著者
岡本 能里子
出版者
東京国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本年度は、昨年度に続いて、日本言語政策学会の「メディアと言語政策」の分科会において、「メディアとしての教科書・教材を考える」と題した企画を担い、日本の国語教科書、ドイツの歴史教科書の図や写真、イラストとテキストとの関係に焦点をあて、言語教育におけるビューイングの考え方を意識して言語教育に組み込む必要性を提示した。国際語用論学会では、2つのパネル発表を行った。1つは、オバマ氏広島訪問とプラハ演説報道における写真をはじめとするビジュアル要素と大統領のスピーチとの相互作用から、伝えられるメッセージを批判的に分析し、何が伝えられたのかを明らかにした。2つ目は、目的のある話し合いのLINEチャット分析を通して、スタンプや写真と文字の相互作用を通したマルチモードのコミュニケーション実態を検証した。これらの発表を通して、国内外で、日本語の4種類の文字と縦書き横書きという世界でまれな正書法を駆使し、マルチモードによる意味構築がなされている実態を明らかにし、そこに埋め込まれるイデオロギーや価値感に気づくためのマルチリテラシーズ育成が言語教育に必須であることを強く伝えることができた。
著者
小田切 紀子 松井 豊 宇井 美代子 古村 健太郎 青木 聡 野口 康彦 Aguilar Jade 劉 亨淑 大谷 美紀子 町田 隆司 井村 たかね
出版者
東京国際大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

離婚後の単独親権の日本で、離婚後、共同養育を実現するために,1日本の家族意識調査、2日本の面会交流の実態調査、3離婚の共同養育、離婚観などに対する国際比較調査(日本・米国・韓国)を実施した。以上の調査から、日本の伝統的な家族意識や離婚に対する偏見意識が共同養育への意識に否定的影響を与えること、面会交流は両親の紛争により中断されやすいこと、共同養育に対する否定的意識は韓国、日本、アメリカの順に高いことなどが明らかになった。これらの結果に基づいて、米国の離婚後の親教育プログラムを改訂し行政と連携して実施した。
著者
河村 一樹 立田 ルミ 喜多 一
出版者
東京国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

情報プレースメントテスト(以下,IPTと略す)で必要となる知識・スキル体系について,10エリアすべてにおいて策定した。これによって,プレースメントテストの出題範囲とレベル度合を明らかにすることとした。その際には,情報処理学会一般情報教育委員会が策定したGEBOKとの関連についても考慮した。IPTを実施する際に,即本番とするのではなく,あらかじめ予備という形で進める(プレIPT)ことになった。そこで,プレIPTとして,エリア毎に10問作問し相互にレビューを行った。プレIPTのプラットホームとしては,Moodle,WebClass,BlackboardといったCMS,あるいは,大学独自のアンケートシステムとした。2017年4月の新学期に,科研費メンバーの本務校あるいは非常勤大学において,プレIPTを実施した。プレIPTを実施後,収集したデータをもとに大学毎に分析を行い,学会等で講演発表を行った。また,顕著となったいくつかの問題をクリアーするとともに,IPTの作問(各エリア20問ずつ)を行い,メンバーによるレビューを実施した。その上で,日経BP社により,IPTをシステム化(情報プレースメントテストシステム:IPTS)した。システム化においては,日経BP社が独自に開発したクラウドシステムあるいはMoodleのコースとして実装した。具体的には,10エリアから各5問(計50問)をランダムに抽出した上で,シャッフルして出題することとした。こうして,2018年度4月の新学期以降に,IPTを各大学で実施するための準備を終えた。
著者
筑井 麻紀子
出版者
東京国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では、日本と中国が経済面及び環境面において相互に与える影響について特に廃棄物の排出に注目し、2007年版の日中地域間廃棄物産業連関表を推計した。日本が中国から購入する最終需要目的の財・サービスが中国に与える影響は、中国が日本に与える影響に比べ、生産額における波及効果はほぼ同額であるが、産業部門における廃棄物排出量は約5倍、温暖化ガス排出量は約4倍にも上り、日本の最終需要の中でも、民間消費支出と固定資本形成が中国に与える影響が大きい。本研究の結果より定量的に明らかになった日本の消費者責任を鑑みれば、日中が政策的に環境負荷の軽減の取り組みを協力して行う必要がある。
著者
泉 淳 前嶋 和弘 西山 隆行 馬 暁華 堀 芳枝 渡辺 将人 飯島 真里子 平塚 博子
出版者
東京国際大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

