著者
向井 秀樹 新井 達 浅井 寿子 武村 俊之 加藤 一郎
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 = The Nishinihon journal of dermatology (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.84-90, 1995-02-01
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

小児のアトピー性皮膚炎の治療に海水浴療法が行われており, その作用機序として紫外線および海水の作用が考えられている。そこで今回この海水の作用に注目して, その有用性を検討した。方法は自宅の入浴時に海水成分に近い自然塩を用いて塩水療法を行った。対象は, 従来の治療法に抵抗性で重症度の高い46症例(小児17例, 成人29例)。全体の有効率は60.9%であり, 年齢別にみると小児94.1%, 成人41.3%と明らかな有効率の違いをみた。臨床効果を要約すると, 止痒効果が高く, 湿潤局面の改善や保湿効果などが認められた。副作用として, 使用時の刺激感および長期連用により乾燥肌の出現がみられた。比較的かゆみのコントロールしにくい症例に対して, 本療法は容易で有用性の高い補助療法になりうると考えた。
著者
成田 博実 青木 洋子 出盛 允啓 緒方 克己 津守 伸一郎 金田 礼子 菊池 英維 菊池 武英 黒川 基樹 黒木 康博 田尻 明彦 中野 俊二 楢原 進一郎 西田 隆昭 古結 英樹
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.58-64, 2013-02-01 (Released:2013-04-25)
参考文献数
11

2010 年 4 月 20 日に宮崎県児湯郡都農町で発生した口蹄疫が全県下に拡大蔓延 (発生農場 292カ所, 発生自治体 5 市 6 町) し, 約 29 万頭の家畜が犠牲になった。その防疫作業に伴う皮膚病変について宮崎県内の皮膚科医へのアンケート調査で 50 例を集計できた。年齢は 20~75 歳 (平均 42.0 歳), 男 45 例, 女 5 例であった。発生月は 5 月 17 例, 6 月 22 例, 7 月 7 例, 8 月 1 例と推移した。職種は県内公務員が 32 例と最多であった。疾患は化学熱傷 46 例, 急性結膜炎, 汗疹性湿疹, アトピー性皮膚炎の増悪, 注射針刺傷, 蜂窩織炎, 虫刺症, 毒蛾幼虫皮膚炎が各 1 例, 防疫作業後発症の帯状庖疹 1 例であり, このうち 3 例が 2 疾患, 1 例が 3 疾患を合併していた。46 例の化学熱傷の受傷状況は豚・牛舎の消毒作業 18 例, 作業場所不明の消毒作業 25 例, 埋却作業 2 例, 鶏舎の消毒作業 1 例であった。原因となる化学物質は消石灰 (水酸化カルシウム Ca(OH)2) 23 例, 炭酸ソーダ (炭酸ナトリウム Na2CO3) 4 例, 不明 19 例であった。受傷部位 (重複あり) は顔面 5 例, 上腕 3 例, 前腕 14 例, 手 6 例, 大腿 17 例, 膝 4 例, 下腿 51 例, 足 2 例で, deep dermal burn が多かった。発症機序は非耐水性防護服からの薬液のしみ込み, 袖口や破れからのしみ込み, 発汗による体表面への拡散, さらにはゴム長靴と皮膚との摩擦や股ずれ等による皮膚損傷部で, 薬液が皮膚に浸透し化学熱傷に至ったものと推察した。
著者
向井 秀樹 新井 達 浅井 寿子 武村 俊之 加藤 一郎
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.84-90, 1995-02-01 (Released:2011-07-20)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

小児のアトピー性皮膚炎の治療に海水浴療法が行われており, その作用機序として紫外線および海水の作用が考えられている。そこで今回この海水の作用に注目して, その有用性を検討した。方法は自宅の入浴時に海水成分に近い自然塩を用いて塩水療法を行った。対象は, 従来の治療法に抵抗性で重症度の高い46症例(小児17例, 成人29例)。全体の有効率は60.9%であり, 年齢別にみると小児94.1%, 成人41.3%と明らかな有効率の違いをみた。臨床効果を要約すると, 止痒効果が高く, 湿潤局面の改善や保湿効果などが認められた。副作用として, 使用時の刺激感および長期連用により乾燥肌の出現がみられた。比較的かゆみのコントロールしにくい症例に対して, 本療法は容易で有用性の高い補助療法になりうると考えた。
著者
阿曽 三樹 島雄 周平 岩崎 和美 井上 忠典 森村 司 岡田 しのぶ 三原 基之
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.352-358, 1989-04-01 (Released:2012-03-03)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

