著者
小磯 学
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.43-51, 2015 (Released:2015-10-27)
参考文献数
46
被引用文献数
1

数千年間育まれ,今日のヒンドゥー教へと受け継がれてきた牛の神聖視は,乳とその加工品,糞や尿にも浄化作用や豊饒をもたらす力があるとする独自の世界を形成している.なかでも牛糞は,祭りや儀礼の場では神像が作られ,また祭り火の燃料として重要な役割を果たしている. ここでは,今日の祭りにおける牛糞の利用について総括する.先行研究は乏しく事例報告が限られているため,その嚆矢として位置づけたい.
著者
真木 太一 西山 浩司 守田 治 脇水 健次 鈴木 義則
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.1-10, 2015 (Released:2015-08-31)
参考文献数
11

2013年12月27日に降水量の少ない瀬戸内海気候区の愛媛県西条市北方の,主として瀬戸内海上空で航空機により液体炭酸散布人工降雨実験を行った.雲頂高度2740 m,気温-13℃,風向西北西,雲底高度1070 m,気温-2℃,風向西北西,雲厚1670 mの下層域高度1370 mの積雲(気温-5℃)に液体炭酸を強度5.5 g/sで,11:23~11:48の内の約14分間,総量4.9 kg散布した.液体炭酸の散布によって,西条市役所・中心街で11:50頃にやや強めの降雨強度5 mm/h程度の降雨を5~10分間観測した.また,西条市消防本部では13:00(推測12:00直後)までに0.5 mmの降水を確認した.これらは人工降雨と推測された.液体炭酸散布後,11:30~11:50に積雲が西条市上空で急速に発達し短時間に降水となった後,背の高い積雲は局地的な人工降雨によって急速に衰退し,散布1時間後の12:30には山間域の雲も急激に消失した.西条市南部山間地では散布位置・時刻・風向から人工降雨の影響はなかったが,新居浜市南部山間域では人工降雨が顕著で降雨の終始を目視で確認できた.新居浜市消防本部の大生院,別子山では風向・風速・時刻等からそれぞれ0.5 mm,4.0 mmの人工降雨があったと推定された.四国中央市南部山間域のアメダス富郷では11:50~12:00に0.5 mmの降水を観測している.これは散布時刻・位置,風向西北西,風速15 m/s等を考慮して人工降雨と推測された.西条市・新居浜市・四国中央市付近では液体炭酸散布時の11:30頃にはすでに降水の可能性は減少した状況で,本来降らなくなっていた雲から人工降雨を起こした可能性が高い.徳島県三好市のアメダス池田の降雨0.5 mmとアメダス京上の降雨2.0 mmは,風向・風速,時刻等から人工降雨と判断された.その影響範囲は散布域の風下約80 kmにまで及び,中心線は東西の別子山-京上であった.2013年12月27日の西条市付近での人工降雨実験は成功したと判断される.
著者
Abdullah ALSHANKITI Shagufta GILL
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.101-106, 2016 (Released:2017-01-25)
参考文献数
46

Sandy soils are low in nutrient content and water holding capacity leading to frequent application of both nutrients and water to meet crop requirements. One of the best ways to improve soil properties and prevent nutrient losses is to improve soil quality through the use of organic amendments and minimizing the use of fertilizers. In order to achieve this we conducted a green house experiment using ten treatments with three replicates setting up a randomized block design to investigate integrated effects of chemical fertilizer, compost, bio-fertilizer and biochar on maize crop productivity and improvement in nutrient availability. The study revealed that application of compost and biochar did not impair plant growth and showed no signs of stress or nutrient deficiency. The results showed 19 % increase in plant height and 29% increase in the fresh biomass when biochar was used with the chemical fertilizer (T8) compared to where only chemical fertilizer was applied (T3). It was also found that when half of the chemical fertilizer than was applied in combination with bio-fertilizer and biochar (T10), a similar increase (19.6 %) in plant height and fresh biomass was found compared to when chemical fertilizer was added alone (T3). Cation exchange capacity and organic carbon content increased by 48-52 % and 9-15% in T8 and T10 compared to T3 in the postharvest soil respectively
著者
Naruya SAITOU Shayire SHOKAT
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.223-226, 2017 (Released:2017-05-04)
参考文献数
24

Family Camelidae includes Guanaco and Vicuna in South America and two-humped camels (Camelus bactrians and C. ferus) and one-humped camels (C. dromedarius) are distributed from Eurasia to Northern Africa. We reviewed studies on mitochondrial and nuclear DNA of camels. We collected 37 complete mitochondrial DNA sequences of Camelid including those of now extinct Camelops which distributed in North America from DDBJ/EMBL/GenBank International Nucleotide Sequence Database. Neighbor-joining trees were constructed for these sequences, and evolution of family Camelidae and genus Camelus are discussed with special reference to demographic changes of C. bactrians and C. dromedarius.
著者
包 海岩
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.33-41, 2015 (Released:2015-10-27)
参考文献数
9

モンゴル牧畜民は,五畜といわれるウシ,ウマ,ラクダ,ヒツジ,ヤギを中心に飼育してきた.これらの五畜は,モンゴル牧畜民の日常生活の様々な場面で利用されている.さらに,重要なのは,畜フンの利用である.モンゴル牧畜社会では,五畜のフン名称は30以上も存在する.畜フンは乾燥かつ冷涼なモンゴル高原で,暖房と調理の最重要燃料であり,草原の極めて重要な肥料でもある.本稿では,内モンゴル自治区シリンゴル盟の事例を中心に五畜の畜フン名称体系の特徴を明らかにした.
著者
原 正和
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.301-304, 2016 (Released:2016-06-09)
参考文献数
6
著者
古澤 礼太
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.73-79, 2016 (Released:2016-11-07)
参考文献数
5

