著者
増田 亜希子 伊東 孝通 和田 麻衣子 日高 らん 古江 増隆
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.353-355, 2016-08-01 (Released:2016-12-15)
参考文献数
8

27 歳,女性。小児期よりアトピー性皮膚炎に罹患していた。初診の 6 年前より夫の精液付着部位に蕁麻疹と瘙痒を認めた。その後,避妊具なしで性交した際に全身に蕁麻疹を認め,呼吸困難も出現した。同様のエピソードが過去 2 回あった。避妊具を使用した性交渉では同様の症状を生じたことはなかった。近医を受診し,精漿アレルギーの疑いで当科を紹介され受診した。10 倍から1000 倍に希釈した夫の精漿を用いたプリックテストでは,検査した全ての濃度で紅斑と膨疹が出現した。本疾患は精漿中に存在する前立腺由来の糖蛋白に対するⅠ型アレルギー反応であると考えられている。精漿アレルギーの患者の半数以上にアトピー性皮膚炎の既往があると報告されており,皮膚バリア機能の障害による経皮感作が発症に重要な役割を担っていることが推察される。本疾患は皮膚科領域での報告は比較的稀であるが,アトピー性皮膚炎関連アレルギー疾患の一つとして位置づけることができると考え報告した。
著者
「間宮」アロエ軟膏臨床評価研究班
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.919-926, 1987-10-01 (Released:2012-03-10)
参考文献数
19

5施設が協力して, 熱傷49例, 凍瘡67例, 小規模の創傷11例, 皸裂や乾皮症を中心とした湿疹·皮膚炎群110例, 白癬の足の皸裂など皮膚感染症11例, 合計248例の皮膚疾患に, 2.5%「間宮」アロエ軟膏(以下アロエ軟膏と略す)を1日1回貼付して, その効果, 有用率, 副作用を検討した。その結果, I∼III度, 面積10%以下の熱傷において有効率95.9%, 有用率98.0%, 凍瘡においては有効率86.8%, 有用率92.5%と満足すべき成果をえた。とくに熱傷では平均日数11.7日できれいな創のなおり方を示し, よい適応と考えられた。凍瘡の治療にはより長い日数を要したが, 白色ワセリンとの優劣比較で13対0ですぐれ(同等は31例), t検定で有意差があつた。創傷と皮膚感染症の群では, 有効率それぞれ72.8%と81.8%, 有用率は両者とも90.9%と同じ値を示し, 十分に有用であると考えられた。これら4疾患群の全症例138例において, アロエ軟膏外用の副作用は1例もみられなかつた。これに対して, 湿疹·皮膚炎群の皸裂や乾皮症に用いた場合は, 効果は比較的低かつたが, それでも有効率55.5%, 有用率77.3%で, 不適合による副作用(皮膚炎)は3例にみられた。アロエ軟膏はパラベン, 抗生物質, ステロイドを含まないが, 有効率, 有用率の高い点は大きなメリットと思われる。
著者
池田 勇 小野 友道
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.522-524, 2001-10-01 (Released:2010-09-02)
参考文献数
6

肝細胞癌で加療中の79歳男性患者の右示指先端に水疱形成を伴う硬い腫瘤が生じ,生検により転移性皮膚癌であることが判明した。本転移癌に対して使い捨てカイロを利用した局所温熱療法を試みた。腫瘍は治療に反応して縮小し,約2ヵ月の経過で消失した。内臓悪性腫瘍の指尖部への転移は稀であるが,温熱療法の良い適応となる可能性がある。使い捨てカイロの局所加温効果にっいてサーモグラフィを用いて検討した。
著者
森 槙子 平島 徳幸 大津 正和 古場 慎一 藤﨑 亜紀 藤﨑 伸太 三砂 範幸 成澤 寛
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.555-561, 2014-12-01 (Released:2015-04-16)
参考文献数
18