自家感作性皮膚炎1例, 尋常性乾癬4例, 計5例の患者に0.05% difluprednate軟膏30∼60g/dayを単純塗布し, 血清11-OHCS値, 末梢循環好酸球数, 血糖値の変動並びに臨床効果を観察した。外用中, 血清11-OHCS値は40g/day塗布3例中2例で明らかな低下が認められたが, 30g/day, 60g/day塗布各1例では低下は認められなかつた。末梢循環好酸球数は30g/day, 40g/day各1例で明らかに減少した。血糖値は40g/day 1例で一過性に上昇した。臨床効果は非常に優れていた。Difluprednate軟膏はその臨床効果と比較すると, 副腎皮質機能抑制作用は軽度であり, 臨床効果と全身作用の分離を示すコルチコステロイド外用剤と考えられた。
著者
石井 律子 片岡 正憲 細川 佐知子 土肥 孝彰 當別當 健司 平野 尚茂 榎本 愛 安藝 裕美 成瀬 友裕
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.51-56, 2007 (Released:2007-03-05)
参考文献数
24
被引用文献数
2 3

ヒルドイド製剤の有効成分であるヘパリン類似物質の保湿作用メカニズムを解明するために,角層の水分保持機能とバリア機能に対する作用を実験的ドライスキンモデルにおいて検討した。ドライスキンモデルは,ヘアレスマウスの背部にアセトン/エーテル(1:1)混液と蒸留水(A/E/W)を1日1回,8日間処置して作製した。ヒルドイド®ソフトまたはヘパリン類似物質を含まない基剤は,A/E/W処置開始翌日より1日1回(100mg),7日間塗布した。A/E/W処置により,角層水分量と天然保湿因子である遊離アミノ酸の量は有意に減少し,経表皮水分蒸散量(TEWL)は有意に上昇した。また,角層細胞間脂質のラメラ構造は破綻していた。病理組織学的には,表皮の肥厚が観察された。ヒルドイド®ソフトを反復塗布すると,A/E/W処置による角層水分量の減少とTEWLの上昇は有意に抑制され,角層中の遊離アミノ酸量は有意に増加した。また,角層細胞間脂質のラメラ構造には回復傾向が認められ,表皮の肥厚は顕著に抑制された。以上の結果から,ヘパリン類似物質はドライスキンにおける角層の水分保持機能とバリア機能の低下を改善し,両機能の改善には主に天然保湿因子の増加が関与しており,角層細胞間脂質のラメラ構造の回復促進も一部,関与していると考えられた。
著者
窪田 泰夫 森上 徹也 森上 純子 中井 浩三 横井 郁美 藤田 名都子 宗廣 明日香 前田 麗子 石川 絵美子 細川 洋一郎 小浦 綾子 米田 耕造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.432-438, 2012-08-01 (Released:2012-11-15)
参考文献数
7
被引用文献数
1