米国のイスラム系は、その内部構成の多様さにもかかわらず、その政治的関与と発言力を拡大させている。これは、米国内の他の少数派集団にも共通する傾向である。しかし、中東・イスラム地域における政治的不安定を反映して、米国内で「イスラム恐怖症」とも呼ばれる現象が顕著となったため、米国のイスラム系はこれへの防御的反応として政治的発言を活発化せざるを得ないという特殊性を持つ。このため、イスラム系は米国の政治外交に積極的な影響を与えるには至っていないが、人権擁護を中心とする社会的諸活動においては大きな進展を見せている。長期的には、イスラム系の政治的関与と発言力は、より積極化するものと考えられる。
著者
川村 よし子 前田 ジョイス 北村 達也 三輪 譲二 宇津呂 武仁
出版者
東京国際大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、世界各国の日本語学習者に、よりよい読解支援環境をWeb上で提供することである。代表者らはすでに読解学習支援システム『リーディング・チュウ太』を開発しWeb上で公開している。今回新たに文章の難易度の主要な決定要因である単語の難易度と構文の複雑さに着目し、「学習者の視点にたった文章の難易度判定システム」を開発することを目指した。そのため、本研究では世界各国の母語の異なる学習者を対象にした難易度判定実験を行い、その結果を基に、単語と構文の双方に着目した文章の難易度判定システムを開発した。さらに、チュウ太の辞書ツールにはデータ・マイニングシステムを組み入れ、日本語学習者の辞書利用の実態調査を行った。利用者の推移や言語別の利用者数の変化および辞書のカバー率の調査を通して、辞書開発に関する今後の課題も明らかになった。研究成果は、Web上の読解学習支援ツールとして世界の日本語学習者・教育関係者に無償公開している。
著者
布川 清彦 伊福 部達 井野 秀一 中邑 賢龍 井手口 範男 大河内 直之
出版者
東京国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

全盲者の白杖利用を対象として対象認知のために必要となる感覚情報を特定し,感覚情報と機器の身体化との関係を明らかにするために,マグニチュード推定法を用いて,利き手で握った白杖を用いた場合のゴムの硬度と硬さ感覚の関係を実験的に明らかにした.これにより白杖ユーザの移動支援のために,1)触覚と聴覚というマルチモーダルな情報提供を行う道具としての白杖に関する基礎的知見と,2)それに対応する環境側のデザインを考察するための手がかりが得られた.
著者
高橋 明善 古城 利明 若林 敬子 大内 雅利 黒柳 晴夫 桑原 政則
出版者
東京国際大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

一 研究課題1 日米特別行動委員会(SACO)合意に基づく沖縄の基地返還・移設、跡地利用に関する研究(1)名護市における基地移設・ジュゴン保護と住民運動。(2)普天間飛行場移設問題の政治過程。(3)読谷飛行場の返還と跡地利用計画に関して1996年のSACO合意以来の経過を追跡研究した。2 基地引き受けの代替として進められる地域振興策と内発的振興の研究を次の場面で実施した。(1)基地移設に関する日米SACO合意の実施過程。(2)移設先並びに沖縄北部振興(3)読谷飛行場跡地利用 (4)普天間飛行場跡地利用 (5)環境保全と観光開発3 沖縄を中心とする国際交流の研究。沖縄の持つ国際性を移民社会と歴史研究の中で検討した。(1)中国と沖縄の歴史的交流の研究 (2)ブラジルにおける沖縄文化 (3)歴史の中の沖縄とアジア二 研究上の留意点と得られた成果主要研究テーマである基地の返還・移設問題に関して次のような問題を特に重視した。(1)沖縄の戦略的位置づけの変化による米軍再編と基地負担軽減問題。(2)移設元の普天間基地所属の沖縄国際大学への落下、騒音、婦女暴行、危険な訓練実施などの基地被害、基地災害がもたらす基地批判世論の盛り上がり。(3)普天間基地の名護市移設がもたらす環境破壊に反対する運動の国際的拡がり。(4)知事先頭の日米地位協定改定要求運動。(5)以上の結果としてもたらされた普天間基地移設見直しと日米政府の政策転換。(6)普天間基地移設をめぐる政治過程と跡地利用問題。(7)読谷飛行場の返還と跡地利用計画の進展。得られた最も重要な知見は次の2点にある。(1)環境保全への配慮なくしては基地問題の処理も、地域振興も不可能であるほどに環境問題が地城政策の実施にとって根本的な重要性をもつにいたった。(2)沖縄の基地の存在と基地政策は、日米政府による世界最強のシステムが作り出したものである。しかし、そのシステム世界も住民の生活世界からの抵抗を受けることにより、政策を調整・譲歩せざるを得なくなったという重要な帰結がもたらされた。ふたつの世界の葛藤のダイナミズムの研究を通して歴史変動への想像力を拡大することができた。