われわれは,2005 年から 2013 年の 8 年間に 5 例の aquagenic palmoplantar keratoderma (以下 APK) を経験した。全症例が 3 歳から 17 歳までの若年女性であった。入浴時や運動時などの手掌や足底の過度な浸軟という主訴や問診をもとに手部浸水試験を施行し,「hand in the bucket」 徴候を認め APK と診断した。診察時には特に症状を認めない例や,一見手湿疹や掌蹠角化症 (palmoplantar keratoderma) 様の症状を呈する例を経験した。症例 1,2 では皮膚生検を施行し,病理組織学的に過角化と角層内汗管の開大を呈していた。全例,塩化アルミニウム溶液の外用にて加療したところ,1 例では改善に乏しかったが,他 4 例では効果を認めた。掌蹠における難治性の湿疹性病変や過角化を有する若年の患者をみた際には病変部が浸軟しやすいかを確認し,わずかにでも APK を疑う場合,積極的に手部浸水試験を行うことが望ましい。
著者
楠 俊雄 穂積 香織 小倉 達也 小林 巧 重田 文弥
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.70-78, 2009-02-01 (Released:2009-04-21)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

イトラコナゾール(イトリゾール®カプセル50)は,ベルギー ヤンセン社で合成されたトリアゾール系抗真菌剤である。本邦では2004年2月に爪白癬に対し,本剤400mg/日を1週間服薬した後,3週間休薬するサイクルを3回繰り返す「パルス療法」が承認され,この承認に伴い,爪白癬の治療を受けた患者2000例を対象とした市販後調査を実施し,パルス療法の有効性及び安全性について検討を行った。有効性については,有効性解析対象症例1051例における全般改善度は84.3%であった。また,感染部位,初発・再発,肥厚度,混濁比等,爪白癬の状態や重症度によらず,いずれも80%以上の有効率を示すことが確認された。一方,爪白癬治療の継続状況を検討したところ,治療完結率評価対象症例2394例において,3サイクル分のイトラコナゾール処方が完結した患者の割合は93.0%であった。安全性については,安全性解析対象症例2532例中288例(11.4%)に副作用が認められたが,主な副作用は,既知で軽微な臨床検査値異常であった。以上より,イトリゾール®カプセル50パルス療法は,爪白癬に対して優れた有効性ならびに良好な安全性を有することが確認された。
著者
中川 秀己 川島 眞
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.553-565, 2006 (Released:2006-11-09)
参考文献数
15
被引用文献数
4 4

小児(7~15歳)のアトピー性皮膚炎に対する塩酸フェキソフェナジンの有効性および安全性を検討するため,フマル酸ケトチフェンドライシロップを対照薬とした多施設共同二重盲検無作為化並行群間比較試験を実施した。各群の用法・用量は,塩酸フェキソフェナジン群(以下,Fexo群)では,1回30mg錠(7~11歳),60mg錠(12~15歳)を1日2回,フマル酸ケトチフェンドライシロップ群(以下,Keto群)では,1g1包(ケトチフェン含有量1mg)を1日2回とし,4週間経口投与した。主要評価項目は,かゆみ日誌により評価した投与前後の平均かゆみスコア変化量とした。本治験には190例が登録され,治験薬を1回でも服薬した174例を安全性解析対象集団とし,そのうち治験計画適合集団(PPS)である162例を有効性解析対象集団とした(Fexo群77例,Keto群85例)。その結果,投与前スコアおよび年齢層を共変量とした共分散分析モデルを用いた両群の母平均の差の点推定値は0.050,95%片側信頼限界上限は0.185で,95%片側信頼区間は非劣性限界値0.37を含まなかったことから,Fexo群はKeto群に対して非劣性であることが検証された。投与前後の平均かゆみスコア変化量の平均値および95%信頼区間は,Fexo群-0.50[-0.61,-0.38],Keto群-0.58[-0.70,-0.45]であった。また,副次評価項目であるかゆみスコアの経時推移(週ごとおよび日ごと),皮疹の状態,患児の印象においても,主要評価項目の結果を支持するものであった。安全性について,有害事象発現率は,Fexo群83例中25例(30.1%),Keto群91例中29例(31.9%)で,両群間に有意差は認められなかった(p=0.7452,Fisherの直接確率検定)。主な有害事象は鼻咽頭炎,傾眠であった。副作用発現率においても両群間に有意差は認められず(p=0.6487,Fisherの直接確率検定),鎮静作用に関する副作用は,Fexo群83例中3例(3.6%),Keto群91例中4例(4.4%)と,同様に両群間で有意差は認められなかった(p=1.0000,Fisherの直接確率検定)。鎮静作用に関する有害事象は全て傾眠であった。以上より,塩酸フェキソフェナジンの有効性は,フマル酸ケトチフェンドライシロップに劣ることなくアトピー性皮膚炎に伴うそう痒を改善し,安全性についても臨床上問題となる有害事象が認められなかったことから,本剤は小児のアトピー性皮膚炎のそう痒に対して有用な薬剤であると考えられた。
著者
東 美智子 東 江里夏 宇谷 厚志
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.38-40, 2017

