著者
大塚 健司
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.109-113, 2015 (Released:2015-12-28)
参考文献数
19
被引用文献数
1
著者
在間 正史
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.4, pp.1-14, 1990

長良川は木曽川水系に属し、本流にダムのない河川である。木曽川水系水資源開発基本計画の一つとして、長良川河口堰が計画されて20年が経過した。<BR>しかし、その間に、水供給地域の愛知県、名古屋凧三重県では、工業用水は需要が低下し、水道用水も需要が横ばい又はその伸びが鈍化しており、2000年になっても長良川河口堰の用途は見込まれない。地盤沈下代替用水としても長良川河口堰は不要である。1986年木曽川渇水は、河川維持用水量の削減等により、これを乗り切ることができ、災害的渇水時の対応のあり方と河川維持用水量の再検討の必要性を示した。<BR>長良川河口堰は計画の見直し=中止の検討がなされるべきである。それがなされていないのは、水資源開発計画が計画行政でありながら、定期に計画の見直しを行う制度と手続がないためである。
著者
平山 奈央子 川津 優貴 井手 慎司
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.13-21, 2011

本研究では、滋賀県政世論調査を分析対象として、先ず、回答者の属性割合の経年変化と属性間の関係性を把握した。次に、琵琶湖を含む県の水環境に対する意識を尋ねた質問の回答に関するクロス集計の結果から、回答者の属性による回答傾向の違いを把握した。これらに加えて、同回答傾向を全国的な世論調査の結果から把握した回答傾向と比較することで、滋賀県の水環境に対する県民世論の長期的な変遷を把握することを試みた。その結果、1982年から2009年にかけて「水環境を守る施策に対する満足度が高い」、「今後、琵琶湖の保全施策に取り組むべき」、「水を汚さないための行動をとる」などの回答傾向をもつ滋賀県民の割合が増加してきたことが推察された。また、長期的な世論の変遷を把握する分析手法の開発につながる示唆を得られたと考えられる。
著者
雄倉 幸昭 大槻 均 山本 正視
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.2, pp.47-61, 1988

上水道の規模を決定するピーク需要量は,明らかに気象の影響を受けるはずである。しかし従来は,需要の傾向変動のみを追究し,その水源の安全度は,再現確率のみに頼っていた感があった。<BR>本論文では,気象も,さらには社会現象を含めても,それらは比較的長い周期のうねりを持っており,その上に各年固有の気象要因が重なったものであり,水需要はこれらのうねりと要因の影響を受けた結果と考えた。3企業体について,このうねりをスペクトル分析で求め,それに12項目から重回帰分析で抽出した気象要因を導入して,回帰式の適合度を高めた。有意な気象要因は,年間雨量,ピーク需要発生直前の雨量,日照時間および真夏日日数であった。
著者
武田 真一郎
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.11, pp.21-30, 1998-12-25 (Released:2009-04-22)

吉野川第十堰建設事業とは、江戸時代に築かれた現在の第十堰を撤去し、長良川と同様の可動堰を建設するというものである。堰の大きさは長良川河口堰を上回り、徳島県民一人あたり12万円を要する巨大な公共事業である。事業が必要とされる根拠は、せき上げ、老朽化、深掘れという治水上の理由である。しかし、市民団体からは、建設省のせき上げ水位計算は過大であり、実際には水害の危険はないことが指摘されるなど、事業の必要性には疑問が示されている。また、長良川河口堰のように環境や財政に大きな負担をかけることも懸念されている。世論調査の結果では反対意見が53.7%に達しているが、地元の議会は次々と推進決議を行い、建設省の審議委員会も計画を妥当とする意見をまとめた。そこで、徳島市では住民投票によって民意を明らかにするために、住民投票条例の制定を求める直接請求が行われている。
著者
中村 寿子
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.7, pp.53-62, 1994-12-25 (Released:2009-04-22)
参考文献数
103

飲料水、生活用水の微生物的問題について、今、先進国の間で論じられている課題は、水道敷設当初の赤痢やコレラでなく新しい種類に変わってきた。化学的水質項目と同様、よりきびしい安全陛が追求され、新しい消毒効果の指標が提案され、処理のガイドラインが作成されている。内外の諸文献から、それらの種類や実態と対策、また技術的社会的背景について解説し、21世紀にむけて、飲料水、生活用水の微生物学的水質について論じる。
著者
山内 翔太 矢嶋 巌
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1-6, 2013 (Released:2013-11-01)
参考文献数
18
被引用文献数
2 1

