著者
星 玲奈 菊池 宏幸 町田 征己 高宮 朋子 小田切 優子 福島 教照 天笠 志保 林 俊夫 井上 茂
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
pp.2107, (Released:2021-07-10)

目的:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行前と流行中とで運動を実施する者の割合が変化したかを,性,年代,運動種目別に記述的に明らかにする。 方法:2020年7月に実施したインターネット調査による横断研究である。散歩,ストレッチ等14の運動種目について,調査時点(2020年6〜7月)及び1年前の同時期(2019年6〜7月)における実施の有無を思い出し法により比較した。統計解析は,両年における運動実施者の割合の差を,マクネマー検定により性・年代別に検討した。 結果:分析対象者は関東地方に在住の20〜70代の男女2155人であった。いずれかの運動種目を一つでも実施したと回答した者は,2019年は76.1%,2020年は78.8%であった(p<0.001)。実施者の割合が2019年に比べ2020年で高かった運動種目は「散歩・ウォーキング」,「ストレッチ」,「ラジオ体操」,「筋力トレーニング」等であり,一方,低かった種目は「屋外球技」,「水中運動」等であった。これらの傾向に性・年代別による違いは認められなかった。 結論:COVID-19流行下では流行前と比べて何らかの運動を実施している者の割合が高くなった可能性がある。運動種目別にはストレッチ等,個人が自宅や自宅周辺で行う種目で高くなる一方,施設内や集団で行う種目で低くなっていた。身体活動推進の観点から,自宅等で新たに運動を始めた人が流行後も継続して実施できるような支援が求められる。
著者
薫 一帆 井上 茂 高宮 朋子 町田 征己 小田切 優子 福島 教照 菊池 宏幸 天笠 志保 林 俊夫 齋藤 玲子
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
2021

<B>目的</B>:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行下に運動を実施するには,運動時にも感染症予防対策が必須である。しかし,運動時の個人の感染予防行動に関する研究は乏しい。本研究の目的は,主に自宅外で運動する運動習慣者における運動時の感染予防行動の実態を明らかにすることである。<BR><B>方法</B>:インターネット調査を用いた記述疫学研究を実施した。2020年2月に初回調査を実施した関東在住日本人2400名のうち,同年6月,7月に実施した追跡調査に回答した2149名において,運動場所,運動種目,運動時感染予防行動8項目を尋ね,運動場所や運動種目毎の感染予防行動の実施割合を算出した。<BR><B>結果</B>:運動習慣者は636名(29.6%),このうち自宅外で運動する者は431名(67.8%)であった。8項目中,運動を「体調が悪い時には行わない」は,屋内で運動する者で83.3%,屋外で91.5%であった。運動場所,運動種目によらず,「運動後は手を洗う」の実施割合が高く,「運動中のマスクやネックゲーターなどの着用」が低かった。「人との距離を保つ」は,むしろ屋外より屋内で低く,室内球技や武道等実施者で低い割合を示した。<BR><B>結論</B>:本研究の結果より,体調不良時の運動自粛の徹底,屋内運動実施時の飛沫感染予防策の実施等の課題が明らかになった。感染流行が長期化する中,運動時の感染予防行動について今後も普及啓発の必要がある。
著者
薫 一帆 高宮 朋子 町田 征己 小田切 優子 福島 教照 菊池 宏幸 天笠 志保 林 俊夫 齋藤 玲子 井上 茂
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
pp.2104, (Released:2021-04-21)

目的:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行下に運動を実施するには,運動時にも感染症予防対策が必須である。しかし,運動時の個人の感染予防行動に関する研究は乏しい。本研究の目的は,主に自宅外で運動する運動習慣者における運動時の感染予防行動の実態を明らかにすることである。 方法:インターネット調査を用いた記述疫学研究を実施した。2020年2月に初回調査を実施した関東在住日本人2400名のうち,同年6月,7月に実施した追跡調査に回答した2149名において,運動場所,運動種目,運動時感染予防行動8項目を尋ね,運動場所や運動種目毎の感染予防行動の実施割合を算出した。 結果:運動習慣者は636名(29.6%),このうち自宅外で運動する者は431名(67.8%)であった。8項目中,運動を「体調が悪い時には行わない」は,屋内で運動する者で83.3%,屋外で91.5%であった。運動場所,運動種目によらず,「運動後は手を洗う」の実施割合が高く,「運動中のマスクやネックゲーターなどの着用」が低かった。「人との距離を保つ」は,むしろ屋外より屋内で低く,室内球技や武道等実施者で低い割合を示した。 結論:本研究の結果より,体調不良時の運動自粛の徹底,屋内運動実施時の飛沫感染予防策の実施等の課題が明らかになった。感染流行が長期化する中,運動時の感染予防行動について今後も普及啓発の必要がある。
著者
桑原 恵介 難波 秀行 武田 典子 齋藤 義信 小熊 祐子 井上 茂
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
2021