ガーナ共和国首都のアクラに住むガ民族は,本来漁労民であるが,トウモロコシを中心とした食文化を発達させてきた.本稿では,そのガのトウモロコシ食文化を次の二方法によってあきらかにした.まず,ガのトウモロコシ食文化の全体像の解明を,トウモロコシ食品の儀礼的利用(新生児の命名式や葬式,新年祭におけるトウモロコシ食品および飲料の利用),トウモロコシ食品の多様な調理法,発酵食品の存在という3点をあきらかにすることによって試みた.次に,主食であるコミ(Komi)に焦点を当てて,コミ料理の調理方法と食べ方をあきらかにしたが,コミが現在,家庭では調理されず,町内のコミ製造・販売店で購入されていることが判明した.その理由として,コミの製造とコミ販売店の実態調査から,コミ調理が家庭内調理では継続困難な重労働であることに起因することが判明した.そして最後に,一家族の一カ月にわたる食事内容調査にもとづき,が民族の食事文化の実態とそのなかにおけるコミの位置づけをあきらかにした.
著者
古山 彰一 中村 尊 小林 龍也 藤島 政樹 間中 淳 入江 光輝
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.59-63, 2017 (Released:2017-08-02)
参考文献数
4

広く一般的に普及しているスマートフォンを用いた水質調査用アプリケーションソフトウエアの開発を行った.スマートフォンは,カメラ,GPS,ネットワーク通信機能を有しており,水質調査用デバイスとして多くの可能性を有する機器であり,世界中で一般的に普及している特徴を活かし,水質調査データをこのデバイスで広く取得する事を目的とする.実現に際してソフトウェア開発が必要となるが,OSとしては世界的に一般的なAndroidを用いる.さらに一般人に普及し,広くデータ収集を行う事が目的になるため,簡易な水質調査方法が必要とされるが,これは色情報を用いた手法を開発する.本報では色情報からフッ素濃度を算出する方法,人工知能を用いた色情報の抽出手法らを中心に議論を行う.
著者
遠藤 仁
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.53-58, 2015 (Released:2015-10-27)
参考文献数
10

半乾燥地に属するインド北西部では,家畜の糞や尿等の排泄物が資源として有効に活用されている.本稿では,ハリヤーナー州,ラージャスターン州,グジャラート州のコブウシやスイギュウの糞の利用法について,床の強化材や,燃料としての利用事例を報告する.特に燃料への利用としては,牛糞を円盤状に成形して乾燥させた保存用の燃料である牛糞ケーキ(cow dung cake)の製作,保存方法について詳細に報告する.そして,その燃焼時間の計測結果及び,燃焼実験の結果について報告し,分析した.牛糞の燃料としての利用は,半乾燥地で薪炭材として圧迫されている森林資源へのストレスを軽減させる有効なものである一方,薪よりも牛糞の燃焼が有害物質を多く輩出する等の問題点があることにも言及し,半乾燥地での家畜糞利用の持続可能性について考察した.
著者
平田 昌弘 鬼木 俊次 加賀 爪優 Berhe Melaku
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.75-89, 2017

<p>本稿の目的は,エチオピア北部中高地のアファール牧畜民を対象に,1)アファール牧畜民の現在の食糧摂取のあり方とその特徴を把握し,2)食料摂取の視座から牧畜の生業戦略を考察し,3)社会・経済の変化が食料摂取や牧畜の生業戦略にどのような影響を及ぼしているかについて考察することにある.食糧摂取パターンの特徴は,1)朝にラクダの生乳を摂取する傾向にあること,2)コムギ粉を用いた料理が多用され,3)コムギ,生乳,酸乳,バターオイルが重要な食材となっており,4)肉と野菜は日常では全く,もしくは,ほとんど利用しておらず,5)近年では食事内容が多様化し,6)食事は親戚や友人と共食することが常であることである.栄養摂取量の特徴は,1)エネルギー摂取量的に約70 %が外部から供給されたコムギ粉などの食料であり,2)自給した食料のほとんどは生乳・乳製品によっており,特に脂肪とタンパク質の半分ほどが生乳とバターオイルから供給され,3)コムギ粉と生乳・乳製品に大きく依存した食体系ではあるが,必要なエネルギー量,タンパク質と脂肪は充足しているとまとめることができる.アファールの農牧民や遊牧民の事例は,家畜を飼養する目的が,家畜を殺して,肉を食べることにではなく,家畜を生かし留めて乳を得て,生乳・乳製品を摂取することにあることを示している.牧畜という生業の本質がここにある.以前は,乳・乳製品への食料依存度は80%ほどであった.今日,流通が盛んになり,近郊の市場で大量の食料品が販売されるようになって,外部からの購入食料に大きく依存するように変化してしまった.流通整備と経済の自由化という社会・経済の変化が,家畜を屠殺せず,生かし留めながら,その乳を利用し,必要最小限を外部社会に依存する牧畜から,家畜は交換材としての傾向を強め,多品目の外部購入食料へと大きく依存する生業構造へと変化させてきている.</p>
著者
小磯 学
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.43-51, 2015

数千年間育まれ,今日のヒンドゥー教へと受け継がれてきた牛の神聖視は,乳とその加工品,糞や尿にも浄化作用や豊饒をもたらす力があるとする独自の世界を形成している.なかでも牛糞は,祭りや儀礼の場では神像が作られ,また祭り火の燃料として重要な役割を果たしている. ここでは,今日の祭りにおける牛糞の利用について総括する.先行研究は乏しく事例報告が限られているため,その嚆矢として位置づけたい.