<p>47 歳,男性。家族歴や既往歴に特記すべき事項なし。2010 年頃より野菜ジュースを飲み始め,2011 年より毎日 900 ml 以上摂取するようになった。2012 年より手掌や足底の皮膚の黄染を認めた。初診時上下眼瞼を含む顔面にも黄染がみられたが,眼球結膜に黄染はなく,肝機能検査は正常であった。カロチノイドを多量に含むジュースの大量摂取による柑皮症と考えた。柑皮症は主に手掌や足底に皮膚の黄染を来すが,皮下脂肪組織の多い顔面に及ぶこともある。柑皮症は皮膚の黄染が主たる症状で全身症状はないことが多いが,糖尿病,甲状腺機能低下,腎機能障害などの内科疾患や神経性食欲不振症に合併することが知られており,注意が必要である。</p>
著者
平松 正浩 清野 みき 長瀬 彰夫 新井 達 向井 秀樹
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.346-349, 1998-06-01 (Released:2010-10-15)
参考文献数
14
被引用文献数
2

難治性または重症のアトピー性皮膚炎患者の治療法として我々は塩水療法をおこなってきたが, これらの使用経験から本療法に止痒効果が期待できた。そこで, この止痒効果の有無を確認する目的で, 同程度の皮疹を有する前腕部を用いて, 塩水と真水で左右比較試験をおこなった。痒みの評価にはvisual analogue scale method(VAS法)を用いた。10段階評価でおこなった治療前の痒みのスコアは5.05±1.53に対し, 治療4週後のスコアは塩水側が2.79±2.35, 真水側が3.90±2.20であった。両者とも治療前に比べ統計学的に有意にスコアは低下したが, 両者間には2週, 4週目ともに明らかな有意差が認められた。さらに本療法は臨床像から急性期の発疹に効果が高く, 慢性化した病巣ほど有効率が低下する傾向がみられた。以上の結果から本療法は洗浄効果に加え止痒効果が期待でき, 痒みのコントロールしにくい急性期の発疹に対して補助療法として試みる価値があると考えた。
著者
宮﨑 和廣
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.47-49, 2019-02-01 (Released:2019-04-25)
参考文献数
3

今回,8 歳女児の足底疣贅にナスの皮密封貼付療法を行い,患児の母親がスマートフォン(以下スマホ)写真で経過を追い著者に提供してくれた。説得力のある画像をこのまま埋もれさせるのは惜しく,報告するのは引退前の臨床医の義務と考えた。 なお,本療法の特徴は痛くない上,治療中,治療後の再燃がないことである。また,過疎地で,遠方からの通院自体が難しい患者には今回のように「スマホでの経過観察,指導」ができるのも本療法の利点の一つである。
著者
佐藤 恵実子 今山 修平 佐藤 裕
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.613-621, 1985-08-01 (Released:2012-03-15)
参考文献数
24