アトピー性皮膚炎 (AD) 患者を対象に標準的 AD 治療のひとつとしてスキンケアにビーソフテン® ローション (B) およびヒルドイド® ローション (H) を使用し,患部皮膚の角質水分量,経皮水分喪失量の推移,AD の皮膚症状に及ぼす影響を左右半身比較による検討を行った。両製剤の使用感や利便性に関する評価と満足度も検討した。両製剤とも4,8週後に皮膚症状は有意に改善し,製剤間に差はなかった。角質水分量,経皮水分喪失量については,治療前後および製剤間の差はなかった。Visual Analogue Scale (VAS) による評価では「皮膚のうるおい」,「皮膚のなめらかさ」,「患部皮膚の色調」では,両製剤とも4,8週後に有意に改善し,製剤間に差はなかった。「痒み」は4週後では両製剤とも有意な改善を認め,8週後では (H) のみが有意に改善したが,製剤間には差はなかった。薬剤使用感のVAS評価では,「薬剤塗布時の使用感」で (B) が有意に優れていたが,「塗りやすさ」,「薬剤塗布時のにおい」,「薬剤塗布した翌朝の皮膚の状態」,「薬剤の継続使用希望」は製剤間に有意差はなかった。AD 外用治療の基礎であるスキンケアにおける保湿剤の使用は皮膚炎の軽重にかかわらず長期にわたる。患者の好み,塗布範囲,季節,発汗などに応じた剤形選択がアドヒアランス向上をもたらし,高い治療効果や QOL の改善にも寄与するものと考えられた。
著者
馬岡 愛 欠田 成人 津田 憲志郎 近藤 誠 東山 文香 水谷 仁 半田 智春 石井 惠玲 村上 拓 吉原 成朗 山中 恵一
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.147-155, 2018-04-01 (Released:2018-07-13)
参考文献数
9

Very strong クラスのステロイド外用剤で治療されているアトピー性皮膚炎(AD)患者を対象に,秋冬および春夏の 2 期間について軟膏基剤製剤から油中水型(以下,W/O 型)乳剤性基剤製剤へ変更後のかゆみスコア(VAS),アトピー性皮膚炎の重症度スコア(SCORAD およびEASI),患者満足度(TSQM-9)およびアドヒアランス(MMAS-8)を評価した。調査対象は秋冬期間(Period 1)34 例,春夏期間(Period 2)22 例であった。試験中止例は 10 例であったが,試験中止例も含め全症例を解析対象とした。VAS,SCORAD および EASI は,両期間で登録時からの有意な低下が認められ,変化量はともに Period 1 と比較して Period 2 が大きかった。患者の治療満足度の評価には TSQM-9 を用いたが,要素である「効果」と「全般満足度」は Period 2 で登録時からの有意な上昇が認められ,変化量はともに Period 1 と比較して Period 2 の方が有意に大きかった。「利便性」には有意差は認められなかった。MMAS-8 は W/O 型製剤投与前後の割合に有意な変化はみられなかった。AD 患者において軟膏基剤製剤から W/O 型乳剤性基剤製剤への変更により,かゆみスコア,患者満足,AD の重症度の改善がみられ,特に春夏期間で顕著であった。
著者
浅野 さとえ 岡部 省吾 池田 美智子
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.945-950, 1991-10-01 (Released:2011-09-29)
参考文献数
14

職場内で感染したと思われる2例の男子成人麻疹を経験した。症例1は23歳男子で高熱, 皮疹, 下痢を主訴として来院し同日入院。麻疹既往を主張したため, 伝染性単核症として治療されたが, 皮疹より麻疹が疑われた。入院翌日より, 呼吸困難出現, 心陰影の増大, CPKの上昇, 心電図所見より, 心筋炎合併と診断された。血清学的所見より, 麻疹と確定診断された。10日頃より複視と頭痛が出現, 外転神経麻痺と診断され, 麻疹後脳炎が疑われたが, 次第に軽快し約2ヵ月後治癒退院した。症例2は22歳男子で高熱, 血尿を主訴とし, 当院内科入院, 入院後皮疹出現, 翌日呼吸困難出現, 心筋炎合併の麻疹と診断された。症例1, 2はその後職場が同一であることが判明, 発症のずれが13日であることから症例2は症例1より感染したと考えられた。麻疹の合併症としては肺炎, 脳炎が良く知られているが, 心筋炎の合併は稀であり報告は少ない。心筋炎合併の2麻疹例を報告すると共に, 麻疹ウイルスの構造, 特殊性, 変異など, 近年注目されている事項について言及した。
著者
土肥 孝彰 石井 律子 細川 佐知子 平野 尚茂 成瀬 友裕
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.44-50, 2007 (Released:2007-03-05)
参考文献数
22
被引用文献数
2 4

