著者
松浦 俊弥
出版者
淑徳大学
雑誌
総合福祉研究 (ISSN:18818315)
巻号頁・発行日
no.22, pp.81-93, 2017

障害があったりグレーゾーンにあったりする子どもたち(障害児等)の放課後支援の在り方が注目されている.中でも小学生が利用する放課後児童クラブでは,制度上の壁もあり,障害児等に対する適切なケアが行われているとは言い難い状況にある.子ども同士のトラブルや事故につながっている例も多い.放課後児童クラブで障害児等への適切なケアが実施できない背景には,主として学校が作成することとなっている個別の教育支援計画を軸とした教育との情報共有等連携が有効に機能していない現状があるのではないか.先行研究や各種調査における資料や実際の放課後支援の現場の声などから,教育現場との連携に関する現状と課題を明らかにし,限られた環境の中で放課後支援,特に放課後児童クラブが障害児等へのケアの質を高めていくにはどうしたらよいか,を考察する.
著者
村上 玲
出版者
淑徳大学
雑誌
総合福祉研究 (ISSN:18818315)
巻号頁・発行日
no.22, pp.197-209, 2017

イギリスにおける同性愛者に関する法状況として,同性愛行為の合法化,シヴィル・パートナーシップなど異性愛者と同等の法的地位の獲得,雇用関係から始まった性的指向による差別の禁止といった大きな動きが存在している.この一連の過程においては国内の社会情勢の変化だけでなく,EU法,欧州人権条約及び欧州人権裁判所判決が大きな影響を与えている.性的指向に基づく憎悪扇動罪はこのような流れの中で,同性愛者を中心とした性的少数者を威嚇的な表現から保護するために制定されている.この性的指向に基づく憎悪扇動罪創設に関する議論において重要な論点となったのが,いかにして同性愛者等への保護を図りつつ,同性愛等に関する信仰に基づく信念の表明や議論等の保護とのバランスをとっていくかということであった.この問題においてイギリスが採用した方策は,訴追可能性を限定するとともに,自由な言論条項によって同性愛に関する表現の自由を確保するというものであった.
著者
小川 純子 中村 伸枝 荒木 暁子 遠藤 数江 佐藤 奈保 鈴木 恵理子 伊藤 奈津子 佐藤 奈保 沖 奈津子 遠藤 数江
出版者
淑徳大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

小児がんの子どもに関わる医療者と患児、さらには家族への調査を実施した。これらの結果を元に専門家会議を実施し、小児がんの子どもが治療を理解し、前向きに治療に向かえるよう看護師が援助するためのCAI(Computer Aided Instruction)を作成した。多くの看護師が利用できるように、血液腫瘍疾患と固形腫瘍の治療過程で行われる処置に関する画像や、日々の看護の中で子どもの主体性を育むかかわりの工夫などをホームページ上に掲載するように準備中である。
著者
金沢 創 山口 真美 北岡 明佳
出版者
淑徳大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、乳児の知覚を検討するプロジェクトの一環として、「錯視図形」をキーワードに、乳児の視知覚の発達を実験的に明らかにしたものである。平成18年度においては、(1)拡大運動と縮小運動の感度の非対称性、(2)正方形と円を重ねたとき、背後の円の輪郭を補完するアモーダル補完、(3)2つの重なった領域の明るさの順序により、2つの透明な領域が重なっていると解釈される透明視、のそれぞれについて、その知覚が発生する時期を実験的に検討した。それぞれの成果はInfant Behaviour and Development誌、Perception誌、などの国際的な学術雑誌に発表された。また、平成19年度は、(1)右方向と左方向に運動しているランダム・ドットを重ねると、2つの透明な面が見える運動透明視、(2)共同研究者である北岡が作成した、緑と赤の小さな領域が囲まれた色影響により彩度が低下する色誘導刺激、についてそれぞれ知覚発達を検討し、これらの成果をPerception誌やInfant and Child Development誌に発表した。さらに最終年度の3月までに、(1)静止しているランダムドットの一部の領域の色を、時間的に次々に変化させていくと、運動する輪郭が知覚されるいわゆるcolor from motion刺激や、(2)局所においてはバラバラに動いて見えるバーが、それを隠す領域を配置すると四角形が補完されるパターン、(3)輪郭と白黒の配置から、絵画的な奥行き手がかりが知覚されるパターンなどの知覚発達も検討し、(1)についてはInfant Behaviour and Development誌に発表され、後者2つについては、Journal of Experimental Psychology、およびVision Research誌にそれぞれ掲載されることが2008年4月現在、決定している。
著者
大橋 靖史
出版者
淑徳大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

