著者
大場 孝宏 末永 光 一松 時生 羽田野 雄大 満生 慎二 鈴木 正柯
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.12, pp.949-953, 2008-12-15
被引用文献数
5

(1)K9系酵母使用の清酒もろみから親株より2〜3倍のリンゴ酸生産性を示す9株を取得した。アルコールの生成、ボーメの切れは親株と同等であり、9株ともに親株よりリンゴ酸を2〜3倍生産し、酢酸の生産量は半分以下である。(2)K901使用のもろみからは、高頻度でリンゴ酸高生産株が得られた。(3)得られたリンゴ酸高生産株について、シクロヘキシミドヘの耐性及びジメチルコハク酸への耐性、またマルトース資化性及びグリセロール資化性を調べた結果、既に報告されている菌株と異なる性質を持っていると考えられる。(4)分離したリンゴ酸高生産株すべてが親株より酢酸生産量が低下していることから、分離したリンゴ酸高生産株では酢酸から生成したアセチル-CoAとグリオキシル酸からリンゴ酸を生成する経路が活性化されるような変異がおきているため、リンゴ酸高生産性を獲得したのではないかと推察される。
著者
石井 正治 春田 伸 五十嵐 泰夫
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.9, pp.652-657, 2009-09-15
被引用文献数
1

鹿児島市から東へ約40kmの所に,酢の町―霧島市福山町がある。福山は桜島を望む風光明媚の地で,一年中温暖な気候に恵まれ,背後の山あいから湧き出る天然の地下水は非常に良質で,醸造に必須の条件を備えている。福山米酢の起こりは約180年前に遡り,54lの壼に,蒸米,米麹,水を加えた後,液上面に振り麹と称して老ねた麹を撒く。この振り麹が上面にある間に,糖化とアルコール発酵が行われる。アルコール発酵が終了すると,振り麹は自然に落下して,次に液表面に酢酸菌膜が張り,酢酸発酵が行われる。伝統的な製法をそのまま引き継いで,今日に至っている。本稿では壼造り黒酢について,微生物学見地から解説をして頂いた。
著者
池田 浩二 中野 隆之 藤井 信 侯 徳興 吉元 誠 倉田 理恵 高峯 和則 菅沼 俊彦
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.5, pp.355-361, 2012-05-15
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

芋焼酎粕の有用成分に着目し,米麹を添加した独自の香味改善と機能性の増強を目的とした製造方法で得られた芋焼酎粕飲料(新飲料)について,生理作用を検討した。その結果,次のことが明らかになった。<br>(1)新飲料には,クエン酸,アミノ酸がそれぞれ約1%,ミネラルではカリウムが多く,ビタミン類ではナイアシン,パントテン酸,ビオチン,ビタミンB2,葉酸などが比較的多く含まれていた。ポリフェノールは約0.1%,食物繊維は0.3%,GABAも含まれており,様々な成分による相乗効果が期待される栄養豊富な飲料であることが考えられた。<br>(2)動物試験において,新飲料はその嗜好性から飼料摂食量が増えたが,体重増に有意差が見られず新飲料摂食により代謝が高まることが考えられた。なお,臓器重量には有意差はみられなかった。<br>(3)新飲料摂食試験の結果,強い血清中性脂質抑制効果,総コレステロール抑制効果,特に悪玉であるLDLコレステロールを大幅に有意に減少させ,善玉であるHDLコレステロールは減少させない結果が得られ,さらに,血糖値を抑制する効果が明らかになった。<br>以上のように,芋焼酎粕を原料とした新飲料の脂質代謝改善作用,高血糖抑制効果などの生理作用や食品機能を明らかにできたことから,生活習慣病やメタボリックシンドロームなどの予防や改善効果をもたらすすぐれた飲料であると考えられる。