角層内の水分は, 結合水と自由水の状態で存在しており, 結合水はさらに1次結合水と2次結合水に細分化される。また, 角層細胞間脂質はラメラ構造を形成し, 角層内の水分を2次結合水として捕捉し, 水分保持に大きく関与していることが知られている。そこで, 我々はヘパリン類似物質の保湿作用メカニズムを明らかにする目的で, 結合水量及びラメラ構造に対する作用をin vitro及びin vivoにて検討した。In vitroでは, 卵黄レシチンからラメラ構造を作製し, ヘパリン類似物質添加によるラメラ構造中の結合水量の変化を示差走査熱量計により測定した。ヘパリン類似物質は, ラメラ構造中の結合水量を有意に増加させ, その作用は添加水量に応じて増加する傾向が認められた。in vivoでは, モルモット腹部皮膚にラウリル硫酸ナトリウム処置により実験的ドライスキンを作製し, ヘパリン類似物質を含有するヒルドイド®ローションを5日間反復塗布した後, 角層を採取し, 結合水量の測定, 吸熱ピークパターン解析, 及び電子顕微鏡によるラメラ構造観察を実施した。実験的ドライスキンで破綻した角層細胞間脂質のラメラ構造は, ヒルドイド®ローション反復塗布により回復し, 角層中の結合水量も有意に増加していた。以上の結果から, ヘパリン類似物質の保湿作用は角層細胞間脂質のラメラ構造の回復促進と2次結合水量の増加に基づくものと考えられた。
著者
中山 樹一郎 堀 嘉昭 占部 篤道
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.121-126, 1994-02-01 (Released:2011-07-21)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

高脂血症を伴う尋常性乾癬患者20例(3例は血清脂質レベルは正常範囲であったが何らかの血清アポタンパクの異常を認めたもの)に抗高脂血症剤のベザフィブラート(一般名bezafibrate, 商品名ベザトール®SR錠)の内服治療とステロイド外用療法の併用療法を施行しその乾癬皮疹および血清脂質の改善効果について検討し, 以下の結果を得た。1)乾癬の潮紅, 鱗屑, 浸潤·肥厚のいずれも統計学的に有意な改善がみられた。中等度改善以上の改善率は50%(20例中10例)であった。2)血清脂質値では, 治療後に総コレステロール, トリグリセライドが有意に低下し, またVLDL-コレステロールが有意に低下した。アポタンパクはA-IIが有意に上昇し, B, C-III, Eが有意に低下した。他に総脂質, エステルコレステロール, 遊離コレステロール, リン脂質が有意に低下した。血清脂質の中等度以上の改善率は60%であった。3)皮膚症状改善度と血清脂質改善度を総合的に考慮した全般改善度は中等度以上の改善率で50%であった。4)血清脂質の各パラメーターの変動と皮膚症状改善度との相関性では総コレステロールと皮膚症状の改善度に有意の相関が認められた。5)副作用は2例にみられ, その内訳は軽度の動悸と嘔気であった。薬剤との因果関係は断定できなかった。6)全般改善度および概括安全度を総合的に判断した有用度では, 有用以上が50%であった。以上の結果より高脂血症を伴う乾癬患者の外来での治療にはステロイド外用剤とベザフィブラートの内服療法の併用療法は試みるべき有用性の高い治療法と考えられた。
著者
渡部 泰守 荒瀬 誠治 瀬上 三貫 重見 文雄 武田 克之
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.439-444, 1988-06-01 (Released:2012-03-07)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