71才男子。多彩な皮膚症状を呈し, 心不全で急死した原発性全身性アミロイドーシスの1例を報告した。剖検により, 全身の諸臓器にアミロイドの沈着が認められた。皮疹部の光顕所見では, ダイロン, コンゴ·レツド染色で, アミロイドの沈着を真皮に認め, 血管周囲にもアミロイドの沈着が認められた。電顕所見では, 表皮基底膜直下から, 真皮にかけてアミロイド塊が認められ, その間を線維芽細胞が突起を伸ばしていた。一部, 線維芽細胞の突起の間に, 正常なコラーゲン線維が残存しているのが観察された。また, 血管内皮細胞の基底膜の間質側に密接して, アミロイド細線維が認められており, これら光顕·電顕所見から, 血管内皮細胞を透過したアミロイドの前駆蛋白が, 何らかの機序でアミロイド細線維となり, 組織間液の流れにのつて拡散し, 線維芽細胞, 最終的には表皮基底膜にさえぎられて蓄積していつたものと考えた。
著者
宿輪 哲生 陳 文雅 小林 亜紀子
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.477-482, 2002-08-01 (Released:2010-09-02)
参考文献数
37
被引用文献数
3 2

1999年1月から2000年12月までに佐世保市立総合病院皮膚科を受診した帯状疱疹患者について統計的観察を行った。男119例,女157例,計276例で外来新患総数の4.1%を占めた。年齢別では60歳台が最も多く,20歳台に小さなピークがみられた。76.8%が基礎疾患を有し,疾患別では悪性腫瘍が最も多かった。発症3週前までの疲労を認めた患者は55.8%にみられ,20,30歳台では80%以上を占めた。発生部位は躯幹上部,頭頚部,躯幹下部の順に多く,発症より初診までの平均期間は6.0日であった。疼痛の改善率はプレドニゾロン81.6%,アミトリプティリン80.3%,柴苓湯76.8%,ロフラゼプ酸エチル52.6%だった。皮疹の改善率はトレチノイントコフェリル軟膏93.2%,スプロフェン軟膏83.3%であった。発症から皮疹消失までの平均期間は18.4日,疼痛消失までの期間は39.0日だった。発症後3日以内に抗ウイルス剤を投与された群はそれ以降の投与群に比べ皮疹及び疼痛消失までの期間が有意に短縮していた。帯状疱疹の再罹患例は22例(8.0%)であった。
著者
石井 則久 中嶋 弘 加藤 安彦 南 陸彦
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.804-811, 1998-12-01 (Released:2010-10-15)
参考文献数
27

蕁麻疹23例, 湿疹·皮膚炎42例を対象に臨床的検討と併せてアステミゾール(ヒスマナール®錠)のサイトカイン産生に対する影響を検討した。そう痒の投与前重症度は, 蕁麻疹の18例(78.3%), 湿疹·皮膚炎の34例(81.0%)が「中等度の痒み」以上を呈していたが, 終了時には蕁麻疹2例(8.7%), 湿疹·皮膚炎4例(9.5%)に改善した。また「症状なし」は, 蕁麻疹10例(43.5%), 湿疹·皮膚炎5例(11.9%)であった。全般改善度は, 「中等度改善」以上で, 蕁麻疹73.9%, 湿疹·皮膚炎64.3%であった。好酸球数, 血清総IgE値およびT細胞中サイトカインの推移については, 慢性蕁麻疹とアトピー性皮膚炎について検討した。慢性蕁麻疹では, いずれも投与前後で有意な変動は認められなかった。アトピー性皮膚炎では, 血清総IgE値に有意な変動を観察しえなかったが, 好酸球数においては有意な減少が認められた。また, T細胞中サイトカインについては, 投与前後で有意な変動は認められなかった。しかし, 治療前値を健常者と比較すると, ヒスマナール®錠投与により改善度の低い群ではIFN-γ(Th1)が有意に少なく, 改善度の高い群ではIL-4(Th2)が有意に少なかった。さらに改善度の高い群では, IFN-γ/IL-4比は有意に大きかった。このことから, アトピー性皮膚炎では, 健常者と比較して治療前値がTh2優位な場合は高い改善度は期待できず, またTh1が健常者と差がない時は高い改善度が得られる可能性がある。従ってT細胞中のサイトカインの測定は, 薬物治療の効果予測に利用できると考えられた。以上から, ヒスマナール®錠は, 蕁麻疹, 湿疹·皮膚炎に対し有効な抗アレルギー剤と考えられるが, サイトカインに対する影響については, 今後さらに検討を要すると思われた。
著者
高井 彩也華 安村 涼 山口 さやか 山本 雄一 高橋 健造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.455-458, 2017

