著者
安岐 敏行 三原 基之
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.363-366, 2002 (Released:2010-09-02)
参考文献数
12

帯状疱疹後神経痛が経験的に温めることで改善することをヒントに,体質的に冷えを伴う帯状疱疹後神経痛の患者に漢方の代表的温剤である桂枝,附子を含む方剤で治療した。方剤としては煎剤で桂枝加附子湯加減,エキス剤で八味地黄丸を使用した。今回対象とした症例は帯状疱疹の皮疹が消失ないし潰瘍が上皮化したのちに疼痛を生じた8例で,高齢者,女性が多く,全例手足の冷感を強く訴えた。また東洋医学的診察では脈診で全例が沈,細,弱であり腎虚証を呈していた。今回行った温剤による漢方治療は,冷感との関連がつよい帯状疱疹に伴う疼痛に対して有効な治療法の一つと考えた。
著者
島田 辰彦 野元 茂 田代 正昭
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.776-779, 1989-08-01 (Released:2012-03-03)
参考文献数
6

61才男子, 全身に広がる浸潤性紅斑, 腫瘤, 表在リンパ節の腫大を主訴に来院した。入院後の皮膚リンパ節生検では瀰漫性混合細胞型と診断され, その他の諸検査でATL(成人T細胞白血病)と診断した。治療としてIFN-γ(SUN4800)200万JRU/日点滴静注6週間連日投与で肉眼的に浸潤性紅斑の色素沈着化, 腫大表在リンパ節の縮小化を認め, 組織学的にも真皮内の異型浸潤細胞の著明な減少を認め, 寛解に至つた。
著者
吉田 雄一 中山 樹一郎
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.69-74, 2007 (Released:2007-03-05)
参考文献数
8

難治性の慢性そう痒性皮膚疾患に対する塩酸エピナスチンの有用性,安全性の検討を行った。他剤による前治療でコントロール不十分の比較的罹病期間の長い患者に対し塩酸エピナスチン1日1回(20mg)もしくは1日2回(40mg)の切り替え投与を行った。投与開始1週間後より両群において皮疹の程度,そう痒とも有意な改善がみられ,4週間投与にて著明な改善がみられた(92%)。安全性に関しては40mg投与群においても特に重篤な副作用は認められなかった。以上の結果より,各種難治性慢性そう痒性皮膚疾患の治療に本剤の20mgまたは40mg切り替え投与は有用であると考えられた。
著者
加藤 直子 国分 一郎 金子 史男 大河原 章 目黒 高志
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.794-800, 1987-10-01 (Released:2012-03-10)
参考文献数
9

Disseminated DLEとして発症し, SLEへの移行を示し急性膵炎を併発した1例を報告した。患者は41才女子, プレドニソロン60mg投与で加療中, 心窩部痛後, 急激な左腹部痛が出現した。検査上, 血清および尿アミラーゼの上昇がみられ, 腹部エコーおよびCTにより膵臓の腫大と腹腔内の浸出液を認めたことから急性膵炎と診断した。ただちに膵床ドレナージ術を施行したが回復せず死亡した。剖検所見から急性出血性膵炎, 急性多発性胃潰瘍, 肺アスペルギルス症, 肝細胞変性などが確認された。
著者
荒田 次郎
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.226-229, 2000-04-01 (Released:2010-09-02)
参考文献数
27
被引用文献数
2 2
著者
安野 洋一 前田 基彰 佐藤 みち子
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.573-578, 1975-08-01 (Released:2012-03-24)
参考文献数
12

Dermadromeとしての脂漏性皮膚炎を検討するために京都府立医大皮膚科外来患者(昭和42~46年)で統計的観察をおこなつた。脂漏性皮膚炎は全体で3.32%にみられ, 疹型別(安田の分類に準ず)ではscalp type, facial type, flexural type, localized typeの順に多かつた。多発型と限局型の比は1:2.7であつた。つぎに全身性疾患との関係を糖尿病, 前糖尿病状態, その他の全身性疾患の3つに分けて検討した。全身性疾患を合併した脂漏性皮膚炎は18.9%にみられ, 40才以上で著明に増加した。高率にみられた疹型はflexural type, psoriasiforme, facial type, scalp typeの順で, とくにflexural typeは糖尿病, 胃腸疾患, 肝疾患で多い傾向がみられた。また全身性疾患を伴う症例では多発~汎発型が増加した。
著者
大熊 守也 栗本 圭久 高橋 喜嗣 手塚 正
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.794-796, 1981

