著者
山里 純一 Yamazato Junichi
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
人間科学 : 琉球大学法文学部人間科学科紀要 (ISSN:13434896)
巻号頁・発行日
no.28, pp.1-55, 2012-09

久米島出身の吉浜智改は、朝鮮の通書『諺文家庭宝鑑』に記された「土亭行年法」という占いテキストを自ら琉球語による解説を施し、運勢判断に利用していた。『行年運琉訳』と名づけられたその資料は、朝鮮語によって書かれた「土亭行年法」の単なる翻訳本ではない。そこには当時の沖縄の風習や、筆者自身巧みな言語表現がみられる。また沖縄における朝鮮の占い文化受容の実態を知る上でも興味深い資料である。
著者
長部 悦弘 Osabe Yoshihiro
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
地理歴史人類学論集 (ISSN:21858535)
巻号頁・発行日
no.1, pp.17-32, 2010

北魏孝明帝代に勃発した六鎮の乱により混乱に陥った政局を、爾朱氏軍閥集団は収拾する方向へと舵を切った。爾朱氏軍閥集団は山西地域(太行山脈以西)の中部に并州(晋陽)及び肆州を中核として覇府地区を建設し、これを根拠地とした上で、孝明帝の没後南下して孝荘帝を擁立した上で河陰の変を引き起こして王都洛陽を占拠し、孝荘帝代には中央政府を支配した。自身の本拠地である覇府地区と王都を結ぶ線を中軸線に王都-覇府体制を確立して自身が実権を握る体制を打ち立てた。小論は、その実態を解明することを目的とする。先に第1章では爾朱氏軍閥集団が各地に人員を派遣した状況を概観した。第2章では爾朱氏軍閥集団構成員の京官への任官状況と実際の駐在地を検討し、京官任官者の実際の駐在地が覇府地区と王都洛陽に2分されることを確認した上で、第3章で洛陽駐在者の王都洛陽の中央政府を支配した方法を考察した。尚書省・門下省の要職に人員を配置して行政を握るとともに、王都内外の軍事を掌管する、近衛軍をはじめとする高級武官の多くを占めて、洛陽の軍事を牛耳ったことを明らかにした。本号所載の第4章では、覇府地区の京官任官者の就任官を分析し、爾朱氏軍閥集団の首領である爾朱栄が最も高い地位を兼務していたことを考察した。爾朱栄が鎮座する并州(晋陽)設置の覇府と連絡しながら、爾朱氏軍閥集団の下に王都洛陽の中央政府を置く、王都-覇府体制を構築したことを確認した。第5章では北魏の動乱の収拾に責献した爾朱氏軍閥集団構成員の尊皇意識がその背後に働いていたことを論じた。
著者
川平 成雄 Kabira Nario
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
琉球大学経済研究 (ISSN:0557580X)
巻号頁・発行日
no.76, pp.1-25, 2008-09

沖縄戦は、"鉄の嵐"と"血の嵐"が吹き荒れた、戦史上、類を見ない、戦争であった。戦場を彷徨い、壕の中から生きながらえて収容された住民は、明日への目標を失い虚脱と放心の中にいるものもおれば、飢餓線上の悲惨な避難生活から解放されて、明るい太陽の下で、自由に手足をのばせる喜びを実感するものもいた。収容された人たちの中には、親を失い、兄弟姉妹を失い、親戚を失い、天涯孤独となった多くの孤児もいた。ひとり戦火の中を生き延びて収容されたものの、飢えと渇きによる栄養失調で幼い命を落とす孤児、親のぬくもりを求めて泣き続ける孤児、恐怖に震えて明るいところへ出てこようとしない孤児、彼らがいったい何をしたというのか。沖縄戦の只中にあっても、生き残った教師たちは子供たちの教育に正面から取り組む。これが青空教室であり、ガリ版刷教科書であった。子供たちにとって多くの仲間と一緒に歌い、学び、遊べるのは大きな喜びであった。子供たちの喜びは、教師たちにとっても喜びであった。米軍政府は、収容所内で新聞を発行させるが、その意図するところは日本の敗戦が必至であることを報せると同時に、住民の身心を安定させ、収容所をスムーズに統括することにあった。戦争で打ちひしがれていた人たちを救ったのは、三味線と踊りの「力」であった。「砲弾の降ってこない南島の夜空に吸われていく三味の音」と踊りは、「枯れ枯れの大地に浸みとおる水のように、飢えた心の奥深くまで浸み込んでくる豊かなもの」であった。沖縄の三味線と踊りには、沖縄の人たちを絶望の淵から生き返らせる「力」が秘められているのである。そして鉄と血の嵐が吹きまくった沖縄戦の終結後、人びとの復興への灯火となったのが、奇跡的に焼け残った壺屋の窯から立ち昇る煙であり、廃嘘と化した首里から奇跡的に発見された黒麹菌による泡盛の製造所から立ち昇る煙であった。壷屋から立ちのぼる煙、首里から立ちのぼる煙は、復興に立ち向かう沖縄の人たちを勇気づける煙でもあった。
著者
川平 成雄 Kabira Nario
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
琉球大学経済研究 (ISSN:0557580X)
巻号頁・発行日
no.42, pp.p87-103, 1991-09
著者
吉村 清 Yoshimura Kiyoshi
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
琉球大学語学文学論集 (ISSN:03877957)
巻号頁・発行日
no.25, pp.p119-144, 1980-12