<p>29 歳,男性。2009 年 12 月,マラソン大会の出走直前に膨疹,悪心,嘔吐が出現し,近医にてアナフィラキシーと診断された。以後,2 カ月間で5 回,腹痛,膨疹,悪心,嘔吐,時に血圧低下などの,蕁麻疹,アナフィラキシー症状を繰り返した。4 回目と 5 回目の症状の出現前日,夕食に納豆を摂取していたため,納豆による遅発性アナフィラキシーを疑った。皮膚プリック-プリックテストでは納豆が陽性であった。納豆摂取誘発試験では摂取 6 時間後に血圧低下を伴う咽頭違和感,膨疹が出現し,納豆によるアナフィラキシーと診断した。納豆摂取を避けてから,現在まで症状はみられていない。</p>
著者
前田 学 守屋 智枝 高橋 智子 脇田 賢治
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.330-334, 2014-08-01 (Released:2014-10-09)
参考文献数
11

65 歳,男性 (無職) 。ツーバイフォー築 10~11 年の居間床中央に 2013 年 6 月初旬から 3 カ月用カートリッジ交換後の電池式殺虫剤 (ピレスロイド系) を必要時に作動させた。同月下旬昼,腋窩に浮腫性紅斑が出現し,翌日未明,身体痛,1 分間意識消失,下痢・脱糞のため,翌朝 3 時,当院救急部に搬送された。 各種検査で異常がなかったため,一時帰宅した。同室で朝 6 時過ぎに同様の意識消失が出現し,7 時過ぎに再度救急部に搬送・入院した。同日 16 時,皮膚科診察時,全身に蕁麻疹様紅斑が出現し,手足の冷感と著明なチアノーゼと共に 3 回目の発作 (収縮期血圧 95 mmHg) が出現した。皮疹は初診の翌日に寛解し,救急搬送時からの肝機能異常は著明に改善したが,CRP は一時的に 4.76 mg/dl 上昇後,入院 4 日で検査値もほぼ正常化し,退院した。ピレスロイド剤は,中毒症状出現時,軽症では全身倦怠感や筋攣縮,運動失調,中等度症では興奮,手足の振戦,唾液分泌過多,重症では間代性痙攣,呼吸困難,失禁の出現が報告されているので,今回の発作はてんかんや食物アレルギーおよび末梢循環不全や冷え性の既往なく,各種検査でも直接的な原因の見当らないことより,密閉した居間で使用した電池式殺虫剤による中毒を疑った。
著者
工藤 和浩 吉村 達雄 田上 八朗
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.566-571, 1995-06-01 (Released:2011-07-20)
参考文献数
17
被引用文献数
2 2