香川県善通寺市のニンニク栽培農家を対象としてニンニク皮膚炎アンケート調査を行つた。有効解答は389戸, 男子364名, 女子416名, 計780名から得られた。このうちニンニク皮膚炎経験者は400名(51.3%)で男女差および年令による陽性率の差はおおむねなかつた。皮膚炎発症までの平均期間は栽培開始後2.45年, 作業開始後4.03日で毎年かぶれると答えた者が33%あつた。皮膚炎発症部位は手(89%), 腕(15%), 顔(12%), 首(4%), 全身(3%)などで, 症状は皮膚がむける(70%), 赤くなる(48%), 腫れる(16%), ぶつぶつ(13%), 水ぶくれ(8%), 皮膚が厚く硬くなる(5%), また自覚症状としては痛み(57%), 痒み(42%)などであつた。栽培方法ではニンニクの液汁に触れる機会の多い早出しニンニク栽培群のほうが普通ニンニクのみ栽培群よりも陽性率が高かつた。また手袋で手を保護してもなお皮膚炎を生じると解答した男子3名, 女子10名, 計13名と対照21名を対象としてpatch testを行つたところニンニク皮膚炎陽性群のうち1名のみに陽性反応が得られた。したがつてニンニク栽培従事者にみられるニンニク皮膚炎の大部分は1次刺激性接触皮膚炎であると思われる。しかし, 対照群のうち2例にpatch testによる感作が成立し, ニンニクは強い1次刺激性ばかりでなく感作能をもあわせもつていると思われた。
著者
敷地 孝法 野本 正志 大浦 一 桑名 隆一郎 中瀬 美穂
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.141-146, 1997-02-01 (Released:2011-01-14)
参考文献数
11

アクアチム®クリーム(ナジフロキサシン; 大塚製薬)はP. acnesに対し強力な抗菌作用を持ち耐性菌も出現しにくい製剤とされている。今回, 我々は尋常性ざ瘡の患者23例を対象にミノマイシン®とアクアチム®クリームを併用し, 治療対象部位の閉鎖性面皰, 開放性面皰, 丘疹, 膿疱に対する有用性について検討した。その結果, 本疾患に対するアクアチム®クリームとミノマイシン®併用療法とアクアチム®クリームとミノマイシン®短期併用療法は共に8割以上の全般改善が認められた。特にアクアチム®クリームとミノマイシン®短期併用療法はミノマイシン®を1週後に投与中止しているにも関わらず治療効果が減弱していなかった。すなわち尋常性ざ瘡の治療は内服剤が主と考えられているが, 経過観察を十分行えば外用剤での病状維持または治癒治療が可能とも考えられた。以上より尋常性ざ瘡に対しアクアチム®クリームは有効であり, 内服剤の減量が必要な場合にはアクアチム®クリームとミノマイシン®短期併用療法は試みるべき治療方法と考えられた。
著者
清水 裕毅 松田 絵奈 日浦 ゆかり 今福 信一
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.35-38, 2020-02-01 (Released:2020-05-12)
参考文献数
17

Toe web infection はグラム陰性菌の,とくに緑膿菌感染によって趾間のびらんや潰瘍を生じるのが特徴で,再発を繰り返す疾患である。日常診療でしばしば遭遇する疾患であるが本邦での報告数は少ない。 症例 1 は 66 歳,男性。受診の 2 週間前から右足の趾間に亀裂とびらんが出現し,近医で抗菌薬と抗真菌薬の外用を開始したが改善に乏しく,疼痛が増悪したため当科を受診した。右足の全趾間に悪臭と緑色の膿を伴うびらんがあり,辺縁に浸軟した角質を認めた。症例 2 は 42 歳,男性。受診の 2 週間前から左足の趾間にびらんと発赤が出現し近医で抗菌薬の外用と内服をするも改善なく当科に紹介された。左足の趾間に悪臭を伴うびらんがあり,びらんの辺縁に浸軟した角質があった。どちらの症例も細菌培養検査で Pseudomonas aeruginosa が検出された。抗菌薬の全身投与とスルファジアジン銀クリームの外用,デブリードマンを行い改善した。治療後に再度真菌検査を行ったが陰性であった。自験例は早期の真菌検査,細菌培養検査を行い抗菌薬治療とデブリードマンが効果的であったと考えた。
著者
大井 一弥 三谷 宜靖 林 雅彦
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.248-252, 2011-06-01 (Released:2011-09-28)
参考文献数
19
被引用文献数
2