日本最大の広さを有する琵琶湖を事例に、釣りや駆除事業との関係性から、琵琶湖における外来魚問題と地域社会のあり方について、地域住民と釣り人への聞き取りをもとに考察し、琵琶湖を健全な状態へ近づけるための方策について考えた。琵琶湖で外来魚の根絶は不可能と考えられるが、数を抑制するためにも外来魚駆除を継続し、再び在来種が生息できるようにするための環境保全活動を行うことが重要である。また、釣り人の協力を促すには、外来魚回収いけすの増設や、新たなルール作りが有効であると考えられる。外来魚駆除の取り組みが、今後も地域住民とかかわる形で継続的に行われれば、身近な存在である琵琶湖の自然環境と生態系を地域資産と捉えることができ、琵琶湖からの水辺離れを食い止め、生態系や水辺環境が豊かであった琵琶湖の元の状態に近づけることが可能である。
著者
坪井 塑太郎
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.78-84, 2017 (Released:2017-12-29)
参考文献数
13
被引用文献数
1

わが国における洪水被害においては、人的被害は減少傾向にある反面、経済被害は必ずしも減少しておらず、都市域に拡大する被害の影響を受け、2000年代以降において単位面積当たりの被害額は上昇傾向がみられた。また水害発生の要因別では「内水」に起因するものが最も高い割合を占め、特に東京都心部においては床上浸水率の上昇がみられたほか、被害全体に占める割合は小さいものの、人命損失リスクの高い土石流や急傾斜地崩壊などの土砂災害も継続して発災していることが明らかになった。
著者
蔡 佩宜 篭橋 一輝 佐藤 真行 植田 和弘
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1-12, 2014 (Released:2014-08-01)
参考文献数
30

本研究は、設楽ダムを事例に、公共事業をめぐる関係者間の利害対立の構造を分析し、社会的合意形成を阻害する要因を考察するとともに、全国のダム検証に係る「関係地方公共団体からなる検討の場」の取組みの意義と限界を明らかにすることを目的にしている。本研究では、まずダムの必要性をめぐって開発主体である国や県と反対派住民の主張が対立する中心的論点について、行政が提示した将来の水需要量の数値に問題があることを示した。そして、ダム建設についての利害対立を調整する制度や手段について、設楽ダムのような直轄ダム事業の検証に係る審議会は事業者と関係公共団体が中心に行うのに対して、補助ダム事業の検証は地域ごとに多様な利害関係者と制度設計の下で審議を行うという違いがあり、両者を比較しながら、ダム検証についての現状制度の不十分性を指摘した。
著者
新玉 拓也
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.35-46, 2009-03-05 (Released:2011-03-31)
参考文献数
19
被引用文献数
1

近年、里地里山など二次自然が再評価され、2002年に策定された「新・生物多様性国家戦略」にも反映されている。そのような中、関わりを取り戻すため、あるいは関わりを評価するための1つの手法として、市民参加型調査が注目されている。政策への市民参加が求められる中、生態系保全、まちづくり、環境教育などさまざまな分野で市民参加型調査が行われている。本研究が事例として取り上げる「琵琶湖お魚ネットワーク」は、企業、行政、市民団体などが協力して立ち上げた市民参加型の魚類分布調査である。のべ1万か所を超える調査データが集まるなど調査として大きな成果を生んだが、その他にも各個人や機関・団体にも数多くの影響を与えた。そこで、市民参加型調査の社会的意義を明らかにするため、琵琶湖流域で多くの人が参加し、調査とともに社会へ多くの波及効果をもたらした「琵琶湖お魚ネットワーク」を事例として考察を試みた。
著者
沖田 ちづる
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.49-54, 2005

本研究では、福井県嶺北地方の九頭竜川流域を研究対象として、官民協働による流域環境保全活動のあり方について考えていくことを目的とする。九頭竜川流域全体を視野に入れた、住民主導の保全活動であるNPO法人ドラゴンリバー交流会では、これまで自然環境保全を中心としてきたが、2004年7月、実際に福井豪雨の影響を受けたことによって、官民で水害対策を見直す動きが強まるようになってきた。なお、九頭竜川流域では足羽川ダム建設問題について賛否両論が繰り返されてきたが、福井豪雨後は足羽川ダム建設を推進する方向に向かっている。今後の課題としては、当交流会などの官民協働の場を活かし、流域内での多様化した問題について、行政と地域住民との徹底した話し合いにより、地域に対応した検討が必要である。
著者
田渕 直樹
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.61-68, 2009-03-05 (Released:2011-03-31)