2%ケトコナゾールクリームで脂漏性皮膚炎を長期治療したときの有効性, 安全性および有用性を検討した。外用方法は適量を被験部位に1日2回単純塗擦することとした。治験を実施した全7症例の最終全般改善度は, 治癒4例, 著明改善1例, 改善1例, 不変1例であり高い改善率(6/7, 86%)を示した。治療期間中, 副作用の発現や臨床検査値の異常変動は認められず, 本剤の安全性の高さを確認した。今回の報告症例は大学病院という施設の関係上少数ではあるが, 2%ケトコナゾールクリームは脂漏性皮膚炎の治療に有用な薬剤になり得るとの印象を得た。
著者
森田 栄伸 高橋 仁 金子 栄 千貫 祐子 東儀 君子 髙垣 謙二 辻野 佳雄 三原 祐子 石飛 朋子 福代 新治 山田 義貴
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.607-615, 2014-12-01 (Released:2015-04-16)
参考文献数
11

島根県下 5 医療施設を受診した慢性蕁麻疹患者のうち,フェキソフェナジン塩酸塩の通常量 (120 mg/day) の服用にて効果不十分であった 24 例の患者を対象に,フェキソフェナジン塩酸塩の増量 (240 mg/day) 群 (フェキソフェナジン増量群:12 例) あるいはオロパタジン塩酸塩の通常量 (10 mg/day) への変更群 (オロパタジン変更群:12 例) の 2 群に無作為に割付,その後 4 週間の臨床症状を蕁麻疹重症度スコア,蕁麻疹活動性スコア,改変した蕁麻疹活動性スコア (modified Urticaria Activity Score : mUAS) により解析した。蕁麻疹重症度スコアは,フェキソフェナジン増量群では最終評価時に有意なスコア低下を認め,オロパタジン変更群では割付 4 週後および最終評価時に有意な低下を認めた。mUAS は,フェキソフェナジン増量群で 0∼1 週,2∼3 週,3∼4 週,最終評価時において有意な低下を認め,オロパタジン変更群で 1∼2 週においてのみ有意な低下を認めた。以上の結果からフェキソフェナジン通常量投与で効果不十分な慢性蕁麻疹に対してフェキソフェナジン倍量の増量投与は症状の改善に有効であり,さらにオロパタジン通常量への変更も効果はやや劣るものの有効であると結論した。フェキソフェナジンの倍量投与に要する費用の観点からは,抗ヒスタミン作用の高いオロパタジンへの変更も選択肢となり得ることが示唆される。(本論文は第 76巻4号〔2014年8月号〕p.p.372-380 に掲載されたものを一部訂正し,再掲載したものである。訂正箇所は下線にて表示している。)
著者
塚本 克彦 柴垣 直孝 齋藤 敦 長田 厚 北村 玲子 今井 佳代子 樋泉 和子 島田 眞路
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.515-519, 1999-08-01 (Released:2010-10-14)
参考文献数
13
被引用文献数
4 5

ユーカリエキスを配合した入浴剤のアトピー性皮膚炎に対する有用性を検討するために, セラミド誘導体などの油性保湿剤を配合した入浴剤を対照とし, これにユーカリエキスを配合した入浴剤を用いて臨床試験を行った。対象はアトピー性皮膚炎患者31例(ユーカリエキス配合入浴剤使用群15例, 対照入浴剤使用群16例)で, 入浴剤を4週間使用してもらい, 2週間毎に診察した。その結果, 1. 皮膚所見に関しては, 「そう痒」, 「紅斑」, 「落屑」において両群とも有意な改善が認められたが, 両群間に有意差は認めなかった。2. 「全般改善度」, 「有用性」に関しては, ユーカリエキス配合入浴剤使用群の方が対照入浴剤使用群に比し優れた傾向が認められた。特に, 入浴剤を20回以上使用した患者においては, 「有用性」に関して, ユーカリエキス配合入浴剤使用群(13例)の方が対照入浴剤使用群(12例)に比し有意に優れていた。以上の結果より, ユーカリエキスを配合した入浴剤の使用は, アトピー性皮膚炎の治療において一つの有用な補助療法となる可能性が示唆された。
著者
三田 哲郎 安江 厚子 三田 一幸
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.730-733, 1987-08-01 (Released:2012-03-10)
参考文献数
12
被引用文献数
3 3