デキサメタゾン吉草酸エステル軟膏(ボアラ®軟膏)と油中水型ヘパリン類似物質含有保湿剤(ヒルドイド®ソフト軟膏)の適用順序によるステロイドの皮膚内移行性について,豚耳および健康ヒト皮膚により検討を行った。ステロイド軟膏単独適用はA群,ステロイド軟膏剤適用後,保湿剤適用はB群,保湿剤適用後,ステロイド軟膏剤適用はC群とし,豚耳における,ステロイドの皮膚内移行性をみるため,皮膚中のデキサメタゾン吉草酸エステル濃度を,HPLCを用いて測定した(n =8)。また,健康ヒト皮膚(n =2)により,ステロイドの皮膚内移行性を,共焦点ラマン分光光度計を用いて測定した。豚耳において皮膚移行したステロイド濃度について,A群,B群およびC群をそれぞれ比較したところA群が最も高く,次いでB群がC群に比べて有意に高かった(p <0.01 ; t-test)。豚耳における試験と健康ヒト皮膚による検討では,塗布順によるステロイド皮膚内移行が同様の傾向になることがわかった。しかしながら,その差はわずかであり,臨床的効果に差を認めることはないと考えられた。
著者
大井 一弥 横山 聡 阿波 勇樹 河井 亜希 平本 恵一
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.127-130, 2014-04-01 (Released:2014-07-17)
参考文献数
11

タクロリムス軟膏とヘパリン類似物質製剤の塗布順序によるタクロリムスの皮膚内移行性について,アトピー性皮膚炎モデル動物である NOA/Jcl マウスにより検討を行った。NOA/Jcl マウスの背部にタクロリムス軟膏を塗布し,タクロリムス軟膏 (プロトピック® 軟膏 0.1%) およびヘパリン類似物質製剤 (ヒルドイド® ソフト軟膏 0.3%,ヒルドイド® クリーム 0.3%,ヒルドイド® ローション 0.3%) 塗布後,3 時間の皮膚中タクロリムス濃度を LC-MS/MS を用いて測定した。タクロリムス軟膏塗布後,ヒルドイド® ソフト軟膏塗布は A 群,ヒルドイド® ソフト軟膏塗布後,タクロリムス軟膏塗布は B 群,タクロリムス軟膏塗布後,ヒルドイド® クリーム塗布は C 群,ヒルドイド® クリーム塗布後,タクロリムス軟膏塗布は D 群,タクロリムス軟膏塗布後,ヒルドイド® ローション塗布は E 群,ヒルドイド® ローション塗布後,タクロリムス軟膏塗布は F 群,タクロリムス軟膏とヒルドイド® ソフト軟膏混合塗布は G 群とした。この結果,タクロリムス軟膏とヘパリン類似物質製剤の塗布順序の違いによる皮膚中タクロリムス濃度に,有意な差はなかった ( P=0.8325)。また,タクロリムス軟膏と各剤形のヘパリン類似物質製剤の塗布順序による皮膚中タクロリムス濃度についても検討したところ,有意な差はなかった( P=0.0811)。さらに,タクロリムス軟膏とヘパリン類似物質製剤の混合塗布した場合とタクロリムス軟膏とヘパリン類似物質製剤の各々の塗布順序でも有意差は認められなかった (A 群との比較 : P=0.0958,B 群との比較 : P=0.1331)。これらのことから,タクロリムス軟膏とヘパリン類似物質製剤の塗布順序の違いが,皮膚中タクロリムス濃度に影響を与える可能性は低いと考えられる。従って,臨床ではどちらを先行塗布しても効果に差を認めるものではないことが推察される。
著者
長崎爪白癬研究班
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.1072-1078, 1994-10-01 (Released:2011-07-21)
参考文献数
12
被引用文献数
2 2

爪白癬81例(81爪)について, 塩酸ブテナフィンクリーム(ボレークリーム®)ODTによる治療効果を検討した。58例について結果が得られ, うち有効45例(77.6%), 悪化1例(1.7%)であった。副作用と思われる症状は2例にみられ, いずれも局所の刺激症状であった。塩酸ブテナフィンクリームODTによる爪白癬の治療は, 抗真菌剤内服不能の爪白癬患者に対する選択肢のひとつになりうると考えた。
著者
大日 輝記 古賀 哲也 城戸 真希子 師井 洋一 占部 和敬 古江 増隆 名和 行文
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.452-455, 2002-08-01 (Released:2010-09-02)
参考文献数
12
被引用文献数
1

