著者
佐々木 誉詩子 内 博史 古江 増隆
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.459-462, 2017-10-01 (Released:2017-11-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

29 歳,女性。初診 13 日前に両側腹部脂肪吸引術を受けた。初診 4 日前に発熱,両側腹部の発赤で蜂窩織炎と診断された。初診 3 日前に同部位に水疱が出現し急激に拡大した。初診前日,咳嗽が出現し,当日,呼吸困難感を訴え,肺塞栓症疑いで当院に救急搬送となった。初診時,バイタルサインの異常と両側腹部に手拳大の壊死組織を認めた。血液検査では白血球・CRP 上昇,Hb 低下,凝固異常などがみられた。心エコーで肺動脈が拡張していたが CT で明らかな血栓はなく,経過からは脂肪塞栓による肺塞栓症と考えた。敗血症性ショックを疑い腹部の緊急デブリードマンを行ったが,塗抹・培養とも菌は検出されなかった。肺高血圧は軽減し経過観察していたが,その後急性呼吸窮迫症候群 (ARDS) を発症し,凝固障害とともに治療し軽快した。脂肪塞栓症候群は脂肪吸引術後にもまれに起こる重大な合併症であり,処置後の患者は注意深く観察し,発症の際は速やかな診断・治療が必要となる。
著者
川上 麻衣 清水 裕毅 久保田 由美子
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.120-124, 2019-04-01 (Released:2019-05-20)
参考文献数
23
被引用文献数
1

症例は 50 歳,女性。左下腿の虫刺様皮疹に対し市販外用薬を塗布していたが,同部が潰瘍を伴う隆起性病変となったため,1 カ月後,当科を受診した。初診時,左下腿内側に径 3 cm の黄色痂皮が付着した隆起性潰瘍病変を認め,ヨードコート®軟膏外用を開始したが悪化したため,壊疽性膿皮症などを疑った。血液検査で血清クロール濃度(Cl)が 156 mEq/l(正常:98∼108 mEq/l)と異常高値であったが,4 年前から高 Cl 血症であったことが判明した。詳細な問診の結果,約 10 年間,慢性頭痛に対してブロモバレリル尿素含有の市販鎮痛薬(ナロン®顆粒)を内服していることが判明した。臭素摂取過量による偽性高 Cl 血症を呈したと考え,血中臭素濃度を測定したところ 500 mg/l(正常 5 mg/l 以下)と中毒域であった。皮疹辺縁部の皮膚生検では表皮は偽癌性増殖を呈し,真皮内には膿瘍形成を認め,臭素疹と確定診断した。 その後,ナロン®顆粒の内服を中止したところ速やかに Cl は正常化し,皮疹も色素沈着となり軽快した。 軽微な外傷から生じた難治性の潰瘍病変は壊疽性膿皮症などをまず考えるが,臭化物の内服歴や高 Cl 血症を確認し,臭素疹を鑑別に入れる必要がある。
著者
田辺 義次 赤松 徹 前田 哲哉 岡本 昭二
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.755-759, 1975-10-01 (Released:2012-03-24)
参考文献数
15

本症の報告は少ないが, けつしてまれなものではない。著者らは, 19, 24, 38才の男子例を経験した。臨床像は3例ともほぼ同様で, 軟骨様硬の索状硬結が陰茎包皮の冠状溝への移行部に蛇行状に認められた。性病歴なく, そのほかの既往歴にも本症との関連性が疑えるものはなかつた。また外国の症例で強調されている性交渉との関係は認められなかつた。組織学的特徴はリンパ管壁の肥厚ないし硬化である。肥厚した壁は結合織が大部分を占め, これに浮腫性変化とわずかのリンパ球および組織球が混在している。内腔は壁の高度肥厚のため, また肥厚に加えて内壁に付着した血栓様構造ないしその器質化のため狭小化, ときに閉塞状態になつている。きらに電顕的に内皮細胞を観察し, 光顕像とあわせて硬化性リンパ管炎と考えた。とくに治療せずに経過観察, 6~8週で略治の状態になつた。病名および「異所性モンドール病」について若干の文献的考察を行なつた。
著者
呉 貴郷 藤重 昇永 市丸 雄平
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.621-624, 2004 (Released:2005-10-21)
参考文献数
16