6才男児の右頬部,外陰部,右下肢に生下時よりみられたリンパ浮腫で,<SUP>131</SUP>I·RISA組織クリアランスは患側下腿で155時間,健側で9時間と半減時間の延長がみられた。blue dyeテストも患側足背のリンパ管は認知できなかつた。脳波,染色体検査も異常はなかつた。治療は,波動型マッサージ,弾性靴下着用,メリロート草製剤内服により2年6ヵ月経ているが,安静にすると下肢の太さが一時減少するのみである。また,包皮のcircumcisionにより排尿障害が解消された。
著者
飛田 礼子 千貫 祐子 野上 京子 森田 栄伸
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.579-583, 2015-12-01 (Released:2016-03-15)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

36 歳,女性。カルボシステイン(SCMC),ジメモルファンリン酸塩服用開始数日後,背部,頚部,臀部の色素沈着に気付いた。SCMC の固定薬疹を疑い,薬剤リンパ球幼若化試験(DLST)を施行したところ陰性で,SCMC そのものの貼布試験も陰性であったが,SCMC の中間代謝産物であるチオジグリコール酸(TDA)の貼布試験は陽性反応であった。SCMC 内服試験にて,内服開始 3 日後に瘙痒を伴う紅斑の誘発がみられたことから,SCMC による固定薬疹と診断した。SCMC の固定薬疹では,発現機序に SCMC の中間代謝産物である TDA の関与が指摘されており,その診断においては TDA を用いた貼布試験が有用であるという複数の報告例がある。自験例でも TDA の貼布試験で陽性反応を認めたが,健常人での貼布試験でも同様に陽性反応を認めた。このため,SCMC による固定薬疹の診断における TDA 貼布試験の有用性を検討する目的で,自験例と健常人 5 名を対象として,種々の濃度に調整した TDA の貼布試験を行い,反応性を評価した。その結果,患者,健常人ともに濃度依存性に強い反応が認められ,TDA 水溶液の pH を確認したところ強酸であることが判明した。このことから,TDA の貼布試験による浸潤性紅斑は刺激反応である可能性があり,その判定には注意を要する。
著者
牧野 健司
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.270-273, 2016-06-01 (Released:2016-09-01)
参考文献数
12

十味敗毒湯は化膿性皮膚疾患,湿疹,蕁麻疹などの適応を持つ医療用エキス製剤であり,皮膚疾患に幅広く用いられる処方として知られている。今回,炎症性皮疹を伴う尋常性痤瘡患者(42 例 83 部位)に対し外用薬と併用して十味敗毒湯を 4 週間以上投与したところ,皮疹重症度スコアは投与 2 週後より有意に改善した。また,部位別(額部・頰部・口周部・顎頚部・胸部・背部・躯幹)に検討したところ,額部および頰部の皮疹重症度スコアは投与 2 週後より有意に改善し,胸部,背部においても改善傾向を認めた。以上の結果から,尋常性痤瘡患者における十味敗毒湯の併用は顔面だけではなく,躯幹における炎症性皮疹を早期より改善することにより,QOL の向上に寄与しうる薬剤と考えられた。
著者
平野 京子 安田 和正 降矢 けい 堀川 博朗
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.922-927, 1984

現在までにわれわれはハトムギ種皮熱水抽出物がウイルス性疣贅に対し効果のあることを臨床的に確かめた。今回この活性物質の分離を試みた。活性は<SUP>51</SUP>Cr-labeled K-562をターゲットとするdirect cytotoxicity testで測定した。まずハトムギ種皮熱水抽出物をメタノール:クロロホルム(1:2v/v)溶液で抽出し, その可溶成分を濃縮した。これをシリカゲル薄層クロマトプレート(Merck Art5745)を用い, 展開溶媒として石油エーテル:エチルエーテル:酢酸(80:20:1)を用いて一次元上昇法によりクロマトグラフィーを行つたところRf値0.18の位置に活性物質が認められた。さらにこの部分をIR, ガスクロマトグラフィー, GC-MSにて分析した結果, 主にC<SUB>16:0</SUB>のpalmitic acidとC<SUB>18:1</SUB>の不飽和脂肪酸の塩であることが同定され, またC<SUB>18:0</SUB>のstearic acidおよびC<SUB>18:2</SUB>の不飽和脂肪酸の塩が少量含まれる混合物であることが判明した。
著者
野本 真由美
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.265-269, 2015-06-01 (Released:2015-10-01)
参考文献数
15