アトピー皮膚炎(ADと略)の環境因子であるダニ抗原やハウスダスト(HDと略)の除去が, AD患者の経過にいかなる影響を与えるかを検討した。HEPAフィルターを内蔵した空気清浄化装置を設置した病室(クリーンルーム)を使用し, IgE-RAST法にてダニもしくはHDのスコア3以上を示すAD患者を対象とした。2∼4週間の治療の結果, 全例において皮疹および自覚症状に改善が認められた。IgE(RIST法)値1万IU/ml以上の症例ではIgE(RIST法)値の低下も認められ, 退院後の長期寛解も観察された。IgE-RAST法におけるダニ, ハウスダストのスコアは治療前後で変動を認めなかつた。ダニもしくはHDがアレルゲンと考えられるようなADに対して, クリーンルーム入院治療は試みる価値のある治療法であると思われた。
著者
井上 雅子 徳野 貴子 加藤 りか 池田 政身
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.15-17, 2012-02-01 (Released:2012-04-16)
参考文献数
8

56歳,男性。硝酸運搬船で作業中に98%の硝酸で受傷,作業服と長靴を取るのに手間取り約10分後より流水で洗い流し,着岸まで約1時間風呂で水につかっていた。着岸後近医受診しワセリンを塗布され,約48時間後に当院を受診した。初診時,左上腕,両側臀部から大腿,両側下腿にかけて受傷部周囲に水疱形成がみられ,中心部は黒色から黄色の痂皮が付着したII度深層からIII度の化学熱傷,両側手掌は水疱を伴い黄色に変化した化学熱傷がみられた。血栓性静脈炎の既往があり,ワルファリンカリウム,アスピリンを内服していた。入院2日目より38℃から40℃の発熱,炎症反応高値であったので抗生剤投与を行った。発熱は4日後より治まり,内服中であったワルファリンカリウム,アスピリンを中止して入院10日目にデブリードマンおよび mesh skin graft 施行した。真皮深層まで壊死に陥っていたため,移植皮膚の定着が悪く再手術を必要とした。化学熱傷の治療では,速やかに長時間洗浄することと,可能な限り早期にデブリードマンを施行することが重要である。本症例では,硝酸の濃度が極めて高かったこと,着衣をとり流水で洗浄するまでに時間がかかったこと,当院受診までに約48時間経過していたこと,さらに抗凝固剤を内服していたためデブリードマンを施行する時期が遅れたことなど,様々な理由によって深い潰瘍を形成してしまい治療に難渋した。
著者
堀口 亜有未 宮城 拓也 山口 さやか 高橋 健造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.289-292, 2019

<p>80 歳,男性。約 4 カ月前から体幹四肢に瘙痒を伴わない浮腫性紅斑と皮膚の硬化,疼痛があり,当科を受診した。手足を除く上下肢に左右対称性に皮膚の硬化と皮膚表面に光沢があり,下肢には敷石状に凹凸があった。爪上皮出血点や後爪郭の血管拡張,レイノー症状はなかった。MRI T2 強調像で大腿二頭筋膜の肥厚と高信号があり,病理組織検査で筋膜の肥厚と筋膜に併走するように帯状の細胞浸潤があり好酸球性筋膜炎と診断した。プレドニゾロン(PSL)40 mg/日で治療を開始したが,PSL を漸減する過程でアルドラーゼ値の上昇があったためメトトレキサート(MTX)を併用した。以後,皮膚硬化は改善,アルドラーゼ値は低下し,PSL を漸減できた。現在まで MTX による副作用はない。ステロイド抵抗性の好酸球性筋膜炎において,MTX は有用であると考える。</p>