 知也
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.75-80, 2019-09-30 (Released:2019-10-24)
参考文献数
2

営農型太陽光発電,いわゆるソーラーシェアリングは農地での営農を継続しながら農地を立体的に活用しほ場内に支柱を立てて太陽光パネルを設置・上部空間で発電を行うことで,営農と発電を両立する取り組みである.太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギー電力は地球温暖化対策や原発依存体制からの脱却,エネルギー安全保障政策等重要な役割を担っているが,営農型太陽光発電はそれらに加え売電収益による農家所得の向上や農業経営の下支え,荒廃農地の再生等,農業・農村が抱える課題解決の一つのツールとしても注目されはじめており,農林水産省としても健全な営農型太陽光発電の取り組みを促進しているところである.地球規模でも限られた土地や水資源を有効活用し,食料や持続可能で安価な電力供給の面で営農型太陽光発電の潜在力は大きい.本稿では,営農型太陽光発電をめぐる背景及び経緯,期待される効果,現状と課題,海外展開への可能性等について触れる.