当初,2020年9月8日から12日まで横浜で開催予定であった2020横浜スポーツ学術会議は,突如とした新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延に伴い,開催形式は対面からオンラインへと変わり,また,予定していたプログラムも変更あるいは中止となり,会期も変わるなど大きな影響を受けた。日本運動疫学会が準備を進めていたセッションも一度はすべて中止となったが,関係者の理解と協力を得て,新たに企画を立案し,公開講座という形でFiona Bull氏(世界保健機関ヘルスプロモーション部局身体活動部門長)と鈴木大地氏(スポーツ庁長官)による講演と対談を2020年9月9日に日本とスイスをリアルタイムにバーチャルでつなぐことで実現することができた。当日は300名以上の参加者があり,事前質問も含めてたくさんの質問をいただいたが,すべての質問に答えることができなかったことや,参加者間のディスカッションができなかったこともあり,翌日にオンラインで緊急討論会を開催した。本稿では,運動疫学研究の普及・促進活動の実践報告として,これらの開催までの経緯等を概観した上で,同講座から得られた知見等を基に,今後の展望について述べる。
著者
天笠 志保 荒神 裕之 門間 陽樹 鳥取 伸彬 井上 茂
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
2021

本研究では, 感染症の流行時, 特にSARS流行時に実施された身体活動研究を振り返った上で, 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下における身体活動研究の現状を明らかにした。 特に, 報告されている研究として主である身体活動の記述疫学的研究のレビューを行い, COVID-19の流行が身体活動量に与えた影響を明らかにした。スマートフォンのアプリケーションを用いた国際比較研究によると, COVID-19流行前と比較して, ロックダウンや外出制限下では最も歩数が低下していたが, 低下の程度は各国で異なった。 我が国では, 流行前の2月上旬と比較して, 4月の緊急事態宣言下に歩数がおよそ30%減少していた。また, COVID-19流行下で多く実施されたインターネット調査の結果によると, 座位行動時間が増加し, 中高強度の身体活動時間が減少したことが報告されている。 しかし, これらの研究はロックダウンや外出制限下における一時的な状況を示しているに過ぎず, 今後, 長期的な視点を持って, COVID-19の流行やそれに伴うライフスタイルの変化が日常の身体活動や身体活動の格差に与えた影響を明らかにしていく必要がある。また, インターネット調査やデバイスを用いた身体活動研究が浸透し, 今後さらなる研究が進むことが期待されるが, 対象者の代表性に留意する必要がある。
著者
奈良 隆章 木内 敦詞
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
pp.1909, (Released:2020-01-31)

目的:本研究の第一の目的は,大学新入生におけるライフスキル獲得水準の性別および専攻別の特徴を明らかにすることであった。第二の目的は,その結果を踏まえてよりよい体育授業の設計を展望することであった。方法:首都圏にある国立T大学の2015年秋学期開講必修科目「基礎体育」を履修した1,326名(男子745,女子581)を対象に,日常生活スキル尺度(島本・石井,2006)によるライフスキル調査を行った。この尺度は,対人スキル(親和性,リーダーシップ,感受性,対人マナー)と個人的スキル(計画性,自尊心,情報要約力,前向きな思考)の下位概念(下位因子)から構成される。ライフスキルの下位概念(下位因子)の各得点を,性×専攻の二要因分散分析によって解析した。結果:対人スキルは男子よりも女子が有意に高く,それは親和性と感受性の高さによるものであった。専攻別の特徴として,対人スキルと個人的スキルともに,社会・国際学を専攻する学生が最も高く,情報学を専攻する学生が最も低かった。これは,親和性とリーダーシップ,計画性の差異によるものであった。結論:大学新入生のライフスキルは,性別と専攻別でそれぞれ特徴のあることが明らかになった。これらを踏まえて,大学新入生へのよりよい体育授業の設計を展望した。
著者
廣野 準一 藁科 侑希 西田 智 津賀 裕喜 小田 桂吾 大垣 亮 鍋山 隆弘 向井 直樹
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.45-53, 2020