従来の痤瘡治療は毛包漏斗部の角化異常および皮脂分泌の亢進に対する薬剤やアクネ菌に対する抗菌薬が中心に用いられている。しかし,再発を繰り返す難治性の患者は,治療に十分満足しているとは言い難い。また痤瘡は顔面に好発することから患者の心理負担も大きく,短期での治療効果がより一層求められる疾患と考える。十味敗毒湯に配合される桜皮には皮膚線維芽細胞からのエストロゲン産生誘導作用が報告されており,従来治療とは異なるアプローチが期待される漢方薬である。そこで従来治療では難治な尋常性痤瘡患者 122 例を対象に,短期治療を目的として,桜皮配合の十味敗毒湯を治療開始時から通常量の 1.5 倍量 (9.0 g/日)で 3 週間投与し,有用性を検討した。評価方法は患者の満足度を重視して,3 つの項目「①皮疹数の減少,②再発率の低下,③再発しても治癒までの期間が短い」のいずれかが確認された場合を「改善」とし,「改善」「不変」「悪化」の3 段階で判定した。その結果,79.5%の改善率が認められた。また他の漢方薬から変方した患者の改善率は 78.4%であった。なお本剤に起因すると思われる副作用は認められなかった。以上のことから,難治な尋常性痤瘡に対し短期間での治療効果を期待するには,薬剤の適正量を考慮することが重要であり,桜皮配合の十味敗毒湯を治療開始時に高用量で投与し,症状の改善に応じて適宜減量することが有用であると考えられた。
著者
金丸 志保 井上 知宏 室井 栄治 持田 耕介 成田 幸代 日高 利彦 瀬戸山 充
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.145-148, 2013-04-01 (Released:2013-06-24)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

77 歳,女性。31 歳時関節リウマチを発症した。72 歳時よりエタネルセプトの投与を開始したが無効のため,75 歳時よりアダリムマブへ変更し投与を開始した。初診の 1 ヵ月ほど前より左頬部にドーム状に隆起する表面平滑な直径 1 cm の紅色結節が出現した。皮膚生検にてメルケル細胞癌と診断され,当科に紹介された。診断後,アダリムマブの投与は中止した。拡大切除,術後放射線治療を施行し,術後 3 ヵ月の現在,再発を認めていない。生物学的製剤の長期使用に伴う免疫抑制状態によりメルケル細胞癌を生じた可能性を考えた。
著者
三好 経子 高須 博 宮田 聡子 矢口 厚 太田 幸則 勝岡 憲生
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.603-607, 1998-10-01 (Released:2010-10-15)
参考文献数
19
被引用文献数
1

46歳, 男性。骨髄線維症で北里大学医学部附属病院血液内科入院中に, 下腿に有痛性の隆起性紅斑が生じ同院皮膚科受診となった。初診時, 左下腿外側上方に拇指頭大で紅色の浸潤を有する結節性の紅斑が認められた。右下腿伸側から内側にかけては小児手拳大, 暗紅色の消退傾向にある浸潤性紅斑が認められた。その後も同様の紅斑が下腿や前腕などに出没した。無治療で経過観察していたところ, 初診から約1ヵ月半後に右下腿伸側に胡桃大, 暗紫紅色で軟らかな出血性の紅斑が再発し, その組織像では, 真皮中下層から脂肪織にかけて, 瀰漫性および巣状を呈する多数の好中球と出血が認められた。生検部位は直ちに難治性の潰瘍となったが, ステロイド剤の内服と局所処置の徹底により上皮化した。紅斑はその後も増悪·寛解を繰り返し, 皮膚病変と骨髄線維症の病勢とに相関があり, 自験例の紅斑は, 骨髄線維症に関連して生じたものと考えた。ステロイド治療の継続により皮膚病変はしばらく寛解期が継続していたが, 骨髄線維症の進行と肺炎の合併により死亡した。