31歳,男性。タイへ渡航し現地リゾートの海岸を訪れた後,右足底に爬行様線状疹を認め,次第に移動した。病理組織にて肥厚した表皮内に小水疱を認め,水疱内,表皮および真皮上層血管周囲に高度の好酸球浸潤および中程度のリンパ球浸潤を認めた。一方,虫体は認めなかった。各種寄生虫の免疫血清学的検査はいずれも陰性であったが,渡航歴,経過および臨床所見からイヌ鉤虫による皮膚幼虫移行症と診断した。近年,海外リゾート地での感染例が相次いで報告されており,同地渡航者における本症の診断に注意が必要である。
著者
江川 清文
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.393-394, 2021-10-01 (Released:2021-10-20)
参考文献数
3

患者:70 歳,女性初診:2020 年 5 月中旬主訴:左上背部の瘙痒を伴う落屑性紅斑既往歴:右第 1 指と左第 1 趾爪白癬の診断で治療中現病歴:左上背部の“こり”に対し,ピップエレキバン®(以下エレキバン)を約 20 日間貼付したままにしたところ瘙痒を伴う紅斑が出現した。“かぶれ”の自己診断で副腎皮質ホルモン(OTC 薬)を外用したが,約 1 カ月経過しても治癒しないため受診した。現症:左上背部に,径約 5 cm の漿液性丘疹と鱗屑を付した浮腫性紅斑の環状配列を認める(図 1 a,b)。検査:ズームブルー®(久光製薬,鳥栖市)を用いた KOH 鏡検で菌糸性菌要素陽性(図 2 )。診断:体部白癬治療および経過:ルリコナゾール外用にて,1 週間後には色素沈着を残すのみとなった。
著者
木下 央子 木下 正嘉 高橋 亜紀代 湯浅 慎介 福田 恵一
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.427-431, 2012-08-01 (Released:2012-11-15)
参考文献数
22
被引用文献数
1 6

皮膚老化は皮膚が人間の最も表面にある臓器ゆえに,経時的,遺伝的な内因的要因だけではなく,日光や大気などの外的要因も老化現象に影響を及ぼす。皮膚のたるみやしわの大きな原因は皮下組織の線維芽細胞の細胞数減少や結合組織構成タンパクの分泌能低下,日光などの外的ストレスが原因となるコラーゲン分解亢進などが主な原因となって起こることが知られている。フルボ酸は腐植物質より抽出される自然由来の物質であるが,キレート作用や pH 緩衝作用,細菌増殖抑制作用や,湿疹に対する有用性の報告がある。このフルボ酸が線維芽細胞やコラーゲン分解に直接的に関与する matrix metalloproteinase (MMP) に対してどのような効果をもたらすか調べた。細胞は正常人成人の皮膚線維芽細胞を使用し,細胞のバイアビリティは Calcein-AM を使用した細胞のエステラーゼ活性を測定することにより,MMP の阻害作用については FITC 標識コラーゲンの分解抑制試験にて観察した。フルボ酸1%では26.1% (P<0.01) 細胞バイアビリティ増加を認め5%でも細胞毒性を認めなかっ た MMP の抑制試験において MMP-8 0.25unit ではコントロールに比べフルボ酸1%は約47% (P<0.01),フルボ酸5%は約61% (P<0.01) の MMP 抑制効果を認め,MMP-8 0.5unit ではコントロールに比べフルボ酸1%は約23% (P<0.01),フルボ酸5%は約56% (P<0.01) の MMP 抑制効果を認めた。今回の実験よりフルボ酸は線維芽細胞のバイアビリティ増加と MMP によるコラーゲン分解を抑制するという二つの観点からアンチエイジングに対して有用である可能性が示唆された。