ヒトの皮脂の脂肪酸組成と近似し, かつ高いリノール酸を含む馬油による皮膚への保湿効果を検討した。健常な女性7名に対して馬油を塗布した効果, 角質層の水分量と油分量の増加が認められた。また, 塗布2時間後, 皮膚表面に残存油量の脂肪酸組成を調べた結果, リノール酸の含有量は明らかに減少傾向を示した。馬油の局部塗布による皮膚の水分量と油分量の増加は, 主にリノール酸が皮膚に吸収され, 皮膚バリア機能を維持するための保湿因子構造に充分な役割を果たさせたことによると考えた。以上のことから, 馬油を外用剤とした経皮補給は皮膚の健康維持と保湿に適していると考えられた。
著者
村上 通敏 亀山 孝一郎
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.659-662, 1983

アムシノニド0.1%を含有するビスダーム軟膏およびクリームをアトピー皮膚炎9例, 接触皮膚炎5例, 皮脂減少性湿疹2例, 慢性多形痒疹1例, ヴィダール苔癬1例, 日光皮膚炎1例, 尋常乾癬1例の計20例に使用した。臨床効果は著効13例(65%), 有効5例(25%), やや有効2例(10%)であつた。副作用は全例に認めず, 臨床検査を実施した5例においても異常な変動を認めなかつた。
著者
井上 雅子 泉川 孝一 須崎 康敬
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.149-153, 2013-04-01 (Released:2013-06-24)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

67 歳,女性。2009 年に発症した潰瘍性大腸炎に対して,インフリキシマブ 5mg/kg 投与中であったが,消化器症状が悪化したため 2011 年 10 月にインフリキシマブを 10 mg/kg に増量されていた。2011 年 11 月ごろより発熱とともに左手首から手背にかけての発赤,熱感,腫脹が出現し当科に紹介された。抗生剤を投与したが症状は急速に悪化し,CT,MRI で壊死性筋膜炎を疑いデブリードマンを施行した。膿の細菌培養,抗酸菌培養,真菌培養は陰性で,病理組織検査で真皮全層の好中球浸潤を認めた。以上より壊疽性膿皮症と診断し,インフリキシマブの中止とプレドニゾロン投与を開始し症状は軽快した。インフリキシマブで壊疽性膿皮症の発症を抑えきれなかった可能性とインフリキシマブの paradoxical な反応の可能性についての鑑別が必要と考える。
著者
神崎 保 溝口 志真子
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.490-493, 2004 (Released:2005-10-21)
参考文献数
16

健常人ボランティア8人 (n=8), 悪性黒色腫 (MM) 患者 (n=5) 及び成人T細胞白血病 (ATL) 患者 (n=11) にヨクイニン (18錠/日) を2カ月以上内服させ, 末梢血中のnatural killer (NK) 細胞活性とIFN-γレベルを測定した。その結果, 健常人のNK活性は49.6±7.50から58.4±7.32と有意 (p<0.05) に上昇した。しかし, IFN-γレベルは不変であった。一方, MM及びATLの患者では強力な化学療法と疾患自体による免疫力低下が起こると予測されたにもかかわらず, NK活性の顕著な低下はみられなかった。両者ともIFN-γレベルは初めから測定限界以下であった。以上の結果から, ヨクイニンが健常人ではNK活性を高めることより, 疣贅の病巣部位に免疫反応を惹起させ消退させていることが推察された。また担癌患者へのヨクイニン投与ではNK活性の低下をある程度防御し, ヨクイニンが癌治療補助への有用な薬剤である可能性を示唆すると考えた。
著者
名嘉真 武男
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.242-245, 1979-04-01 (Released:2012-03-22)
被引用文献数
2 2

著者らは昭和48年1月から昭和53年8月までの6年8ヵ月間の皮膚カンジダ症1727例について病型分類をおこなつた。ステロイド外用剤ともつとも関係が深いと考えられる乳児寄生菌性紅斑とカンジダ性間擦疹が多く, とくに乳児寄生菌性紅斑ではステロイド外用に起因する汎発型がしばしば観察されるほか口囲カンジダ症, カンジダ性毛包炎, 口唇カンジダ症が少数ながら散見されるようになつた。またステロイド外用の既往のあるものが乳児寄生菌性紅斑で96%, カンジダ性間擦疹で83%, さらに他疾患とくにステロイド外用を行なつている口囲, 肛囲, 間擦部の病変にカンジダ症が続発している症例が多く, また乳児カンジダ症と入浴との関係が深いことをしめした。試験管内実験ではデキサメサゾン, ベタメサゾン添加サブロー培地ではCandida albicansの増殖は促進されるが, 非ステロイド抗炎症剤のbufexamacはC. albicansの増殖曲線にはなんらの影響もあたえないことをしめした。臨床的にもステロイド外用を受けた皮膚カンジダ症の病巣は汎発化の傾向をとり多数の衛星状に点在する丘疹, 膿疱が特徴的な所見であることをスライドで供覧した。
著者
中川 浩一 東田 理恵 夏秋 優
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.489-490, 2022-12-01 (Released:2023-02-28)
参考文献数
3