従来内的心理現象と捉えられてきた時間的展望現象を、社会的相互作用と捉え直し、その生成プロセスを明らかにするため、未来や過去について語り合う占いの場を分析した。予備研究の後、占い師3名が30名のクライエントに対し占いを行う様子を録音・録画し、ディスコース分析等の手法を用い分析した。その結果、占い師とクライエントは、前者が専門性や権威を後者に示し、後者が前者に委ねる関係にあること、また語られた内容をクライエントの手相に帰属させる語りの定式化が存在すること等が明らかとなった
著者
白井 伊津子
出版者
淑徳大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

修辞表現について、とりわけ中国古典文学における譬喩表現と日本古典文学の譬喩表現を比較検討し、日本古典文学における譬喩表現の独自性を明らかすことを目指した。 結果 、『萬葉集』の直喩表現、序歌表現「詠物」「寄物」歌表現を一覧しうる譬喩表現比較のための基礎資料が整備されるとともに、(1)『萬葉集 』後期に至り、仏典の受容や諺の引用を契機としてあらたな直喩表現の方法が獲得されたこと、(1)『萬葉集』巻八、十の「詠物」歌「寄物」歌に中国詠物詩の譬喩表現の方法を見いだしうること、(1)懸詞に縁語をともなう表現や見立ての技法といった、音形式を主する表現方が平安朝和歌において人事と景物の事象の譬喩関係を表現するため方法として用いられていることが明らかとなった。
著者
桝潟 俊子 野崎 賢也 松村 正治 佐藤 亮子 榊田 みどり
出版者
淑徳大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

近年、グローバル化のもとでローカル・フードムーブメント(地産地消やCSA:地域が支える農業、AMAP:農民農業を支える会、短い流通など)が、内外で広がりをみせている。また、欧米諸国では、ローカル・フードシステムの再評価がすすんでいる。本研究では、欧米におけるローカル・フードムーブメントの動向および日本各地の事例調査にもとづき、「安全・安心」「安全保障」「環境」以外の社会的な視点・論点(たとえば、食をめぐる社会関係や食と農のシステムを支える労働の社会的公正など)を導入し、日本におけるローカル・フードシステムの意義について実証的検証を行った。
著者
宮川 葉子 MIYAKAWA Yoko
出版者
淑徳大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

柳沢家の文芸、特に和歌における公家と武家の文化交流の実際を探った。1.東京駒込の六義園の造園意図を知るために、柳沢文庫蔵「楽只堂年録」収載の「六義園記」及び、吉保作自筆の巻子本「六義園記」の二本を翻刻。結果、吉保は和歌の浦と玉津嶋、対岸の藤代峠一帯までもを射程距離に入れた大規模な構想で六義園を造り上げていたこと、京都の新玉津嶋社を園内に勧請していたこと、黄檗山万福寺住持悦峰和尚の提案で西湖孤山の放鶴亭を真似た東屋を妹背山に建てていたことなどが明らかになった。2.大和郡山市社会教育課保管の類題和歌集「続明題和歌集」について調査研究した。新出史料である。吉保息男吉里の編纂と思われる該本は、約7000首の和歌を春・夏・秋・冬・恋・雑に分類したかなり大部な典型的類題和歌集。霊元院と東山院を筆頭に、おもには当代の公家と武家の和歌を収録する。江戸期における公家と武家の和歌文化の接点の実際を知ることのできる貴重な資料である。当該研究期間内には、「詠者目録」「題名目録」「春」「夏」「秋」「冬」の翻刻を終えたので、引き続き「恋」「雑」の翻刻及び全貌の調査研究を行いたい。3.吉保側室正親町町子の出自は不明であったが、父は正親町公通、母は水無瀬氏信女で、江戸城大奥総取締役に至った右衛門佐であることを証明できた。町子は正統な三條西実隆の子孫であったのである。彼女が『松陰日記』に多く『源氏物語』を引くのも三條西家の源氏学の学統に連なっていたからであった。『松陰日記』の本格的研究は是非なされなくてはならない。