<p><b>目的</b>:高校と大学の剣道競技者を対象に競技に関連する疼痛を調査し,年代ごとの有症状況や年代間の違いについて,性差をふまえて検討した。</p><p><b>方法</b>:対象は,福岡県高等学校体育連盟剣道専門部に所属する高校9校327名,全国の学生剣道連盟に所属する大学10校431名の剣道部員とした。質問紙にて,疼痛経験の有無とその詳細,対象者の特徴や練習を調査した。疼痛の定義は,現在の所属に在籍してから質問紙記入時までの剣道部活動中に発症した痛みとした。</p><p><b>結果</b>:有効回答数は高校143名,大学272名であり,有効回答率は54.7%であった。各年代の疼痛有症率は,高校生で60.8%,大学生で33.8%であった。有症率は,大学より高校で,高校年代で男性より女性で有意に高かった。練習時間と頻度は,大学より高校で,練習時間は高校年代で男性より女性で有意に多かった。パフォーマンスに支障のある疼痛は82.4%で,そのうちの受診率は44.1%であった。急性疼痛は慢性疼痛の1/3 以下の有症件数であった。疼痛部位は,高校では足部/足趾,手関節,腰部/骨盤/仙骨,大学では下腿/アキレス腱,足部/足趾,腰部/骨盤/仙骨に多かった。</p><p><b>結論</b>:疼痛有症状況は年代や性別で異なり,練習時間や頻度が影響する可能性が考えられた。また,パフォーマンスに影響するほどの疼痛を抱えながらも,医療機関を受診しない者が多いという現状が示された。</p>
著者
熊谷 秋三 田中 茂穂 岸本 裕歩 内藤 義彦
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.90-103, 2015-09-30 (Released:2020-04-10)
参考文献数
71
被引用文献数
1

自由生活下における単位時間の身体活動の強度を最も正確に推定できる方法は,加速度センサーを用いた活動量計である。加速度センサーを内蔵する活動量計は,加速度と身体活動強度との間に相関がみられることを利用して,活動強度を推定する。従来は,上下方向だけ(一軸)の加速度センサーであったが,最近は二~三軸の加速度センサーが主流である。歩行を含む日常生活でみられる活動の多くは,±2G(重力加速度;1 G=9.8 m/s2)以内であるが,歩行以外の日常生活の場合は,多くが数十mG かそれ以下,座位行動の場合は20 mG 程度以下であることから,座位行動を含む低強度の活動強度を評価するにあたっては,低強度での分解能が要求される。歩・走行とそれ以外の活動では,加速度と活動強度との関係式が異なるが,それらを判別するために,加速度の大きさを反映するカウントの変動係数,垂直と水平成分の比率,および重力加速度から姿勢の変化をとらえる方法などが提案されている。特に強度が弱い活動において,三軸加速度センサー内蔵活動量計(Active style Pro)の推定誤差が小さい。なお,自転車漕ぎ,坂道の昇り降り,重い物を持っての自立姿勢などにおいては,加速度の大きさは,必ずしもエネルギー消費量と対応しないため,機種やアルゴリズムを確認したうえで使用する必要がある。我々は,Active style Proを用いて久山町住民を対象に身体活動を調査した。活動強度3メッツ以上の活動量は男女ともに加齢に伴い有意に減少し,その身体活動パターンには性差が存在することを明らかになった。すなわち,男性では歩・走行活動が多い一方で座位時間も長く,女性では歩・走行以外の活動によって活動量を維持する傾向にあることが観察された。更に,三軸加速度センサー内蔵活動量計を用いた疫学研究の意義および可能性について要約した。最後に,現在継続中もしくは実施予定の三軸加速度センサー内蔵活動量計を用いた縦断研究(前向きコホート研究含む)を紹介した。これらの継続中の疫学研究は,三軸加速度センサー内蔵活動量計による客観的調査に基づいた軽強度,中高強度の身体活動および座位行動に関連したガイドライン開発に必要である有効な情報をもたらすであろう。