William Congreve's The Way of the World (1700) has been considered as a typical example of a Restoration comedy of manners by many critics because of its complex male-female relationships in the fashionable and sophisticated upper class world of London and its witty, brisk, and sparkling dialogue.In the dramatic structure of the play, Congreve takes pains dividing his characters into males and females, arranging each of these groups to assume an extreme attitude toward love and marriage. The dramatist also places his hero, Mirabell, and his heroine, Millamant, in a contrasting situation between the groups.In the first two Acts, Mirabell is presented as a lover torn between his love of Millamant and the voice of his own reason, being made fun of by his sweetheart and by his 'rather detached-self.'However, in the 'contract scene' in Act IV, he succeeds to balance these opposing forces within himself by coming to an agreement on marriage with Millamant. From this time on, he successfully plays the role of a 'shrewd schemer' in the game of love, saving not only Millamant and her fortune but also others in their risky situations by deafeating Fainall in the 'scheme combat' in Act V.
著者
野口 浩 Noguchi Hiroshi
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
琉球大学経済研究 (ISSN:0557580X)
巻号頁・発行日
no.82, pp.15-29, 2011-09

固定資産税の課税は固定資産課税台帳に登録されたところに従って行うこととされているが、企業会計がいうリース取引が行われた場合に、貸主もしくは借主のどちらを固定資産課税台帳に登録すべきか、という問題について、本稿において検討を加える。原則として、ファイナンス・リース取引については、リース物件の所有者である貸主が固定資産課税台帳に登録されて、貸主に固定資産税が課されることになると思われる。しかし、地方税法342条3項は、償却資産について所有権留保付売買が行われた場合は、固定資産税の賦課徴収については、当該償却資産は、売主及び買主の共有物とみなされると規定している。ファイナンス・リース取引の法的性質については種々の説が存在するが、本稿においては、その取引の本質を所有権留保付の割賦売買契約と捉える立場をとる。その前提で、同じ地方税である不動産取得税および特別土地保有税の取扱いを参考にしながら、固定資産税の性質並びに非典型担保物権に対する固定資産税の取扱いについて検討を加えることにより、次の結論を導き出す。「ファイナンス・リース取引については、リース物件が償却資産および土地のいずれの場合においても、リース契約上、リース物件の所有権が借主に移転することとされているリース取引については、借主を固定資産課税台帳に登録して固定資産税を課すことが妥当である。」また、本稿は、セール・アンド・リースバック取引も、リースバック部分が賃貸借取引に該当するため考察の対象とした。そして、次の結論にたどり着く。「セール・アンド・リースバック取引については、その取弓|がどのような目的で行われていようとも、譲受人(貸主)を固定資産課税台帳に登録して固定資産税を課すべきである。」
著者
稲村 務 Inamura Tsutomu
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
人間科学 (ISSN:13434896)
巻号頁・発行日
no.23, pp.35-80, 2009-03

本稿はC・ギアツの解釈人類学的理論を沖縄の大学生向けに解説するための教育的エッセイである。ギアツの解釈人類学は今日の文化人類学において様々なパラダイムの基礎と考えられるものであり、是非理解しておくべきものである。本稿ではゼンザイ、桜、ブッソウゲ、雲南百薬、ニコニコライス、墓、巫者といった沖縄・奄美の身近な事例を検討することでその理論を理解させる目的をもっている。
著者
田中 英光 Tanaka Hidemitsu
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
琉球大学経済研究 (ISSN:0557580X)
巻号頁・発行日
no.75, pp.19-106, 2008-03

ケインズの『一般理論』において初めて、経済学のなかに消費関数の概念が導入された。消費関数は、『一般理論』のなかで乗数と共にきわめて重要な位置を占めている。本論文は、消費関数そして密接に関係している乗数を中心に、これらの概念に関連するいくつかの問題を検討し整理した。『一般理論』の第8章をもとに、ケインズの消費関数およびその形状そして、消費に影響する客観的な要因について検討した。そのなかで、ケインズ消費関数のミクロ理論的基礎、現代の消費関数理論(ライフサイクル仮説・恒常所得仮説)との関連について触れた。また、客観的要因で扱われている資産価値の意外な変化・時間割引率(利子率)の中で、実質残高効果・ピグー効果、そして貨幣賃金の切り下げに判うケインズ効果を扱った。第9章をもとに消費に影響を与える主観的な要因を検討した。ケインズが示した貯蓄動議はその内容が異質的であると同時に補完的で、現代の消費・貯蓄理論に多くの示唆を与えるとともに、ケインズが指摘した貯蓄動機のいくつかは、現代の消費関数理論の重要なテーマでもある。第10章をもとに、ケインズの乗数の意味、ケインズが試算した乗数の値について議論した。また、市場の不完全性それがもたらす流動性および流動性制約によって、ケインズの乗数過程がどのような影響を受けるかを検討した。最後に、ケインズ消費関数に関する定型化された事実が、その後の消費関数理論にどのような展開をもらしたか、新しい消費関数理論が登場するまでの過程を概観した。