患者:56 歳,女性主訴:右手背の色素斑現病歴:就寝中に何か右手がざわざわする感覚で目が覚めた。見るとカメムシが手の上にいたので,あわてて左手でカメムシを振り払った。カメムシは捕獲して家のベランダに放った。翌日になって淡い橙色の色素斑が手にみられたので受診した。現症:右手背に,カメムシの形に類似した淡い橙色の色素斑がくっきり残っていた(図 1 )。かゆみや痛みはなかった。周囲に炎症所見はなかった。カメムシ:患者に捕獲したカメムシの形状を,記憶をもとに絵を書いてもらった。本邦では普通種のクサギカメムシに似ていた(図 2 a)。診断と経過:患者の証言やカメムシの絵,色素斑の形状からカメムシ皮膚炎と診断した。色素斑は手洗いなどでは消えなかったが,2 週間ほどで自然に消退していた。この間,かゆみや痛みはなく,色素斑のみであった。
著者
片山 一朗 濱崎 洋一郎 有馬 優子 天満 美輪 前田 亜紀 野村 昌代 武石 恵美子 山本 雅一
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.648-654, 2000-10-01 (Released:2010-09-02)
参考文献数
12

シェーグレン症候群患者15名,膠原病患者9名,対照皮膚疾患患者14名において更年期症状と原疾患との関連性を検討した。非閉経群では膠原病疾患,皮膚疾患患者共にその更年期症状数は3前後であったが,シェーグレン症候群患者では7と倍以上の陽性数であり,統計的にも有意差が見られた。閉経群ではシェーグレン症候群で8.5とやや高い傾向が見られたが他群との有意差は見られなかった。更年期症状のうち,顔が火照る,足が冷える,汗をかきやすい,手足が痺れるなどの自律神経系ないし循環障害に基づく症状は非閉経シェーグレン症候群患者では80%近くに見られた。閉経群でもこれらの症状は高頻度に見られたが皮膚疾患群での陽性頻度と差は見られず,シェーグレン症候群で閉経前より更年期症状に類似した症状が見られるものと考えられた。閉経前のシェーグレン症候群患者では凍瘡(約80%)と眼の乾燥感(約50%)が多く見られたことより,更年期症状を主訴とする非閉経患者ではこれらの症状はシェーグレン症候群の存在を考える上で重要と考えられた。皮膚温の測定では冷水誘発前に健常人コントロールより3℃以上皮膚温の低下が見られた患者は閉経前,後いずれにおいてもシェーグレン症候群において多く,対照では一例も見られなかった事より皮膚温の測定は更年期症状を訴える患者におけるシェーグレン症候群患者のスクリーニングに有用であると考えられた。冷水負荷後の皮膚温回復時間はシェーグレン症候群,膠原病患者いずれも15分程度とその遷延化が見られた。
著者
上野 彩夏 千貫 祐子 森田 栄伸
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.407-409, 2022-10-01 (Released:2022-11-30)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

【背景】α-Gal syndrome は,マダニ咬傷によってマダニ唾液腺中の galactose-α-1,3-galactose(α-Gal)に感作された患者が,獣肉の α-Gal に対してアレルギーを発症する疾患である。α-Gal syndrome 患者は哺乳類肉の他,抗悪性腫瘍薬のセツキシマブやカレイ魚卵にもアレルギーを生じる。対処法として,感作原因であるマダニ咬傷回避の指導が重要である。【目的】マダニ咬傷回避の指導による α-Gal syndrome 患者の予後を解析する。【方法】α-Gal syndrome 患者 13 例(初診時年齢 38~81 歳,平均 66.8 歳,男性 8 例,女性 5 例)について,診断と同時にマダニ咬傷回避の指導を行い,その後定期的に牛肉特異的 IgE 値を測定し,臨床的予後を検討した。【結果】13 例中 9 例が,定期的な経過観察中に牛肉特異的 IgE 値が陰性化した(マダニ咬傷回避の指導開始から牛肉特異的 IgE 陰性化までの期間 11~78 カ月,平均 41.1 カ月)。このうち 5 例が獣肉全般の摂取が可能となり,2 例が豚肉のみ摂取可能となり,2 例が恐怖心から獣肉摂取を回避している。【結論】α-Gal syndrome はマダニ咬傷回避の指導によって多くが治り得る。ほとんどの患者がマダニ咬傷には気付いていないため,日常生活上の徹底的な回避の指導が重要と考える。
著者
橋壁 道雄 大塚 俊 原 典昭 山蔭 明生 山崎 雙次
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.296-302, 2001-06-01 (Released:2010-09-02)
参考文献数
23