日本の大河信濃川、その中流域はJR 東日本(株)などが水力発電所のために過剰取水をし、表流水が涸れて水道水不足や生態系破壊など、河川環境破壊を惹き起こしている。そこで市民は改善を求め、後に市役所の協力を得て東京でシンポジウムを開くなどの活動に取り組み、水利権更新期でないにも拘わらず、40m3/s以上もの試験放流を獲得した。しかし市役所主導の運動となってしまい、進行中の清津川ダム・プロジェクトに反対しなかった。90年代に一世を風靡した長良川河口堰運用反対運動などとは別の市民運動である。
著者
原田 禎夫
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1-7, 2017 (Released:2017-06-29)
参考文献数
37

近年、急速に深刻化する海洋ごみ問題への関心の高まりとともに、世界各国でプラスチック類の海洋への流出を防ぐための積極的な対策も講じられつつある。本研究では、オオミズナギドリの繁殖地として天然記念物の指定を受けている京都府舞鶴市の冠島とその対岸の野原地区で実施した飲料用ペットボトルを指標とした流出地の推定について報告する。2つの調査地点におけるペットボトルは、冠島では76.5%、野原地区では87.6%を日本製のものが占めていた。また、特に日本製ペットボトルの特徴として、小型ペットボトルが占める割合が極めて高く、これは全国的な傾向と同じであった。小型ペットボトルが市場シェアの大半を占める国内での有効な発生抑制対策として、早急なペットボトルのデポジット制度の導入が望まれる。
著者
秋山 道雄
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.105-108, 2015 (Released:2015-12-28)
参考文献数
19
著者
宮崎 淳
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.1-12, 2010-03-31 (Released:2011-06-24)

渇水等の水不足が生じるリスクが高まるほど、水利権の水量侵害が顕在化しやすくなる。水資源が豊富であったときには潜在化していた水利権の優劣問題が、絶対的水量の減少によって表面に現われるからである。水量侵害の事案では、同一水流において競合する慣行水利権の存否およびそれら権利相互間の優劣関係が問題となる。水利権が専用権として他の権利より優先されるのか、または余水利用権として他のものより劣後の地位に置かれるのか、それとも共用権として権利者が平等に流水を利用できるのかが争点となるため、慣行水利権の効力はその類型に投影されているといえよう。そこで、水量侵害の裁判例において、どのような法的救済が認容または否認されるかについて分析することによって、専用権、共用権、余水利用権の3つの慣行水利権の類型につき、それらの効力を詳細に考察した。そして、水資源分配の仕組みとしての3類型は、共用権を基軸に構成されるべきであり、慣行水利権の原型を共用権に求めることによって、そこから専用権と余水利用権の2類型が派生することについて考究した。
著者
野田 浩二
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.16-23, 2015 (Released:2015-07-11)
参考文献数
17

わが国の環境研究を振り返ると、環境政策の政策過程分析は意外なほど少ない。本稿の目的は、1964年に制定された新河川法を素材に、水政策の政策過程分析の意義と可能性を論じることにある。政策過程は、誰がどのような根拠や思想に基づいて、どのように政策をつくるのかに焦点を当てる。そこには、官僚組織内部あるいは国会で法律が調整される様を分析する制定過程も含まれるが、制定過程分析よりも長い期間を想定する。政策過程を分析するさい、制定過程ではなくより歴史的に多角的に政策変化を分析するための「鳥の目」と、ある法律案が法律になるまでの一連の制定過程を分析するための「虫の目」のどちらも重要となる。前者は御厨貴が指摘した点、つまり1950年代は建設省主導による新河川法改正のために外堀が埋められる期間であり、河川法以外の水資源関連法の政策効果が重要であった。さらに、新河川法の制定過程を虫の目から分析すると、この解釈は正しいことが分かる。今後、水政策の政策過程分析をもっと増やすことが求められ、鳥の目と虫の目の両方から分析することが重要である。
著者
Hebin Lin Kentaro Miyanaga Jeffrey A Thornton
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.68-74, 2015 (Released:2015-07-11)
参考文献数
57
被引用文献数
3

The people of the world continue to demand sustainable sources of freshwater for meeting their daily needs, for continuing economic development, and for maintaining a stable and healthful environment. In meeting these needs based on sustaining ecosystem services, the historic sectoral approach to water resources management has led to degraded waterbodies and an inability of governments to meet the demand for safe and secure sources of freshwater. In recent years, water resources management experience has highlighted the need for an integrated management approach that involves all stakeholders, including citizens, scientists and policy-makers, as well as effective organizations that are adequately funded and fully staffed. In this paper, we review some of the key considerations that are fundamental to effective water resources management and demonstrate the necessary and fundamental link between policies, plans and management actions.