著者
平川 仁 鈴木 基之 西野 宏 佐藤 雄一郎 石木 寛人 篠崎 剛 海老原 充 新橋 渉 上條 朋之 岡本 牧人 別府 武 大堀 純一郎 松浦 一登
出版者
日本頭頸部癌学会
雑誌
頭頸部癌 (ISSN:13495747)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.75-81, 2018

頭頸部癌終末期患者における症状について多施設調査を行った。根治不能頭頸部癌と診断され,癌の進行による状態悪化のために入院となった患者を対象とした。11施設から100人の患者が登録され,そのうち転院した患者などを除く72人が死亡まで観察可能であった。最終観察時における出血や滲出液を伴う自壊腫瘍を持つ症例は36.1%であった。またそれに伴う制御不能な出血を認めた症例は5例であった。1例は頸動脈破裂による急速な転機をたどった。残りの4例は出血および血圧低下による止血を繰り返し最終的に心肺停止となった。栄養経路に関して61.1%で経腸栄養摂取が可能であった。頭頸部浮腫は36.1%に認めた。喉頭発声による意思の伝達は50%で不可能であった。頭頸部癌の終末期症状は決して軽いものではない。しかしその症状・頻度,病態の理解が進み,適切な指針を今後作成できれば,患者は終末期の時間を自宅近くの医療施設もしくは自宅で過ごすことができるようになると期待される。
著者
長谷川 博 鹿野 真人 佐藤 栄需 金子 哲治 門馬 勉 武石 越郎
出版者
日本頭頸部癌学会
雑誌
頭頸部癌 (ISSN:13495747)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.439-444, 2006-12-25 (Released:2008-05-30)
参考文献数
13
被引用文献数
2 3

高齢者の頭頸部癌治療では副作用が少なく,高い安全性と根治性が要求される。われわれは高齢者口腔癌に対し,ドセタキセル(TXT),シスプラチン(CDDP),ペプロマイシン(PEP),5-FUによるTCPF動注化学療法を行い,その安全性と有効性について検討した。2002年3月から2005年5月までTCPF動注化学療法を行った75歳以上の扁平上皮癌症例10例を対象とした。年齢は75~84歳,平均80歳。部位は舌口腔底8例,頬粘膜1例,上顎歯肉1例。全症例に浅側頭動脈か後頭動脈経由で動注用カテーテルを留置し,TCPF動注化学療法を行い,7例に生検切除を,2例に根治的切除を行った。原発部位に対する効果はCR率80%(8/10),PR率20%(2/10),pathological CR率67%(6/9)であった。副作用は,脳血管障害はなく,動注側の粘膜炎と脱毛が主であり,血液毒性など全身的な副作用はほとんど認めなかった。本療法の有効性と安全性は高く,ハイリスクの高齢者にも根治的治療として適応し得ると考えられた。