当科における全身性強皮症(以下SSc)患者62例に閉口時および最大開口時に顎関節単純X線検査を行い,関節可動域を見ることにより開口障害の有無について検討を行い,SSc 62例中24例(38.7%)に開口障害を認めた。病型別,検査所見などにっいては,diffuse type,抗Topoisomerase I抗体(以下Topo I)陽性例,開口度40mm未満の症例,橋本病合併例に有意に開口障害を伴うことが多く,また,pitting scar(+)例に開口障害を伴う割合が高い傾向がみられた。開口障害(+)例は開口障害(-)例に比べ有意に顔面のスキンスコアが高値であり,トータルスキンスコア高値,罹病期間長期,血漿エンドセリン高値,血清トロンボモジュリンが高値の傾向であった。SSc患者に顎関節単純X線検査を行うことは,関節可動域や下顎頭の形態変化を観察でき,SScの重症度を評価する上で有用な方法であると思われた。
著者
藤川 愛咲子 竹尾 直子 中田 京子 安西 三郎 福田 晴香 岡田 憲広 竹中 隆一 坂本 照夫 米津 圭佑 油布 邦夫 波多野 豊
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.99-102, 2020-04-01 (Released:2020-06-05)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

山間部在住の 74 歳,男性。猟犬の飼育歴があり,獣肉アレルギーの既往はない。1 年前,鼠径部のマダニ刺症後に鼠径から大腿部にかけて瘙痒性皮疹を生じ,マダニ脱落後に自然消退した。4 月,草刈り後に下肢に瘙痒性皮疹が出現し全身性に拡大した。腹部にマダニを発見し,自己除去した直後に呼吸困難感,胸痛が出現し救急搬送された。1 カ月後,陰囊部の瘙痒を自覚し同部にマダニを発見し,搔破にてマダニが脱落した直後に全身性の瘙痒,呼吸困難,胸痛を自覚した。Galactose-α-1,3-galactos(eα-Gal)特異的 IgE 抗体は class 2 であり,いずれのエピソードもマダニアナフィラキシーと診断された。自験例は自己除去や搔破などのマダニへの刺激により,唾液中の α-Gal が大量に皮内に注入されたことで発症したと考えられ,マダニアナフィラキシーの既往のある患者にはマダニ刺症時にマダニを指でつまむ,引っ張るなどの刺激を加えないことの啓発が必要と思われた。
著者
馬場 まゆみ
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.196-200, 2019-06-01 (Released:2019-08-06)
参考文献数
26

奄美大島には Leptoconops nipponensis Tokunaga(トクナガクロヌカカ)の亜種である Leptoconops nipponensis oshimaensis が生息しており,毎年春には吸血被害に遭い強い痒みを訴える患者の受診が増える。2011 年 4 月 18 日から 2018 年 5 月 31 日までの 8 年間に当科を受診し,医療記録をもとにヌカカ刺症と診断した患者 64 例について,①年齢,②性別,③受診した月,④被害にあった場所,⑤受傷部位,⑥治療内容,⑦各年毎の患者数,⑧加害昆虫の同定,の 8 項目について検討した。結果として,①患者の年齢は 50∼79 歳が 73%を占めた,②患者の性別は男性 14 例,女性 50 例で,男女比は 1:3.6 で女性の方が多かった,③患者が受診した月は 4 月から 5 月前半に集中していた,④場所はほとんどが海岸で刺されていた,⑤受傷部位は頚部,衣類で覆われた前胸部や上背部が多くを占めていた,⑥治療を行った 42 例(66%)の症例でステロイド内服薬を処方した,⑦各年毎の受診者は 2011 年から 2016 年までは 7 例以下であったが,2017 年に 15 例,2018 年に 21 例で,この 2 年間で半数以上を占めていた,⑧加害昆虫は,その形態的特徴からクロヌカカと同定した,などの特徴がみられた。
著者
高橋 祥子
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.141-144, 2001-04-01 (Released:2010-09-02)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

28歳,女性。化粧品による接触皮膚炎を生じ,半年後異なる化粧品を使用しても再度接触皮膚炎を生じた。接触皮膚炎の度に化粧品のパッチテストを行い,2度とも数種の化粧品において陽性を呈した。化粧品メーカーの協力で,陽性であったクリームについて成分パッチテストを施行したところ,1,3-ブチレングリコール(以下,1,3-BG)で陽性を呈した。検索した結果,パッチテストで陽性を呈していた化粧品には全て1,3-BGが含有されていた。また,自験例においては同成分の接触皮膚炎の最低惹起濃度は0.1%aq.であった。1,3-BGを含有しない化粧品の使用により皮疹の再燃はない。1,3-BGはその防腐効果と適度な保湿性により年々需要が伸びている保湿剤であり,化粧品には5~10%以上の濃度で含有されていることが多い。多種の化粧品で接触皮膚炎を起こしている可能性のある時は,稀ではあるがL3-BGによる接触皮膚炎を考える必要がある。
著者
中山 英俊 中村 佐和子 島雄 周平 石原 政彦 木村 秀一郎
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.542-544, 1993-06-01 (Released:2011-07-21)
参考文献数
5

帯状疱疹患者27名(外来11名, 入院16名)に対しアシクロビルを投与し, 帯状疱疹後神経痛に対する治療効果について検討した。外来患者にはアシクロビル500mgの1日1回点滴静注を, 入院患者には250mg/回, 1日3回の点滴静注を行った。発症後6ヵ月後に疼痛が残存している症例は外来18.2%(2/11名), 入院31.3%(5/16名)であり, 総合すると25.9%(7/27名)であり, すべて60歳以上の症例であった。疼痛の程度としては弱い痛みが続くもの1名, 弱い痛みが時々あるもの6名と軽度であった。今回の結果からはアシクロビルは帯状疱疹後神経痛の発症率を下げることは困難であるが, 疼痛の軽症化という点からは有効な薬剤であると考えられた。
著者
御子柴 甫 武井 峯男 高瀬 吉雄 二條 貞子 下里 文子 野本 昭三
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.1101-1104, 1985-12-01 (Released:2012-03-15)
参考文献数
6
被引用文献数
14 8

トラネキサム酸(TA)内服による肝斑の治療を報告した。40例にTA1∼1.5g/日投与したところ著効9例, 有効24例, やや有効5例であり無効は2例のみであつた。また効果発現までの期間が4週間以内の例が33例あり比較的短期間のうちに臨床効果をあらわした。肝斑に対する内服療法として, TAの投与は最初に試みられるべき治療法と考えた。試験管内においてTAはメラニン生成を阻害した。しかしTAが肝斑に対して有効な理由にはなお不明の点があり, 肝斑の発症に局所線溶活性(plasminogen-plasmin)が関与している可能性を指摘した。
著者
御塚 加奈子 尾形 美穂 井上 卓也 中房 淳司 三砂 範幸 成澤 寛
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.259-262, 2007 (Released:2007-07-06)
参考文献数
13

70歳,男性。初診の4ヵ月前より背部にそう痒を伴う紅斑が出現した。膝関節,手背にも紅斑が拡大し,下肢の筋力低下も伴うようになった。臨床所見及び病理組織学的所見より皮膚筋炎と診断した。初診時血液検査にて汎血球減少と異型リンパ球を認めたため,造血器悪性腫瘍を疑い骨髄穿刺を施行し,急性骨髄性白血病と診断した。皮膚筋炎に悪性腫瘍を合併することが多いことは知られているが,急性骨髄性白血病を合併する症例は非常に稀であり,国内外併せて自験例を含め3例のみであった。悪性腫瘍を合併した皮膚筋炎について若干の考察を加えた。
著者
末永 義則
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.230-236, 1979-04-01 (Released:2012-03-22)
参考文献数
17
被引用文献数
1

白癬にたいするステロイドの影響を臨床例をもとに報告した。白癬病巣はステロイドによつて, 初期には一過性に炎症症状が減退するが, 拡大し, 非定型的となる。時には深在性白癬となる例もある。報告した深在性白癬は白癬性毛瘡3例, チェルズス禿瘡1例, 白癬性肉芽腫1例であり, 組織学的に白癬性毛瘡, チェルズス禿瘡では毛嚢内に, 白癬性肉芽腫では真皮内に豊富な菌要素がみられた。